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運輸
 
【発明の名称】階段昇降補助機構付き台車
【出願人】
【識別番号】506011227
【氏名又は名称】加藤 卓
【住所又は居所】大阪市北区池田町14番18号
【発明者】
【氏名】加藤 卓
【住所又は居所】大阪市北区池田町14番18号
【氏名】野方 誠
【住所又は居所】滋賀県大津市青山5丁目6番5号
【要約】
【課題】
比較的小さな力で階段を昇降することができ、また階段昇降中の安全性を高め、操作ミスによる事故においても荷台への衝撃を抑える移動台車を提供する。
【解決手段】
前輪と後輪の間の距離が伸縮自在となる機構と、その伸縮をハンドル付近で操作し、前輪と後輪の間を任意の距離で固定できる機構を備えたことを特徴とする台車である。
また上記の台車は、階段降下時に階段下側に位置する方の脚部より階段降下方向に、負荷を受けることによって緩やかに収縮する補助脚を備えたことも特徴とする。
さらに上記の台車は、少なくとも補助脚に台車の重量が負荷されている間、台車の後退を抑制する補助輪を補助脚の下端に備えたことも特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段昇降時に階段上側に位置する脚部が、階段上側に位置する脚部の下端と階段下側に位置する脚部の下端との距離を任意の長さに調整できる方向に伸縮でき、その操作をハンドル付近で行える手段を備えたことを特徴とする台車。
【請求項2】
前記階段昇降時に階段上側に位置する脚部が、伸長動作をロックおよびロック解除でき、伸長動作をロックした状態であっても収縮動作を行える手段もしくは収縮動作をロックおよびロック解除でき、収縮動作をロックした状態であっても伸長動作を行える手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の台車。
【請求項3】
階段昇降時に階段下側に位置する脚部の後方に急激な収縮を抑制する伸縮可能な補助脚と、前記補助脚の下端部に補助輪を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の台車。
【請求項4】
前記補助輪に、運搬車が後退する方向へ補助輪が回転するのを抑制し、運搬車が前進する方向へ補助輪が回転するのは抑制しない逆転抑制手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、段差や階段の昇降を行うことのできる運搬車に関するものである。
【背景技術】
従来のベビーカーやハンドカートなどの運搬車は階段を走行することができないため、建物などの上下階移動の際には運搬車を持ち上げて階段を昇降するか、エレベータなどを使用するしか方法がなかった。
しかし、乳幼児を乗せたベビーカーの持ち上げ行為は、乳幼児の転落事故を引き起こす危険性があり、また大きな重量の荷物を積載した状態でのハンドカートの持ち上げは、利用者にとって大きな負担となり、腰などを痛める恐れがある。
さらに、エレベータがない施設がある上に、エレベータが設置されている施設でも定期点検などによりエレベータが使用できないことも多々ある。
そこで、階段昇降が行えるようにしたものとして、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に記載された段差運行手押車は、回転可能な十字状の支持桿の各先端に車輪が設けられた手押車で、伸縮自在な前記支持桿の長さを階段の寸法に合わせて調節し、階段昇降時に前記段差運行手押車を引き上げ、引き下ろしをすることで前記十字状の支持桿が回転して階段を昇降するものである。
他の例としては、特許文献2に開示されたものがある。この特許文献2に記載された階段昇降装置は、クローラを階段の角に接触させて階段上を昇降するものである。また、階段昇降時に荷物の重心位置を移動させることにより、階段昇降装置の段からの引き上げ、引き下ろし作業において、利用者への負担を軽減している。
