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【発明の名称】リチウムイオン電池の充電装置
【出願人】
【識別番号】397056673
【氏名又は名称】金子 正
【住所又は居所】福島県白河市葉の木平63−3
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100077883
【氏名又は名称】吉川 勝郎
【発明者】
【氏名】金子 正
【住所又は居所】福島県白河市葉の木平63ー3
【要約】
【課題】
最適な充電電圧で効率よく短時間で充電できると共に、電池寿命を向上させ、更にケーブルの本数を削減させて、配線作業を容易にしたリチウムイオン電池の充電装置を提供するものである。
【解決手段】
直列に接続した複数個のリチウムイオン電池B1 、B2 、B3 と、これらと対応する同数の充電器C1 、C2 、C3 を電源1に並列に接続し、ここにセンシング装置S1 、S2 、S3 を取付けて、並列接続した充電器列の両側に設けられたセンシング装置S1 、S3 の一方のセンシング端子8、9を、始端と終端のリチウムイオン電池B1 、B3 に接続すると共に、センシング装置S1 、S2 のマイナス側センシング端子9と、これに隣接するセンシング装置S2 、S3 のプラス側センシング端子8との接続部10を、各充電器に対応する電池のマイナス側と、これに隣接する電池のプラス側との間にそれぞれ接続したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続した複数個のリチウムイオン電池と、これらと対応する同数の充電器を電源に並列に接続し、この並列接続した充電器列の両端の充電器の一方の出力端子を、前記直列接続したリチウムイオン電池列の始端と終端に接続すると共に、各充電器のマイナス側出力端子と、これに隣接する充電器のプラス側出力端子との接続部を、各充電器に対応する電池のマイナス側と、これに隣接する電池のプラス側との間にそれぞれ接続し、且つ前記各充電器にセンシング装置を取付けて、並列接続した充電器列の両側に設けられたセンシング装置の一方のセンシング端子を、リチウムイオン電池列の始端と終端に接続すると共に、各センシング装置のマイナス側センシング端子と、これに隣接するセンシング装置のプラス側センシング端子との接続部を、各充電器に対応する電池のマイナス側と、これに隣接する電池のプラス側との間にそれぞれ接続したことを特徴とするリチウムイオン電池の充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、リチウムイオン電池の充電装置に関するものである。
【背景技術】
近年、無公害のクリーンな動力として電池(バッテリー)を用いてモーターを駆動させる電気自動車が普及してきている。この電気自動車に搭載する電池としては、事故による内部物質が外部に流出せず、耐振動性や耐衝撃性にも優れ、充放電サイクルを繰り返しても長寿命であることなどが条件とされている。このため種々の改良がなされて、現在では特性の優れた鉛シール電池が開発されている。また電気自動車には電池に充電する充電装置が一体に搭載され、電池が消耗した時に、何処ででも商用交流電源から充電できるようになっている。
従来の車搭載用の充電装置としては、直列に接続された複数個の電池列の始端と終端に、充電器を直列に接続した構造のものが用いられている。この充電装置では、1個でも性能の悪い電池があると、良品の電池まで充電不足となり、性能の悪い電池を交換しても同様の問題が拡大していく問題があった。
このため、図4に示すように直列に接続した複数の電池B1 、B2 、B3 と、これと同数の充電器C1 、C2 、C3 を電源1に並列に接続して、それぞれ電池B1 、B2 、B3 に対応する各充電器C1 、C2 、C3 から個別に充電する充電装置も開発されている。しかしながら個別に充電する方法では、太いメインケーブル2が電池の個数n×2本の2n本必要となり、自動車に電池を搭載する時に、狭い車体内に多数の太いメインケーブル2を配線しなければならず作業が面倒である。
これを改善ずるため本発明者は、図5に示すように、直列に接続した複数個の電池B1 、B2 、B3 と、これらと対応する同数の充電器C1 、C2 、C3 を電源1に並列に接続し、この並列接続した充電器列C1 、C2 、C3 の始端に設けられた充電器C1 のプラス側出力端子3を、前記直列接続した始端の電池B1 のプラス側に接続すると共に、終端に設けられた充電器C3 のマイナス側出力端子4を、終端の電池B3 のマイナス側に接続し、充電器C1 、C2 のマイナス側出力端子4とこれに隣接する充電器C2 、C3 のプラス側出力端子3とを接続し、この接続部5を各充電器C1 、C2 に対応する電池B1 、B2 のマイナス側とこれに隣接する電池、B2 、B3 のプラス側との間にそれぞれ接続した直列電池の充電装置を先に開発した(特許文献1)。
