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土木・建設
 
【発明の名称】納骨塔
【特許権者】
【識別番号】518134367
【氏名又は名称】富松 保幸
【住所又は居所】福岡県筑紫野市下見144-26
【特許権者】
【識別番号】518134378
【氏名又は名称】富松 敦子
【住所又は居所】福岡県筑紫野市下見144-26
【代理人】
【識別番号】100186510
【弁理士】
【氏名又は名称】豊村 祐士
【発明者】
【氏名】富松 保幸
【住所又は居所】福岡県筑紫野市下見144-26
【発明者】
【氏名】富松 敦子
【住所又は居所】福岡県筑紫野市下見144-26
【要約】
【課題】汚れ等が付着することを防止して設置後に長期間が経過しても位置情報を容易に取得可能に構成された納骨塔を提供すること。
【解決手段】上方に延伸され第1の内部空間8aを有する筒状の本体部材3と、第2の内部空間8bを有して前記本体部材3の上端に装着されるステンレス製の蓋部材4と、を備え、前記本体部材3に前記蓋部材4が装着された状態で、前記第1の内部空間8aに遺骨を収納する納骨塔1であって、前記蓋部材4は上に凸を成す砲弾形状に構成され、かつ、前記蓋部材4の少なくとも一部は外面が滑面とされており、前記滑面には、ステンレス協会が規定する#240、#320、#400、No.7、No.8のいずれかの表面仕上げが施されている。
【選択図】図3
選択図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に延伸され第1の内部空間を有する筒状の本体部材と、
第2の内部空間を有して前記本体部材の上端に装着されるステンレス製の蓋部材と、を備え、前記本体部材に前記蓋部材が装着された状態で、前記第1の内部空間に遺骨を収納する納骨塔であって、
前記蓋部材は上に凸を成す砲弾形状に構成され、
かつ、前記蓋部材の少なくとも一部は外面が滑面とされており、前記滑面には、ステンレス協会が規定する#240(細かい目の研磨仕上げ:P200番程度のベルトで研磨したもの)、#320(#240より、更に細かい目の研磨仕上げ:P320番程度のベルトで研磨したもの)、#400(鏡面に近い光沢、若干のすじがある:P400番バフによって研磨仕上げしたもの)、No.7(高度の反射率を持つ準鏡面仕上げ(研磨目あり):P600番の回転バフにより研磨したもの)、No.8(鏡に近い仕上げ(研磨目なし):最終研磨は鏡面用バフによる)のいずれかの表面仕上げが施され、
更に、前記滑面を球面の一部で構成したことを特徴とする納骨塔。
【請求項2】
前記納骨塔を屋外に設置したとき、前記滑面は、前記滑面に入射する太陽光を上方に反射することを特徴とする請求項1に記載の納骨塔。
【請求項3】
前記滑面は、前記球面を構成する球の中心を通る水平面から鉛直方向に向かう角度をα
とするとき、少なくとも45°≦α≦90°の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の納骨塔。
【請求項4】
前記本体部材は、地下に埋設される基底部と地上に露出する地上部とで構成され、前記基底部を地下に埋設することで、前記納骨塔が敷地に立設されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の納骨塔。
【請求項5】
前記地上部は、前記本体部材が上方に延伸される方向に対する垂直方向の断面形状が、厚みを有する円環状に構成され、
前記地上部の外周に平面で構成された凹部を備えることを特徴とする請求項4に記載の納骨塔。
【請求項6】
平面で構成された前記凹部に、故人に関する情報を付した平板状の磁器タイルを装着したことを特徴とする請求項5に記載の納骨塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に屋外に設置されて故人の遺骨を収納する納骨塔に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の総人口は今後2060年に向けて、約8,500万人程度まで減少すると見込まれており、死亡者数の増加によって、近年、特に都市部を中心に「墓不足」の問題が表面化している。例えば、2014年の時点においても、東京では従来型墓地(墓石型墓地)である青山霊園の抽選倍率は14.2倍となっており、また横浜市墓地問題研究会の報告書(平成22年9月)によれば、2026年までに横浜市内に9万4000区画の墓地の整備が追加的に必要になるとされている。このように墓の需要が高まっているにもかかわらず、墓の数が増えない最も大きな理由が土地不足にあると言われている。
【0003】
更に、都市部よりも人口減少に早く直面した地方の墓地においては、墓の所有者が都市部に居住するケースも多く、所有者の高齢化等が進むことで参拝そのものが次第に困難となってきている現状がある。今後、地方都市においてもコンパクトシティ化が推進され、都市機能が狭い範囲に集約していくと想定されることから、地方都市においても都市部から外れて交通インフラが適切に整備されていない郊外への参拝が困難となるおそれすらある。
【0004】
このような現状に鑑み、横浜市墓地問題研究会の報告書では、都市部において土地を有効に利用する「芝生型墓地」、「壁面式墓地」、「樹木・樹林型墓地」等の例が開示されている。これらは、いずれも墓を狭空間に密集して配置することで土地の有効利用を図り、更に従来の墓石型墓地に設置される墓と比較して墓自体の構造も簡素化されることから、より低コストで墓を提供することが可能になると考えられる。
【0005】
狭空間に墓の密集配置を可能とする構成として、例えば納骨時に使用される骨壺を密接に接合した状態で収納可能な円筒状の収納機構を備え、当該機構に装着される花崗岩を主成分とする蓋部を備えたカプセル墓地が開示されている(特許文献1)。
【0006】
このカプセル墓地は、円筒状の収納機構により骨壺を収納するための最小限の空間のみを確保することで墓本体の費用を低廉に抑え、また円筒状の収納機構は地中に埋め込まれ地表に露出した蓋部には花崗岩を使用することで保全が容易になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 登録実用新案第3206677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によれば、設置されたカプセル墓地は地上部に蓋部のみが露出しているものの、地表面から蓋部の頂点までの高さは決して十分なものとは言えず、故人の氏名等を刻銘したプレートは蓋部の上面に配置されるから、時間の経過とともに、当該プレート(最悪の場合は蓋部全体)が落葉や土砂によって隠ぺいされてしまうおそれがある。
【0009】
また、特許文献1のカプセル墓地の蓋部は水平面に対して傾斜しているものの、その角度は緩やかであり、土砂や塵芥等の汚れが付着しやすい構成となっている。
【0010】
