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家庭用品U
 
【発明の名称】線香立て用治具
【出願人】
【識別番号】505317539
【氏名又は名称】湯澤 民彌
【住所又は居所】埼玉県川越市萱沼2322−2
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100068157
【氏名又は名称】今岡 良夫
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
【発明者】
【氏名】湯澤 民彌
【住所又は居所】埼玉県川越市萱沼2322−2
【要約】
【課題】
線香を線香容器に体裁良くかつ効率良く立てることができる香立て用治具を提供する。
【解決手段】
灰等の不燃性の粉体を収納する上端開口の線香容器に用いる線香立て用治具であって、粉体の表面に載置して用いる線香立て本体2と、粉体への線香の差込み代を規制するためにこの粉体中に埋め込んで用いるストッパー部材20とを備え、
上記線香立て本体2は、上方から見て同心状に重なる線香挿通孔10をそれぞれ同数穿設した上下一対の案内板4,6を、一定間隔を存して連結部8で剛結合させてなり、
上記ストッパー部材20は、少なくとも線香容器C内へその開口を介して挿入しかつ水平状態で設置可能なサイズを有するストッパー板22を有するとともに、このストッパー板22の上面から線香の差込み代に相当する長さを有する垂直棒24を起立させてなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灰等の不燃性の粉体を収納する上端開口の線香容器に用いる線香立て用治具であって、粉体の表面に載置して用いる線香立て本体2と、粉体への線香の差込み代を規制するためにこの粉体中に埋め込んで用いるストッパー部材20とを備え、
上記線香立て本体2は、上方から見て同心状に重なる線香挿通孔10をそれぞれ同数穿設した上下一対の案内板4,6を、一定間隔を存して連結部8で剛結合させてなり、
上記ストッパー部材20は、少なくとも線香容器C内へその開口を介して挿入しかつ水平状態で設置可能なサイズを有するストッパー板22を有するとともに、このストッパー板22の上面から線香の差込み代に相当する長さを有する垂直棒24を起立させてなることを特徴とする線香立て用治具。
【請求項2】
上側の案内板4を、ステンレス鋼等の熱伝導性素材で形成したことを特徴とする、請求項1記載の線香立て用治具。
【請求項3】
上記案内板4,6の各線香挿通孔の孔面上縁に面取り部14を設けたことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の線香立て用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、線香立て用治具、特に香炉形の線香容器に使用する線香立て用治具に関する。尚、上記線香容器とは、線香立てとして使用する全ての容器をいう。
【背景技術】
容器内の灰に差した線香が倒れて火事の原因となることを防止するため、線香挿通孔を底壁に多数穿設した浅皿状の案内皿を、上端開口部内に着脱自在に嵌合した線香容器が知られている(特許文献1)。
又、線香の燃えカスの取出しを容易とするため、上記案内皿に代えて熱伝導性の良い金網板を線香容器の開口部に取り付けた線香容器も知られている(特許文献2)。
更に、線香の倒れ防止を確実とするために、上下二段に重ねた金網板の周縁部数カ所を連結して、線香容器内に収納する線香立て用治具も知られている(特許文献3)。
【特許文献1】
特開平11−299633号
【特許文献2】
特開2001−286386号
【特許文献3】
特開2000−175804号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1及び特許文献2の容器では、案内皿の線香挿通孔や金網板を通して線香の下部を灰の中へ差し込むので、複数の線香を差し込むときに各線香が斜めになり、体裁が悪くなるおそれがあった。特許文献3の治具は上下の金網板を重ねているので、両金網の網目がたまたま一致していれば線香を真っ直ぐに立てることができるが、一致していなければ線香を垂直向きに配列することができない。
