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土木・建設
 
【発明の名称】墓石の耐震構造
【出願人】
【識別番号】511308336
【氏名又は名称】人見 家康
【住所又は居所】栃木県大田原市狭原1170
【代理人】
【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫
【発明者】
【氏名】人見 家康
【住所又は居所】栃木県大田原市狭原1170
【要約】   (修正有)
【課題】見映えが良く、強い耐震性を長期間維持可能となる墓石の耐震構造を提供する。
【解決手段】竿石3には係止穴8を設け、芝台1及び台石2には貫通孔4を設け、係止穴8及び貫通孔4に連結体5を装着した墓石の耐震構造において、a)係止穴8は、竿石1底面の中央部から垂直に中央穴8aを穿設し、中央穴8aの上部の空間を側方へ拡張して内部拡張空間10を設け、中央穴8aの側壁に竿石3の開口部から内部拡張空間10まで略同じ深さで繋がる側部連通溝11を形成して成り、b)連結体5は、下端部にボルト部7を備えた棒部5aと、棒部5aの上部に形成された回動アンカー部6とから成り、回動アンカー部6は、棒部5a上に繋がる中芯体が竿石の中央穴8a内に納まり、竿石の側部連通溝11を上下に通過可能とし且つ内部拡張空間10内を回動可能とした係止片12を中芯体の外周に突設して成る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝台、台石及び竿石から成り、該竿石には係止穴を設け、芝台及び台石には貫通孔を設け、該係止穴及び貫通孔に連結体を装着した墓石の耐震構造において、
a)前記係止穴は、前記竿石底面の中央部から垂直に中央穴を穿設し、該中央穴の上部の空間を側方へ拡張して内部拡張空間を設け、該中央穴の側壁に前記竿石の開口部から前記内部拡張空間まで略同じ深さで繋がる側部連通溝を形成して成り、
b)前記連結体は、下端部にボルト部を備えた棒部と、該棒部の上部に形成された回動アンカー部とから成り、該回動アンカー部は、前記棒部上に繋がる中芯体が前記竿石の中央穴内に納まり、前記竿石の側部連通溝を上下に通過可能とし且つ内部拡張空間内を回動可能とした係止片を前記中芯体の外周に突設して成り、
前記竿石の係止穴に前記連結体の係止片を回転させて係止し、前記芝台底部に突出した棒部のボルト部にナットを締め付けて芝台、台石及び竿石を一体的に固定したこと特徴とする墓石の耐震構造。
【請求項2】
連結体の棒部と中芯体との間に、前記棒部と前記中芯体とを着脱可能とする着脱部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の墓石の耐震構造。
【請求項3】
連結体の中芯体の下部に、水平なフランジを固設し、前記竿石底面に該フランジが前記竿石底面から突出しない深さのフランジ受け穴を形成し、該フランジ受け穴内に打ち込みアンカーを設け、前記フランジに前記打ち込みアンカーの設置位置に対向したボルト孔を設け、該ボルト孔から前記打ち込みアンカーへアンカーボルトを打ち込み、前記竿石底面に前記フランジを固定したことを特徴とする請求項2に記載の墓石の耐震構造。
【請求項4】
竿石の係止穴の内部拡張空間を、中央穴の上端部位及び/又は中間高さ部位に形成すると共に連結体の係止片を中芯部の前記内部拡張空間との対応部位に設けたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれかに記載の墓石の耐震構造。
【請求項5】
芝台、台石及び竿石の各石間の上下に対向した水平面に夫々対向する上穴及び下穴を穿ち、該上穴と下穴とで形成された空間内に上下の両穴に係る止め部材を嵌合して成る横ズレ防止部を設けたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれかに記載の墓石の耐震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の大きな揺れを受けても倒壊しない強い耐震性を備えた墓石の耐震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