さて、上述したように、土地を有効利用するために狭空間に密集して墓が配置された場合、参拝に訪れた遺族等の参拝者が故人の墓の位置を特定するのは、墓の密集度が高くなるほど一般に困難となる。しかも通常は「芝生型墓地」や「壁面式墓地」における墓の形態には個性がほとんど無いため、特に初めて参拝に訪れる者にとって故人の墓までたどり着くことには非常な困難を伴う。更に上述したように、墓を特定するための情報提示媒体(ここではプレート)が時間の経過とともに隠ぺいされうることも、墓の特定が困難となる理由の一つである。
【0011】
このように、個性に乏しくかつ時間の経過とともに個々を特定するための情報が喪失する可能性がある墓に参拝者を的確に誘導するには、墓の位置情報を活用することが有効だと考えられる。しかしながら、上述した報告書や特許文献1には、参拝者を墓に誘導するシステムを構成するために墓が備えるべき形状や、参拝者を墓へと誘導するためのシステムについては何ら示唆されていない。
【0012】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するべく案出されたものであり、その主な目的は、汚れ等が付着することを防止して設置後に長期間が経過しても位置情報を容易に取得可能に構成された納骨塔を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するためになされた本発明は、上方に延伸され第1の内部空間を有する筒状の本体部材と、第2の内部空間を有して前記本体部材の上端に装着されるステンレス製の蓋部材と、を備え、前記本体部材に前記蓋部材が装着された状態で、前記第1の内部空間に遺骨を収納する納骨塔であって、前記蓋部材は上に凸を成す砲弾形状に構成され、かつ、前記蓋部材の少なくとも一部は外面が滑面とされており、前記滑面には、ステンレス協会が規定する#240(細かい目の研磨仕上げ:P200番程度のベルトで研磨したもの)、#320(#240より、更に細かい目の研磨仕上げ:P320番程度のベルトで研磨したもの)、#400(鏡面に近い光沢、若干のすじがある:P400番バフによって研磨仕上げしたもの)、No.7(高度の反射率を持つ準鏡面仕上げ(研磨目あり):P600番の回転バフにより研磨したもの)、No.8(鏡に近い仕上げ(研磨目なし):最終研磨は鏡面用バフによる)のいずれかの表面仕上げが施され、更に、前記滑面を球面の一部で構成した納骨塔である。
【0014】
これによって、蓋部材の外面には塵芥等の汚れが付着しにくくなり、滑面の光反射面としての機能を長期にわたって維持することが可能になるとともに、球はその中心を通る全ての面に対して対称であるため、撮像対象としての蓋部材をどの方向から撮像したとしても形状に関する撮像条件をほぼ同一とすることが可能となる。
【0015】
また、本発明は、前記納骨塔を屋外に設置したとき、前記滑面は、前記滑面に入射する太陽光を上方に反射するようにしたものである。
【0016】
これによって、納骨塔の位置を計測するためドローン等を用いて上空から画像を撮像するにあたって、実質的に撮像位置の制約をなくすことが可能となる。
【0019】
また、本発明は、前記滑面を、前記球面を構成する球の中心を通る水平面から鉛直方向に向かう角度をαとするとき、少なくとも45°≦α≦90°の範囲に形成したものである。
【0020】
これによって、滑面に太陽光が入射したとき、任意の入射角において太陽光を必ず上方に反射することが可能となる。
【0021】
また、本発明は、前記本体部材は、地下に埋設される基底部と地上に露出する地上部とで構成され、前記基底部を地下に埋設することで、前記納骨塔が敷地に立設されるようにしたものである。
【0022】
これによって、納骨塔の設置コストを低廉化することが可能となる。
【0023】
また、本発明は、前記地上部は、前記本体部材が上方に延伸される方向に対する垂直方向の断面形状が、厚みを有する円環状に構成され、前記地上部の外周に平面で構成された凹部を備えるようにしたものである。
【0024】
これによって、凹部を切削加工のごとき簡易な手法で形成することが可能となる。
【0025】
また、本発明は、平面で構成された前記凹部に、故人に関する情報を付した平板状の磁器タイルを装着したものである。
【0026】
これによって、磁器タイルの製造コストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
このように本発明によれば、納骨塔の蓋部材の外面には塵芥等の汚れが付着しにくくなり、滑面の光反射面としての機能を長期にわたって維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の設置の態様を示す説明図
【図2】本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の側面図
【図3】(a)は本発明の第1実施形態に係る納骨塔1のうち有底型のIII-III断面図、(b)は本発明の第1実施形態に係る納骨塔1のうち無底型のIII-III断面図
【図4】本発明の第1実施形態に係る納骨塔1のIV-IV断面図
【図5】本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の蓋部材4に設けられた滑面50の範囲を説明する側面図
【図6】滑面範囲ARrefに任意の角度で入射した太陽光が特定の角度に反射される例を示す説明図
【図7】(a)は本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の蓋部材4の第1変形例、(b)は本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の蓋部材4の第2変形例を示す説明図
【図8】本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の蓋部材4の第3変形例を示す説明図
【図9】本発明の第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1におけるマーカ部材20の位置情報及び納骨塔1の位置情報を取得する過程を示す説明図
【図10】本発明の第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1における納骨塔1とマーカ部材20との位置関係を示す説明図
【図11】本発明の第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1の構成を示すブロック構成図
【図12】本発明の第2実施形態に係る納骨塔1の構成を示す斜視図
【図13】本発明の第2実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy2の構成を示すブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の設置の態様を示す説明図、図2は、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の側面図である。