又、特許文献1乃至特許文献3のものでは、線香を灰の中に深く差し込むことで燃え残りの部分が多くなったり、又、整列した線香の高さが不揃いとなる不都合もある。
更に特許文献2のものでは、線香容器の開口部に取り付けた金網との接触により線香の火が消えるので、線香容器内の灰の量が少ないときに線香の燃え残りが多くなる。
そこで本発明は、線香を線香容器に体裁良くかつ効率良く立てることができる香立て用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
第1の手段は、灰等の不燃性の粉体を収納する上端開口の線香容器に用いる線香立て用治具であって、粉体の表面に載置して用いる線香立て本体2と、粉体への線香の差込み代を規制するためにこの粉体中に埋め込んで用いるストッパー部材20とを備え、
上記線香立て本体2は、上方から見て同心状に重なる線香挿通孔10をそれぞれ同数穿設した上下一対の案内板4,6を、一定間隔を存して連結部8で剛結合させてなり、
上記ストッパー部材20は、少なくとも線香容器C内へその開口を介して挿入しかつ水平状態で設置可能なサイズを有するストッパー板22を有するとともに、このストッパー板22の上面から線香の差込み代に相当する長さを有する垂直棒24を起立させてなる。
本手段は、灰に差し込まれる線香の向き及びその差込み深さを整える機能を有する。
「線香立て本体」は、線香の向きを鉛直方向に整えるために、上下方向から見て線香挿通孔が同心状に重なるように上下の各案内板に線香挿通孔を配置するものとする。もっとも線香挿通孔への線香の挿入を容易とするために、孔面と線香周面との間にある程度の遊びをとる必要があるので、鉛直方向からの線香の傾斜角度が許容範囲(例えば2〜4度)に納まるようにすれば良い。上下の案内板の間隔は、後述する如く上記遊びに応じて線香の傾斜が許容範囲となるように設計することが望ましい。尚、上記線香挿通孔は、単数でも良いが、複数穿設することが望ましい。又、上記案内板は、少なくとも線香の垂直状態を維持できる程度の剛性を有するものとする。尚、本手段において、「剛結合」とは、各案内板の線香挿通孔が上下方向から見て重なる位置からずれないように案内板相互を連結部で固定することをいうものとする。
「ストッパー部材」は、灰中に水平に埋め込まれるストッパー板から垂直棒を垂直に起立してなる。この垂直棒は、一種の物差しの如く所望の線香の差込み代に応じた定尺のものであり、ストッパー板とともに灰の中に埋め込む際に棒の上端が灰の表面に表れるようにしてストッパー板の埋込み深さを一定とするためのものである。「定尺」とは、利用者が意図したストッパー板からの突出長を維持できるという意味であり、その突出長を調整できるものを除く趣旨ではない。又、垂直棒はストッパー板の外周部から相互に間隔を置いて3本以上起立することが望ましい。更に線香容器の灰への埋め込みを容易とするため、線香立て本体とは別部材として形成すると良い。
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上側の案内板4を、ステンレス鋼等の熱伝導性素材で形成している。
本手段では、上側の案内板は、線香の火が線香挿通孔の孔面に接したときに消えるように熱伝導性の良い材料で形成している。この上側案内板と下側案内板との間隙は、摘み代としての意味を有しており、この摘み代に相当する長さの線香部分が、線香立て本体を除去した後の灰から上方へ突き出しているので、線香の燃え残りを取り除き易い。好適な摘み代の長さは、8〜10mm程度である。又、熱伝導性素材としては、金属又はガラス質などが考えられる。尚、上側案内板全体を熱伝導性材料で形成することが好適であるが、ほうろうの如く母材の表面に熱伝導層を設けても良い。
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ上記案内板4,6の各線香挿通孔の孔面上縁に面取り部14を設けている。
本手段では、線香挿通孔に線香を挿通させ易いように、各線香挿通孔の孔面上縁に面取り部14を設けたものである。この面取り部は、上下各案内板の線香挿通孔の孔面上縁について行うことが望ましいが、何れか一方にしても良い。
