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機械器具
 
【発明の名称】可変容量型油圧ポンプ機構
【特許権者】
【識別番号】508209646
【氏名又は名称】後藤 昭三
【住所又は居所】大分県大分市大字羽屋323番地の3TKパレス103号
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100114661
【氏名又は名称】内野 美洋
【発明者】
【氏名】後藤 昭三
【住所又は居所】大分県大分市大字羽屋323番地の3TKパレス103号
【要約】
【課題】
圧送する油量の可変範囲を大きくできる可変容量型油圧ポンプ機構を提供すること。
【解決手段】
本発明では、圧送する作動油の流量を変更可能とした可変容量型油圧ポンプ機構において、作動油を圧送する第1及び第2の羽根車を噛合するとともに、これら第1及び第2の羽根車をそれぞれ第1及び第2のケーシングで回転自在に支持し、第1のケーシングに第2の羽根車を回転可能に挿通する一方、第2のケーシングに第1の羽根車を回転可能に挿通することで、第1及び第2のケーシングを第1及び第2の羽根車の軸線に沿って相対的に移動可能として、第1及び第2のケーシングによって第1及び第2の羽根車の噛合部分を囲むことで形成した作動油圧送空間の容量を可変とし、この作動油圧送空間に作動油の吸入口及び排出口を形成することにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧送する作動油の流量を変更可能とした可変容量型油圧ポンプ機構において、
作動油を圧送する第1及び第2の羽根車を噛合するとともに、これら第1及び第2の羽根車をそれぞれ前後に伸延する第1及び第2のケーシングで回転自在に支持し、第1のケーシングの後壁に第2の羽根車を回転可能かつ水密状に挿通する一方、第2のケーシングの前壁に第1の羽根車を回転可能かつ水密状に挿通することで、第1及び第2のケーシングを第1及び第2の羽根車の軸線に沿って相対的に移動可能として、第1のケーシングの後壁及び第2のケーシングの前壁によって第1及び第2の羽根車の噛合部分を囲むことで形成した作動油圧送空間の容量を可変とし、この作動油圧送空間に作動油の吸入口及び排出口を形成し、作動油圧送空間に第2の羽根車と噛合する第3の羽根車を設け、第3の羽根車は、第1のケーシングに形成した凹部に翼体を突出させた状態で収容し、突出させた第3の羽根車の翼体に第2のケーシングの内側が当接した状態で作動油圧送空間の容量が最小値となるように構成したことを特徴とする可変容量型油圧ポンプ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、圧送する作動油の流量を変更可能とした可変容量型油圧ポンプ機構に関するものである。
【背景技術】
従来より、各種の油圧機構や油圧モータなどには、作動油を圧送して供給する油圧ポンプが用いられており、この油圧ポンプには、圧送する作動油の流量を変更できるように構成した可変容量型油圧ポンプ機構が設けられている。
そして、従来の可変容量型油圧ポンプ機構としては、作動油を圧送するピストンのストロークを斜板で変更することによって、圧送する作動油の流量を変更するように構成したものが多様されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】
特開2005−320912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の斜板を用いた可変容量型油圧ポンプ機構にあっては、構造が複雑で組立て作業やメンテナンス作業が煩雑となり、組立てやメンテナンスに多大な労力や時間や費用を要してしまうおそれがあった。
また、上記従来の斜板を用いた可変容量型油圧ポンプ機構にあっては、作動油を圧送するピストンのストロークを斜板で変更する構成であったために、変更できる油量の範囲が狭く、油圧回路のダイナミックレンジ(調整幅)を大きくすることができないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、圧送する作動油の流量を変更可能とした可変容量型油圧ポンプ機構において、作動油を圧送する第1及び第2の羽根車を噛合するとともに、これら第1及び第2の羽根車をそれぞれ前後に伸延する第1及び第2のケーシングで回転自在に支持し、第1のケーシングの後壁に第2の羽根車を回転可能かつ水密状に挿通する一方、第2のケーシングの前壁に第1の羽根車を回転可能かつ水密状に挿通することで、第1及び第2のケーシングを第1及び第2の羽根車の軸線に沿って相対的に移動可能として、第1のケーシングの後壁及び第2のケーシングの前壁によって第1及び第2の羽根車の噛合部分を囲むことで形成した作動油圧送空間の容量を可変とし、この作動油圧送空間に作動油の吸入口及び排出口を形成し、作動油圧送空間に第2の羽根車と噛合する第3の羽根車を設け、第3の羽根車は、第1のケーシングに形成した凹部に翼体を突出させた状態で収容し、突出させた第3の羽根車の翼体に第2のケーシングの内側が当接した状態で作動油圧送空間の容量が最小値となるように構成した。
