閉じる
機械器具
 
【発明の名称】回転式冷却装置
【特許権者】
【識別番号】508017557
【氏名又は名称】谷 安平
【住所又は居所】大阪府大阪市住吉区清水丘1の12の2
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
【発明者】
【氏名】谷 安平
【住所又は居所】大阪府大阪市住吉区清水丘1の12の2
【氏名】谷 幸子
【住所又は居所】大阪府大阪市住吉区清水丘1の12の2
【要約】
【課題】
小型の装置で均一かつ短時間に原料を冷却することができ、単体凍結やバラ凍結にも効果的な回転式冷却装置を提供する。
【解決手段】
回転筒12と、該回転筒の回転軸部に配設された中心筒13と、回転筒の内面と中心筒の外面との間を連結して回転筒と中心筒とを一体化するとともに、回転筒の内面と中心筒の外面との間に形成される環状の空間を周方向の複数の処理室14に分割する径方向の複数の仕切板15と、回転筒の両端に設けられた原料投入口16及び製品搬出口17とを備えた冷却筒18における処理室の内面を原料投入口側から製品搬出口側に向かって拡開するテーパ面に形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が水平方向の回転筒と、該回転筒の回転軸部に配設された中心筒と、前記回転筒の内面と前記中心筒の外面との間を連結して前記回転筒と前記中心筒とを一体化するとともに、前記回転筒の内面と前記中心筒の外面との間に形成される環状の空間を周方向の複数の処理室に区画する径方向の複数の仕切板と、前記回転筒の一端に設けられた原料投入口及び他端に設けられた製品搬出口とを備えた冷却筒を有し、前記原料投入口に投入された原料を前記各処理室内に分配してそれぞれ冷却し、冷却後の製品を前記製品搬出口から搬出する回転式冷却装置であって、前記処理室の内面を、前記原料投入口側から前記製品搬出口側に向かって拡開するテーパ面としたことを特徴とする回転式冷却装置。
【請求項2】
前記回転筒の内面は、前記原料投入口側から前記製品搬出口側に向かって拡開するテーパ面となっていることを特徴とする請求項1記載の回転式冷却装置。
【請求項3】
前記中心筒の外面は、前記原料投入口側から前記製品搬出口側に向かって縮小するテーパ面となっていることを特徴とする請求項1又は2記載の回転式冷却装置。
【請求項4】
前記冷却筒を原料入口側から製品出口側に向かって複数を直列に配列するとともに、原料入口側に配置された冷却筒の前記製品搬出口から搬出される一次冷却品を、製品出口側に配置された冷却筒の製品原料投入口に投入するためのガイド部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の回転式冷却装置。
【請求項5】
前記原料入口側に配置された冷却筒における処理室のテーパ面の角度は、前記製品出口側に配置された冷却筒における処理室のテーパ面の角度より大きく形成されていることを特徴とする請求項4記載の回転式冷却装置。
【請求項6】
前記原料入口側に配置された冷却筒における処理室の区画数は、前記製品出口側に配置された冷却筒における処理室の区画数より多く形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の回転式冷却装置。
【請求項7】
前記原料入口側に配置された冷却筒の回転数は、前記製品出口側に配置された冷却筒の回転数より速く設定されていることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の回転式冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、回転式冷却装置に関し、詳しくは、食品や化学薬品を冷却し、さらには凍結するための回転式冷却装置に関するもので、例えば、サバ、アジ等を一匹単位で凍結する単体凍結や、剥きエビ、桜エビ、しらす等をバラバラの状態に凍結するバラ凍結を行う際に適する回転式冷却装置に関する。
【背景技術】
トウモロコシ、米飯、魚介類等の食品や、注射用医薬品等の原料を冷却して凍結する方法として、ドライアイスや液体窒素、冷凍機により製造した低温空気等の冷却材と原料とを冷却凍結機内に投入した後、撹拌する方法が採用されている。