日本各地で地震が多発し、地震の大きな縦揺れと横揺れによって墓石の倒壊が多数発生している。このため例えば下記特許文献1及び特許文献2の如き耐震強度を高めた墓石構造が提案されている。
特許文献1に提案の「墓標の耐震装置」においては、積み上げた下部の芝台から上部の竿石の中央に連結孔を貫通させ、該連結孔に連結棒を挿通させて該連結棒の上端部と下端部を固定した構造が開示されている。
又、前記特許文献2に提案の「石積構造物の耐震装置及び石積構造物における石材連結工法」においては、上記特許文献1に記載の如き連結棒を貫挿させる孔を竿石の天頂まで貫通させることはせず、下から石材内部の途中まで穿鑿して止めた穴と、その下側の墓石の中央部に設けた連結孔とを連通させ、該連結孔に連結棒を貫装して該連結棒の上部を前記竿石の穴に固定した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−37532号公報
【特許文献2】特開2005−76191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の墓石の構造では、積んだ墓石が連結棒で一体化されるので各墓石が分離して崩壊してしまうのが防止できるが、竿石の天頂部から上に押さえ部材の一部が突出するため美観が大きく損なわれ、更に、長い年月を経ると風雨に曝される押さえ部材及び棒部の腐食や劣化によって、将来天頂の開口部から石材内へ雨水が侵入することが懸念される。
又、前記特許文献2の墓石の構造では、竿石の天頂には突き抜ける部分がないので、墓石全体の見映えが損なわれず、又、将来の竿石の石材内への雨水の侵食のおそれも解消される利点がある。しかしながら、連結棒を差し込んだ竿石の孔自体には連結棒を引抜き方向に強く保持させる機能がなく、地震の大きな上下方向の揺れによって、上方へ加速度をもった高重量の竿石を下へ引き戻すことができず連結棒が引き抜け、竿石が脱落してしまう虞がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、竿石を含めて全ての墓石の表面から内部構造の材料が露出しないようにして墓石の全体の見映えを良好に保ち、且つ地震の大きな縦揺れ及び横揺れがあっても台石及びその上の荷重の大きい竿石が相互にズレたり外れたりすることのない優れた耐震性を有する墓石の構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の墓石の耐震構造は、上記課題を解決するため以下の構成とした。
即ち、請求項1の発明は、芝台、台石及び竿石から成り、該竿石には係止穴を設け、芝台及び台石には貫通孔を設け、該係止穴及び貫通孔に連結体を装着した墓石の耐震構造において、a)前記係止穴は、前記竿石底面の中央部から垂直に中央穴を穿設し、該中央穴の上部の空間を側方へ拡張して内部拡張空間を設け、該中央穴の側壁に前記竿石の開口部から前記内部拡張空間まで略同じ深さで繋がる側部連通溝を形成して成り、b)前記連結体は、下端部にボルト部を備えた棒部と、該棒部の上部に形成された回動アンカー部とから成り、該回動アンカー部は、前記棒部上に繋がる中芯体が前記竿石の中央穴内に納まり、前記竿石の側部連通溝を上下に通過可能とし且つ内部拡張空間内を回動可能とした係止片を前記中芯体の外周に突設して成る。