【発明の効果】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
すなわち、本発明では、圧送する作動油の流量を変更可能とした可変容量型油圧ポンプ機構において、作動油を圧送する第1及び第2の羽根車を噛合するとともに、これら第1及び第2の羽根車をそれぞれ第1及び第2のケーシングで回転自在に支持し、第1のケーシングに第2の羽根車を回転可能に挿通する一方、第2のケーシングに第1の羽根車を回転可能に挿通することで、第1及び第2のケーシングを第1及び第2の羽根車の軸線に沿って相対的に移動可能として、第1及び第2のケーシングによって第1及び第2の羽根車の噛合部分を囲むことで形成した作動油圧送空間の容量を可変とし、この作動油圧送空間に作動油の吸入口及び排出口を形成することにしているために、可変容量型油圧ポンプ機構の構造を簡素化することができ、可変容量型油圧ポンプ機構の組立てやメンテナンスに要する労力や時間や費用を低減することができるとともに、変更できる油量の範囲を大きくすることができ、可変容量型油圧ポンプ機構を組込んだ油圧回路のダイナミックレンジ(調整幅)を大きくすることができる。
特に、作動油圧送空間に第1又は第2の羽根車と噛合する第3の羽根車を設けた場合には、第3の羽根車によって作動油圧送空間の内部で作動油の一部が逆流され撹拌され(フィードバックされ)ることになり、圧送する油量の変化を安定させることができる。
また、第3の羽根車によって第1及び第2のケーシングの可動範囲が制限されて作動油圧送空間の最小容量を規制するようにした場合には、圧送する油量の最小値を所定流量に確保することができて、圧送する作動油の瞬断による誤動作を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明に係る可変容量型油圧ポンプ機構を組込んだ油圧ポンプの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
図1〜図4に示すように、油圧ポンプ1は、基台などに固定した第1ユニット2と、第1ユニット2に対して相対的に移動可能とした第2ユニット3とで構成している。なお、第1ユニット2と第2ユニット3とは相対的に移動可能であればよく、第1ユニット2を固定した場合に限られず、第2ユニット3を固定した場合であってもよく、また、第1及び第2ユニット2,3をともに移動可能とした場合でもよい。
第1ユニット2は、第1のケーシング4に第1の羽根車5を回転自在に支持するとともに、第1のケーシング4に第1の羽根車5と第2の羽根車6を介して噛合する第3の羽根車7を回転自在に支持した構成となっている。
ここで、第1のケーシング4は、前後に伸延する本体壁8の前端上部に前壁9を形成する一方、本体壁8の後端上部に後壁10を形成するとともに、本体壁8の後側下部に第3の羽根車7を収容するための凹部11を形成している。
後壁10には、第2の羽根車6を水密状に挿通させるための貫通孔12を形成しており、第2の羽根車6と同一の断面形状に形成した挿通孔13に第2の羽根車6を挿通させた円板状のシール体14を後壁10の貫通孔12に回転自在に取付けている。これにより、第1のケーシング4の後壁10に第2の羽根車6を回転可能に挿通させている。
第1の羽根車5は、第1のケーシング4に前後方向に向けて伸延させた状態で回転自在に軸支されており、前壁9を貫通する駆動軸15に円筒状の本体16を取付け、本体16の外周面に8枚の翼体17を半径方向に向けて放射状に形成している。
第3の羽根車7は、第1のケーシング4に前後方向に向けて伸延させた状態で回転自在に軸支されており、凹部11に軸支された回転軸18に円筒状の本体19を取付け、本体19の外周面に8枚の翼体20を半径方向に向けて放射状に形成している。この第3の羽根車7は、凹部11よりも上方に翼体20を突出させている。
また、第2ユニット3は、第2のケーシング21に第2の羽根車6を回転自在に支持した構成となっている。
ここで、第2のケーシング21は、前後に伸延する本体壁22の前端下部に前壁23を形成する一方、本体壁22の後端下部に後壁24を形成している。
前壁23には、第1の羽根車5を水密状に挿通させるための貫通孔27を形成しており、第1の羽根車5と同一の断面形状に形成した挿通孔28に第1の羽根車5を挿通させた円板状のシール体29を前壁23の貫通孔27に回転自在に取付けている。これにより、第2のケーシング21の前壁23に第1の羽根車5を回転可能に挿通させている。
第2の羽根車6は、第2のケーシング21に前後方向に向けて伸延させた状態で回転自在に軸支されており、前後壁23,24に軸支された従動軸30に円筒状の本体31を取付け、本体31の外周面に8枚の翼体32を半径方向に向けて放射状に形成している。
そして、上記油圧ポンプ1は、第1の羽根車5と第2の羽根車6とを噛合させており、第1及び第2の羽根車5,6の噛合部分は第1及び第2のケーシング4,21で囲まれ、内部に作動油圧送空間33を形成している。この作動油圧送空間33には、第1のケーシング4に形成した作動油の吸入口25と排出口26とを連通連結している。
