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機械器具
 
【考案の名称】刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造
【実用新案権者】
【識別番号】391025095
【氏名又は名称】下塩入 國廣
【住所又は居所】鹿児島県南九州市川辺町下山田6110番地4
【代理人】
【識別番号】100118636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 淳
【考案者】
【氏名】下塩入 國廣
【住所又は居所】鹿児島県南九州市川辺町下山田6110番地4
【要約】   (修正有)
【課題】つる植物や紐等が操作棹の先端部分に巻き付くことを防止可能であり、雑草等の刈り払い作業を効率良く安全に行うことが可能な刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造を提供する。
【解決手段】刈払機の操作棹10に接続にされた回転刃23において、回転刃23の表側面24の上に、回転刃23の周方向に連続する環状の突起部28を、プレス加工によって形成し、突起部28の稜線29の上に、複数個の第1の刃部45を形成し、第1の刃部45の刃を、回転刃23の回転方向前側に向けて形成し、回転刃23の周方向に隣接する第1の刃部45どうし間において、回転刃23の回転方向前側に位置する一方の第1の刃部45の上端部から、回転刃23の回転方向後側に位置する他方の第1の刃部45の下端部まで、なだらかに連続して連なっている稜線29を形成する。
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
刈払機の操作棹に接続にされた回転刃において、当該操作棹が接続されている表側面の上に、1個又は複数個の第1の刃部が形成されており、当該第1の刃部の刃が、当該回転刃の回転方向前側を向いていることを特徴とする刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造。
【請求項2】
前記表側面の上に、前記回転刃の周方向に連続する環状の突起部が、前記回転刃をプレス加工することにより形成されており、
前記突起部の稜線の上に、又は、前記突起部の径方向外側の斜面の上に、1個又は複数個の前記第1の刃部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造。
【請求項3】
前記稜線の上に、1個の前記第1の刃部が形成されており、前記第1の刃部の上端部から、前記第1の刃部の下端部まで、前記稜線がなだらかに連続して連なっていることを特徴とする請求項2に記載の刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造。
【請求項4】
前記稜線の上に、複数個の前記第1の刃部が形成されており、
前記回転刃の周方向に隣接する前記第1の刃部どうし間において、前記回転刃の回転方向前側に位置する一方の前記第1の刃部の上端部から、前記回転刃の回転方向後側に位置する他方の前記第1の刃部の下端部まで、前記稜線がなだらかに連続して連なっていることを特徴とする請求項2に記載の刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造。
【請求項5】
前記回転刃が接続されている前記操作棹の先端部分に、第2の刃部が形成されており、
前記第2の刃部の刃が、前記操作棹の軸方向に沿って連続して形成されており、
前記第2の刃部は、前記操作棹を把持して刈り払い作業を行う作業者の側を向く位置に存在することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造。
【考案の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明において、「刈払機用回転刃」のことを、単に「回転刃」と称することとする。
雑草等の刈払機は、操作棹と、操作棹に装着された電動モータやエンジンからなる駆動源と、操作棹の先端に接続されて駆動源の力によって回転する回転刃と、を備えている(特許文献1を参照)。そして、回転する回転刃によって、雑草等が刈り払われる。
【0003】
刈払機の回転刃には、回転刃の周縁部に金属製の刃が形成されているタイプのものと、回転刃の周縁部に樹脂製の紐状体からなるコードカッターが植設されているタイプのものと、がある。以下の説明において述べる「回転刃」には、これら両方のタイプのものが含まれるものとする。さらに、以下の説明において、回転刃の周縁部に形成されている金属製の刃や、回転刃の周囲の縁に植設されているコードカッターのことを、まとめて「主刃部」と称することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−46577号公報
【考案の概要】
【考案が解決しようとする課題】
【0005】
刈払機によって刈り払われる雑草等の中には、つる植物が含まれていることがある。つる植物の茎は、大きな引張り強度を有していることが多い。このため、刈払機による刈り払い作業中に、つる植物が、操作棹の先端部分に巻き付くことがある。
また、雑草が生い茂っている場所には、様々なゴミが落ちていることも多い。このようなゴミの中には、紐が含まれていることもある。普通に使われている紐は、化学繊維製であることが多く、一般に大きな引張り強度を有している。刈払機による刈り払い作業中に、このような紐が、操作棹の先端部分に巻き付くこともある。
【0006】
つる植物や紐等が操作棹の先端部分に巻き付くと、回転刃の回転が阻害されることとなる。この結果、場合によっては、刈払機の駆動源である電動モータやエンジンに過剰な負荷がかかり、駆動源が焼き付いてしまう。
したがって、つる植物や紐等が操作棹の先端部分に巻き付いた場合、作業者は、刈り払い作業を直ちに中断し、巻き付いたつる植物や紐等を取り除かねばならない。つる植物や紐等が、操作棹の先端部分にしっかりと巻き付いてしまった場合、作業者は、刃物等を用いて巻き付いたつる植物や紐等を切断しなければならない。
【0007】
作業効率の観点のみならず、安全上の観点から、作業者は、つる植物の茎や紐等が操作棹の先端部分に巻き付くことに注意を払いながら刈り払い作業を行う必要がある。これは、作業者に大きな精神的疲労を与える原因となる。