【0030】
図1において1は納骨塔であり、納骨塔1は例えば芝生等で覆われた霊園敷地2に設置される。図2に示すように、納骨塔1は、本体部材3と蓋部材4とで構成されている。
【0031】
本体部材3は上方に延伸され筒状を成す例えば磁器で構成され、地下に埋設される基底部3aと地上に露出する地上部3bを含む。蓋部材4は例えばステンレスで構成される。即ち、納骨塔1は、地上に地上部3bと蓋部材4とが露出し、地下に基底部3aが埋設された態様で霊園敷地2に立設される。納骨塔1は全体としてロケットを想起させる形状とされており、この形状を通じて、故人の遺族に「死者の肉体(遺骨9(図3参照))を大地に還すとともに、その魂を天空に送り届ける」という観念をおこさせる。
【0032】
本体部材3を構成する磁器は主にガラス質材料を主成分とする砂を還元焼成して製造することから硬く焼き締まっており、材料に含まれる酸化鉄が還元され純白に近い色を呈する。磁器は緻密な焼結体であることから、吸湿性がなく長期間にわたって劣化せず、本体部材3を構成する材料として耐候性、耐久性の観点で適している。もちろん本体部材3として陶器を用いることも可能である。ただし陶器を用いる場合は、水分吸収を抑制するため表面に釉薬を塗布して焼成する等、実質的なガラスコートを施すことが望ましい。なお、基底部3aの高さL1は例えば500mm、地上部3bの高さL2は例えば500mm、本体部材3の幅L3は例えば200mmとされている。また筒状を成す本体部材3の厚みは特に制限されないが、第1実施形態においては約10mmとしている。
【0033】
蓋部材4は上方に凸を成す砲弾(弾頭)形状とされ、金属材料である例えばステンレスで構成されている。ステンレスは成形性、加工性に優れるとともに、ステンレスに含まれるクロムと酸素とが反応することで、表面に数nmの不動態皮膜を備えており耐候性、耐久性に優れることから、蓋部材4に適した材料である。なお、蓋部材4の高さL4は例えば150mmとされている。また蓋部材4の厚みは特に制限されないが、第1実施形態においては約5mmとしている。
【0034】
また、蓋部材4を構成するステンレスは、表面仕上げの種類によって光沢等を選択することが可能である。第1実施形態では、ステンレス協会が「ステンレスの主な表面仕上げ」として規定する#240(細かい目の研磨仕上げ:P200番程度のベルトで研磨したもの)、#320(#240より、更に細かい目の研磨仕上げ:P320番程度のベルトで研磨したもの)、#400(鏡面に近い光沢、若干のすじがある:P400番バフによって研磨仕上げしたもの)、No.7(高度の反射率を持つ準鏡面仕上げ(研磨目あり):P600番の回転バフにより研磨したもの)、No.8(鏡に近い仕上げ(研磨目なし):最終研磨は鏡面用バフによる)のいずれかの表面仕上げを施したものが好ましい。このように第1実施形態の納骨塔1を構成する蓋部材4は、少なくともその一部において外
面が滑面50となるように表面仕上げが施されており、この滑面50は光反射面として機能する。
【0035】
もちろん蓋部材4については、少なくとも滑面50を構成することが可能である限りにおいて、ステンレスのみならず例えば、耐候性鋼(Weathering Steel)を用いてもよい。耐候性鋼は普通鋼に銅、クロム、リン等を添加した高張力鋼であり、優れた耐候性と加工性とを備える。また、金属材料に替えて蓋部材4として磁器や少なくとも外面にガラスコートが施された陶器を用いてもよい。なお、蓋部材4のうち滑面50を構成すべき範囲については後述する。
【0036】
このように蓋部材4の外面を滑面50とすることで、蓋部材4の外面には物理的に塵芥が付着しにくくなり、光反射面としての機能が長期にわたって維持される。なお、滑面50に光触媒塗装を施してもよい。光触媒塗料に含まれる酸化チタンは、紫外線が照射されると親水性を発揮して蓋部材4の滑面50に水の薄膜を生成するとともに、更に触媒として作用して活性酸素を生成する。活性酸素は有機物を分解することから、分解された有機物は親水性をもつ滑面50の表面を雨の勢いで流される。このように光触媒塗料はセルフクリーニング機能を有しており、滑面50の光反射面としての機能を長期にわたって維持することが可能となる。また、酸化チタンは白色を呈し、赤外線を反射することから納骨塔1の外面及び内部の温度上昇を有効に抑制することが可能となる。
【0037】
図3(a)は本発明の第1実施形態に係る納骨塔1のうち有底型のIII-III断面図、図3(b)は本発明の第1実施形態に係る納骨塔1のうち無底型のIII-III断面図、図4は、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1のIV-IV断面図である。なお、図3(a),図3(b)において本体部材3に収納される収納物(遺骨9,骨壺10)については、理解を容易にするため断面として示していない。以降、図3(a)、図3(b)、図4に図2を併用して納骨塔1の構成について詳細に説明する。
【0038】
図3(a)に拡大して示すように、本体部材3の上端は、その外周部分を切削加工によって除去することで形成された切り欠き部11が設けられ、この切り欠き部11に蓋部材4の下端が嵌合されて、本体部材3に蓋部材4が装着される。
【0039】
本体部材3は有底の筒状に構成され空洞としての内部空間8a(第1の内部空間)を備え、また蓋部材4はキャップ状に構成され空洞としての内部空間8b(第2の内部空間)を備える。内部空間8aには、遺骨9を内部に収納/密封した骨壺10が本体部材3の下方から上方に向けて積み上げられる。骨壺10の上部には把持部12が設けられている。骨壺10の収納や撤去を行う者は、本体部材3から蓋部材4を外したうえで本体部材3の上端(開口)から手腕を差し入れて作業を行うこととなるが、骨壺10に把持部12を設けることで骨壺10の取り扱いが容易になり、収納や撤去の際の作業性が向上する。
【0040】
上述したように、納骨塔1においてはキャップ状の蓋部材4の下端が本体部材3の切り欠き部11に嵌合されるが、嵌合部分の微小な隙間から雨水等が浸入するおそれがある場合は、切り欠き部11にゴム等で構成されたパッキン等のシール部材(図示せず)を配置してもよい。また、蓋部材4が本体部材3から安易に外されないよう、例えば切り欠き部11の外周面にねじ山(おねじ)を形成しておき、蓋部材4の下端近傍の内表面にねじ山に案内される突起を設け、蓋部材4を回転させることで本体部材3に着脱するように構成してもよい。
【0041】
なお、骨壺10を構成する材料は特に限定されないが、遺骨9を長期にわたり保存する観点において、水分や酸素の透過性が低い金属材料、磁器、ガラス等で構成することが望ましく、また骨壺10に乾燥剤や窒素等の不活性ガスを封入してもよい。なお、蓋部材4
に形成された内部空間8bには、後述するように電子部品を含む機能部材が設けられてもよい。
【0042】