さらに、特許文献3に開示されたものがある。この特許文献3に記載された移動荷車は、階段昇降時に階段下側に位置する伸縮自在な脚部の長さを階段の寸法に合わせて調節し、前脚、後脚を交互に持ち上げて階段上の段差を一つずつ上げ下げすることにより階段を昇降するものである。前脚、後脚の持ち上げ作業は、てこの原理を用いているため、利用者への負担は小さい。また、階段昇降時に利用者が階段の下方から移動荷車を操作できる性質上、不慮の事故などにより利用者が移動荷車から手を放した場合でも、利用者が移動荷車を体で受け止めることにより、移動荷車の階段からの転落を防止できる。
【特許文献1】
特開2002−019616号公報
【特許文献2】
特開2004−122898号公報
【特許文献3】
特開2004−268879号公報
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に記載の段差運行手押車は、支持桿の長さの調整において計8本もの支持桿の長さを全て変更しなければならず、また階段の寸法が途中で変わると昇降が困難になるという問題があった。さらに、大きな重量の荷物を搭載したときの階段降下において、一段後段するときにハンドル部に掛かる重量が増大し、段差運行手押車を支持できなくなった利用者が段差運行手押車に引っ張られ、階段から転落する危険性があった。
上記特許文献2に記載の階段昇降装置も、上記特許文献1ほどではないが、大きな重量の荷物を搭載したときの階段降下において、一段後段するときにハンドル部に掛かる重量が増大し、階段昇降装置を支持できなくなった利用者が階段昇降装置に引っ張られ、階段から転落する危険性があった。
また、前記特許文献1記載の段差運行手押車ないし前記特許文献2記載の階段昇降装置は、階段昇降時に利用者が階段上方から引き上げ、引き下げて移動する性質上、不慮の事故などにより利用者が段差運行手押車ないし階段昇降装置から手を放した場合、段差運行手押車ないし階段昇降装置の階段からの転落を防止する術がないという問題があった。
上記特許文献3記載の移動荷車は、階段昇降時に階段下側に位置する脚部が次の段に届かない場合に前記階段下側に位置する脚部を階段1段分もしくは2段分以上延長させるため、必要となる脚部の伸縮範囲が大きくなるという問題があった。また、階段降下において、前記階段下側に位置する脚部を1段後段させる作業を利用者が慎重に行わなければ、移動荷車に搭載している乳幼児や荷物に大きな衝撃を与え、乳幼児の脳損傷や荷崩れを引き起こす原因となる問題があった。
本発明は、階段昇降時の利用者への負担の軽減や搭載される乳幼児や荷物の安全性を高め、また歩行補助車として利用する場合においては、利用者の階段昇降の補助を行うことができる運搬車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の階段昇降補助機構付き台車は、階段昇降時に階段上側に位置する脚部が、階段上側に位置する脚部の下端と階段下側に位置する脚部の下端との距離を任意の長さに調整できる方向に伸縮でき、その操作をハンドル付近で行える手段を備えたものとした。
請求項2記載の階段昇降補助機構付き台車は、請求項1記載の発明において、前記階段上側に位置する脚部が、伸長動作をロックおよびロック解除でき、収縮動作はロックしない手段もしくは収縮動作をロックおよびロック解除でき、伸長動作はロックしない手段を設けたものとした。
請求項3記載の階段昇降補助機構付き台車は、請求項1ないし2のいずれか記載の発明において、階段昇降時に階段下側に位置する脚部の後方に急激な収縮を抑制する伸縮可能な補助脚と、前記補助脚の下端部に補助輪を設けた。
