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【発明の名称】風力発電用の風車及び発電機駆動方式
【出願人】
【識別番号】504325195
【氏名又は名称】松園 明久
【住所又は居所】横浜市都筑区荏田東2丁目19番2の501号
【発明者】
【氏名】松園 明久
【住所又は居所】横浜市都筑区荏田東2丁目19番2の501号
【要約】
【課題】
地球環境とエネルギー問題を総合的に考えた場合、家庭での風力発電の普及が望まれるが、広く普及するためには多くの課題がある。先ず、実際の利用条件で最も多い弱風域でも発電でき、稼動中は静かで、台風・突風等、過酷な自然環境下でも安定して稼動し、構造が簡単且つ製造容易で安価、しかも安全性が高く、長期間メンテナンス不要であること等や、生活環境上目立たず、違和感がないことも重要である。
【解決手段】
本発明の風車は、風に対して方向制御不要で、高速回転可能等、垂直軸風車の揚力型の特徴を生かし、弱風でも起動力のある抗力型風車の長所をブレードに組込み、しかも常に複数のブレードが回転力を得る構造にし、更に高速回転抑制機能を備えて、起動容易で効率良く、長期間運転可能な風力発電機を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直回転軸のまわりに、複数の縦方向のブレードを設けた垂直軸型風力発電用の風車において、ブレード前半分に、風の揚力による高速回転を可能とする機能と、ブレードの中心から後半分の下部に、可変サボニウス構造の凹曲面を埋め込んだ構造を形成し、ブレードの下面後方及び、下面斜め後方の風も抗力として捉え、起動回転力を向上させた複合型の機能構成を特徴とする風力発電用の風車。
【請求項2】
鉛直回転軸のまわりに、複数の縦方向のブレードを設けた垂直軸型風力発電用の風車において、ブレードの中心から後半分の上部にも、サボニウス構造の複数の埋め込み形小凹曲面を設け、ブレードの上面後方及び、上面斜め後方からの風も抗力として捉え起動回転力を向上させた複合型の機能構成を特徴とする風力発電用の風車。
【請求項3】
垂直軸型風力発電用の風車の鉛直回転軸と複数のブレードを支える支持バーにおいて、ブレード側の支持点をブレードの前後の中心より前方、又は後方に設置して前後の重心をずらし、ブレードと支持バーの角度を、バネ等により保持する構造により、強風での高速回転時には遠心力によりブレードの角度が変わり、暴走を抑止して適正な回転を維持するバランス機能を持つことを特徴とする風力発電用の風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、風力発電に使用される風車のブレード形状の改良と風力発電機駆動方式に関する。
【背景技術】
従来の風力発電用の風車には、風に対して回転軸が水平になっている水平軸型風車と、風に対して回転軸が垂直になっている垂直軸型風車が知られている。
このうち本発明に関係する垂直軸型風車について述べると、ブレードに発生する抗力で風車を回す抗力型(パドル形、サボニウス形、クロスフロー形)と、ブレードに発生する揚力で風車を回す揚力型(ダリウス形、ジャイロミル形)といったものが知られており、共に、水平軸風車に比べ風に対して無指向性なので、水平軸風車のように頻繁に変化する風に対する方向制御とその追尾機構等が不要と言う大きい長所があるが、単独では、どれも水平型より効率が悪いとされている。
そこで、低風速でも発電可能な小型直線翼型風車と、この回転軸に小さい風力でも駆動トルクを発生する起動用風車を介在させ、起動力を向上させたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
ところが、この発明は、起動用風車も組み込む為、部品点数が増大し複雑な駆動装置等で、構造が複雑になり、製造コスト等が増えるという問題がある。また、強風時には、風の抵抗が大きくなり、ブレーキシステムも大きく、全体が重く不安定になる。
また、ブレードの角度を制御して、効率の問題を少しでも改良すると共に、回転速度を制御する発明が出されている(例えば、特許文献2参照。)。
この発明も、図7に示すように、回転センサーや自動制御装置、駆動モータ等が必要で、部品点数が増大し構造が複雑になり、製造コスト、維持コスト等が増えるという問題がある。また、構造がフライホイル状と明記されているため大きな起動トルクが必要となる。しかも基本的に揚力型単独機能なため、実際の利用で一番多い弱風域での起動性が悪く、稼働率向上が難しい。
更に、ブレード形状を改良して回転効率を高める特許が出されている(例えば、特許文献3参照。)。
この発明は図8に示すように、翼弦に対して前記回転軸側が、後縁まで切り欠かれたままで、サボニウス構造の湾曲面がなく、ブレードの上下の縁が閉じていないため、起動時から、周速比(ブレードの翼端速度/風速)が1となるまでの抗力を効果的に取り出せない。また、ブレードの上面後方からの弱風に対しては、抗力が得られない。
