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【発明の名称】出力装置
【特許権者】
【識別番号】594138532
【氏名又は名称】手島 章友
【住所又は居所】福岡県福岡市城南区田島1丁目12番34−207号
【発明者】
【氏名】手島 章友
【住所又は居所】広島県三原市糸崎町2496−1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部が、弾性を有する絶縁体フィルム、及び上記絶縁体フィルムに接合され、かつ上記絶縁体フィルム側に下記加熱手段による書き込み、消去に必要な所定時間内に投入されるエネルギーにより容易に溶融もしくは軟化する固体材料の着色剤が充填された連通微小空隙構造を画素数だけ有する記録媒体、及び上記記録媒体に接触させた透明導電体層を有する透明表示窓がこの順に並んで構成され、上記絶縁体フィルムの表面を帯電する手段、上記絶縁体フィルムの表面を除電する手段、及び上記着色剤を選択的に加熱する手段を具備しており、書き込み時には、上記絶縁体フィルムに帯電後、上記着色剤を選択的に加熱することにより溶融もしくは軟化させ、消去時には、上記絶縁体フィルムを除電後、上記着色剤を選択的に加熱することにより溶融もしくは軟化させることを特徴とする出力装置。
【請求項2】
上記「請求項1」において、書き込み時には、上記絶縁体フィルムの表面に帯電を施した後、上記着色剤を加熱により溶融もしくは軟化させ、上記絶縁体フィルム上の帯電電荷と透明導電体層の間の静電吸引力により、上記弾性を有する絶縁体フィルムを透明導電体層の側に変形させることにより、上記着色剤が連通微小空隙構造を満たしきった後も残った、余分の着色剤が上記透明表示窓に相対する位置に露出するようにし、消去時には、上記絶縁体フィルム上の帯電電荷を除電して上記静電吸引力を除去した後、上記着色剤を加熱により溶融もしくは軟化させることにより、上記弾性を有する絶縁体フィルムの変形を復元させ、上記着色剤が連通微小空隙構造を全て満たすことはなく絶縁体フィルムの側に回収された状態になるようにする構造の連通微小空隙構造を有することを特徴とする出力装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子計算機等の出力装置に関し、更に詳しくは解像度、携帯性に優れた記録媒体の機能と書き換えが可能な表示装置の機能とを併せ持つ出力装置に関する。
【従来の技術】
電子計算機等の出力の記録装置としては、現在、主にレーザプリンタ、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタ等が用いられている。しかしこれらは解像度は高く記録媒体の紙は携帯性に優れているものの、書き換えはできない。
一方、電子計算機等の表示装置には、現在,主にブラウン管によるCRT表示装置や液晶表示装置等が用いられており、またテレビの表示装置には最近、プラズマディスプレイパネルが市販されるに至っている。更に研究段階では、EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置やECD(エレクトロクロミックディスプレイ)表示装置が試作されている。しかしこれらの表示装置は自由に書き換えができるものの、解像度は一般に低く、装置の体積や重量は大きくて携帯性に難がある。
【発明が解決しようとする課題】
従来の記録装置による記録媒体は解像度や携帯性には優れているものの、書き換えができない。一方、従来の表示装置は書き換えは容易なものの、解像度、携帯性に難がある。
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、記録装置と表示装置の両者の利点を併せ持つ、即ち、解像度及び携帯性に優れ、かつ書き換えも可能な出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、静電気、及び熱の作用を利用して連通微小空隙構造内で着色剤を移動させることにより表示、非表示を切り替える出力装置において、連通微小空隙構造を工夫することにより、非表示のときは着色剤が全く見えないようにし、コントラストの向上を図ろうというものである。
即ち、表示部が、絶縁体フィルム、上記絶縁体フィルム側に着色剤が充填された連通微小空隙構造を画素数だけ有する記録媒体、及び透明導電体層を有する透明表示窓から構成され、上記絶縁体フィルムの表面を帯電する手段、上記絶縁体フィルムの表面を除電する手段、及び上記着色剤を選択的に加熱する手段を具備した出力装置において、上記絶縁体フィルムとしてゴムのように弾性を有する材料を用い、上記着色剤として加熱により容易に溶融もしくは軟化する固体材料を用いる。
書き込み時には、上記絶縁体フィルムに帯電後、半導体レーザ等により上記着色剤を選択的に加熱溶融もしくは軟化させて、静電気力による上記絶縁体フィルムの変形で上記着色剤を連通微小空隙構造を通して上記透明表示窓の側へ押しやり表示する。消去時には、上記絶縁体フィルムを除電後、上記着色剤を選択的に加熱溶融もしくは軟化させることにより、弾性を有する上記絶縁体フィルムの復元力により上記着色剤を上記絶縁体フィルムの側へ回収し、非表示にする。