請求項4記載の階段昇降補助機構付き台車は、請求項1ないし3のいずれか記載の発明において、前記補助輪に、運搬車が後退する方向へ補助輪が回転するのを抑制し、運搬車が前進する方向へ補助輪が回転するのは抑制しない逆転抑制手段を設けた。
【発明の効果】
請求項1記載の階段昇降補助機構付き台車は、階段昇降時に階段上側に位置する脚部が、階段上側に位置する脚部の下端と階段下側に位置する脚部の下端との距離を任意の長さに調整できる方向に伸縮でき、その操作をハンドル付近で行える手段を備えた台車であって、階段昇降時に階段下側に位置する脚部の下端が蹴上げ板に接触しても階段上側に位置する脚部の下端が最寄りの踏み面に接地できない場合に、前記階段上側に位置する脚部をその下端が最寄りの踏み面に接地できるように調節することができる。またこのとき必要となる伸縮範囲は、水平方向の距離にして前記階段上側に位置する脚部の下端に取り付けられる車輪の半径程度なので、通常の施設に設置される階段で利用する場合などで前記特許文献3記載の移動荷車の伸縮自在な脚部より小さい伸縮範囲でも階段昇降が可能となる。
請求項2記載の階段昇降補助機構付き台車は、請求項1記載の発明において、伸長動作をロックおよびロック解除でき、収縮動作はロックしない手段もしくは収縮動作をロックおよびロック解除でき、伸長動作はロックしない手段を備えたことにより、各段が同じ寸法の階段において、前記階段上側に位置する脚部の長さを固定することによって各段での前記階段上側に位置する脚部の長さの調節を行う手間を省くことができる。また、前記階段上側に位置する脚部を任意の長さで固定する行為を、単純に伸縮動作をロックする手段を備えたときよりも行いやすくなる。
請求項3記載の階段昇降補助機構付き台車は、請求項1または2記載の発明において、階段昇降時に階段下側に位置する脚部の後方に急激な収縮を抑制する伸縮可能な補助脚と、前記補助脚の下端部に補助輪を設けたことにより、降段中の不慮の事故によって利用者が台車から手を放してしまうことによる前記階段下側に位置する脚部の下端の落下による前記台車の荷台への衝撃を軽減することができる。また、通常の降段作業においても、前記階段下側に位置する脚部の下端を下段に降段させる行程で、前記補助脚に前記台車の重量の一部を支えさせることで、利用者が支えるべき前記台車の重量を削減でき、さらに前記補助脚の緩やかな収縮により荷台への衝撃を抑えながら前記階段下側に位置する脚部の下端を降段させることができる。
請求項4記載の階段昇降補助機構付き台車は、請求項1ないし3のいずれか記載の発明において、前記補助輪に、運搬車が後退する方向へ補助輪が回転するのを抑制し、運搬車が前進する方向へ補助輪が回転するのは抑制しない逆転抑制手段を設けたことにより、降下中の階段上で前記階段下側に位置する脚部の下端が不意に落下しないように階段の角から上段の蹴上げ側に容易に移動させることができ、且つ不慮の事故による前記階段下側に位置する脚部の下端の下段への落下が発生しても、落下時の慣性による後退を抑え、更なる下段への落下を防止する。また、後退動作を完全には止めないので慣性による台車の転倒を防ぎ、前記補助輪を接地させたままでも階段の降下作業が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の階段昇降補助機構付き台車としてのベビーカーの概観図を示す図である。
車体フレームには、前脚部にシリンダチューブ1とシリンダチューブ1の内部をスライド可能に収納されているロッド2が、後脚部に後脚フレーム5がそれぞれ左右一対ずつ設けられている。また、ロッド2の下端部にはキャスタロック4により少なくとも直進方向移動時の状態に固定可能なキャスタ3が、後脚フレーム5の下端には車輪6が取り付けられている。
ベビーカーの上方にはベビーカーを操作するための押棒フレームからなるハンドル7とワイヤ9を介してロッド2を操作するためのレバー8とレバー8を固定するためのスライドスイッチ11が設けられている。