【特許文献1】
特開平11−201020号公報
【特許文献2】
特開2003−278637
【特許文献3】
特許第3451085号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べた従来の問題等から、本発明が解決しようとする課題をまとめると、先ず、最も多い弱風時でも発電でき、稼動中は静かで、強風、暴風等、過酷な自然条件下でも安全に稼動し、長期間メンテナンスなしでも稼動出来る耐久性を備え、構造が簡単、製造容易で安価なこと、等があげられる。
本発明では、このような実運用レベルの諸問題を解決しようとするもので、揚力型垂直軸型風車の起動困難さや強風時の過剰回転による過大電圧を抑制し、常に複数のブレードで有効に回転力を得られる構造にすることにより、起動しやすく、多様に変化する弱風域から強風以上の過酷な自然条件下でも発電可能な風車の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
そこで本発明では、上記目的を達成するために、鉛直回転軸のまわりに、ジャイロミル形とも称される複数の縦方向のブレードを設けた垂直軸型風力発電用の風車の、ブレード前半分に、ベルヌーイの定理(流れの速い場所では、圧力が低く、流れの遅い場所では、圧力が高くなる)による風の揚力による高速回転を可能とする機能に加え、ブレードの後側の下部と上部に、可変サボニウス構造の凹曲面を埋め込んだ複合構造を形成することにより、ブレードの後方や斜めからの風も抗力として捉えることが出来、あらゆる方向の風向きに対し起動回転力向上が達成される。
また、同、風力発電用風車の鉛直回転軸と複数のブレードを支える支持バーにおいて、ブレード側の支持点をブレードの前後の中心より10〜20%程度前方、又は後方に配置置して前後の重心をずらし、ブレードと支持バーの角度をバネ等により保持する構造にすることにより、強風での高速回転時の遠心力によりブレードの角度が変わり、揚力低下と、風に対するブレーキ効果をもたらし、暴走を抑制する作用のバランスにより、適正な回転を維持する目的が達成される。
【発明の効果】
上述したように、本発明に係る風力発電用の垂直軸型風車では、鉛直回転軸のまわりに設けたブレードの、抗力型の特性と揚力型の特性を効果的に組み合わせた複合機能ブレードにより、ブレードの後方や、後方斜め方向からの風の抗力や、前方からの風の揚力による回転力が加算され、風向きや風速が絶えず変化する状況においても、効率的に発電機を回することが出来る。更に、強風域以上に対する暴走回転抑止機構により、過大な電圧発生を抑えるので、電力蓄電システム等を簡単にすることが出来る。このような効果により、多様に変化する自然風でも発電効率が高いコンパクトな発電機の提供が可能となる。
また、軽金属、プラスチック、FRP等、多様な材質が利用でき、構造が簡単なので、小型や中型の風車を安価に製造することが出来る。従って、家庭用の発電機から、学校、工場、事業所等のビルや、公園、草原、山間、離島など、電力供給コストが発生する場所でも簡単に設置可能で、環境問題や、エネルギー問題等、世界的な社会問題にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態を図1〜6に基づいて説明する。
これらの図の中では、同じ構成要素に対しては同じ参照番号を用いている。
図1は、本発明の実施例に係る風力発電用の風車Fの外観を示す。この風車のブレード2の前緑は、ジャイロミル形とも称す垂直軸型風車であり、揚力による風車の回転力を利用して発電機(図示しない)を回す構造になっている。そしてこの風車は、図1および図2に示すように、鉛直回転軸1のまわりに、3枚(風車のサイズ等により枚数変更自由)の軽量翼型ブレード2が回転軸に平行に配されている。
ブレード2の後方下部には、図3及び図4に示すように、サボニウス構造の凹曲面22を埋め込み、更に弱風での効果を高めるため、低速回転時にはバネにより可変集風翼24が広がり、高速回転時には遠心力によりブレードの下面と一直線25となる構造になっている。また、ブレードの中心から後半分の上部にも、サボニウス構造の複数の埋め込み形小凹曲面23を設け、ブレードの上面後方からの風も抗力として捉え、回転力を向上させる複合ブレードを構成する。
図3、4のブレード2の前縁部21は、揚力解析により最適形状が算出され、風のエネルギーを効率的に取り出せる構造になっている。また、同、ブレード2の後縁部上下のサボニウス型の湾曲形状での周速比(ブレードの翼端速度/風速)が1以上においても斜めからの風による抗力を風力として得ることが可能である。