そして、前記竿石の係止穴に前記連結体の係止片を回転させて係止し、前記芝台底部に突出した棒部のボルト部にナットを締め付けて芝台、台石及び竿石を一体的に固定したこと特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、上記発明において、前記連結体の棒部と中芯体との間に、前記棒部と前記中芯体とを着脱可能とする着脱部を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、上記発明において、前記連結体の中芯体の下部に、水平なフランジを固設し、前記竿石底面に該フランジが前記竿石底面から突出しない深さのフランジ受け穴を形成し、該フランジ受け穴内に打ち込みアンカーを設け、前記フランジに前記打ち込みアンカーの設置位置に対向したボルト孔を設け、該ボルト孔から前記打ち込みアンカーへアンカーボルトを打ち込み、前記竿石底面に前記フランジを固定したことを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、上記発明において、前記竿石の係止穴の内部拡張空間を、中央穴の上端部位及び/又は中間高さ部位に形成すると共に連結体の係止片を中芯部の前記内部拡張空間との対応部位に設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、上記発明において、前記芝台、台石及び竿石の各石間の上下に対向した水平面に夫々対向する上穴及び下穴を穿ち、該上穴と下穴とで形成された空間内に上下の両穴に係る止め部材を嵌合して成る横ズレ防止部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前記連結体の回動アンカー部の係止片を前記係止穴へ係止させる際には、前記回動アンカー部の係止片を前記係止穴の側部連通溝内に通過させつつ、前記棒部の回動アンカー部を前記竿石の係止穴上部に挿し込み、前記回動アンカー部の中芯体を回動させることによって前記内部拡張空間の側部連通溝部分から前記係止片が離れて、該係止片の下側が前記内部拡張空間の下側の載って引抜き不能に係止される。
更に、前記連結体の下端部は芝台の底面にナットで強く締め付け固定されることで、墓の芝台と台石と竿石とが強固に固定されて一体化され、地震の上下の強い振動を受けても外れることがなくなり、この結果、地震による墓石の倒壊が防止される。
地震では、最上部に載置され質量の大きい竿石が、上下の揺れで加速度が発生すると、極めて大きな引抜き荷重が前記係止片に加わることとなるが、その力を受ける内部拡張空間は石材の内部中央付近にあるので石材の硬い材質で水平方向及び垂直方向などの全周囲から強力に支持され、石材の破損や損傷が起こり難く、長期間係止穴周囲を良好状態に保持でき、何度地震に襲われても竿石から連結体が引抜き不能となった状態を極めて長期間に渡って保持させることが可能となる。
更に、竿石の上部には棒部やボルト、ナット等が全く突出しない構造なので全ての墓石全体の外観が損なわれず、外観の良好な見映を維持可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、連結体の棒部と中芯体とが分離可能となるので、竿石に対して棒部と分離させた回動アンカー部を先に係止し固定しておけば、前記芝台及び台石に貫装させた棒部の上部を突出させ、後で、台石上から竿石の下部に固定した中芯体を該棒部の上部に被せるように合わせて挿し込み固定することで、竿石を台石の上に積み上げることが容易となる。
【0012】
請求項3の発明では、前記連結体の回動アンカー部の中芯体の下部に固定された水平なフランジが、前記竿石底面のフランジ受け穴に安定的に嵌合して、アンカーボルトで強く竿石の底部へ固定されるが、その際に、前記フランジは竿石底面から突出しないので、台石の水平な上面に水平に底面を摺り合わせて位置決めし、安定的に載置することが可能となる。
そして、竿石の係止穴に係止された係止片の係止位置の僅かな移動も防止して連結体を竿石に確実に固定可能となる。
【0013】
請求項4の発明では、前記竿石の係止穴の内部拡張空間を、中央穴の上端部位又は中間高さ部位に1箇所形成し、その形成位置に合わせて連結体の係止片を回動アンカー部の中芯部の対応部位に設けることで、1箇所の係止片が内部拡張空間に係止可能となる。