ベビーカーの後方には階段降下時に操作ミスなどによる車輪6側の段からの落下による衝撃を軽減し、また車輪6を降段させる作業を補助する機構があり、排気口15を備えたシリンダチューブ12とシリンダチューブ内をスライド可能に収納されているシリンダピストン13と、シリンダピストン13の下端部の補助輪14で構成されている。
ロッド2は図2(a)に示すように、平地走行時にはシリンダチューブ1内に収納され、図2(b)に示すように、階段昇降時に必要に応じてキャスタ3と車輪6との距離が変更できるようにシリンダチューブ1内をスライドできるように構成されている。
また、ロッド2のスライドはレバー8からの操作およびキャスタ3の階段の蹴上げ板などへの押し込みにより伸縮可能となっている。
前脚部の伸縮機構部、前脚部の伸縮を操作する機構部を示す、図2(b)におけるシリンダチューブ1、ロッド2、レバー8の構造は、特定の機構に限定されるものではなく周知の機構が適用できるが、その構成例を図3および図4に示す。
図3は前脚部の内部構成を示しており、シリンダチューブ1内にロッド2とロッド2に接続されたワイヤ9があり、さらにロッド2をシリンダチューブ1内から押し出すように圧縮バネ16がシリンダチューブ1に内蔵されている。前脚部は、ワイヤ9を引っ張る、若しくはロッド2の下端部を蹴上げ板などに押し付けることによってロッド2をシリンダチューブ1内に収納させることで収縮する。また前脚部は、圧縮バネの抗力によってロッド2をシリンダチューブ1内から押し出すことで伸張する。
図4(a)、(b)はハンドル7付近で前脚部の収縮を操作し、任意の長さで固定する機構を示している。ハンドル部フレーム17の内部は、矢印A’方向に内部を通る軸18が空回りするワンウェイクラッチ19と、ワンウェイクラッチ19の下端部とハンドル部フレーム17との隙間を埋める楔を有するスライドスイッチ11で構成されている。また、軸18とレバー8は固定されており、レバー8の矢印A方向の移動に合わせて軸18も回転する。
図4(a)は前脚部の伸張操作のロック解除状態を示しており、ワンウェイクラッチ19を固定するものがないため、レバー8を矢印A方向に自由に操作でき、レバー8をハンドル部フレーム側に引くことでレバー8下端部に固定されたワイヤ9が引っ張られて前脚部が収縮し、レバーを手から離すことで図3の圧縮バネ16の抗力によりワイヤ9がシリンダチューブ側に引っ張られて前脚部が伸張する。
図4(b)は前脚部の伸張操作のロック状態を示しており、スライドスイッチ11を矢印Bの方向にスライドさせることで、ワンウェイクラッチ19下端部とハンドル部フレーム17との隙間がスライドスイッチ11の楔部分によって埋まり、ワンウェイクラッチ19が固定される。そのため、軸18は矢印A’方向にしか回転できず、図3の圧縮バネ16の抗力による前脚部の伸張動作を阻害するため伸張操作が行えなくなる。逆に軸18はA’方向には回転可能なので前脚部の収縮動作を行うことは可能である。
ピストンロッド13は図2(a)に示すように、平地走行時にはシリンダチューブ12内に収納され、図2(c)に示すように、階段を降段するときに補助輪14が車輪6より一段下段に接地できるようにシリンダチューブ12内をスライド可能に構成されている。
また、ピストンロッド13はダンパーのように少なくともシリンダチューブ12内への収納方向に、摩擦や抵抗が生じるようになっている。
階段の降段作業を補助する機構部は、特定の機構に限定されるものではなく周知の機構が適用できるが、その構成例を図5(a)、(b)に示す。
図5(a)は補助脚の収縮時、(b)は補助脚の伸張時におけるシリンダチューブ12の内部を示した図である。ピストンロッド13の上端部は、ゴム栓20を挟むように、ゴム栓20の下側にシリンダチューブ12の内径より小さくゴム栓20の内径より大きい円状のゴム栓止めと、ゴム栓20の上側にゴム栓20の内径より小さい部分を持つゴム栓止めを持つ構造になっており、ゴム栓20はこの上下のゴム栓止めの間をスライドすることができる。