例えば、通気性の棚板により上下方向に仕切った複数の区画室を有する筒状容器に、冷却用の気体を下部から上部に向けて通気するとともに、筒状容器の上部から原料を供給し、間欠式に下方の区画室へ原料を順次移行させ、各区画室で原料を撹拌し、筒状容器の下部からバラ状に凍結した製品を搬出する凍結方法及び装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、回転軸を水平方向に向けた回転ドラムを用いる回転式冷却凍結装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。従来の回転式冷却凍結装置の一例を図11に側面図で示す。この回転式冷却凍結装置80は、内周面に複数のブレード81を設けた回転ドラム82と、該回転ドラム82の回転軸部に複数の回転翼84を設けた軸体83とを備え、回転ドラム82と軸体83とを反対方向に回転させし、回転ドラム82の一端入口から原料と冷却材とを導入し、他端出口から凍結させた製品を搬出するように形成されている。
【特許文献1】
特開昭63−279772号公報
【特許文献2】
実公昭53−3272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1によれば、原料を上から下へと鉛直方向に移送するため、筒状容器の設置面積が小さくなり、送風機を筒状容器の外に設置できるため、建物の狭い場所に設置することが可能とあり、冷風が原料を複数回通過するため、熱効率が高いと記載されている。しかし、この装置では、処理中の原料の動きが直線的であり、緩やかであるため、原料が冷却されて凍結されるまでに移動する距離(以下、「凍結距離」ともいう。)が短い。したがって、冷却効率が低く、短時間での冷却や凍結が困難であり、装置規模がまだまだ大きいという問題がある。
また、前記特許文献2によれば、原料粒子の表面のみを凍結しながら撹拌するため、原料粒子間の粘結を防止してバラ状に凍結することができ、表面凍結よる外皮膜の形成により、原料粒子の外形を保持することができると記載されている。しかし、剥きエビ、桜エビ、しらす等のように、表面に水分の多い原料を連続的に凍結すると、原料表面の水分により回転ドラムの内壁面、ブレード及び軸体の回転翼に原料が付着して凍結し、これが成長して大きな塊状に氷結すると装置が円滑に作動しなくなり、凍結効率が低下する。
また、内面に複数のブレードを設けた回転ドラムと複数の回転翼を設けた軸体とを反対方向に回転する態様では、強制的な撹拌による練りとこねとによって餅状になり、凍結品の品質が劣化する。さらに、回転ドラムの内面で原料と接触するのは、下部面と回転方向上昇側の下半部の面だけであり、回転方向上昇側の上半部から上部面、回転方向下降側の面は原料とほとんど接触しないため、無駄な状態となっていた。
そこで本発明は、小型の装置で均一かつ短時間に原料を冷却することができ、単体凍結やバラ凍結にも効果的な回転式冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の回転式冷却装置は、回転軸が水平方向の回転筒と、該回転筒の回転軸部に配設された中心筒と、前記回転筒の内面と前記中心筒の外面との間を連結して前記回転筒と前記中心筒とを一体化するとともに、前記回転筒の内面と前記中心筒の外面との間に形成される環状の空間を周方向の複数の処理室に区画する径方向の複数の仕切板と、前記回転筒の一端に設けられた原料投入口及び他端に設けられた製品搬出口とを備えた冷却筒を有し、前記原料投入口に投入された原料を前記各処理室内に分配してそれぞれ冷却し、冷却後の製品を前記製品搬出口から搬出する回転式冷却装置であって、前記処理室の内面を、前記原料投入口側から前記製品搬出口側に向かって拡開するテーパ面としたことを特徴としている。
さらに、本発明の回転式冷却装置は、前記回転筒の内面が前記原料投入口側から前記製品搬出口側に向かって拡開するテーパ面となっていること、前記中心筒の外面が前記原料投入口側から前記製品搬出口側に向かって縮小するテーパ面となっていることを特徴としている。
また、前記冷却筒を原料入口側から製品出口側に向かって複数を直列に配列するとともに、原料入口側に配置された冷却筒の前記製品搬出口から搬出される一次冷却品を、製品出口側に配置された冷却筒の前記製品原料投入口に投入するためのガイド部材を備えていることを特徴としている。
さらに、前記原料入口側に配置された冷却筒における処理室のテーパ面の角度が前記製品出口側に配置された冷却筒における処理室のテーパ面の角度より大きく形成されていること、前記原料入口側に配置された冷却筒における処理室の区画数が前記製品出口側に配置された冷却筒における処理室の区画数より多く形成されていること、前記原料入口側に配置された冷却筒の回転数が前記製品出口側に配置された冷却筒の回転数より速く設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