地上部3bの側面には、側面を切削加工した凹部で構成された磁器タイル配置部5が設けられている。磁器タイル配置部5は図4に示すように地上部3bの外周に平面を構成する。磁器タイル配置部5には、故人の氏名、戒名、写真等が焼き付け印刷された平板状の磁器タイル6が嵌めこまれ、耐候性の接着剤によって固着される。焼き付き印刷は耐久性・耐摩耗性に優れるため、屋外環境においても半永久的に印刷された情報及び美観を維持することが可能である。また、磁器タイル配置部5を平面として構成することで、磁器タイル6を平板状とすることが可能となり、磁器タイル6の製造コストを低減することが可能となる。
【0043】
また、本体部材3の上端の近傍には通気口7aが、蓋部材4の下端の近傍には通気口7bが設けられている(図2参照)。図3(a)に拡大して示すように、通気口7aによって本体部材3の内部空間8aと外部とが連通され、また通気口7bによって蓋部材4の内部空間8bと外部とが連通されている。通気口7a,7bは内部空間8a,8bから外部に向けて、下方に傾斜するように設けられている。通気口7a,7bによって特に夏場における納骨塔1の内部空間8a,8bの温度上昇が抑制されるとともに、通気口7a,7bを傾斜して設けることで、雨水が納骨塔1の内部に侵入することが防止される。
【0044】
もちろん、通気口7a,7bの個数や配設する部位は特に限定されないが、納骨塔1内部の温度上昇を抑制する観点から、本体部材3に設けられた通気口7aについては本体部材3の上端近くに設けることが望ましく、また蓋部材4に設けられた通気口7bについては内部空間8bから外部に向けて下方に傾斜させる必要から、蓋部材4の下端近傍(即ち、垂直部分)に設けることが望ましい。また、通気口7a,7bは、その一方のみを設けてもよく、納骨塔1が設置される屋外環境が高温とならない地方・地域においては、通気口7a,7bそのものを設けない構成としてもよい。
【0045】
通気口7a,7bの内部空間8a,8b側の開口部には、例えばステンレスで構成されたメッシュ状シート15が配置されている。メッシュ状シート15によって、外部から内部空間8a,8bに虫や塵芥等が浸入することが防止される。
【0046】
さて、第1実施形態では図3(a)に示すように納骨塔1の本体部材3の下端を有底としているが、図3(b)に示ように本体部材3の下端を無底としてもよい。この態様では、遺骨9を保存する観念よりも、大地に還すという観念の方が大きく想起されることとなる。
【0047】
図5は、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の蓋部材4に設けられた滑面50の範囲を説明する側面図である。図示するように、蓋部材4の外面は球S1の上半球面を含み、球の中心Osfを通る水平面から鉛直方向に向かう角度をαとするとき、この上半球面のうち、少なくとも45°≦α≦90°の範囲を滑面50として最低限必要な範囲(以降、単に「滑面範囲ARref」と称することがある。)としている。
【0048】
地表おいて太陽高度は、0°(例えば、水平線上に太陽が現れた時点)-90°(例えば、赤道における春分/秋分の日における南中時)の範囲となる。この範囲において、太陽高度が0°の際に滑面範囲ARrefに方向D1(水平方向)から入射した太陽光は、球の中心Osfからα=45°上方の球面上の点PS1において方向D2(鉛直方向(直上))に反射される。また、太陽高度が90゜の際に滑面範囲ARrefに方向D3から入射した太陽光は、球の中心Osfからα=45°上方の球面上の点PS2において方向D1に反射される。このことは、滑面範囲ARrefに太陽光が入射したとき、任意の入
射角において太陽光は必ず上方(水平面よりも上方)に反射されることを意味しており、これによって日照さえあれば時刻にかかわらず、上空の任意の位置から滑面範囲ARrefで反射された太陽光を観測できる。
【0049】
図6は、滑面範囲ARrefに任意の角度で入射した太陽光が特定の角度に反射される例を示す説明図である。図6では、球S1の上半球面の一部としての滑面範囲ARrefにおいて、方向D1、方向D10、方向D11、方向D12、方向D3の順に、水平面に対する太陽光の入射角度が大きくなる状況を示しており、これらの各入射角度において、太陽光が方向D2(鉛直方向(真上))に反射される点PS1,点PS10、点PS11、点PS12、点PS13が存在することを示している。即ち、滑面範囲ARrefにおいては、太陽光の入射角度によらず、太陽光の一部は必ず鉛直方向に反射される。これによって、例えば一日のうちで太陽高度が刻々と変化したとしても、ある一定の方向(ここでは鉛直方向)から太陽光の反射光を観測できる。
【0050】
後述するように、滑面範囲ARrefで反射された太陽光はカメラ等の撮像部21(図9参照)によって上空から撮像される。球はその中心を通る全ての面に対して対称であるため、撮像対象としての蓋部材4をどの方向から撮像したとしても形状に関する撮像条件がほぼ同一となる。また蓋部材4に上述したような特性を持つ滑面範囲ARrefを設けることで、蓋部材4に入射した太陽光の反射光をより広い範囲において、直接反射光成分として撮像することが可能となり、撮像部21が備える個々の撮像素子へ入射光量の観点において撮像条件がほぼ同一となる。即ち、ドローン26(図9参照)等を用いて納骨塔1の位置を計測するための画像を上空から撮像するにあたって、実質的に撮像位置の制約を大幅に緩和することが可能となる。
【0051】
なお、蓋部材4において滑面範囲ARref以外の範囲(以降、非滑面範囲ARnと称することがある。)においては、太陽光の反射機能を備えている必要はなく、非滑面範囲ARnにおいては、例えばステンレスの表面仕上げを滑面範囲ARrefと比較して廉価な仕様として、蓋部材4の製造コストを低減することが可能である。もちろん、非滑面範囲ARnの表面仕上げを滑面範囲ARrefと同一にしてもよく、この場合は蓋部材4の全範囲に滑面50が形成される。
【0052】
図7(a)は本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の蓋部材4の第1変形例、図7(b)は本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の蓋部材4の第2変形例を示す説明図である。図5を用いて説明した蓋部材4は球S1の上半球面を全て含み、この上半球面の一部に滑面50を形成していた。図7(a)に示す第1変形例は滑面50が形成される球面を含む球S2の径を球S1より小さくし、図7(b)に示す第2変形例は滑面50が形成される球面を含む球S3の径を図7(a)に示す球S2より更に小さく構成したものである。
【0053】
第1及び第2変形例では、蓋部材4は球S2,球S3の上半球面の一部を含み、結果的に蓋部材4に含まれる滑面範囲ARrefが、図5に示す蓋部材4よりも面積的に小さく構成されている。これらも、蓋部材4の外面は球S2,球S3の上半球面のうち球の中心Osfを通る水平面から鉛直方向に向かう角度をαとするとき、45°≦α≦90°の範囲を滑面範囲ARrefとしていることから、蓋部材4の滑面50に入射した太陽光を上方に有効に反射することができる。