又、前記竿石の係止穴の内部拡張空間を上端部位及び中間高さ部位に複数段違いで形成する場合、その形成位置に合わせて連結体の係止片を回動アンカー部の中芯部の対応部位に複数設けることができ、連結体の係止片を前記内部拡張空間により確実に係止させることが可能となる。
連結体に複数の段差で係止片を形成した場合には、段差毎に係止片の突出方向を同方向でも良いが角度を位相させた態様が可能である。又、格段の係止片の数を夫々違えた態様も可能である。
これらの係止片の態様は、1個より複数とした場合の方が、いずれの場合でも前記連結体を前記竿石に対してより強固に係止可能となるが、前記回動アンカー部の各部のサイズや竿石の材質に対応させて高い引抜き強度を保持可能なる最良の態様が選択可能である。
【0014】
請求項5の発明では、前記芝台、台石及び竿石の各石間の横ズレ防止部を設けることで、地震の横揺れで前記芝台、台石及び竿石の各石間に水平方向に起こる横ズレが防止可能となる。
そして、本発明では前記連結体による上下方向の固定と相俟って、地震により発生する大きな縦揺れと横揺れ等の全方向の揺れに対して高い耐震性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の縦断正面図である。
【図2】図1の連結体を外した状態を示す縦断正面図である。
【図3】図1の連結体を示す正面図である。
【図4】(イ)は竿石の縦断正面図、(ロ)は連結体の回動アンカー部の縦断正面図、(ハ)は連結体の棒部の正面図、(ニ)は係止穴と回動アンカー部との関係を示し、その内aは係止穴を示しb、c及びdは係止片の回動状態を示す(イ)のAA線断面図である。
【図5】回動アンカー部の係止片の態様を示し(イ)は係止片が1個の態様、(ロ)は係止片が2個の態様、(ハ)は係止片が3個の態様、(ニ)は係止片が4個の態様を示す各平面図である。
【図6】別の形態の(イ)は竿石の縦断正面図、(ロ)は連結体の回動アンカー部の縦断正面図、(ハ)は連結体の棒部の正面図、(ニ)は係止穴と回動アンカー部との関係を示し、その内aは係止穴を示しb、c及びdは係止片の回動状態を示す(イ)のAA線断面図である。
【図7】別の形態の(イ)は竿石の縦断正面図、(ロ)は連結体の回動アンカー部の縦断正面図、(ハ)は係止穴のAA線断面図、(ニ)回動アンカー部の平面図である。
【図8】別の形態の(イ)は竿石の縦断正面図、(ロ)は連結体の正面図、(ハ)は係止穴と回動アンカー部との関係を示し、その内aは係止穴を示しb、c及びdは係止片の回動状態を示す(イ)のAA線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の墓石の耐震構造の実施形態を、以下図に基づいて説明する。
本発明は、図1に示すように、地面に掘った納骨室38の周囲を囲ったコンクリート製の基礎32に、ネジ部35を直立させてL型アンカーボルト34を埋設する
前記L型アンカーボルト34の位置に対応させボルト孔33を設けた直方体の御影石製の芝台1(下台、台石とも呼ばれる)を、前記ボルト孔33に前記L型アンカーボルト34を挿入させて載置する。
そして、前記芝台1上に突出したL型アンカーボルト34のネジ部35にナット37を螺着して締め付け、該芝台1を該基礎32上に強く固定する。
その際、図1に示すように、該芝台1のボルト孔33の上端開口上部にはナット隠し穴36を設け、このナット隠し穴36内に突出したネジ部35にナット37を螺着することで、前記下段台石2aの底面がL型アンカーボルト34及びナット37に当たらずに、該芝台1に隙間なく接触した状態で安定的に載置される。
【0017】
前記芝台1の上には、通常1個又は複数個台石2(中台、上台とも呼ばれる)を積み上げるが、下の下段台石2aは該芝台1の上面にあるナット隠し穴36の全てを隠すことができる大きさとし、上の上段台石2bは前記下段台石2aより小さい平面サイズとし、図1では台石2を、前記下段台石2aと前記上段台石2bを用いた場合を示している。