この直列電池の充電装置は、それぞれの電池B1 、B2 、B3 の充電特性に応じて個別充電できると共に、性能にバラツキのある電池同士を同時に充電しても、互いに影響されず、性能の劣化した電池だけを交換でき、しかも出力ケーブル2の本数を削減できると共に、使用するケーブルも細く、取付け配線作業を容易にできる効果がある。
一方、近年電気自動車用電源として、高性能のリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、この従来の充電装置で充電電圧が鉛電池より低いリチウムイオン電池の充電を行なうと、充電時間が長く、また充電時の電圧変動があるため電池寿命が低下する問題があった。これはリチウムイオン電池の基本充電電圧が4.25±0.03Vと極めてシビアーな範囲にあり、しかもケーブルの抵抗による電圧降下変動の影響を大きく受けるため、基本充電電圧での充電が難しいことがその要因として考えられる。
【特許文献1】
特開平8−33219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を改善し、最適な充電電圧で効率よく短時間で充電できると共に、電池寿命を向上させ、更にケーブルの本数を削減して、配線作業を容易にすると共に、自動車に搭載した場合の車体の軽量化を図ることができるリチウムイオン電池の充電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載のリチウムイオン電池の充電装置は、直列に接続した複数個のリチウムイオン電池と、これらと対応する同数の充電器を電源に並列に接続し、この並列接続した充電器列の両端の充電器の一方の出力端子を、前記直列接続したリチウムイオン電池列の始端と終端に接続すると共に、各充電器のマイナス側出力端子と、これに隣接する充電器のプラス側出力端子との接続部を、各充電器に対応する電池のマイナス側と、これに隣接する電池のプラス側との間にそれぞれ接続し、且つ前記各充電器にセンシング装置を取付けて、並列接続した充電器列の両側に設けられたセンシング装置の一方のセンシング端子を、リチウムイオン電池列の始端と終端に接続すると共に、各センシング装置のマイナス側センシング端子と、これに隣接するセンシング装置のプラス側センシング端子との接続部を、各充電器に対応する電池のマイナス側と、これに隣接する電池のプラス側との間にそれぞれ接続したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
本発明に係る請求項1記載のリチウムイオン電池の充電装置によれば、リチウムイオン電池のプラス側とマイナス側の両側にセンシング装置のプラス側出力端子とマイナス側出力端子が接続され、メインケーブルやバランスケーブルの抵抗による電圧降下による変動を個別に調整して、各リチウムイオン電池を同時に定電流で効率よく充電することができる。
またセンシング装置のマイナス側出力端子は、隣接するリチウムイオン電池のプラス間に接続され、その接続部は対応するリチウムイオン電池のマイナス側と、隣接するリチウムイオン電池のプラス側との間に信号ケーブルで接続されているので、信号ケーブルの本数は、充電器数n+1本で済む。更にメインケーブルとバランスケーブルの合計本数も、電池数n+1本で済むので、全体のケーブル本数を大幅に削減でき経済的である上、狭い車体内での配線作業が容易で、配線スペースも少なく、車体の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下本発明の実施の一形態を図1を参照して詳細に説明する。複数個のリチウムイオン電池B1 、B2 、B3 をメインケーブル2で直列に接続し、これらと対応する同数の直流ー直流変換器の作用を利用した充電器C1 、C2 、C3 を直流電源1に並列に接続する。この並列接続した充電器列C1 、C2 、C3 の始端に設けられた充電器C1 のプラス側出力端子3を、前記直列接続した始端のリチウムイオン電池B1 のプラス側に接続すると共に、終端に設けられた充電器C3 のマイナス側出力端子4を、終端のリチウムイオン電池B3 のマイナス側にメインケーブル2で接続する。
更に、充電器C1 、C2 のマイナス側出力端子4を、これに隣接する充電器C2 、C3 のプラス側出力端子3にバランスケーブル6で接続し、この接続部5をリチウムイオン電池B1 、B2 のマイナス側と、これに隣接するリチウムイオン電池B2 、B3 のプラス側との間にそれぞれバランスケーブル6で接続する。