【発明の効果】
第1の手段に係る発明によれば、次の効果を有する。
○上下案内板4,6の線香挿通孔10を、上方から見て同心状に配置したから、線香を鉛直方向に体裁良く立てることが容易であり、また、両案内板を剛結合したから、使っているうちに線香案内孔が重なり位置からずれることがない。
○線香容器内の粉体中に埋め込むストッパー部材20を設けたから、必要以上に線香を粉体に差し込むことがなく、また、線香の高さも揃うので更に体裁が良い。
第2の手段に係る発明によれば、次の効果を生ずる。
○灰の表面への載置用の下側案内板6から一定距離を隔てて設けた上側案内板4を、熱伝導性材料で形成したから、線香の燃え残りを取り除く際にと灰の表面から線香の上部が常に一定距離突出していることとなり、既述特許文献2のものの如く灰の表面からの線香の突出長が不必要に長くなることがないので、線香の無駄を防止できる。
○線香挿通孔10付きの熱伝導性案内板4を用いて線香の火を消すため、特許文献2で用いる金網と比較して熱伝導量が大きくなり、確実に消火することができる。
第3の手段に係る発明によれば、案内板の線香挿通孔10の孔面上縁を面取りさせたから、その孔内に線香を挿通させ易い。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の線香立て用治具は、線香立て本体2と、ストッパー部材20とからなる。
線香立て本体2は、相互に一定距離を存して重ねた上下一対の金属製の案内板4,6の外周部を、複数の連結具8で剛結合させるとともに、上記各案内板4、6に上方から見て同心状に重なるように複数の線香挿通孔10を穿設してなる。また図示例では線香立て本体2の上側案内板4の中央部に摘み片12を起立している。この線香立て本体2は、図3に示すような線香容器Cの灰の上に載置して用いるものであり、上記各案内板は、線香容器Cの上部内へ収納可能な大きさに形成する。
上記連結具8は、図4の如く、両案内板4,6を貫通して上側案内板4の上面に係止可能な帽部付きのボルト8aと、下側案内板6下方へ突出したボルト部分に係合するナット8bと、両案内板4,6間のボルト部分を覆うスリーブ8cとで形成している。
上記線香挿通孔10は、上下両案内板4,6のほぼ全面に均等に穿設している。また、上下案内板の線香挿通孔10の孔面上端部はそれぞれ面取り部14としている。
ストッパー部材20は、線香容器の灰中への埋設用のストッパー板22を有し、このストッパー板の外周部から同じ高さの垂直棒24を起立している。
上記線香立て本体2とストッパー部材20とは別体であり、使用前の状態を示す図1では、上記垂直棒の上端で線香立て本体2の下面を支持している。尚、上記各垂直棒24の起立長さ、及び連結具で固定された上下案内板4,6の間隙はそれぞれ調整可能とすると良い。
本発明の線香立て用治具を使用するときには、まず線香容器C中の灰Aの中へ、図1に示すストッパー部材20を斜めの状態から差し込んで埋没させるとともに、灰の中でストッパー板22が水平になるように姿勢を調整する。このとき、灰の表面を平坦に均した状態でストッパー部材20の3本の垂直棒24の上端が灰の表面に位置するようにすると、ストッパー板22の水平状態の確保が容易である。次の灰Aの上に図5に示す如く線香立て本体2を載置し、その上下案内板4,6の上下に対応する線香挿通孔10に線香Iを挿通させる。ここで例えば比較的暗い場所で線香を通す作業を行う場合や、作業者の視力が良くない場合であっても、上側案内板4の線香挿通孔10のおよその位置が判れば、その上記線香挿通孔10の面取り部14を利用して線香の下端を孔内へ導くことができる。他方、下側案内板4の線香挿通孔10に線香を通すときには、上側案内板4が邪魔となって目標とする孔の位置を全く確認できない。しかしながら、2つの線香挿通孔は上下方向に同心状に位置しているので、上側案内板4に対して略垂直となるように上側の線香挿通孔10内へ線香Iを挿入していけば、図5に二点鎖線で示す如くその線香の下端部が下側の線香挿通孔10の面取り部14に当ることが多く、この面取り部14を利用して、下側の線香挿通孔10の孔内へ通すことができる。