本発明の回転式冷却装置によれば、投入された原料が各処理室に分配されて各処理室内を螺旋状に移動しながら出口側に搬送され、その過程で冷却され、さらには凍結されるので、均一で効率のよい冷却処理、凍結処理が可能であり、原料が処理室の内面に固着することがなく、表面の水分が多い原料でもバラバラの状態で冷却して凍結することができ、練りやこねによる品質の劣化を生じることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
図1乃至図5は、本発明の回転式冷却装置の第1形態例を示すもので、図1は回転式冷却装置の概略を示す正面図、図2は同じく概略を示す断面側面図、図3は要部の断面正面図、図4は図3のIV−IV断面図、図5は処理室内の原料の移動状態を説明する断面側面図、図6は処理室内の原料の移動状態を説明する斜視図である。
この回転式冷却装置は、回転軸を水平方向に向けた回転ドラム11の内部に、前記回転ドラム11と同軸に配置される回転筒12と、該回転筒12の回転軸部に配設される中心筒13と、前記回転筒12の内面と前記中心筒13の外面との間を連結して回転筒12と中心筒13とを一体化するとともに、回転筒12の内面と中心筒13の外面との間に形成される環状の空間を周方向の3個の処理室14に分割する径方向の3枚の仕切板15と、前記回転筒12の一端に設けられた原料投入口16及び他端に設けられた製品搬出口17とを備えた冷却筒18を着脱可能に設けている。
前記冷却筒18を構成する回転筒12、中心筒13及び仕切板15は、冷却材あるいは冷却材から気化したガスが自由に流通でき、かつ、原料や製品が通過しないような網目を有する網板(メッシュ板)や多数の小通孔を有する多孔板(パンチングメタル)を所定形状に形成したものであることが好ましい。また、回転ドラム11は、回転筒12内での冷却効果を損なうことがないように断熱機能を有する態様が好ましく、回転ドラム11の内部に発泡ウレタン等の断熱材19を封入することにより断熱機能を付与することができる。
前記回転ドラム11は、架台21上に設けられた複数の支持部材22に回転軸を中心として回転可能な状態で支持されており、外周のスプロケット部23と駆動用モータ24とに駆動用チェーン25が掛け渡され、駆動用モータ24によって回転ドラム11を所定の回転数で回転できるように形成されている。また、回転ドラム11の両端には、入口用排気ブロア26に接続した入口側排気ダクト27と、出口用排気ブロア28に接続した出口側排気ダクト29とがそれぞれ設けられ、冷却筒18内のガスを排気するように形成されている。
さらに、回転ドラム11の一端には、前記原料投入口16に原料を投入するための原料投入シュート31が設けられ、他端には、前記製品搬出口17から製品を取り出すための製品取り出しシュート32が設けられている。また、装置上部には、冷却筒18の内部温度と冷却材の供給量とを制御するための庫内温度表示器33と、庫内温度調節器34と、冷却材供給制御器35とが設けられるとともに、回転ドラム11の回転数を制御するための回転数制御機構36と回転動力盤37とが設けられている。
前記回転筒12は、前記原料投入口16側の内径が前記製品搬出口17側の内径より小さく形成されており、該回転筒12の内面は、全体として前記原料投入口16側から前記製品搬出口17に向かって外周方向に拡開するテーパ面(円錐面)となっている。また、前記中心筒13は、前記原料投入口16及び前記製品搬出口17の長さ分だけ前記回転筒12より短く形成されるものであって、3枚の板状部材を組み合わせて断面正三角形状に形成されており、前記原料投入口16側の外径(外接円の直径)が前記製品搬出口17側の外径(外接円の直径)より大きく形成され、該中心筒13の外面は、前記原料投入口16側から前記製品搬出口17側に向かって回転軸方向に縮小するテーパ面となっている。
このように、回転筒12の内面及び中心筒13の外面を前述のようなテーパ面で形成することにより、回転筒12の内面と中心筒13の外面と両側の仕切板15とによって区画された処理室14の内面を、前記原料投入口16側から前記製品搬出口17側に向かって拡開するテーパ面に形成している。
前記回転筒12は、回転ドラム11内に軸方向から挿入され、着脱可能な状態で複数の取付金具38により固定されている。また、断面正三角形状の前記中心筒13は、各頂点部分に前記仕切板15の内端縁が放射状に固着されて一体的に形成されており、仕切板15の外端縁を回転筒12の内面に適宜な取付金具で着脱可能に固定することにより、回転筒12、中心筒13及び仕切板15が一体化して前記冷却筒18が形成され、回転ドラム11の回転軸を中心として冷却筒18が回転ドラム11と一体に回転するように形成されている。
