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健康・医療
 
【発明の名称】介護補助具
【特許権者】
【識別番号】516346919
【氏名又は名称】川井 政龍
【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
【代理人】
【識別番号】100125092
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 玲太郎
【発明者】
【氏名】川井 政龍
【要約】
【課題】ベッド上で側臥位にした要介護者が仰臥位の状態にならないように補助する介護補助具を提供することにある。
【解決手段】介護補助具10は、ベッド5上で側臥位にした要介護者Pが仰臥位の状態にならないように補助する。介護補助具10は、ベッド5のサイドレール6に引っ掛ける引掛部20と、引掛部20の側に向いた側臥位の要介護者Pが側臥位を維持するように、側臥位の要介護者Pの背中Bに当接する背中当接部40と、引掛部20と背中当接部40とを接続する接続部60と、を備える。接続部60は、側臥位の要介護者Pの胴体Dを跨ぐ。
【選択図】図8
選択図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上で側臥位にした要介護者が仰臥位の状態にならないように補助する介護補助具であって、
前記ベッドのサイドレールに引っ掛ける引掛部と、
前記引掛部の側に向いた側臥位の要介護者が側臥位を維持するように、前記側臥位の要介護者の背中に当接する背中当接部と、
前記引掛部と前記背中当接部とを接続する接続部と、を備え、
前記接続部は、前記側臥位の要介護者の胴体を跨ぐ、介護補助具において、
前記背中当接部は、前記接続部に接続する樹脂製の棒状当接部と、前記棒状当接部を包み、前記側臥位の要介護者の背中に当接するクッション部とを含む、
介護補助具。
【請求項2】
前記接続部は、前記引掛部と前記背中当接部との間の長さを調節する長さ調節部を有し、
かつ、前記接続部は、前記長さ調節部と前記引掛部との間に形成された引掛側エルボ部と、前記長さ調節部と前記背中当接部との間に形成された当接側エルボ部とを含む、
請求項1に記載の介護補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド上の側臥位にした要介護者が仰臥位の状態にならないように補助する介護補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきり老人等の要介護者のおむつ交換は、介護者の介護によって行われており、要介護者が横向きの姿勢(側臥位)又は要介護者の脚部を持ち上げて腰部を浮かせた姿勢で行われている。
【0003】
要介護者のおむつ交換を要介護者の脚部を持ち上げて腰部を浮かせた姿勢で行う場合、要介護者の脚部を持ち上げ、その状態を維持しながらおむつ交換の作業を1名の介護者で行うことがある。この場合、要介護者の脚部を持ち上げた状態でおむつ交換をすることは、作業性が悪く介護者にとって重労働となり、腰痛を生ずることも多い。そこで、1名の介護者でおむつ交換できて、介護者の労力を軽減して腰痛を防止でき、また、ベッド間を簡単に移動して使用できる介護補助装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
他方、仰向けに寝ている要介護者(仰臥位の要介護者)に、横向きになってもらうための介護(仰臥位から側臥位の介護)は、非特許文献1に記載されているように、介護者が手作業で要介護者を側臥位の状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3132423号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社Roseau Pensant、横向きになる介助 介護の技術〜介護応援ネット、[online]、[平成28年11月8日検索]、インターネット〈URL:http://kaigoouen.net/skill/body/body_5.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、仰臥位から側臥位の介護は、介護者が要介護者を側臥位の状態から仰臥位の状態にならないように押さえている必要があるため、1名の介護者でおむつ交換等をすることは難しいという課題を有する。
【0008】