図3、4のブレード2の下部にはブレード支持アンカー5の取り付け穴7がブレードの前後の重心より20%〜30%前側に付け、回転軸1から放射状に延びる支持バー6の端部が、ブレード支持アンカー5と可動式ネジ止め7により連結されることにより、ブレードと回転軸が連結される。
このブレード支持バー6とブレード支持アンカー5を、引きバネ8(支持アンカー取り付け穴での、ねじりバネ利用も可)によりブレード迎え角度を維持できる構造にすることにより、高速回転時の遠心力が働き、ブレードの後方が外側に広がる、図6−26と同時に、反対側のブレードの前縁が回転軸側を向き、揚力が低下する。同時に、ブレードが回転方向に対してブレーキとなり、回転速度が低下する。そして、回転数が低下することによりブレード後縁と、前縁が元に戻る。このバランス作用により、ブレード自らが適正な回転速度を維持することが出来る。
ここで、ブレード2の周囲の現象を述べると、同じくベルヌーイの定理により、図5に示すように、矢印方向の風に、対して、翼下面の上部の前側では流れが速くなり圧力が低く、下部の前側では流れが遅いため圧力が高くなる。そのため、ブレード2の後部に湾曲面22,23を設けても、翼の空力特性には影響が少ない。
従って、図5のブレード2aは、図に示すように、前方(同図K1矢印方向)から風を受けると、抗力Uaと、揚力FLが矢印方向に発生する。そのとき、このブレード2aに発生する揚力FLの回転方向分力Vaが抗力Uaを超えたときに、反時計方向に回転する。同時に、ブレード2bと2cは、抗力Ub,Ucを受け、回転方向分力Vb、Vcも加算され、回転がより安定して回転効率が良くなる。
また、ブレード2は、アルミ等、軽量金属や、FRP、プラスチック等から形成されるため軽量で、上下2点で支持する構造であるので、強度的にも丈夫で、見た目にも安定感があるとともに、コンパクトな構造となる。そのため、一般家庭用やビル用としてだけでなく、公園、草原、山間、離島など、電力供給コストが発生する場所でも簡単に設置可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る風車の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の風車を上方から眺めたブレード配置を説明する図である。
【図3】前記ブレードに支持バーを取り付ける構造を示す図である。
【図4】図1に示すブレードの斜視図である。
【図5】前記ブレードの回転動作を説明する図である。
【図6】前記ブレードの高速回転時の動作を説明する図である。
【図7】特許文献2の従来のブレード角度制御装置の構造を説明する図である。
【図8】特許文献3の従来の改良型ブレード形状を説明する図である。
【符号の説明】
F 風車
1 回転軸
2 ブレード
3 ブレード側面補強板兼、抗力風蓄積板
4 ブレード補強骨組み板兼、抗力風蓄積板
5 ブレード支持アンカー
6 ブレード支持バー
7 支持アンカー取り付け穴(可動式ネジ止め穴)
8 引きバネ(ねじりバネ可)
21 ブレード前縁部のジャイロミル機能部
22 ブレード下部後方のサボニウス機能凹曲面
23 ブレード上部後方の埋め込み形サボニウス機能小凹曲面
24 低速回転時の可変集風翼
25 高速回転時の可変集風翼位置
26 高速回転時のブレード移動角度
FA ブレードの揚力
Ua、Ub、Uc ブレード2a、2b、2cの抗力
Va、Vb、Vc ブレード2a、2b、2cの回転力
メッセージ

「簡単で高性能」 風向き制御不要な垂直軸型の長所を凝縮した新型風車

 京都議定書遵守を!本装置はジャイロミル型(垂直軸揚力型で風向き制御不要)をベースに弱風特性に優れているサボニウス機能を付加した風域特性の広い新型風車です。
特に風向きが不安定な市街地、ビル街等、風向制御困難な場所に適し、安全・安心な自然エネルギーを昼夜得ることが可能。 

特徴:
@ ブレードの前部は揚力を生かす本来のジャイロミル構造により中風速以上の特性に優る。
A ブレードの後部は受風角度の大きい変形サボニウス構造により広い風向きの抗力を捉えるため弱風域特性改善。
B 弱風の抗力を捉えるため自己起動力に優れ、実運用条件下で最も長い弱風域の効率向上。
C 強風時の高速回転時には先端のブレードが空気抵抗となるので過度な暴走回転抑制。
D 回転が緩やかなので軸受け磨耗が少なく且つ、複雑なヨー制御機構も無いので長期安定稼動。


 図1.本発明の機能確認用プロト1号機
プロト1号機
 図2.本発明の風車にコアレス発電機を装着させたプロト2号風力発電装置。
プロト2号機
風力発電はピーキーですが製造コストが安価で無尽蔵・無公害且つ将来の負担も無い最良のエネルギー 
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
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