この台石2には、直方体の御影石が使用され、該上段台石2bの上には平面サイズが上段台石2bより小さいが縦に長い直方体の御影石製の竿石3(石塔、棹石とも呼ばれる)が載置される。この竿石3の重量は前記芝台1や前記台石2より大きい。このため全体として重心の高い不安定な構造となる。
墓石下部は、基礎32が地下に隠れるが、前記芝台1、台石2及び竿石3は地上に現れ、各石の側面は周囲から見ることが可能となる。
本発明は、図1に示すように、上記の如く積み上げた御影石などの硬い石素材で作られた前記芝台1、台石2及び竿石3から成る墓石の中心に連結体5を縦に埋設した耐震構造である。
【0018】
その墓石の耐震構造を以下詳細に説明する。
前記芝台1及び前記台石2の中央部には、ドリルで、図2に示すように、垂直に貫く真円状の貫通孔4を設け、更に前記竿石3の中央部には、底面から中間高さまで垂直に立ち上げた係止穴8を設ける。
該係止穴8は、図4の(イ)に示すように、前記竿石3底面の中央部から垂直な中央穴8aを穿設し、該中央穴8aの上部の空間を側方へ拡張して内部拡張空間10を設け、該中央穴8aの側壁には、前記竿石3の開口部8bから前記内部拡張空間10まで略同じ深さで繋がる側部連通溝11を形成する。
【0019】
又、前記連結体5は、図1、図3及び図4の(ロ)、(ハ)に示すように、上部は前記竿石3の内部拡張空間10にまで達し、且つ下部は前記芝台1の底面にまで達する長さを有する鉄製又はステンレス製の棒の棒部5aに中芯体6aを連結し、該中芯体6aの上部に係止片12を一体的に形成した回動アンカー部6を備える。
該回動アンカー部6の下部には、図4の(ロ)と(ハ)に示すように、前記棒部5aと中芯体6aとの間に、前記棒部5aと中芯体6aとを着脱可能とする着脱部13を設ける。
【0020】
又、図4の(ロ)に示すように、前記回動アンカー部6の中芯体6aの下部には、水平なフランジ14を固設する。
そして、前記竿石3底面には、図4の(イ)に示すように、該フランジ14が前記竿石3底面から突出しない深さのフランジ受け穴25を形成し、該フランジ受け穴25内に打ち込みアンカー20を設け、更に、前記フランジ14には前記打ち込みアンカー20の設置位置に対向したボルト孔21を設ける。
そして、図1に示すように、該ボルト孔21から前記打ち込みアンカー20へアンカーボルト22を打ち込み、前記竿石3底面に前記フランジ14を固定する。
【0021】
前記回動アンカー部6の係止片12の形成方法は、丸棒の上端部を折り曲げて鍛造形成することもできるが、図4の(ロ)に示すように、前記中芯体6aの側面に板状の小片を溶着するか、又は鋳型で前記中芯体6aと一体形成するなど各種方法で形成することが可能である。
そして、前記棒部5aの下部にはボルト部7を形成する。
【0022】
そして、前記棒部5を前記貫通孔4及び前記係止穴8の中央縦に貫挿し、その際、図1に示すように、前記棒部5の回動アンカー部6に設けた係止片12を前記側部連通溝11から遠ざかるまで回転させて前記竿石3内の前記係止穴8に設けた内部拡張空間10に係止するとともに前記棒部5のボルト部7に前記芝台1の底面からナット9を締め付ける。このナット9は2個ダブルで使用すればより強く固定できで外れ難くなる。
【0023】
前記ボルト部7に対する前記ナット9の装着は、図1に示すように、金属製のプレート15を、その中央に設けた孔に前記ボルト部7を差し込んで前記芝台1の底面に当接させ、該プレート15の孔から突出した棒部5aのボルト部7にナット9を締め付けて行う。
この際、前記連結体5を下方へ引き寄せ、芝台1の底面から強固に締め付けて固定することが可能となり、その際、用いるプレート15は脆い石の開口部を破損させずに強く締め付けることが可能となる。
【0024】
又これに加えて、前記芝台1、台石2及び竿石3の各石間には、図1に示すように、横ズレ防止部16を設けることができる。
該横ズレ防止部16は、前記芝台1、台石2及び竿石3の各石間の上下に対向した水平面に夫々対向する上穴18及び下穴17を穿ち、前記上穴18と下穴17とで形成された空間内に止め部材19を嵌合した態様が可能である。