本発明の目的は、ベッド上で側臥位にした要介護者が仰臥位の状態にならないように補助する介護補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意研究をした結果、以下の介護補助具を発明した。
本発明に係る介護補助具は、ベッド上で側臥位にした要介護者が仰臥位の状態にならないように補助する介護補助具であって、
前記ベッドのサイドレールに引っ掛ける引掛部と、
前記引掛部の側に向いた側臥位の要介護者が側臥位を維持するように、前記側臥位の要介護者の背中に当接する背中当接部と、
前記引掛部と前記背中当接部とを接続する接続部と、を備え、
前記接続部は、前記側臥位の要介護者の胴体を跨ぐ、介護補助具において、
前記背中当接部は、前記接続部に接続する樹脂製の棒状当接部と、前記棒状当接部を包み、前記側臥位の要介護者の背中に当接するクッション部とを含む。
【0010】
前記接続部は、前記引掛部と前記背中当接部との間の長さを調節する長さ調節部を有し、
かつ、前記接続部は、前記長さ調節部と前記引掛部との間に形成された引掛側エルボ部と、前記長さ調節部と前記背中当接部との間に形成された当接側エルボ部とを含む、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続部は、側臥位の要介護者の胴体を跨ぐように、引掛部と背中当接部とを接続しているので、背中当接部を、引掛部の側に向いた側臥位の要介護者の背中に当接させることができる。このため、引掛部の側に向いた側臥位の要介護者が仰臥位の状態になろうとしても、背中当接部が側臥位の要介護者の背中を支えることができるので、ベッド上で側臥位にした要介護者が仰臥位の状態にならないように補助する介護補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る介護補助具のクッション部を省略した斜視図である。
【図2】図1に示した介護補助具の別の方向から見た斜視図である。
【図3】図1に示した介護補助具にクッション部を取り付けた斜視図である。
【図4】図3に示した介護補助具の別の方向から見た斜視図である。
【図5】図3に示した介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。
【図6】図5に示した介護補助具の引掛部の状態を説明するための斜視図である。
【図7】図5に続く介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。
【図8】図7に続く介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。
【図9】図8に続く介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。
【図10】図9に続く介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る介護補助具のクッション部を省略した斜視図である。図2は、図1に示した介護補助具の別の方向から見た斜視図である。図3は、図1に示した介護補助具にクッション部を取り付けた斜視図である。図4は、図3に示した介護補助具の別の方向から見た斜視図である。図5は、図3に示した介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。図6は、図5に示した介護補助具の引掛部の状態を説明するための斜視図である。図7は、図5に続く介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。図8は、図7に続く介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。図9は、図8に続く介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。図10は、図9に続く介護補助具の使用方法を説明するための斜視図である。
【0018】
(介護補助具)
図1に示すように、介護補助具10は、引掛部20と、背中当接部40と、接続部60とを備える。図8に示すように、介護補助具10は、ベッド5上の側臥位にした要介護者Pが仰臥位の状態にならないように補助する補助具である。
【0019】
(引掛部)
図1、図2及び図4に示すように、引掛部20は、ベッド5のサイドレール6(図5参照)に引っ掛けることができるように、樹脂製のパイプ21で構成され、パイプ21の側面に形成され、パイプ21の軸方向に伸びるスリット22を有する。