したがって、複数の処理室14は、回転ドラム11の回転軸に対して周方向に放射状に配置され、回転軸を中心として回転軸の周囲を公転する状態となる。このような状態に設けられた処理室14内に投入された原料は、回転する処理室14内を壁面に沿って移動しながら、テーパ面の作用により、原料投入口16側から前記製品搬出口17側に向かって移動する。
例えば、図5に示すように、一つの処理室14内において、図5(A)に示す位置Aにある原料は、冷却筒18が図5において矢印Yで示す時計回りに回転し、処理室14が図5(B)に示す状態になると、矢印Y1で表すように、前記位置Aから一方の仕切板15に沿って中心筒13の外面の位置Bに移動し、さらに、処理室14が図5(C)に示す状態に回転すると、矢印Y2で表すように、前記位置Bから中心筒13の外面及び他方の仕切板15に沿って位置Cに移動する。そして、処理室14が図5(D)に示す状態に回転すると、矢印Y3で表すように、前記位置Cから回転筒12の内面に沿って位置Dに移動し、冷却筒18が一周して処理室14が図5(E)に示す状態に回転すると、矢印Y4で表すように、前記位置Dから回転筒12の内面に沿って位置E、すなわち前記位置Aと同じ状態の位置に移動する。
すなわち、処理室14内の原料は、回転軸を中心とした処理室14の公転により、矢印Y1〜矢印Y4で表したように、位置Aから位置B,C,Dを経て位置Eに至り、位置Aに戻る。したがって、原料は、回転筒12の内面、中心筒13の外面及び前後一対の仕切板15の表面に沿って処理室14内を周回するように移動するとともに、この移動に伴い、処理室14の内面に設けられた出口側が拡開するテーパ面の作用により、原料投入口16側から前記製品搬出口17側に向かって移動する。この原料の動きは、図6に示すように、処理室14に対して相対的に、螺旋(以下「スパイラル」ともいう。)状の運動Sをしながら出口方向に向かう動きとなる。
回転筒12の内面及び中心筒13の外面におけるテーパ面の回転軸に対する角度は、処理室14の軸方向の長さ、区画数、回転数、原料の性状、原料温度、製品温度、冷却材の種類、その他の条件によって異なるが、一般的には、回転軸に対するテーパ面の角度を大きくすると、原料の出口側への移動が促進されて処理能力を高めることができ、原料の分散効果及びスパイラル状の運動効果が高まることで表面凍結が促進されることにより、バラ凍結を容易に行うことができる。しかし、回転軸に対するテーパ面の角度を大きくし過ぎると、出口側への原料の移動が速くなりすぎて十分な冷却効果を得ることが困難となり、均一で確実な冷却処理を行えなくなるおそれがある。これらのことから、回転軸に対するテーパ面の角度は、テーパに換算して1/130〜1/5の範囲、好ましくは1/32.5〜1/11、より好ましくは1/16〜1/22程度であり、角度で表すと1〜2度程度が好ましい。また、回転筒12や中心筒13の中間部で角度を変えることもできる。
なお、前記テーパは、JISで規定されるテーパねじと同様であり、例えば、1/16(じゅうろくぶんのいち)テーパは、軸方向の長さ16mmに対して直径が1mm変化することをいう。また、本形態例で示す中心筒13のように、三角形等の多角形状のものの場合には、この多角形に外接する円の直径と中心筒13の軸方向長さとによってテーパを表す。
ここで、前記回転ドラム11の回転軸、すなわち、回転ドラム11に同軸に設けられた回転筒12の回転軸における水平方向とは、厳密に水平である必要はなく、入口側に対して出口側が上昇していたり、下降していたりしていてもよい。但し、回転筒12の出口側を上昇させる場合は、回転筒12の内面及び中心筒13の外面におけるテーパ面が上り勾配にならないように、テーパ面の角度より小さな上昇角度に設定する必要がある。一方、回転筒12の出口側を下降させる場合は、各処理室14内の原料が十分に冷却されずに出口側に滑り落ちることを避けるため、前記テーパ面の角度プラス5度程度までとすることが好ましい。
このように形成した回転式冷却装置は、前記回転数制御機構36及び前記回転動力盤37により駆動用モータ24を作動させて回転ドラム11を回転させることにより、回転筒12、中心筒13及び仕切板15により区画された処理室14を、回転軸を中心とした円周上を公転状態で回転させながら、前記原料投入シュート31から前記原料投入口16に所定量の原料を投入するとともに、前記庫内温度調節器34及び前記冷却材供給制御器35により所定量の冷却材を処理室14内に向けて投入することにより、原料の冷却処理や凍結処理を行うことができる。