補助脚の収縮時には、ピストンロッド13が図5(a)の矢印B方向に押し上げられ、ゴム栓20は下側のゴム栓止めに押し付けられる。このときゴム栓20はシリンダチューブ12の内側とピストンロッド13と密着しており、シリンダチューブ上側の気体はピストンロッド13側には逃げられず、シリンダチューブ12の上側にある排気口15から排気されることになる。排気口15からの排気量を調節することで収縮時の補助脚はダンパーのとして機能する。
補助脚の伸張時には、ピストンロッド13が自重により図5(a)の矢印B’方向に降下する。このとき、ゴム栓20がピストンロッド13の上側のゴム栓止めに押し付けられ、ゴム栓止めのゴム栓20の内径より小さい部分にゴム栓20の一部が変形して収まり、シリンダチューブ12下側の気体がゴム栓20の変形により生じた隙間からシリンダチューブ12内に流入する。ゴム栓20の変形により生じる隙間は排気口15と比較すると非常に大きく、シリンダチューブ12内の気圧がすぐに外気と同じになる上、ゴム栓20の変形により、シリンダチューブ12とゴム栓20との接触面積が極めて少なくなるため摩擦が小さくなるので、ピストンロッド13は自重のみでも素早く伸張する。
次に、上記のように構成されたベビーカーを用いて階段を昇る方法について、図2(a)、図4(a)、(b)、図6、図7を用いて説明する。
平地走行時には図2(a)に示すように、前脚部を最短の状態にし、補助脚においても補助輪14が地面から離れた状態にすることで、従来のベビーカーと同様に走行できる。
階段昇段時には図6(a)に示すように、あらかじめロッド2を最大まで伸張させた状態にして図6(b)に示すように、車輪6を支点にして直進方向に固定したキャスタ3を持ち上げ、ベビーカーを前進させながら階段23の2段目の踏面にキャスタ3を載せる。
キャスタ3を階段23の2段目の踏面に載せた後、図6(c)に示すように、キャスタ3を支点にして車輪6を持ち上げてベビーカーを前進させる。
車輪6を持ち上げたとき、図6(c)に示すように、キャスタ3が階段23の3段目の蹴上げ板に接触した状態でも車輪6が階段23の1段目の踏面に載らないことがある。その場合、図6(d)に示すようにレバー8を引いてロッド2を収縮させるか、ベビーカーをさらに押して直接ロッド2を収縮させて、車輪6が階段23の1段目の踏面に載るまで前脚部を収縮させる。
このとき、あらかじめ図4(b)に示すようにスライドスイッチ11でワンウェイクラッチ19を固定した状態であれば補助脚の伸張をロックするまでレバー8を握りつづける必要がなく、ベビーカーの押し込みによるロッド2の収縮と共にレバー8を引けば小さな握力でレバー8を引くことができる。
車輪6を階段23の1段目の踏面に載せた後、前進しながら車輪6を支点にしてキャスタ3を持ち上げて一つ上の段の踏面に載せ、前進しながらキャスタ3を支点にして車輪6を持ち上げて一つ上の段の踏面に載せるという動作を繰り返す。
階段23を最上段まで昇ると、レバー8を引いてロッド2を収納し、前脚部を最短の状態することで平地走行状態になる。
ベビーカーの前脚部を、平地走行時の状態のまま階段を昇段する場合、前進しながら直進方向に固定したキャスタ3を持ち上げる。このとき、車輪6が階段23の1段目の蹴上げ板に接触してもキャスタ3が階段23の2段目の踏面に載らないことがある。この場合、図4(a)のようにスライドスイッチ11を後方にスライドしてワンウェイクラッチ19のロックを解除してロッド2を伸張させることでキャスタ3が階段23の2段目の踏面に載せることができる。スライドスイッチ11は前脚部延長後に再びロック状態にしておくと、以降前脚部を収縮させる必要が生じたときに前脚部の収縮操作が行いやすくなる。