その際、前記止め部材19は、前記上穴18と下穴17との両方の穴に係り、両者間の空間内で上部に僅か隙間を設け、側部にできる隙間は極力少なくすると、上側の石が下の石から浮くことなく、横ズレが起こり難くなるので好ましい。
【0025】
そして、この結果、大きな地震があっても前記芝台1、台石2及び竿石3の前記連結体5による上下方向の固定と相俟って、地震により発生する大きな縦揺れと横揺れ等の全ての方向に起こる揺れに対して高い耐震性を得ることが可能となるので、大地震による墓石の倒壊のおそれがなくなる。
これに加えて、前記竿石3の上部には棒部などの金具類が全く突出しないので墓石全体の外観が全く損なわれず見映えの良い状態が維持される。
【0026】
次に図4の(イ)に示す御影石製竿石3の係止穴8の構造を具体例で詳述する。
該係止穴8の形成方法は、竿石3を逆さに置き、その底部中央に垂直方向へドリルで170mmの深さで110mm径に中央穴8aを開口する。
次に10mm幅の円周面にダイヤモンドを埋め込んだ100mm径の円盤型のカッターを用いて前記中央穴8aの開口部から最深部の突き当たり付近まで差し込んでその周面から水平に移動させつつ周面から均一に20mmの高さで側方へ20mm切削し内部拡張空間10を形成する。
次に、ドリルを用いて中央穴8aの周面に、中心を周面に合わせて60mm径の円形とする穴を、底部中央から垂直方向へ内部拡張空間10まで掘り下げて側部連通溝11を対向した2箇所に形成する。
【0027】
この方法で、前記係止穴8の中央穴8aが円筒形で径が110mmで深さは150mmとなり、該中央穴8aの上端に繋がる円筒形の内部拡張空間10は径が150mmで深さが20mmとなり、更に、前記中央穴8aの側壁に形成される側部連通溝11は前記中央穴8aの壁面開く略半円の円筒形を成し、その径が60mmとなる係止穴8が得られる。
又、前記中央穴8aの開口部に、該中央穴8aと中心を共通とした10mm深さで径が202mmの円形のフランジ受け穴25を形成し、このフランジ受け穴25内には、2箇所〜4箇所に打ち込みアンカー20を設ける。
【0028】
次に前記係止穴8に対応した連結体5の構造を具体例で詳述する。
前記連結体5の棒部5aは、ステンレス製で径が24mmとし、長さが前記芝台1と各台石2との積み上げ高さより長く、図4の(ロ)及び(ハ)に示すように、上部に雄ネジ部24を形成し、下部にボルト部7を形成する。
前記回動アンカー部6は、鉄等の金属製の径が100mmで長さが150mmの円筒形の中芯体6aの下部に、厚さ10mmで径が200mmの金属製のフランジ14を溶接し、金属製のフランジ14の下面から棒部5aの上部の前記雄ネジ部24に螺着可能な雌ネジ部23を中芯体6a内の中間高さまで形成する。即ち、該雌ネジ部23に前記棒部5aの雄ネジ部24が着脱可能となる。
又、前記フランジ14には前記竿石3のフランジ受け穴25内の打ち込みアンカー20に対応した部分にネジ孔21を設ける。
【0029】
このネジ孔21から前記打ち込みアンカー20へ、径が4mmで長さが1.5mmのアンカーボルト22を打ち込むと、図1に示すように、前記回動アンカー部6のフランジ14が前記係止穴8の開口部の設けたフランジ受け穴25内に強く固定される。
なお、該雌ネジ部23に前記棒部5aの雄ネジ部24が螺着する前に前記雌ネジ部23にナットを1個羅着しておくと、前記連結体5の棒部5aを中芯体6aに螺着後、更に前記ナットを締め付けることで中芯体6aに対して棒部5aが回転するのを防止し、より確実に両者を固定することが可能となる。この場合、上段台石2bの4の貫通孔4上部の開口部を前記ボルトが嵌合可能に広く形成しておいて、台石2上に竿石3を水平に載置できるようにしておく。
そして、図4の(ロ)に示すように、前記中芯体6aの上部には中芯体6aの周面から側方へ24mm突出させて厚さ10mmの金属板製の係止片12を溶接で一体的に固設する。