【0020】
図6に示すように、パイプ21がサイドレール6の周りを容易に回転することができるように、パイプ21の内径は、サイドレール6の外径より若干大きいことが好ましい。スリット22の幅は、サイドレール6の外径より小さいことが好ましい。
【0021】
図4に示すように、パイプ21の軸方向において、スリット22の中央の幅が、両端の幅より狭いことが好ましい。このようにすることにより、パイプ21の端のスリット22の幅が中央の幅より広いので、パイプ21の端をサイドレール6に押し付けることにより、パイプ21を端のスリット22から容易にサイドレール6に嵌め込むことができる。また、パイプ21の端をサイドレール6から浮き上がらせることにより、パイプ21をサイドレール6から容易に取り外すことができる。
【0022】
(背中当接部)
図2及び図4に示すように、背中当接部40は、接続部60に接続する樹脂製の棒状当接部41と、棒状当接部41を包み、側臥位の要介護者Pの背中Bに当接するクッション部80とを含む。
【0023】
クッション部80は、例えば、ウレタンフォーム、布団、座布団等、弾性力のある板部材である。
【0024】
棒状当接部41は、1本の樹脂製の長いパイプ42aの両端側に、2本の樹脂製の短いパイプ42bをねじ部材43で固定したものである。この2本の樹脂製のパイプ42bをねじ部材43で固定しているので、棒状当接部41の側面には、ねじ部材43の一部が突起状に露出しているが、クッション部80は、ねじ部材43の一部が要介護者Pの背中Bに直接あたらないように、棒状当接部41を包んでいる。パイプ42aの長さは、介護者Qの肩幅程度であることが好ましい。
【0025】
また、クッション部80は、ねじ部材43の一部が棒状当接部41の側面から突起状に露出しているので、棒状当接部41の軸方向へのズレを阻止する。このため、棒状当接部41を包んだクッション部80は、棒状当接部41対してズレにくい。
【0026】
(接続部)
接続部60は、側臥位の要介護者Pの胴体Dを跨ぐように、引掛部20と背中当接部40とを接続する。接続部60は、引掛部20と背中当接部40との間の長さを調節する長さ調節部62を有する。
【0027】
また、接続部60は、長さ調節部62と引掛部20との間に形成された引掛側エルボ部65と、長さ調節部62と背中当接部40との間に形成された当接側エルボ部66とを含む。
【0028】
図2及び図3に示すように、長さ調節部62は、例えば、両端に雌ねじ部63が形成されたパイプ64である。一方の雌ねじ部63は右ねじであり、他方の雌ねじ部63は左ねじ(逆ねじ)である。
【0029】
引掛側エルボ部65は、直角に曲がった樹脂製のパイプであり、その一端には、右ねじの雌ねじ部63と螺合する雄ねじ部67が形成されている。引掛側エルボ部65の他端は、引掛部20のパイプ21の中央の、スリット22とは反対側の側面に接続している。
【0030】
当接側エルボ部66は、直角に曲がった樹脂製のパイプであり、その一端には、左ねじの雌ねじ部63と螺合する雄ねじ部68が形成されている。当接側エルボ部66の他端は、背中当接部40のパイプ42aの中央の、パイプ42bが取り付けられている側とは反対の側面に接続している。
【0031】
接続部60は、直角に曲がった引掛側エルボ部65及び当接側エルボ部66を有するので、側臥位の要介護者Pの胴体Dを跨ぐことができるコの字形状を有する。
【0032】
長さ調節部62は、いわゆるターンバックル(ロープ、ワイヤー、タイロッド等の張力を調節する装置であり、金属製の胴の両端にねじ山が切られていて、一方は右ねじ、もう一方は左ねじ(逆ねじ)になっており、この胴を回転させることで両端に取り付けられたボルトが締め込まれ(又は緩められ)、張力を調節することができる。)と同様の構造を有する。このため、長さ調節部62を回転させることにより、引掛側エルボ部65と当接側エルボ部66との間の距離が長くなったり短くなったりする。
【0033】
(使用方法)
以上の介護補助具10は、以下のようにして使用する。
【0034】
(仰臥位から側臥位にする手順)
図5に示すように、要介護者Pは、ベッド5上に仰臥位の状態となっている。
【0035】
図5及び図6に示すように、背中当接部40がサイドレール6の周りを揺動可能に、介護補助具10の引掛部20をベッド5のサイドレール6に引っ掛ける。図5に示すように、これにより、背中当接部40は、要介護者Pの胴体Dの上側(腹の上)に位置する。
【0036】
図7に示すように、介護者Qは、ベッド5の引掛部20がある側に立つ。これにより、介護者Qは、要介護者Pの胴体Dの横に位置する。