キャスタ3を階段23の2段目の踏面に載せた後、図7(c)に示すように、ベビーカーを前進させながらキャスタ3を支点に車輪6を持ち上げて階段23の1段目の踏面に載せる。以降、ベビーカーを前進させながら車輪6を支点にしてキャスタ3を持ち上げて一つ上の段の踏面に載せ、さらにベビーカーを前進させながらキャスタ3を支点にして車輪6を持ち上げて一つ上の段の踏面に載せる動作を繰り返す。
階段23を最上段まで昇ると、レバー8を引いてロッド2を収納し、前脚部を最短の状態することで平地走行状態になる。
階段の昇段途中で階段の寸法が変わる場合は、上記の昇段方法を基に、階段の寸法に合わせてベビーカーの前脚部を随時伸縮させて昇段を行う。
次に、上記のように構成されたベビーカーを用いて階段を降りる方法について、図2(a)、図4(a)、(b)、(c)、図8、図9、図10を用いて説明する。
図8(a)、(b)、(c)は、ベビーカーの後方にある補助脚の使用方法を示している。階段23を降下する直前に、図示しないピストンロッド13を補助輪14が地面からはなれた状態で固定する部材を外し、図8(a)に示すように、ピストンロッド13を伸張させて補助輪14を接地させ、キャスタ3を直進状態で固定させる。この状態からベビーカーを後退させると、図8(b)に示すように、補助輪14は階段23の最上段から離れ、ピストンロッド13は自重により伸張し、補助輪14が一つ下段の踏面に接地する。さらにベビーカーを後退させると、図8(c)に示すように、車輪6が階段23の最上段から離れ、一つ下段の踏面に接地する。このとき、補助脚はベビーカーの重量を受けることでダンパーの役目を果たし、車輪6を緩やかに降段させる。
図9(a)、(b)、(c)、(d)は、ベビーカーの前脚部を伸張させた状態で、ベビーカーの前輪を降段させる方法を示している。階段23を降段する直前に上記のように補助輪14を接地、キャスタ3を直進方向で固定した状態でベビーカーを後退させ、図9(a)に示すように、車輪6を階段23の最上段から2段目の踏面まで降ろす。さらにベビーカーを後退させ、図9(b)に示すように、車輪6が一つ下段に降下する直前のところまで達したときに、キャスタ3が車輪6の降段中に落下する可能性がある場合、図9(c)に示すように、レバー8を引いてロッド2を収縮させてキャスタ3を階段23の最上段の踏面から離す。そして図9(d)に示すように、キャスタ3を階段23の最上段から一つ下段の踏面に載せる。以降、補助輪14、車輪6、キャスタ3の順に一段ずつ降壇させて階段を降りる。このとき、キャスタ3が常に階段23に接触するように降段すると降りやすくなる。
図10(a)、(b)、(c)、(d)はベビーカーの前脚部を最短にした状態で、ベビーカーの前輪を降段させる方法を示している。階段23を降段する直前に上記のように補助輪14を接地、キャスタ3を直進方向で固定した状態でベビーカーを後退させ、車輪6を階段23の最上段から一段降ろす。さらにベビーカーを後退させ、図10(a)に示すように、車輪6が再び降段する直前のところまで達したときに、キャスタ3が車輪6の降段中に落下する可能性がある場合、図10(b)に示すように、レバー8のロックを解除してロッド2を伸張させる。そして図10(c)に示すように、ベビーカーを後退させて車輪6を一つ下段に降段させた後、さらにベビーカーを後退させて、図10(d)に示すように、キャスタ3を一つ下段に降段させる。以降、補助輪14、車輪6、キャスタ3の順に一段ずつ降壇させて階段を降りる。このとき、キャスタ3が常に階段23に接触するように降段すると降りやすくなる。
階段の降段途中で階段の寸法が変わる場合は、上記の降段方法を基に、階段の寸法に合わせてベビーカーの前脚部を随時伸縮させて降段を行う。
階段昇降中において、操作ミスなどにより利用者がベビーカーから手を放してしまった場合、後脚部の下段への落下による衝撃は補助脚の緩やかな収縮により軽減されるが、後脚部が段から落下したときの惰性によりベビーカーが後退し、後脚部がさらに下段へ落下することがある。このとき補助輪14が後退方向に回転しにくくなれば後脚部落下後の惰性による後退を抑制し、後脚部がさらに下段へ落下することを防ぐことができる。