ここで、連通微小空隙構造を図2に示すような構造にすることにより、非表示のときには着色剤が透明表示窓の側から見えないようにし、帯電、及び加熱により着色剤が移動して初めて透明表示窓の側から見えるようにして、コントラストの向上を図ろうというものものである。
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係わる出力装置について図面に基づいて説明する。
図1は本発明の出力装置の主要構成部を示した図面である。絶縁体フィルム1が接着された記録媒体12、及び透明導電体層4を有する透明表示窓3が密着配置されている。また、絶縁体フィルム1に近接して、絶縁体フィルム1の表面に一様に帯電もしくは除電を施すための移動可能なコロナ帯電器5、及び絶縁体フィルム1の側から加熱するための移動可能な半導体レーザ6が配置されている。
図2は表示部15の一画素を拡大した断面図である。ここで、記録媒体12は、基材2、スペーサ9、及び白色マスク11を有する透明カバー10からなり、画素を構成する部分は、着色剤7が移動する連通微小空隙構造8がスペーサ9の部分で折れ曲がった構造になっており、スペーサ9の部分より絶縁体フィルム1の側には着色剤7が充填されている。
以下、原理実証に使用した実験装置に基づいて詳述する。
透明表示窓3としてガラス板を、透明導電体層4としてITO(インジウム錫酸化物)層を用いた。基材2としては、250μm程の厚さの白色のプラスティックフィルムを用い、図2に示すように、上記絶縁体フィルム1の側に300μm程の大きな開口を有するすり鉢状の貫通穴を開けた。上記基材2の透明表示窓3の側には、図3に示すように、着色剤出口14に位置する小さな半円形及びそれに連なる大きな円形(直径約300μm)の開口部を有する厚さ50μmのプラスティック製のスペーサ9を接着剤で接着した。更にその上に、上記スペーサ9の大きな円形開口部に対応する部分の一部に、空気の出入りを可能とする直径100μm程の空気穴13を持ち、更に、上記円形開口部に対応する部分のみ透明のまま残し、他の部分が見えないよう隠す目的で塗布された白色マスク11を持つ透明カバー10を接着した。連通微小空隙構造8の絶縁体フィルム1の側には着色剤7として赤色のロウを充填した。絶縁体フィルム1には10μm程の厚さの透明なゴムのフィルムを用い、接着剤で基材2に接着し、着色剤7のロウを気密封止した。また、透明導電体層4は接地されている。
次に書き込みの手順を説明する。まずコロナ帯電器5を走査することにより絶縁体フィルム1(ゴムフィルム)の表面に一様な帯電を施す。次に絶縁体フィルム1(ゴムフィルム)の側から、レンズ(表示せず)で集光した半導体レーザ6の光を、表示したい画素に対応する連通微小空隙構造8の部分の着色剤7(ロウ)に照射した。すると、着色剤7(ロウ)は溶融し、図4に示すように、帯電による静電気力で絶縁体フィルム1(ゴムフィルム)が透明表示窓3(ガラス板)の側に変形し、溶融した着色剤7(ロウ)が連通微小空隙構造8を通して透明表示窓3(ガラス板)の側に移動して、透明表示窓3(ガラス板)の側からは着色剤7(ロウ)による赤色の表示がはっきりと確認できた。半導体レーザ6の照射を切ると、着色剤7(ロウ)は固化するため、表示は保持される。
次に消去の手順を説明する。まず同じコロナ帯電器5を用い、交流の高電圧を印加し、絶縁体フィルム1(ゴムフィルム)の上を走査することにより、絶縁体フィルム1(ゴムフィルム)の表面の電荷を除電する。次に、消去したい画素に対応する連通微小空隙構造8の着色剤7(ロウ)の部分に集光した半導体レーザ6の光を照射した。すると着色剤7(ロウ)が溶融し、絶縁体フィルム1(ゴムフィルム)の復元力で着色剤7(ロウ)が絶縁体フィルム1(ゴムフィルム)の側へ回収され、透明表示窓3(ガラス板)の側から見ると、赤色の表示が完全に消え、基材2の白色の表示に戻るのが確認できた。
なお、このとき、連通微小空隙構造8に少量のシリコンオイルを加えておくと、着色剤7(ロウ)の回収がスムーズにいき、赤色の表示が完全に消える。
今回は原理実証が目的で、諸条件が最適化されているわけではないので、応答速度は数秒と遅かったが、条件を最適化すれば十分に実用に耐えうる速度になると考えられる。また、1個の画素サイズも、今回は手作りのため大きかったが、実用化されている微細加工技術を用いれば、実用的な画素サイズに微細化することは十分可能である。
更に、画素の数も、今回は数個形成して実験を行ったもので、出力装置のようにマトリックス状に多数の画素を形成したわけではない。しかし、記録媒体12の構成要素は、フォトリソグラフィーを始め、既存の微細加工技術で形成できることは明白であり、着色剤7の充填も、既存の凹版印刷技術等を用いれば実現可能である。すなわち、本実施例で原理実証ができているので、電子計算機等の出力装置を製作するには既存の技術を用いるだけで十分であり、新規の発明は要求されない。