【0037】
次に、介護者Qは、背中当接部40の下を腕で押し上げつつ、要介護者Pの引掛部20とは反対側の肩や腰に両手を添える。パイプ42aの長さが介護者Qの肩幅程度であると、介護者Qは、両腕を平行に背中当接部40の下側に伸ばすことができる。
【0038】
次に、背中当接部40が要介護者Pに当たらないように、腕で押上ながら、ゆっくりと、要介護者Pの肩や腰を介護者Q側(引掛部20側)に両手で引き寄せ、要介護者Pを仰臥位から側臥位にする。これにより、側臥位になった要介護者Pの背中Bは、背中当接部40よりも、引掛部20側に位置する。
【0039】
そして、図8に示すように、背中当接部40を側臥位になった要介護者Pの背中Bに位置するように、背中当接部40を下げる。これにより、背中当接部40は、引掛部20の側に向いた側臥位の要介護者Pが側臥位を維持するように、側臥位の要介護者Pの背中Bに当接する。このとき、接続部60は、側臥位の要介護者Pの胴体Dを跨ぐことになる。これにより、側臥位にした要介護者Pが仰臥位になろうとしても、背中当接部40が要介護者Pの背中Bの略中央で支えているので、要介護者Pが容易に仰臥位にならない。
【0040】
こうして、ベッド5上で側臥位にした要介護者Pが仰臥位の状態にならないように補助することができる。
【0041】
長さ調節部62を回転させることにより、背中当接部40と引掛部20との間の距離を調節することができるので、要介護者Pの側臥位の程度を微調整することができる。
【0042】
介護者Qは、側臥位の要介護者Pのおむつ交換等を行う。このとき、要介護者Pが仰臥位になるおそれはないので、介護者Qは、要介護者Pを殆ど支えないでおむつ交換等をすることができる。
【0043】
(側臥位から仰臥位にする手順)
次に、図9に示すように、介護者Qは、腕を伸ばした状態で、接続部60の引掛側エルボ部65を持ち、サイドレール6に引っ掛かっている介護補助具10の引掛部20を外す。このとき、介護者Qは、やや体を後ろに反った体制で、引掛部20を自身側に引っ張り力を付与しながら行うことが好ましい。
【0044】
次に、図10に示すように、介護者Qは、緩やかに、引張り力を弱めることにより、側臥位の要介護者Pを仰臥位にする。このとき、背中当接部40が要介護者Pの背中Bに当接した状態を維持しつつ、要介護者Pの背中Bの面が垂直から水平への回転に合わせて、要介護者Pを中心に介護補助具10を回転させる。これにより、引掛部20は、要介護者Pの上側に位置する。
【0045】
介護者Qは、緩やかに、引張り力を弱めるだけで、側臥位の要介護者Pを仰臥位にすることができる。特に、引張り力を弱めるという作業は人間工学的に繊細な力加減の調整をすることができる作業である。このため、要介護者Pの状態に合わせて、きめ細かく、仰臥位にすることができる。
【0046】
また、接続部60は、側臥位の要介護者Pの胴体Dを跨ぐ形状を有しているので、介護者Qは、介護補助具10を介して要介護者Pの背中Bの中央を支えることができる。
【0047】
具体的には、接続部60は、側臥位の要介護者Pの胴体Dを跨ぐように、引掛部20と背中当接部40とを接続しているので、背中当接部40を、引掛部20の側に向いた側臥位の要介護者Pの背中Bに当接させることができる。このため、引掛部20の側に向いた側臥位の要介護者Pが仰臥位の状態になろうとしても、背中当接部40が側臥位の要介護者Pの背中Bを支えることができるので、介護補助具10は、ベッド5上で側臥位にした要介護者Pが仰臥位の状態にならないように補助することができる。
【0048】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0049】
B 背中
D 胴体
P 要介護者
Q 介護者
5 ベッド
6 サイドレール
10 介護補助具
20 引掛部
21 パイプ
22 スリット
40 背中当接部
41 棒状当接部
42a パイプ
42b パイプ
43 ねじ部材
60 接続部
62 長さ調節部
63 雌ねじ部
64 パイプ
65 引掛側エルボ部
66 当接側エルボ部
67 雄ねじ部
68 雄ねじ部
80 クッション部
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5 
【図6】
図6 
【図7】
図7 
【図8】
図8 
【図9】
図9 
【図10】
図10 
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