また前記各充電器C1 、C2 、C3 には端子間の電圧を一定に調整するセンシング装置S1 、S2 、S3 が取付けられている。この各センシング装置S1 、S2 、S3 は、定電圧半導体7と、プラス側出力端子8と充電器C1 、C2 、C3 のプラス側出力端子3との間に接続された検出回路用抵抗R1 、R3 、R5 およびマイナス側出力端子9と充電器C1 、C2 、C3 のマイナス側出力端子4に接続された検出回路用抵抗R2 、R4 、R6 とから構成され、充電器C1 、C2 、C3 の出力端子3、4の電圧を測定して、出力電圧を最高4.25Vの一定に保持すると共に、最高電流を一定値に保持する作用をなすものである。
またセンシング装置S1 のプラス側出力端子8は、信号ケーブル11で始端のリチウムイオン電池B1 のプラス側に接続され、センシング装置S3 のマイナス側出力端子9は、信号ケーブル11で終端のリチウムイオン電池B3 のマイナス側に接続されている。
更に隣接する、センシング装置S1 のマイナス側出力端子9と、センシング装置S2 のプラス側出力端子8は接続され、その接続部10は1本の信号ケーブル11で始端のリチウムイオン電池B1 のマイナス側と中間のリチウムイオン電池B2 のプラス側との間に接続されている。同様に隣接するセンシング装置S2 のマイナス側出力端子9と、センシング装置S2 のプラス側出力端子8は接続され、その接続部10は1本の信号ケーブル11で中間のリチウムイオン電池B2 のマイナス側と終端のリチウムイオン電池B3 のプラス側との間に接続されている。
センシング装置S1 のプラス側出力端子8に接続された信号ケーブル11と、充電器C1 のプラス側出力端子3との間には検出回路用抵抗R1 が接続されている。また、センシング装置S1 のマイナス側出力端子9に接続された信号ケーブル11と、充電器C1 のマイナス側出力端子4との間には検出回路用抵抗R2 が接続されている。
センシング装置S2 のプラス側出力端子8に接続された信号ケーブル11と、充電器C2 のプラス側出力端子3との間に検出回路用抵抗R3 が接続されている。またセンシング装置S2 のマイナス側出力端子9に接続された信号ケーブル11と、充電器C2 のマイナス側出力端子4との間に検出回路用抵抗R4 が接続されている。
更にセンシング装置S3 のプラス側出力端子8に接続された信号ケーブル11と、充電器C3 のプラス側出力端子3との間に検出回路用抵抗R5 が接続されている。またセンシング装置S3 のマイナス側出力端子9に接続された信号ケーブルと、充電器C3 のマイナス側出力端子4との間に検出回路用抵抗R6 が接続されている。
次に上記構成のリチウムイオン電池の充電装置により、直列接続したリチウムイオン電池B1 、B2 、B3 に充電する場合について説明する。この充電回路では、電源1から直流電流が充電器C1 、C2 、C3 に供給される。先ず充電器C1 のプラス側出力端子3から太いメインケーブル2を通して、直列に接続されたリチウムイオン電池B1 に電流I1 が流れて充電され、電流I1 はバランスケーブル6を経てマイナス側出力端子4に流れる。
リチウムイオン電池B1 が充電される時、この両側にはセンシング装置S1 のプラス側出力端子8とマイナス側出力端子9が信号ケーブル11で接続され、プラス側出力端子3に接続されたメインケーブル2とマイナス側出力端子4に接続されたバランスケーブル6との電圧変化を抵抗R1 、R2 により測定する。変動電圧差が生じると、定電圧半導体7に信号が送られ、V0 によって出力電流I1 を一定にするように充電器C1 の出力電圧を徐々に上げていく。このため、メインケーブル2やバランスケーブル6の抵抗による電圧降下変動を調整して、定電流で効率よく充電することができる。
また中間のリチウムイオン電池B2 は、充電器C2 のプラス側出力端子3からバランスケーブル6を通して流れる電流I2 により充電が行なわれ、電流I2 は下流のバランスケーブル6を通ってマイナス側出力端子4に流れる。この中間のリチウムイオン電池B2 が充電される時も、この両側にはセンシング装置S2 のプラス側出力端子8とマイナス側出力端子9が信号ケーブル11で接続され、プラス側出力端子3に接続されたバランスケーブル6とマイナス側出力端子4に接続されたバランスケーブル6との電圧変化を測定する。この間に変動電圧差が生じると、定電圧半導体7に信号が送られ、V0 によって出力電流I2 を一定にするように充電器C2 の出力電圧を徐々に上げて、定電流に制御しながら充電が行なわれる。
この場合、センシング装置S1 のマイナス側出力端子9と、センシング装置S2 のプラス側出力端子8とは1本の信号ケーブル11で接続され、これがリチウムイオン電池B1 のマイナス側に接続されている。つまり1本の信号ケーブル11に2信号を乗せた状態となっているが、センシング装置S1 、S2 の信号検出の周波数がずれているため、電圧調整はそれぞれ別個に行なうことができる。