該係止片12の形状は、図4の(二)に示すように、前記係止穴8の径が30mmの半円形の前記側部連通溝11通過可能となるように、その半円形よりも小さい24mm径の半円形とする。
【0030】
前記回動アンカー部6が前記係止穴8に係止される原理を図4の(二)で説明すると、図4の(二)aに示す前記係止穴8に、図4の(二)bに示ように、係止片12が側部連通溝11を通って中央穴8aの最深部まで入り、そこで図4の(二)cに示ように、少しの角度回動により係止片12が内部拡張空間10の底面に乗り、引き抜き不能となる。さらに図4の(二)dに示ように、側部連通溝11とそれとは別の隣の側部連通溝11との中間位置まで回動させると、確実に内部拡張空間10から係止片12が外れなくなる。
【0031】
前記係止片12は前記側部連通溝11の数と位置とに対応して前記中芯体6aの周面に形成されるが、図5の(イ)に示す1個の場合と、図5の(ロ)に示す2個の場合と、図5の(ハ)に示す3個の場合と、図5の(ニ)に示す4個の場合と、5個上とした場合(図省略)とが可能である。
その係止片12の形状は、前記側部連通溝11を上下に通過可能な形状であれば良く、図では側部連通溝11に対応した半円形としたものを示したが、3角形状(図省略)、又は4角形状(図省略)など各種の形態が可能であり、本発明では、前記側部連通溝11の水平断面の形状及び前記係止片12の平面形状を上記形状に限定するものではない。
そして、外れ難くするために係止片12を係止させる際の回動位置は、いずれも側部連通溝11とそれとは別の隣の側部連通溝11との中間位置で止め、各側部連通溝11から均一に離れた位置の止まるようにする。例えば、2個の場合では90度、3個の場合は60度、4個の場合45度の回転で止める。
【0032】
上記の如く連結体5上部の係止片12を回動させることで竿石3内部の係止穴8の内部拡張空間10に係止可能なる構造は、他にも各種可能であるが、例えば、図6、図7及び図8に示す形態が可能であり、それを以下説明する。
【0033】
例えば、図6に示す形態は、上記図4に示す形態において、図6の(ロ)に示すように、前記回動アンカー部6にフランジ14を設けない形態である。
この形態では、前記竿石3の係止穴8に対して回動アンカー部6を装着したとき多少の不安定さが生じる。
このため、竿石を台石に載せる前に、前記係止穴8には前記回動アンカー部6との間にセメント系やエポキシ系等の充填材を注入し、現地施工前に棒部5を前記竿石3により強固に固定させ、内部拡張空間10に係止片12が係止された状態を保持させて置く。
【0034】
この形態でも、前記回動アンカー部6が前記係止穴8に係止されるのは、図6の(二)で説明すると、図6の(二)aに示す前記係止穴8に、図6の(二)bに示ように、係止片12が側部連通溝11を通って中央穴8aの最深部まで入り、そこで図6の(二)cに示ように、少しの角度回動させると係止片12が内部拡張空間10の底面に乗り、引き抜けなくなる。さらに図6の(二)dに示ように、側部連通溝11とそれとは別の隣の側部連通溝11との中間位置まで回動させると、確実に内部拡張空間10から係止片12が完全に外れなくなる。
【0035】
又例えば、図7に示す形態は、該図7の(イ)及び(ハ)に示すように、前記竿石3の係止穴8の内部拡張空間10を上段内部拡張空間26と中段内部拡張空間27の2箇所とし、これを中央穴8aの上端部位及び中間高さ部位に形成し、更に図7の(ロ)及び(ニ)に示すように、これに対応させて棒部5の係止片12を上段係止片30と中段係止片31の2箇所とし、これを回動アンカー部6の中芯部6aの前記上段内部拡張空間26及び下段内部拡張空間27との対応部位に設け、更に、係止穴8の側部連通溝11は、上段係止片30と中段係止片31とが同時に最深部まで通過可能となるように上段用側部連通溝28と中段用側部連通溝29とを形成したものである。
【0036】