【0054】
ただし、滑面範囲ARrefを面積的に小さくすると反射光の光束が減少する。また、太陽光を広範囲にわたって均等に反射するという観点では、蓋部材4の製造工程において滑面50の表面の曲率や表面粗さ等を高い精度で管理する必要が生じることから、滑面範囲ARrefを極端に小さくすべきではない。撮像条件にも依存するが、滑面範囲ARrefが形成される球の径は100mm以上であればよい。
【0055】
図8は、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1の蓋部材4の第3変形例を示す説明図である。図8に示す蓋部材4では、滑面範囲ARrefが占める幅は本体部材3の幅L3と同一とされ、滑面範囲ARrefは構成のうえで最大化されている。この構成によれば、反射光の光束は最大となり、また滑面範囲ARrefを形成する際の精度的制約も緩和されることとなる。
【0056】
図9は、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1におけるマーカ部材20の位置情報及び納骨塔1の位置情報を取得する過程を示す説明図である。図示するように第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1(以降、「誘導システムSy1」と称することがある。)は、第1マーカ20a、第2マーカ20b、第3マーカ20c(以降、これらを区別しないときは、単に「マーカ部材20」と称することがある。)、蓋部材4に滑面50が形成された複数の納骨塔1、納骨塔1及びマーカ部材20を上空から撮像(空撮)する撮像部21を含んでいる。
【0057】
マーカ部材20のそれぞれにはGPS衛星22から送信される信号に基づき位置情報(緯度・経度)を取得するマーカ位置情報取得部23が設けられている。ここでいうGPS衛星22としては、2018年11月1日から運用が開始される予定の「みちびき」サービスで用いられる準天頂衛星を想定しているが、既存のGPS衛星22であってもよい。ただし既存のGPS衛星22を利用する場合、位置計測精度は10m程度と粗いことから、納骨塔1が密集して設置されるような状況を考慮すると、そのままでは誘導システムSy1に用いることができない。
【0058】
マーカ位置情報取得部23は既存のGPS衛星22から送信される信号を所定の期間(例えば30分程度)にわたって大量に(例えば1秒間隔で)受信し、これから得られる複数の位置情報を平均することで、「みちびき」サービス(センチメータ級測位補強サービス)で想定されている精度(6〜12cm程度)と同等、あるいはそれ以上の精度(2〜3cm程度)でマーカ部材20の位置を計測することが可能である。マーカ位置情報取得部23で計測されたマーカ部材20の位置情報は、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格に基づきインターネット等のネットワーク24に送出される。もちろん、マーカ部材20の近辺にWiFiルータを設けて、取得した位置情報を無線LANによってネットワーク24に送出してもよい。各マーカ部材20の位置情報はネットワーク24を介してサーバ装置25に送られる。
【0059】
撮像部21は、例えばドローン26に搭載されたカメラであり、カラーイメージセンサ(図示せず)等で構成されている。ドローン26によって空撮を行う際における撮像部21の撮像範囲A1には第1マーカ20a,第2マーカ20b,第3マーカ20c及び複数の納骨塔1が含まれ、撮像部21によって各マーカ部材20及び位置情報を算出すべき納骨塔1が含まれるカラー静止画が撮像され、撮像された画像はネットワーク24を介してサーバ25に送信される。もちろん、サーバ装置25に送られる画像はカラー動画であってもよい。画像がカラー動画の場合はサーバ装置25においてフレーム画像が切り出されて静止画が取得される。また、各マーカ部材20及び複数の納骨塔1は、1つの画像にすべてが撮像されていなくてもよく、複数のカラー画像について特徴点に基づき位置合わせを行って一枚に合成されたカラー画像が得られればよい。なお、空撮に際してドローン26の使用は必須のものではなく、例えば霊園全体を見渡せるビル等の高所に撮像部21を設置してもよい。
【0060】
各マーカ部材20は、少なくとも撮像される側(即ち、撮像部21と対向する部位)の表面に散乱面が構成され、かつ特定の色に彩色されている。この彩色は霊園敷地2(図1、図10を参照)において通常は採用されない色で施され、第1実施形態では例えば赤色
とされている。マーカ部材20の表面は散乱面とされていることから、マーカ部材20に入射した太陽光はその表面で散乱され、マーカ部材20については、赤色の散乱光成分(有彩色散乱光成分)が撮像部21によって撮像される。
【0061】
他方、上述したように納骨塔1の蓋部材4は滑面50を備えており、滑面50では太陽光が直接反射されるから、納骨塔1については、白色(即ち、無彩色)の直接反射光成分が撮像部21によって撮像される。
【0062】
撮像部21を構成するカラーイメージセンサの各画素(Pixel)に太陽光の直接反射光成分が入射すると、通常は画素に蓄積される電荷がオーバーフローして、画素出力が飽和する。即ち、カラーイメージセンサのRGB出力が例えば8bit量であれば各チャネルとも255の最大値となるか、もしくは最大値に近い極めて大きな値が出力される。これに対して、カラーイメージセンサに有彩色散乱光成分(ここでは赤色)が入力すると、R(Red)の値は大きくなるが(撮像条件にもよるが、一般に出力が飽和することはない)、G(Green),B(Blue)の各色成分については小さな値が出力される。これによって、撮像された画像全体からマーカ部材20と納骨塔1とを明確に分離することが可能となる。
【0063】
なお、マーカ部材20に基づく有彩色散乱光成分及び納骨塔1の滑面50に基づく無彩色直接反射光成分が、撮像部21を構成するカラーイメージセンサの複数画素に跨って撮像されるときは、その画素群の中心がマーカ部材20及び納骨塔1の位置に対応しているとみなせばよい。
【0064】
図10は、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1における納骨塔1とマーカ部材20との位置関係を示す説明図である。図10においては、第1マーカ20a及び第2マーカ20bは同一の経度に配置され、また第2マーカ20b及び第3マーカ20cは同一の緯度に配置されているものとする。なお、ここでは第1マーカ20aは第2マーカ20bよりも北側(より緯度(北緯)が大きくなる側)に配置され、第3マーカ20cは第2マーカ20bよりも東側(より経度(東経)が大きくなる側)に配置されているものとする。
【0065】