冷却材には、原料の種類や冷却温度に応じて適当な冷却材を用いることができ、例えば、液体窒素等の低温液化ガス、低温冷却空気、ドライアイス等を用いることができる。冷却筒18内への冷却材の投入は適宜な手段で行うことができ、例えば、低温液化ガスを用いる場合は、回転ドラム11の一方又は双方の開口部近傍に低温液化ガス供給用配管及び噴射ノズルを設けて冷却筒18内へ低温液化ガスを噴射すればよく、低温冷却空気を用いる場合は、回転ドラム11の出口側から入口側に向けて低温冷却空気を流通させるようにすればよく、ドライアイスを用いる場合は、原料に混合して原料投入シュート31から投入したり、別に設けたドライアイス投入シュートから原料投入口16へ投入したりすることができる。なお、低温液化ガスやドライアイスから気化したガスは、入口側排気ダクト27及び出口側排気ダクト29から安全に排気することができる。
原料投入シュート31から前記原料投入口16に投入された原料は、冷却筒18の回転に伴って原料投入口16から各処理室14内に適量ずつが分配され、前述のように各処理室14内でスパイラル状の運動をしながら冷却材によって冷却され、製品搬出口17から製品取り出しシュート32を通り、製品として取り出される。
冷却中の原料は、処理室14の回転(公転)に伴い、前述のように、処理室14を区画する回転筒12の内面、中心筒13の外面及び前後の仕切板15の表面に沿って移動するとともに、各面が交わる隅角部で反転乃至回転する動きが加わり、処理室14の内面全体を効果的に利用して原料をスパイラル状に移動させながら冷却して出口側に搬送するため、従来に比べて原料の運動量が大きくなり、原料が効率よく冷却され、さらには、凍結するまでに移動する距離(以下、凍結距離という。)を伸ばすことができる。
したがって、原料を冷却する際、特に凍結する際の冷却効率を大幅に高めることができ、原料の表面凍結が促進され、均一な冷却処理・凍結処理が可能となる。さらに、冷却効率が高くなることから、従来に比べて処理能力も大きくなり、冷却筒18の長さを短くすることができ、装置の小型化や低価格化を図りながら高性能の冷却装置を提供することができる。
また、表面凍結が促進されるため、表面の水分が多い剥きえび、桜えび、しらす等を原料とする場合でも、処理室14の各面への原料の付着を防止することができ、このような水分の多い原料でもバラ凍結を容易かつ確実に行うことができる。さらに、原料が滑らかで穏やかなスパイラル状の運動をしながら冷却されるため、練りとこねによって餅状になることはなく、品質が劣化することもない。
また、冷却筒18の回転数は、原料の種類、冷却筒18の大きさや処理室14の区画数等の条件に応じて任意に設定することができるが、一般に、冷却筒18の回転数を遅くすると、各処理室14内における原料の滞留時間が長くなるため、凍結能力を高めることができ、回転数を速くすると、各処理室14の内面への原料の付着を防止し、バラ状に冷却、凍結することが容易となる。したがって、回転数制御機構36を設けて冷却筒18の回転数を調整可能としておくことにより、各種原料の冷却処理、凍結処理に対応することができる。
さらに、回転ドラム11、回転筒12、仕切板15を備えた中心筒13を容易に着脱できる構造の取付手段でそれぞれ固定しておくことにより、処理後にこれらを分解して個別に清掃することが可能となり、各部の清掃作業を容易かつ確実に行うことができる。
なお、前記処理室14の内面を、前記原料投入口16側から前記製品搬出口17側に向かって拡開するテーパ面とする手段として、本形態例では、回転筒12の内面及び中心筒13の外面をそれぞれテーパ面とする手段を採用したが、これらに加えて、仕切板15の原料投入口16側を厚く、製品搬出口17側を薄くしたウエッジ状に形成し、仕切板15の一面又は両面をテーパ面とすることもできる。また、回転筒12、中心筒13及び仕切板15の少なくとも一つの面をテーパ面とすることにより、処理室14の内面を出口側に向かって拡開するテーパ面とすることができる。
図7乃至図9は、前記冷却筒の他の形態例を示す断面図である。まず、図7に示す冷却筒18aでは、中心筒13を断面正六角形状に形成するとともに、6箇所の各頂点に径方向の6枚の仕切板15の内端縁をそれぞれ接続することにより、回転筒12の内面と中心筒13の外面との間に形成される環状の空間を周方向の6個の処理室14に区画している。