また終端のリチウムイオン電池B3 には、充電器C3 からバランスケーブル6を通して流れる電流I3 によって充電され、電流I3 はマイナス側出力端子4に接続されたメインケーブル2を通って流れる。このリチウムイオン電池B3 が充電される時も、この両側にはセンシング装置S3 のプラス側出力端子8とマイナス側出力端子9が信号ケーブル11で接続され、プラス側出力端子3に接続されたバランスケーブル6とマイナス側出力端子4に接続されたメインケーブル2との電圧変化を測定し、変動電圧差が生じると、定電圧半導体7に信号が送られ、定電流に制御しながら出力電圧が徐々に上昇していく。
従って本発明のリチウムイオン電池の充電装置では、リチウムイオン電池B1 、B2 、B3 のプラス側とマイナス側の両側にセンシング装置S1 、S2 、S3 のプラス側出力端子8とマイナス側出力端子9がそれぞれ接続され、メインケーブル2やバランスケーブル6の抵抗による電圧降下変動を個別に調整して各リチウムイオン電池B1 、B2 、B3 が同時に定電流で効率よく充電される。
また隣接するセンシング装置S1 、S2 のマイナス側出力端子9とプラス側出力端子8とは接続され、その接続部10は始端のリチウムイオン電池B1 のマイナス側と中間のリチウムイオン電池B2 のプラス側との間に接続され、同様に隣接するセンシング装置S2 、S3 のマイナス側出力端子9とプラス側出力端子8とは接続され、その接続部10は中間のリチウムイオン電池B2 のマイナス側と終端のリチウムイオン電池B3 のプラス側との間に接続されているので、信号ケーブル11は合計4本となる。つまり、充電器数、すなわちリチウムイオン電池とセンシング装置の数がnの時、信号ケーブル11はn+1本で済む。
同様にメインケーブル2とバランスケーブル6の合計本数も、電池と充電器の数がnの時、n+1本で済むので、全体のケーブル本数を大幅に削減でき経済的である上、狭い車体内での配線作業が容易で、配線スペースも少なく、車体の軽量化を図ることができる。
4個のリチウムイオン電池B1 〜B4 を図1に示すものと同様に直列に接続し、同数の4個の充電器C1 〜C4 を直流電源1に並列に接続し、各充電器C1 〜C4 に取付けたセンシング装置S1 〜S4 の、隣接するマイナス側出力端子9とプラス側出力端子8とを接続した信号ケーブル11をリチウムイオン電池B2 、B3 の両側に接続して充電を行なった。
この充電時の電流と電圧の変化を測定したところ、図2に示すように各リチウムイオン電池の充電電圧は次第に増加していくが、充電電流は5.5時間まで10Aで一定のまま充電が行なわれ、その後、充電電流は急激に減少し、これ以降、充電電圧は4.25Vの一定のままで、8時間で充電を完了した。
また比較のために、図5に示すように、センシング装置を設けていない充電装置で充電したところ図3に示すように電圧は徐々に上昇し、約5時間で4.8Vでピークに達し、その後、徐々に減少していった。一方充電電流は時間の経過に伴って次第に減少していき19時間で充電を完了した。従って本発明の充電装置では半分以下の時間で充電できることが確認された。
なお上記説明では電源1として直流電源を用いた場合について示したが、交流電源を用いる場合には、充電器側に整流器を設ければ良い。
【産業上の利用可能性】
なお本発明は、車搭載用に限らずロボット、運搬車および非常用電源などの固定したリチウムイオン電池の充電にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリチウムイオン電池の充電装置を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例による充電電流と電圧の関係を示すグラフである。
【図3】センシング装置を設けていない充電装置により充電した場合の、充電電流と電圧の関係を示すグラフである。
【図4】従来の充電装置を示す回路図である。
【図5】従来の充電装置を示す回路図である。
【符号の説明】
1 電源
2 メインケーブル
3 プラス側出力端子
4 マイナス側出力端子
5 接続部
6 バランスケーブル
7 定電圧半導体
8 プラス側出力端子
9 マイナス側出力端子
10 接続部
11 信号ケーブル
R1 、R2 〜R6 検出回路用抵抗
B1 、B2 、B3 リチウムイオン電池
C1 、C2 、C3 充電器
S1 、S2 、S3 センシング装置
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
試作写真1
試作写真2
試作写真3
試作写真4
写真5
 
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