上述したように、各マーカ部材20の位置情報は高精度に取得されており、更に、各マーカ部材20と複数の納骨塔1を含む画像が得られていれば、画素数を計数することで図示するように位置Pmに配置された納骨塔1の緯度及び経度は、以下の式を用いて単純な計算で求められる。
Pm(緯度)=第2マーカ20bの緯度+(第1マーカ20aの緯度-第2マーカ20bの緯度)×m2/m1・・・(式1)
Pm(経度)=第2マーカ20bの経度+(第3マーカ20cの経度-第2マーカ20bの経度)×n2/n1・・・(式2)
【0066】
なお、上述の説明においては、説明を簡単にするため第1マーカ20aと第2マーカ20bとは同一の経度に配置され、また第2マーカ20bと第3マーカ20cとは同一の緯度に配置されているものとしたが、少なくとも3つのマーカ部材20の緯度と経度とが既知であれば、撮像された画像から3つのマーカ部材20が置かれた点を辺に含み、かつ縦の辺が緯度方向と平行で横の辺が経度方向と平行な長方形の3頂点を基準点として上記(式1),(式2)に基づいて個々の納骨塔1の位置を高精度に算出することが可能である。
【0067】
図11は、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1の構成を示すブロック構成図である。図示するように、誘導システムSy1は、撮像部21と、マーカ
位置情報取得部23(いずれも上述)と、サーバ装置25と、霊園案内所27に設置されたデジタルサイネージ28と、納骨塔1に参拝する参拝者が所持する情報端末29から構成される。
【0068】
サーバ装置25は、サーバ演算部30と、サーバ記憶部31と、納骨塔位置情報算出部32と、データベース33と、データ受信部34と、納骨塔位置情報送信部35と、検索項目受信部36とを含み、これらの各構成要素はバス37で接続されている。サーバ演算部30は、CPU(Central Processing Unit)等で構成され、サーバ演算部30はサーバ記憶部31を構成するROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)等に記憶された制御プログラムに従って他の構成要素を制御する。
【0069】
データベース33は、RAID(Redundant Arrays of Independent Disks)構成等を備えるいわゆる大容量ストレージ内に構築されている。データベース33には、個々の納骨塔1に予め割り振られた識別子としてのID(identifier)、納骨塔1の位置情報(緯度・経度情報)、納骨塔1の所有者(権利者)に関する個人情報、納骨塔1に遺骨9が収納された故人に関する情報、所有者の参拝履歴、納骨塔1の最新の状態を示す静止画や動画等が関連付けられて蓄積されている。
【0070】
以降、図11に図9を併用して第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1の動作について詳細に説明する。
【0071】
まず撮像部21で撮像された納骨塔1及びマーカ部材20を含む撮像範囲A1(図9参照)についての画像と、マーカ位置情報取得部23で計測された各マーカ部材20の位置情報がネットワーク24を介してデータ受信部34に入力される。データ受信部34で受信された撮像範囲A1についての画像と各マーカ部材20の位置情報に基づき、納骨塔位置情報算出部32は上述した(式1),(式2)に基づいて個々の納骨塔1の位置を算出して予め決定しておいた各納骨塔1のIDと関連付けてデータベース33に格納する。即ち、撮像された画像に基づき霊園運営者が納骨塔1を指定してIDを付与し、納骨塔位置情報算出部32が指定された納骨塔1の位置情報を算出した時点で、納骨塔1のIDと位置情報が関連付けられる。
【0072】
なお、納骨塔位置情報算出部32は独立したハードウェアによって個々の納骨塔1の位置情報を算出してもよいし、サーバ記憶部31に格納されたプログラムに基づいてサーバ演算部30が個々の納骨塔1の位置を算出してもよい。
【0073】
さて、納骨塔1を使用したい者(故人の遺骨9を埋葬する者。以降、「所有者」と称することがある。)が霊園運営者から納骨塔1の所有権(使用権)を購入するとき、霊園運営者は、未使用の納骨塔1の位置を(将来の)所有者に提示し、(将来の)所有者は未使用の納骨塔1の中から、所望の納骨塔1を選択する。この選択行為に基づいて、霊園運営者は納骨塔1に予め付与されたID及び当該納骨塔1の位置情報と、所有者の個人情報(即ち、氏名、住所、写真、連絡先、所有者が保有する情報端末29のメールアドレス等)とを関連付けてデータベース33に記憶する。更に所有者は故人に関する情報(即ち、氏名、戒名、写真等)を霊園運営者に通知する。霊園運営者はこれを例えば所有者の氏名と関連付けてデータベース33に記憶する。更に、霊園運営者は、納骨塔1のIDから納骨塔1の位置情報を参照して、季節毎の納骨塔1の写真や動画を撮影し、これをID(または所有者の氏名)と関連付けてデータベース33に記憶するようにしてもよい。
【0074】
霊園の霊園案内所27に設置されたデジタルサイネージ28は、例えば液晶パネルや有機ELパネルを用いた大型のディスプレイと、ディスプレイに重畳配置されたタッチパネル(共に図示せず)等で構成されている。またデジタルサイネージ28はサーバ装置25
との間で情報の送受信が可能とされている。納骨塔1の所有者や故人に縁ある参拝者が納骨塔1に参拝するにあたって、参拝者がデジタルサイネージ28のタッチパネルを操作して、例えば所有者の氏名等を入力すると、所有者の氏名の情報はサーバ装置25に送信され、サーバ演算部30はデータベース33にアクセスして、当該所有者と関連付けられた情報(納骨塔1の位置情報を含む)を取り出し、霊園敷地2のマップ情報と重ねた画像を生成して、これをデジタルサイネージ28に送信する。これによって、参拝者は参拝すべき納骨塔1のおよその位置を把握することができる。
【0075】
即ち、誘導システムSy1は、納骨塔1の位置に関連する種々の情報を持ったデータを総合的に管理・加工し、視覚的に表示する点で、いわゆる地理情報システム(GIS:Geographic Information System)でもある。
【0076】
さて、参拝者は自己が所持するスマートフォーンやタブレット等の情報端末29に参拝者を納骨塔1へ誘導するアプリケーション(以降、「誘導アプリ」と称することがある。)をインストールしておく。誘導アプリを起動すると、情報端末29のディスプレイ(図示せず)には、納骨塔1の所有者、故人の氏名、納骨塔1に予め付与されたID等の検索項目を入力する検索用画面が表示される。参拝者がそれらの検索項目を少なくとも1つ入力すると、検索項目に対応した文字列や値(以降、「値」と称することがある)はLTEやWiFi等の無線LANを介してネットワーク24に送信され、ネットワーク24を経由してサーバ装置25の検索項目受信部36は検索項目と値とを受信する。
【0077】
サーバ演算部30は検索項目受信部36が受信した値(例えば所有者の氏名)に基づいてデータベース33を検索し、所有者が所有する納骨塔1の位置情報を抽出する。そしてサーバ演算部30は、抽出した納骨塔1の位置情報を、納骨塔位置情報送信部35を介してネットワーク24に送信し、納骨塔1の位置情報はネットワーク24を介して情報端末29に送信される。