この形態は、前記竿石3の係止穴8の上段内部拡張空間26及び下段内部拡張空間27を上端部位及び中間高さ部位に2箇所形成して2段としたものであるが、これとは別に、3段以上の複数段を上下段違いで形成し、その形成位置に合わせて棒部5の係止片12を回動アンカー部6の中芯部6aの対応部位に複数段の係止片12を設けることで、棒部5を回動させて前記内部拡張空間10へ同時に多段に係止させることも可能となる。
【0037】
又、各段毎に係止片12の突出方向は同方向でも良いが突出方向の角度を変える態様が可能である。図7では2段の上段係止片30と中段係止片31との突出方向の角度を90度変えたものである。
又、格段の係止片12の数は格段で夫々違える数で形成する態様も可能である。
これらの係止片12の態様は、通常1個より複数とした場合の方が前記棒部5を前記竿石3に対してより強固に係止可能となるが、間隔が狭いと石材が割れてしまう可能性が高くなり、単に個数を多く増加せせれば良いというのではない。
回動アンカー部6の各部のサイズで決まる強度と、素材強度の異なる竿石3の材質に対応させ、前記回動アンカー部6の高い引抜き強度を保持可能となる最良の態様を選択することが可能である。
【0038】
更に例えば、図8に示す形態では、該図8の(イ)及び(ロ)に示すように、前記竿石3の係止穴8は対向した2個の側部連通溝11を備え、該2個の側部連通溝11を通過可能に棒部5の上部に係止片12を2個形成した形態である。
施工においては、棒部5を芝台1と台石2に挿着する前に先に竿石3に対して固着して置かなければならないが、前記回動アンカー部6の中芯部6aと棒部5aとは分離されない一体の材料を用いるので上記各形態よりも簡潔な構造となっておりコストを低く抑えることが可能となる。
【0039】
この形態でも、前記回動アンカー部6を前記係止穴8に係止する過程は、図8の(ハ)で説明すると、図8の(ハ)aに示す前記係止穴8に、図8の(ハ)bに示ように、係止片12が側部連通溝11を通って中央穴8aの最深部まで入れ、そこで図8の(ハ)cに示ように、少しの角度回動させると係止片12が内部拡張空間10の底面に乗り、引き抜けなくなる。さらに図8の(ハ)dに示ように、側部連通溝11とそれとは別の隣の側部連通溝11との90度の中間位置まで回動させると、内部拡張空間10から係止片12が係り、竿石3から連結体5が完全に抜けなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の墓石の耐震構造は、最上部の竿石と、下部の芝台と、その間の全ての台石とを連結体で一体的に固定するものであるが、墓石の形状は各図に示す如き全てを直方体とした場合以外、即ち、表面に各種装飾を施した石材など各種形状の墓石に対して広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 芝台
2 台石
2a 下段台石
2b 上段台石
3 竿石
4 貫通孔
5 連結体
5a 棒部
6 回動アンカー部
6a 中芯体
7 ボルト部
8 係止穴
8a 中央穴
8b 開口部
9 ナット
10 内部拡張空間
11 側部連通溝
12 係止片
13 着脱部
14 フランジ
15 プレート
16 横ズレ防止部
17 下孔
18 上穴
19 止め部材
20 打ち込みアンカー
21 ボルト孔
22 アンカーボルト
23 雌ネジ部
24 雄ネジ部
25 フランジ受け穴
26 上段内部拡張空間
27 中段内部拡張空間
28 上段用側部連通溝
29 中段用側部連通溝
30 上段係止片
31 中段係止片
32 基礎
33 ボルト孔
34 L型アンカーボルト
35 ネジ部
36 ナット隠し穴
37 ナット
38 納骨室
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5 
【図6】
図6 
【図7】
図7 
【図8】
図8 
写真1 
写真2 
 
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