後脚部落下時の惰性による後退を抑制する補助輪の機構部は、特定の機構に限定されるものではなく周知の機構が適用できるが、その構成例を図11に示す。
図11は、後脚部落下時の惰性による後退を抑制する補助輪の構成を示す。階段の踏面と接触する部分が滑りにくい部材でできている補助輪14の中心部にワンウェイクラッチ22と、ワンウェイクラッチ22の内部を通り、ピストンロッド13に固定されている軸21がある。補助輪14とワンウェイクラッチ22は完全な固定はされておらず、大きな摩擦がありながらも補助輪14がワンウェイクラッチ22を軸として回転することができる。また、ワンウェイクラッチ22は軸21に対して矢印Dの方向には空回りし、矢印D’の方向には回転しない。これにより補助輪14は、矢印D方向には回転しやすく、矢印D’方向には回転しにくくなる。この補助輪14をピストンロッド13の下端部に、ベビーカーの前進時には回転しやすく、後退時には回転しにくくなるように取り付けることによって、後脚部落下後の惰性による後退を抑制でき、かつ、不意の後脚部の落下を防止するため、ベビーカーを前進させて階段の角から車輪6を遠ざける行為がしやすくなる。
また、上記の後退しにくい補助輪の改良案として、後脚部が下段に接地後、補助輪14の後退方向への摩擦が解除される手段を導入すれば、利用者の意図によるベビーカーの後退が通常の補助輪と同様に行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による一実施例のベビーカーの斜視図である。
【図2】 同上の構成を示す図である。
【図3】 同上の伸縮機構の構成例を示す図である。
【図4】 同上の伸縮機構の操作部の構成例を示す図である。
【図5】 同上の降下誘導機構の構成例を示す図である。
【図6】 同上のベビーカーを用いた階段の昇段方法を説明する図である。
【図7】 同上のベビーカーを用いた階段の昇段方法を説明する図である。
【図8】 同上のベビーカーを用いた階段の降段方法を説明する図である。
【図9】 同上のベビーカーを用いた階段の降段方法を説明する図である。
【図10】 同上のベビーカーを用いた階段の降段方法を説明する図である。
【図11】 補助輪の改良例を示す図である。
【符号の説明】
1 シリンダチューブ
2 ロッド
3 キャスタ
4 キャスタロック
5 後脚フレーム
6 車輪
7 ハンドル
8 レバー
9 ワイヤ
10 アウター
11 スライドスイッチ
12 シリンダチューブ
13 ピストンロッド
14 補助輪
15 排気口
16 圧縮バネ
17 ハンドル部フレーム
18 軸
19 ワンウェイクラッチ
20 ゴム栓
21 軸
22 ワンウェイクラッチ
23 階段
試作写真1 
試作写真2 
試作写真3 
メッセージ

 写真は本発明をベビーカーに応用したときのものを示しています。
このベビーカーの特徴は以下の通りです。
・様々な寸法の階段に対応します。
・てこの原理により少ない力で階段を登ることができます。
・階段を下りるときはダンパーによって一段ずつ安全にベビーカーを下ろします。
・ダンパーの車輪には後輪が地面につくまでブレーキのかかる機構が備わっており確実に一段ずつ安全にベビーカーを下ろすことができます。
このように階段を下りるときに特化した機能をもつベビーカーです。
 また、機構が単純なので折りたたみ式のベビーカーなどに導入することも可能です。
 
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10
【図11】
図11
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