これら上下一対の線香挿通孔10を通った後に、線香の下端は灰Aの中に進入して図6に示す如くストッパー板22の上面に突き当たる。これにより必要以上に深く線香が灰の中に差し込まれないようにすることができる。この図6の状態では、線香は、上下一対の線香挿通孔10,10で抱持されており、ほぼ垂直状態を保っている。
この線香の上端に火を付けると、この火は次第に線香の下方へ延焼していき、上側案内板4に到達すると、上側案内板4を通じて熱が逃散することで消火する。図5では、説明の簡単のために線香を線香挿通孔の中央に挿通させたので、その孔面と線香とが離れているが、実際には線香と線香挿通孔との遊びは小さいので、その孔面の何れか一部に線香は接しており、上側案内板の位置でほぼ確実に線香の火を消すことができる。しかる後に線香立て本体2を灰の上から取り外すと、図7に示す如く、灰の表面から線香の燃え残りが一定長さ突出するので、この突出部分を摘んで引き上げることで燃え残りを取り除くことができる。
[実施例]
図5の図示例に基づいて本発明の線香立て本体の構造に関して具体的に説明する。図示の線香挿通孔10は、線香の抜き差しを容易とするために、線香との間に遊びをとると良い。線香の外径を約2mm程度とすると、遊びは0.5〜1mmとすることが望ましく、そうなると線香挿通孔の2.5〜3.5mm程度となる。
また、上下の案内板4,6の間隙は、上記遊びの大きさに応じて線香の傾斜角度が許容範囲に収まるように設計する。設計の手法としてはいろいろ考えられるが、最も簡単な方法は、CAD(図面作成支援ソフト)を用いて、孔径一定の線香挿通孔を通る一定外径の線香が最大に傾いた状態を実際に作図し、そして両案内板の間隔をさまざまに変更して、鉛直線に対する線香の最大傾斜角θを求めることであり、この傾斜角が許容範囲(一例として2〜4度)にあることを条件として両案内板4,6の間隙をなるべく小さく設定すれば良い。具体的には、上記線香が、下側線香挿通孔の下縁の左端P、及び、上側線香挿通孔の上縁(図示例では面取り部を除く孔面部分上縁)の右端Qにそれぞれ接するように作図すれば良い。同例では線香の太さを2mmとすると、線香挿通孔の太さは約2.5mm、上記点P及び点Qの高低差は約8mm(両案内板の間の距離は約7mm)となっている。このときの線香の最大傾斜角θは約3度であり、許容範囲に入る。尚、3度の傾斜角は大きいようであるが、これは意図的に傾斜を大きくした場合であり、線香挿通孔の中心を通るように線香を差せば、傾斜角をその半分程度とすることができる。
また図5の例では、上側案内板4の図右側の線香挿通孔10から、下側案内板6の図右側の線香挿通孔10へ通しているが、仮に利用者が誤って上側案内板4の右側線香挿通孔10から下側案内板6の左側線香挿通孔10へ線香を通したときには、その線香の傾斜は鉛直方向に対して30度程度となり、傾斜の許容範囲を大きく上回る。この場合、線香が垂直でないことは直ちに判るので、利用者が誤って隣の挿通孔に線香を通すということは起こらないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る線香立て用治具の正面図である。
【図2】図1の線香立て用治具の平面図である。
【図3】図1の治具を線香に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】分解状態の図1の治具と線香立て容器と示す斜視図である。
【図5】図1の治具を用いて線香を立てる行程の説明図である。
【図6】図1の治具を用いて線香を線香容器に立てた状態を示す断面図である。
【図7】図6の状態から線香の火が消えた後に線香立て本体を取り外した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
2…線香立て本体 4…上側案内板 6…下側案内板 8…連結具
10…線香挿通孔 12…摘み片 14…面取り部 20…ストッパー部材 22…ストッパー板 24…垂直棒 A…灰 C…線香容器 I…線香
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
試作写真
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