【0078】
情報端末29で動作中の誘導アプリは、常時GPS衛星22からの信号を受信しており、誘導アプリはGPS衛星22から受信した信号に基づき情報端末29の位置情報(即ち、参拝者の位置情報(ここでは位置Ps))を算出するとともに、サーバ装置25から受信した納骨塔1の位置情報(ここでは位置Pd)を関連づけて(即ち、二つの位置関係が分かるように)マップ上に重畳表示する。参拝者の位置情報は周期的に更新されるため、参拝者は自己の位置Psと納骨塔1の位置Pdを確認しつつ納骨塔1まで誘導される。
【0079】
このように、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1は、複数のマーカ部材20と、マーカ部材20に設けられ、マーカ部材20の位置情報を取得するマーカ位置情報取得部23と、納骨塔1及びマーカ部材20の両方を上空から撮像する撮像部21と、マーカ位置情報取得部23が取得したマーカ部材20の位置情報と撮像部21で得られた画像とに基づき、納骨塔1の位置情報を算出する納骨塔位置情報算出部32と、納骨塔1への参拝者が所持し、参拝者の位置情報を取得する情報端末29と、納骨塔位置情報算出部32で得られた納骨塔1の位置情報を、情報端末29に送信する納骨塔位置情報送信部35と、を備え、情報端末29は、参拝者の位置情報と納骨塔1の位置情報とを関連づけて表示する。
【0080】
更に、本発明の第1実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy1にあっては、マーカ部材20のうち、少なくとも撮像部21に対向する表面には彩色された散乱面が形成され、撮像部21は、マーカ部材20についてはマーカ部材20の表面で散乱された有彩色散乱光成分を撮像し、納骨塔1については納骨塔1の蓋部材4に形成された滑面50で反射された無彩色直接反射光成分を撮像する。
【0081】
さて、第1実施形態においては、図11に示すように納骨塔1の所有者が所持する情報端末29は、ネットワーク24を介してサーバ装置25に接続する。もちろん、構成上は情報端末29以外のPC(personal computer)やタブレットであっても、サーバ装置25にアクセスが可能である。サーバ演算部30はデータベース33へのアクセス権を管理しており、納骨塔1の所有者はタブレット等の画面で、例えば所定のパスワード等を入力することでデータベース33にアクセスすることができる。
【0082】
上述したようにデータベース33には、霊園運営者によって撮像された例えば季節毎の納骨塔1の写真や動画の画像データが蓄積されており、納骨塔1の所有者は、所有する納骨塔1の最新の画像を閲覧することが可能である。これによって、納骨塔1の所有者は墓参り等が困難な状況であっても、例えば遠隔地にある自宅から自己が所有する納骨塔1の画像を閲覧し、疑似的に参拝することができる。
【0083】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図12は、本発明の第2実施形態に係る納骨塔1の構成を示す斜視図である。図示するように、第2実施形態に係る納骨塔1も本体部材3と、この本体部材3の上端に装着される蓋部材4を備え、蓋部材4の表面には滑面50が形成されており、基本的な構成は第1実施形態で説明した納骨塔1と同等である。ただし、第2実施形態においては、納骨塔1は蓋部材4の頂部に発光部40を備え、更に蓋部材4の内部空間8b(図3も参照)には、納骨塔制御部41が収納されている点が第1実施形態とは異なる。
【0084】
発光部40は、蓋部材4の頂部に設けた開口(図示せず)に配置されたLED(light emitting diode)等の発光素子(図示せず)を含み、発光素子の上方は、蓋部材4と連続面を構成する形状とされた樹脂製の板材(図示せず)を蓋部材4に装着することで封止されている。板材は耐候性を考慮するとガラス製とすることが好ましいが、紫外線によって劣化しにくい例えばポリカーボネート製であってもよい。そして、板材の内部空間8bの側は粗面に加工されており、発光素子が出射する光を散乱させる。このように、発光部40は、参拝者を納骨塔1に的確に誘導する観点に基づき、あらゆる方向からの視認性を考慮して、光を散乱させる加工が施されて蓋部材4の頂部に配置されている。
【0085】
以下、蓋部材4において発光部40が設けられるべき範囲について図6を併用して説明する。第1実施形態で詳細に説明したように、蓋部材4の一部には滑面50が形成され、滑面50は太陽光を上方に反射する機能(以降、「太陽光反射機能」と称することがある)を持つ。発光部40は蓋部材4の頂部に設けられることから、特に太陽高度が大きくなった場合であっても、太陽光反射機能が常に確保されるよう、発光部40を設置する範囲が決定されるべきである。
【0086】
太陽高度(南中高度)が最大となる夏至の日を想定すると、例えば東京都(緯度(北緯)=35°)における南中高度Hsは、およそ次のようになる。
南中高度Hs(東京都)=90°-35゜+23°=78°・・・(式3)
また、那覇市(緯度(北緯)=26°)においては、およそ次のようになる。
南中高度Hs(那覇市)=90°-26°+23°=87°・・・(式4)
【0087】
日本国内において、より南中高度が大きい那覇市においても、本発明に係る納骨塔1の太陽光反射機能を常に確保するためには、図6に示すように、蓋部材4の上半球面のうち球の中心Osfを通る水平面から鉛直方向に向かう角度をβとするとき、87°≦β≦90°の範囲に発光部40を設ければよい。これを一般化すると、納骨塔1が設置される場所の緯度をLat1とするとき、蓋部材4において発光部40が設置されるべきβの範囲は、およそ以下のようになる。
(南中高度Hs(Lat1)=90°Lat1+23゜)≦β≦90゜・・(式5)
このように発光部40をβの範囲に設ければ、日時に関わらず納骨塔1の太陽光反射機能は確実に確保される。
【0088】
図13は、本発明の第2実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy2の構成を示すブロック構成図である。誘導システムSy2は、発光部40と、納骨塔制御部41と、納骨塔1に参拝する参拝者が所持する情報端末29とから構成されている。納骨塔制御部41は、発光制御部42と、発信機43と、受信機44と、納骨塔演算部45と、納骨塔記憶部46とを含み、これらの構成要素はバス47で接続されるとともに、図示しないバッテリ電源によって駆動される。なお、このバッテリ電源は遺族等の参拝者が墓参り等の際に交換するか、霊園運営者が交換することによってメンテナンスが図られる。
【0089】