実際の出力装置では、帯電または除電の後、一列の画素数だけ並べた半導体レーザもしくは発光ダイオードのアレイを走査し、必要な箇所で選択的に発光させて、書き込み、もしくは消去を行うことになる。藍、紅、黄、墨の4色の着色剤7をマトリックス状に連通微小空隙構造8の中に充填し、カラー画素を形成しておけば、カラー表示も可能である。半導体レーザや発光ダイオードの替わりに気体レーザ等を用い、走査を行っても、同様な効果が得られることは明白である。
上記実施例は一例に過ぎず、使われる材料等は上記実施例で述べたものに限定されるものでないことは言うまでもない。
上記実施例において、着色剤7のロウとして、パラフィンを含む広義のロウが適用可能であり、更には低融点の固形物は殆ど適用可能である。なお、予備実験の結果では、ロウよりも、トナーの原料であるエチレン酢酸ビニルのように、溶融したとき、粘度の高い材料の方が、表示の消去時に着色剤の回収効率は優れているようである。エチレン酢酸ビニル等のトナーを用いる場合には、電子写真プロセスにより感光体上に画素に対応するトナー像を形成しておき、そのトナーを連通微小空隙構造8の部分に転写し、溶融して着色剤7とすることも出来る。
絶縁体フィルム1も、上記のゴムの替わりに、ビニル樹脂を始め復元力のある他の材料を用いても構わない。なお、絶縁体フィルム1の絶縁抵抗があまり高くなければ、除電の工程は不要となる可能性がある。
連通微小空隙構造8の絶縁体フィルム1の側の開口も製作の容易さから、原理実証に図2に示すようなすり鉢状の構造のものを使用したが、図5に示すような絶縁体フィルム1の変形に合わせた開口を持つ構造にすれば、書き込みおよび消去の効率は向上し、コントラストのより大きな出力装置が実現できるはずである。
また、記録媒体12の別の形態として、図6に示す構造も適用可能である。即ち、すり鉢状の貫通穴を有する2枚のシートと、斜めの微細孔を持つシートを、連通微小空隙構造を形成するように接合したものである。この構造でも、着色剤7が絶縁体シート1の側にある非表示の時に、透明表示窓3の側から着色剤7が見えないようにすることが可能である。
絶縁体フィルム1の基材2への接合の方法も接着剤による接着の他に、熱による融着を始め、接合の目的に適う殆どの手段が適用可能である。
上記実施例では、帯電用と除電用に同じコロナ帯電器を用いたが、別々に設置しても構わない。また、コロナ帯電器5の替わりに、ピン電極を一列に並べたストリーマコロナ帯電器を用いれば、大電流が流せるため、高速帯電が可能になるはずである。
【発明の効果】
本発明によれば、帯電後、書き込みたい画素を選択的に加熱することにより、着色剤7を溶融させ、静電気力で絶縁体フィルム1を変形させて、着色剤7を連通微小空隙構造8を通して押し出すことにより表示を行う。一方、除電後、消去したい画素を選択的に加熱することにより、着色剤7を溶融させ、絶縁体フィルム1の復元力で着色剤7を連通微小空隙構造8を通して回収することにより表示の消去を行う。連通微小空隙構造8が図2のような構造になっているので、非表示とき、着色剤7は完全に絶縁体フィルム1の側に回収され、透明表示窓3の側から見えなくなるので、コントラストの高い、高品位の画像が得られる。加熱に用いる半導体レーザ等は非常に狭い範囲を選択的に加熱できるので、高解像度表示が可能である。また、本発明の出力装置の主要部である、絶縁体フィルム1を接合した記録媒体12は分離して持ち運べるため、紙のように携帯性にも優れている。すなわち本発明によれば、プリンタ等の記録装置による記録媒体(紙)の解像度や携帯性の優れた点を保持しながら、書き換えが可能な表示装置の利点をも併せ持つ理想の出力装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる出力装置の構造を概略的に示した図面である。
【図2】表示部の1画素を拡大した断面図である。
【図3】図2の記録媒体の1画素を透明表示窓の側から見た拡大図である。
【図4】表示部の1画素における書込み時の絶縁体フィルムの変形に伴う着色剤の移動の様子を示した断面図である。
【図5】記録媒体の1画素の連通微小空隙構造部近傍の他の構造例を示した断面図である。
【図6】記録媒体の1画素の連通微小空隙構造部近傍の更に別の構造例を示した断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁体フィルム
2 基材
3 透明表示窓
4 透明導電体層
5 コロナ帯電器
6 半導体レーザ
7 着色剤
8 連通微小空隙構造
9 スペーサ
10 透明カバー
11 白色マスク
12 記録媒体
13 空気穴
14 着色剤出口
15 表示部
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
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