これにより、上記油圧ポンプ1は、駆動軸15を駆動することによって第1の羽根車5を回転させると、第1及び第2の羽根車5,6の作用で吸入口25から供給される作動油を排出口26へと圧送することができる。
しかも、上記油圧ポンプ1は、第1ユニット2の後壁10の上端部が第2ユニット3の本体壁22の下部に沿って移動するとともに、第2ユニット3の前壁23の下端部が第1ユニット2の本体壁8の上部に沿って移動するようになっており、第1及び第2ユニット2,3を第1及び第2の羽根車5,6の軸線方向(伸延方向)に沿って相対的に移動させることで、第1及び第2の羽根車5,6(第2及び第3の羽根車6,7)の噛合部分を第1及び第2のケーシング4,21で囲むことによって形成される作動油圧送空間33の容量を変更することができるようになっている。
作動油圧送空間33の容量は、第1のケーシング4の後壁10と第2のケーシング21の前壁23との間隔で決定される。そして、第1のケーシング4の後壁10と第2のケーシング21の前壁23とを近接させていくと、第2のケーシング21の前壁23の内側が第3の羽根車7の翼体20に当接した状態となり、この状態で作動油圧送空間33の容量が最小値となり、一方、第1のケーシング4の後壁10と第2のケーシング21の前壁23とを離反させていくと、第2のケーシング21の前壁23の外側が第1のケーシング4の前壁9に当接した状態となり、この状態で作動油圧送空間33の容量の最大値となる。
ここで、作動油の圧送時には、第1及び第2の羽根車5,6の作用で作動油圧送空間33の吸入口側から排出口側へと圧送された作動油の一部が第3の羽根車7によって作動油圧送空間33の内部において逆流されるとともに撹拌されることになる。このように、作動油の一部を作動油圧送空間33の内部で逆流させることで、作動油圧送空間33の容量変更時にフィードバック制御をかけることとなり、圧送する作動油の油量を安定して変化させることができる。また、作動油の一部を作動油圧送空間33の内部で撹拌させることで、作動油圧送空間33の内部全体にわたって均等に作動油を充填することでき、圧送する作動油に脈流が発生するのを防止でき、これによっても圧送する作動油の油量を安定して変化させることができる。
以上に説明したように、上記油圧ポンプ1は、圧送する作動油の流量を変更可能とした可変容量型油圧ポンプ機構を内蔵しており、その可変容量型油圧ポンプ機構は、作動油を圧送する第1及び第2の羽根車5,6を噛合するとともに、これら第1及び第2の羽根車5,6をそれぞれ第1及び第2のケーシング4,21で回転自在に支持し、第1のケーシング4に第2の羽根車6を回転可能に挿通する一方、第2のケーシング21に第1の羽根車5を回転可能に挿通することで、第1及び第2のケーシング4,21を第1及び第2の羽根車5,6の軸線に沿って相対的に移動可能として、第1及び第2のケーシング4,21によって第1及び第2の羽根車5,6の噛合部分を囲むことで形成した作動油圧送空間33の容量を可変とし、この作動油圧送空間33に作動油の吸入口25及び排出口26を形成している。
そのため、上記構成の可変容量型油圧ポンプ機構では、構造が簡素化されることになり、可変容量型油圧ポンプ機構の組立てやメンテナンスに要する労力や時間や費用を低減することができるとともに、変更できる油量の範囲を大きくすることができ、可変容量型油圧ポンプ機構を組込んだ油圧回路のダイナミックレンジ(調整幅)を大きくすることができる。
また、上記可変容量型油圧ポンプ機構は、作動油圧送空間33に第1又は第2の羽根車5,6と噛合する第3の羽根車7を設けた構成となっている。
そのため、上記構成の可変容量型油圧ポンプ機構では、第3の羽根車7によって作動油圧送空間33の内部で作動油の一部が逆流され撹拌され(フィードバックされ)ることになり、圧送する油量の変化を安定させることができる。
また、上記可変容量型油圧ポンプ機構は、第3の羽根車7によって第1及び第2のケーシング4,21の可動範囲が制限されて作動油圧送空間33の最小容量を規制するように構成している。
そのため、上記構成の可変容量型油圧ポンプ機構では、圧送する油量の最小値を所定流量に確保することができて、圧送する作動油の瞬断による誤動作を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】油圧ポンプの斜視図。
【図2】同透視図。
【図3】同側面断面図。
【図4】同正面断面図。
【符号の説明】
1 油圧ポンプ 2 第1ユニット
3 第2ユニット 4 第1のケーシング
5 第1の羽根車 6 第2の羽根車
7 第3の羽根車 8 本体壁
9 前壁 10 後壁
11 凹部 12 貫通孔
13 挿通孔 14 シール体
15 駆動軸 16 本体
17 翼体 18 回転軸
19 本体 20 翼体
21 第2のケーシング 22 本体壁
23 前壁 24 後壁
25 吸入口 26 排出口
27 貫通孔 28 挿通孔
29 シール体 30 従動軸
31 本体 32 翼体
33 作動油圧送空間
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
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