また、図8に示す冷却筒18bでは、中心筒13を断面正方形状に形成するとともに、4箇所の各頂点に径方向の4枚の仕切板15の内端縁をそれぞれ接続することにより、回転筒12の内面と中心筒13の外面との間に形成される環状の空間を周方向の4個の処理室14に区画している。さらに、図9に示す冷却筒18cでは、中心筒13を断面円形状に形成するとともに、中心筒13の外周に等間隔(90度間隔)で径方向の4枚の仕切板15の内端縁をそれぞれ接続することにより、図8の場合と同様に、回転筒12の内面と中心筒13の外面との間に形成される環状の空間を周方向の4個の処理室14に区画している。
このように、中心筒13の形状、仕切板15の枚数は、任意に選択することができ、回転筒12が同程度の大きさの場合は、仕切板15の枚数を多くするほどサイズの小さな処理室14を多く形成することができる。同程度の大きさの原料を処理する場合、比較的小さな処理室14を比較的多く形成することによってスパイラル状の運動が滑らかになり、原料の細分化(バラ化)や処理量の増大が図れる。一方、比較的大きな処理室14を比較的少なく形成することによって処理室14内での原料の凍結距離を長くすることができ、凍結能力が増大するとともに、均一な処理が可能となる。したがって、原料の性状に応じて仕切板15の枚数、すなわち処理室14の区画数を適宜設定することにより、最適な状態で原料の冷却処理、凍結処理、バラ化を行うことができる。
また、中心筒13の外面形状は、前述のように、前記形態例や図7、図8に示すような平面状、図9に示すような曲面状のいずれでもよく、原料の特性や冷却筒18の回転数等によっても異なるが、一般的に、曲面状よりも平面状の方が滑らかなスパイラル状の運動を得やすく、凍結距離を伸ばしやすい点で好ましい。また、断面正六角形状の中心筒13の6個の頂点の一つおきに3枚の仕切板15を設けるような形態も可能であり、回転筒12の断面形状も、中心筒13と同様の多角形構造とすることが可能である。
図10は、本発明の回転式冷却装置の第2形態例を示す要部の断面正面図である。本形態例に示す回転式冷却装置は、一つの回転ドラム11の内部に、前記同様に形成した2個の冷却筒51,61を、製品入口側から製品出口側に向かって直列に配列した多段式の回転式冷却装置である。
製品入口側に配置された前段側冷却筒51の製品搬出口52には、該製品搬出口52から搬出される一次冷却品を、製品出口側に配置された後段側冷却筒61の製品原料投入口62に投入するためのガイド部材71が設けられている。このガイド部材71は、前段側冷却筒51の中心筒53の出口部外径より大きな内径を有し、後段側冷却筒61の製品原料投入口62の内径より小さな外径を有する筒状部72と、該筒状部72の製品入口側端部と前段側冷却筒51の回転筒54の出口端とを接続するフランジ部73とを有している。また、前段側冷却筒51の中心筒53の出口側には、回転筒54の出口端から前記筒状部72内に突出する突出部53aが設けられている。
原料は、まず、前段側冷却筒51内に投入され、該前段側冷却筒51の回転筒54、中心筒53及び仕切板55によって区画された各処理室内で冷却材によって一次冷却された後、中心筒53の突出部53aと前記ガイド部材71とによって製品搬出口52から後段側冷却筒61の製品原料投入口62にガイドされ、後段側冷却筒61の回転筒63、中心筒64及び仕切板65によって区画された各処理室内で冷却材によって二次冷却され、冷却筒61の製品搬出口66から搬出される。
このようにして前段側冷却筒51及び後段側冷却筒61の両者によって多段冷却する場合、特に、多段冷却によって原料を凍結させる場合は、前段側冷却筒51及び後段側冷却筒61におけるそれぞれの処理室の区画数やテーパ面の角度を処理状態に応じて適切に設定することにより、原料の凍結効率を更に向上させることができる。例えば、前段側冷却筒51における回転筒54の内面のテーパを、後段側冷却筒61における回転筒63の内面のテーパより大きく設定することにより、前段側冷却筒51では、原料の移動が促進されて表面凍結が進む結果、容易にバラ化することができ、後段側冷却筒61では、原料の滞留時間を長くして均一で確実な凍結処理を行うことができる。すなわち、前段、後段の各冷却筒51,61で機能を分担し、入口側に配置する前段側冷却筒51を冷却用及び表面凍結用に利用し、出口側に配置する後段側冷却筒61を凍結用に利用することにより、原料の凍結処理効率を大幅に向上させることができる。