納骨塔演算部45はCPU等で構成され、納骨塔記憶部46を構成するROM、RAM等に記憶された制御プログラムに従って他の構成要素を制御する。発光制御部42はLEDドライバを備え、納骨塔演算部45は発光制御部42に対してON(1)/OFF(0)のステート信号を出力することで発光部40の点灯と消灯とを制御する。
【0090】
発信機43は、納骨塔記憶部46に予め記憶された当該発信機43の固有の識別情報を発信/送信する無線標識であり、代表的にはいわゆるBeaconと称される機器が相当する(以降、発信機43を「Beacon」と称することがある。)。発信機43には所定の制御部(図示せず)が組み込まれており、この制御部に制御されて発信機43は固有の識別情報を所定の周期で送信する。なお、固有の識別情報は、納骨塔1の所有者が保持する情報端末29にも記憶されている。もちろん固有の識別情報を、第1実施形態において説明したデータベース33(図11参照)に記憶しておき、納骨塔1の所有者が情報端末29からデータベース33にアクセスして情報端末29に取り込めるようにしてもよい。
【0091】
発信機43は、例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)規格に準拠した通信モジュール(図示せず)を備え、各納骨塔1に対応付けられた固有の識別情報を例えば10〜20秒毎に周期的に送信(アドバタイズ)する。固有の識別情報は、一般にproximity UUID、major、minorと称される3つの識別子から構成されている。
【0092】
proximity UUIDは、128bitのUUID(Universally Unique Identifier)で表現され、ここでは霊園運営者が提供するサービスの識別子として用いられる。Beaconがアドバタイズするデータには必ずproximity UUIDが含まれている。majorは、16bitで表現された値で、同一のproximity UUIDを持つBeaconの各々についてユニークな識別子として利用される。minorは、16bitで表現された値で、同一のproximity UUID及びmajorを持つBeaconの識別子として利用される。なお、BLE規格では、Beaconがアドバタイズする情報に、majorとminorとを含めるか否かは任意となっているが、第2実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy2においては、beaconは少なくともproximity UUIDとmajorとを送信し、個々のbeaconに対応した納骨塔1を識別可能にしている。
【0093】
なお、発信機43が発信する電波の到達距離はおよそ20〜30m程度とされているが、見通しが良好な場合等、環境条件によって到達距離は50m程度に及ぶこともある。情報端末29は、BLE規格に準拠した受信モジュール(図示せず)を備え、発信機43がアドバタイズする情報を受信するとproximity UUID、major、minor(即ち、固有の識別情報)の値を抽出する。そして、予め情報端末29に記憶されている固有の識別情報と受信した固有の識別情報とが一致すると、情報端末29は納骨塔制御部41に対してアクノリッジ信号を返信する。
【0094】
納骨塔制御部41の受信機44はアクノリッジ信号(所定の情報)を受信すると、受信
が完了したことを納骨塔演算部45に通知する。この通知を受けた納骨塔演算部45は、発光制御部42に対して発光部40を点灯するよう指示を出力し、これを受けた発光制御部42は発光部40を構成するLEDを所定のパターンで点滅させる。このLEDの点滅は、アクノリッジ信号が所定期間(例えば3分間)において一度も受信されない状態となるまで継続される。
【0095】
このように第2実施形態に係る納骨塔1への誘導システムSy2は、納骨塔1に参拝者が近接すると発光部40が発光して、納骨塔1の所有者(あるいは納骨塔1に関連付けられた固有の識別情報を自己が所持する情報端末29に記憶させることができる参拝者)は、特に夜間において納骨塔1まで確実に誘導される。
【0096】
さて、本発明に係る納骨塔1は狭い土地を有効利用すべく、多数の納骨塔1が密集配置されることを想定しているが、上述したように発信機43が発信する電波の到達距離が仮に50mに及んだ場合、納骨塔1から参拝者までの距離が大きいことから、発光部40が発光しても参拝者は容易に納骨塔1を探し当てることが困難となる。
【0097】
そこで、納骨塔1においては、本体部材3を絶縁材料で構成し、かつ蓋部材4を導電材料(ここではステンレス)で構成し、少なくとも発信機43は蓋部材4に設けられた内部空間8bに配置している。このようにすることで、発信機43から発信された電波は、蓋部材4ではシールドされ、本体部材3のみから伝搬されることとなる。これによって、結果的に電波の到達距離(即ち、参拝者が所持する情報端末29がアドバタイズを受信することが可能な範囲)が制限され、例えば参拝者が参拝する納骨塔1まで10m以内といった納骨塔1までの距離が至近となった場合に納骨塔1の発光部40を発光させて、納骨塔1への誘導機能を発揮させることが可能となる。
【0098】
以上、本発明に係る納骨塔1及び納骨塔1への誘導システムSy1,Sy2について特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、第1実施形態で説明した誘導システムSy1と第2実施形態で説明した誘導システムSy2を合わせもつ納骨塔1までの誘導システムSy3を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る納骨塔及び納骨塔への誘導システムは、汚れ等が付着することを防止して設置後に長期間が経過しても位置情報を容易に取得可能に構成された納骨塔、及び取得された位置情報に基づき参拝者を納骨塔まで的確に誘導する納骨塔への誘導システムを構築できることから、狭い土地に多数の納骨塔が設置される、特に都市部における霊園等に好適に応用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 納骨塔
3 本体部材
4 蓋部材
7a,7b 通気口
8a,8b 内部空間
11 切り欠き部
20 マーカ部材
20a 第1マーカ
20b 第2マーカ
20c 第3マーカ
21 撮像部
22 GPS衛星
23 マーカ位置情報取得部
24 ネットワーク
25 サーバ装置
28 デジタルサイネージ
29 情報端末
30 サーバ演算部
31 サーバ記憶部
32 納骨塔位置情報算出部
33 データベース
34 データ受信部
35 納骨塔位置情報送信部
36 検索項目受信部
40 発光部
41 納骨塔制御部
42 発光制御部
43 発信機
44 受信機
45 納骨塔演算部
46 納骨塔記憶部
50 滑面
ARref 滑面範囲
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10
【図11】
図11
【図12】
図12
【図13】
図13
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