また、両冷却筒51,61における処理室の区画数を最適化することによっても処理効率を向上させることができる。例えば、前段側冷却筒51には、6枚の仕切板55を用いて比較的小さな処理室を6個形成し、後段側冷却筒61には、4枚の仕切板65を用いて比較的大きな処理室を4個形成することにより、前段側冷却筒51では処理室が多いので原料の分散効果が高くなり、表面凍結を促進させてバラ状に分散させた状態にすることができ、後段側冷却筒61では、処理室が大きいので移動量が多くなり、均一で確実な凍結処理を行うことができる。
さらに、前段側冷却筒51の製品搬出口52にガイド部材71を設けているので、該ガイド部材71のフランジ部73によって一次冷却品が製品搬出口52からこぼれ落ちることを防止することができる。加えて、ガイド部材71の筒状部72と、該筒状部72の内部に突出させた中心筒53の突出部53aとにより、一次冷却品を前段側冷却筒51から後段側冷却筒61の製品原料投入口62に確実にガイドして出口側に向かって移送することができる。
また、本形態例では、一つの回転ドラム11の内部に複数の冷却筒51,61を設置し、両冷却筒51,61を同じ回転数で回転させているが、回転ドラム11を前後に分割形成し、前段側、後段側の回転ドラムの回転数を個別に制御できるように形成することにより、例えば、前段側回転ドラムの回転数を速くすることにより、原料を分散させるとともに壁面への付着を防止することができ、後段側回転ドラムの回転数を遅くすることにより、原料の滞留時間が長くして原料内部までの確実な冷却、凍結を行うことができる。このように、冷却筒51,61を完全に分割した場合は、前段側冷却筒51を後段側冷却筒61より高い位置に設け、前段側冷却筒51の製品搬出口52に前記形態例と同様の製品取り出しシュートを、後段側冷却筒61の製品原料投入口62に前記形態例と同様の原料投入シュートをそれぞれ設け、両シュートを上下方向に接続することで前記同様のガイド部材とすることができる。
実施例1
第1形態例で示したように、処理室14を3区画設けた構造の回転式冷却装置を使用して凍結処理を行った。回転筒12は、長さが650mm、原料投入口16の内径が200mm、製品搬出口17の内径が230mmであり、中心筒13は、長さが510mm、原料投入口16側の外接円の直径が800mm、製品搬出口17側の外接円の直径が60mmであり、いずれも網板により形成したテーパ筒となっている。冷却筒18の回転数は毎分13回転とし、冷却材には液体窒素を使用し、温度は−60℃に設定した。
原料投入シュート31から「しらす」を毎分500gで投入した。投入から搬出までの処理時間は約3分であり、製品搬出口17からは、均一にバラ凍結された冷凍しらすを得ることができた。練りとこねによる品質劣化は認められず、凍結状態も非常に良好であった。1時間連続運転後にしらすの投入を停止し、冷却筒18の内部状態を観察したが、処理室内面への凍結物の付着はほとんど見られなかった。
同じ条件で、前記しらすに代えて桜えびを毎分500gで投入したところ、約2.5分の処理時間で均一にバラ凍結された冷凍桜えびを長時間連続して得ることができた。さらに、同じ条件で剥きえびを毎分500gで投入したところ、約3分の処理時間で均一にバラ凍結された冷凍剥きえびを長時間連続して得ることができた。
比較例1
実施例1において、冷却筒18の中心筒13及び仕切板15を取り外し、回転筒12のみを用いて同じ条件で凍結処理を行った。その結果、しらすに関しては、投入量を毎分100gに減らすことにより、約9分の処理時間でバラ凍結された冷凍しらすを得ることができたが、処理開始から10分程度経過した頃から回転筒内面にしらすが少しずつ付着し始め、次第に十分なバラ化を行うことができなくなり、長時間の連続運転は不可能であった。また、桜えび及び剥きえびについては、処理開始直後から回転筒内面への付着が発生し、バラ凍結を行うことができなかった。
実施例2
実施例1と同じ回転式冷却装置を使用し、冷却筒18の回転数を毎分15回転、温度を−80℃に設定した。しらすを毎分500gで投入したところ、約2分の処理時間で均一にバラ凍結された冷凍しらすを得ることができた。また、処理室内面への凍結物の付着はほとんど見られなかった。同様に、桜えびを毎分500gで投入したところ、約1分の処理時間で均一にバラ凍結された冷凍桜えびを得ることができた。さらに、剥きえびを毎分500gで投入したところ、約1.5分の処理時間で均一にバラ凍結された冷凍剥きえびを得ることができた。
実施例3
実施例1と同じ回転式冷却装置を使用し、冷却筒18の回転数を毎分17回転、温度を−110℃に設定した。しらすを毎分500gで投入したところ、約1分の処理時間で均一にバラ凍結された冷凍しらすを得ることができた。また、処理室内面への凍結物の付着はほとんど見られなかった。同様に、桜えびを毎分500gで投入したところ、約1分の処理時間で均一にバラ凍結された冷凍桜えびを得ることができた。さらに、剥きえびを毎分500gで投入したところ、約1分の処理時間で均一にバラ凍結された冷凍剥きえびを得ることができた。
比較例2
冷却筒18に代えて、長さ650mm、内径220mmの円筒型(直胴型)の筒を使用して実施例1〜3と同様の条件で凍結処理を行った。なお、筒の出口側を15mm下げることにより、筒下面の傾斜を冷却筒18の下面の傾斜と同一になるようにした。回転数を毎分13回転、温度を−60℃に設定してしらすを毎分500gで投入したが、十分なバラ凍結を行うことはできず、筒内面への凍結物の付着も発生した。
比較例3
比較例2における筒を、長さ2000mmのものに代え、筒の出口側に向かって5度の下り勾配とし、回転数を毎分13回転、温度を−60℃に設定して凍結処理を行った。しらすを毎分500gで投入したところ、約9分の処理時間でバラ凍結された冷凍しらすを得ることができた。しかし、得られた冷凍しらすは、その一部に、壁面とのこすれやしらす同士の接触によると思われる折れ及び欠損が発生していた。また、筒内面への凍結物の付着により、数十分程度で凍結処理を中止せざるを得なかった。
比較例4
比較例3の筒の内面に前記特許文献2に記載されたようなブレードを45度間隔で8枚設けた筒(回転翼は無し。)を使用して凍結処理を行った。しらすの場合にはある程度の凍結処理は可能であったが、折れや欠損だけでなく、ブレードから落下する際の衝撃による練りやこねに起因すると思われる品質劣化が見られた。また、比較例3と同様に、筒内面やブレードに凍結物が大量に付着したため、短時間で凍結処理を中止した。特に、表面水分の多い桜えびやむきえびの場合には、回転数や温度を調整しても、運転開始直後から筒内面やブレードにこれらが凍結して付着し、バラ凍結を行うことができなかった。
なお、本発明の回転式冷却装置は、前述のように、表面の水分が多い剥きえび、桜えび、しらす等を冷却して凍結する処理に最適であるが、サバやアジ等の比較的大きな原料においても、処理室の大きさや冷却筒の回転数を適宜設定し、各処理室内にサバやアジ等の適当量を投入することで一匹単位で凍結させることができ、このような単体凍結にも用いることができる。また、凍結処理に限らず、例えば、炊飯後の高温の飯や釜揚げ後の高温のしらす、桜えび等を原料として適当な温度の冷却材を使用することにより、飯やしらす等を20〜40℃程度に冷却するような冷却処理にも用いることができる。さらに、冷却筒への原料の投入は、原料の種類に応じて適当な手段を用いることができ、例えば、コンベヤ等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転式冷却装置の第1形態例を示す概略正面図である。
【図2】同じく概略断面側面図である。
【図3】同じく要部の断面正面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】処理室内の原料の移動状態を説明する断面側面図である。
【図6】処理室内の原料の移動状態を説明する斜視図である。
【図7】6個の処理室を設けた冷却筒の一形態例を示す断面図である。
【図8】4個の処理室を設けた冷却筒の一形態例を示す断面図である。
【図9】4個の処理室を設けた冷却筒の他の形態例を示す断面図である。
【図10】本発明の回転式冷却装置の第2形態例を示す概略正面図である。
【図11】従来の回転式冷却凍結装置の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
11…回転ドラム、12…回転筒、13…中心筒、14…処理室、15…仕切板、16…原料投入口、17…製品搬出口、18…冷却筒、19…断熱材、21…架台、22…支持部材、23…スプロケット部、24…駆動用モータ、25…駆動用チェーン、26…入口用排気ブロア、27…入口側排気ダクト、28…出口用排気ブロア、29…出口側排気ダクト、31…原料投入シュート、32…製品取り出しシュート、33…庫内温度表示器、34…庫内温度調節器、35…冷却材供給制御器、36…回転数制御機構、37…回転動力盤、38…取付金具、51…前段側冷却筒、52…製品搬出口、53…中心筒、53a…突出部、54…回転筒、55…仕切板、61…後段側冷却筒、62…製品原料投入口、63…回転筒、64…中心筒、65…仕切板、66…製品搬出口、71…ガイド部材、72…筒状部、73…フランジ部
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10
【図11】
図11
ページtop へ