本考案は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、つる植物や紐等が操作棹の先端部分に巻き付くことを防止可能であり、雑草等の刈り払い作業を効率良く安全に行うことを可能とする刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本考案は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の考案に係る刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造は、刈払機の操作棹に接続された回転刃において、当該操作棹が接続されている表側面の上に、1個又は複数個の第1の刃部が形成されており、当該第1の刃部の刃が、当該回転刃の回転方向前側を向いていることを特徴とする。
【0009】
以下の説明において、「回転刃の回転方向前側」のことを、単に「回転方向前側」と称し、「回転刃の回転方向後側」のことを、単に「回転方向後側」と称することとする。また、「回転刃の径方向中心側」のことを、単に「径方向中心側」と称し、「回転刃の径方向外側(すなわち、回転刃の径方向周縁部側)」のことを、単に「回転方向外側」と称することとする。さらに、「操作棹の先端部分に巻き付いて回転刃の回転を阻害する原因となるつる植物や紐等」のことを、まとめて「つる植物等」と称することとする。
【0010】
回転刃が回転することにより、主刃部が、操作棹の先端部分に巻き付こうとするつる植物等の少なくとも一部を切断する。さらに、第1の刃部の刃が、主刃部によって切断されなかったつる植物等を切断する。主刃部又は第1の刃部の刃によって切断されたつる植物等は、回転する回転刃によって遠くへ弾き飛ばされ、つる植物等が操作棹の先端部分に巻き付くことが防止される。
【0011】
したがって、回転刃の回転を阻害する要因であるつる植物等が排除されることとなり、つる植物等によって刈払機の駆動源に過剰な負荷がかかることが防止され、つる植物等によって刈払機の駆動源が焼き付くことも防止される。
なお、第1の刃部の刃は、内側に湾曲する弧を描く形状を有していることが好ましい。第1の刃部の刃がかかる形状を有することによって、刃が描く弧の内側に入ったつる植物等は、刃から逃げにくくなり、刃によって直ちに切断されてしまう。
【0012】
回転刃の表側面の上に、第1の刃部を形成するに当たっては、第1の刃部を回転刃に溶接等して取り付けることが可能である。
また、回転刃の面の一部に、例えば「レ」の字状の切り込みを形成し、この切り込みの「レ」の字形の内側部分を回転刃の表側面側に立ち上がるように折り曲げて、さらに、折り曲げて立ち上げた部分の縁に刃をつけることによって、第1の刃部を形成することも可能である。
【0013】
このようにして第1の刃部を形成すると、切り込みを形成した部分に穴ができる。複数枚の回転刃を積み重ねて収納等する場合、下側の回転刃の第1の刃部の突端部を、上側の回転刃の穴の中に入れることができる。これによって、積み重ねた回転刃どうしの間に大きな隙間ができることを防止でき、積み重ねた回転刃をコンパクトに収納しておくことが可能になる。
【0014】
請求項2の考案に係る刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造は、請求項1に記載の刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造であって、前記表側面の上に、前記回転刃の周方向に連続する環状の突起部が、前記回転刃をプレス加工することにより形成されており、前記突起部の稜線の上に、又は、前記突起部の径方向外側の斜面の上に、1個又は複数個の前記第1の刃部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
回転刃の中心部分が、操作棹の先端部分に接続されている。回転刃の中心部分と操作棹の先端部分とは、環状の突起部の内側に形成された第1の窪み部分の中に納まる。操作棹の先端部分は、周囲を環状の突起部によって取り囲まれた状態となり、つる植物等は、環状の突起部に邪魔されて操作棹の先端部分に巻き付きにくくなる。
【0016】
また、突起部の稜線よりも径方向外側の部分は、斜面となっていることが好ましい。主刃部によって切断されなかったつる植物等が、横方向から操作棹の先端部分に近づこうとする場合、つる植物等は、この斜面に当たることとなる。
第1の刃部が、突起部の稜線の上に形成されている場合、斜面に当たったつる植物等は、この斜面によって突起部の稜線まで案内され、第1の刃部の刃によって切断され、そのまま回転刃から遠くへ弾き飛ばされてしまう。あるいは、つる植物等は、回転しているこの斜面に当たって、そのまま回転刃から遠くへ弾き飛ばされてしまう。
【0017】
第1の刃部が、突起部の径方向外側の斜面の上に形成されている場合、この斜面に当たったつる植物等は、第1の刃部の刃によって切断され、そのまま回転刃から遠くへ弾き飛ばされてしまう。
突起部は、回転刃をプレス加工することによって形成されている。このため、回転刃の裏側面には、突起部に対応した環状の第2の窪み部分が形成される。複数枚の回転刃を積み重ねて収納等する場合、下側の回転刃の突起部を、上側の回転刃の裏側面の環状の第2の窪み部分の中に納めることができる。したがって、積み重ねた回転刃をコンパクトに収納しておくことが可能になる。
【0018】
突起部に、第1の刃部を形成するに当たっては、第1の刃部を突起部に溶接等して取り付けることが可能である。
また、突起部の稜線の両側には斜面が形成されている。突起部のこの斜面に、例えば「レ」の字状の切り込みを形成し、この切り込みの「レ」の字形の内側部分を回転刃の表側面側に立ち上がるように折り曲げ、さらに、折り曲げて立ち上げた部分の縁に刃をつけることによって、第1の刃部の刃を形成することが可能である。
【0019】
なお、突起部の径方向中心側の斜面に、「レ」の字状の切り込みを形成するに際しては、この切り込みにおいて、「レ」の字の書き始めの端部と、「レ」の字の書き終わりの端部と、が、ともに突起部の稜線の上に位置していることが好ましい。
【0020】
また、突起部の径方向外側の斜面に、「レ」の字状の切り込みを形成するに際しては、「レ」の字の折れ曲がった頂点部分が、「レ」の字の書き始めの端部よりも、突起部の稜線に近い位置にあるとともに、「レ」の字の書き終わりの端部よりも、突起部の稜線に近い位置にあることが好ましい。
【0021】
このようにして第1の刃部の刃を形成すると、突起部に穴ができる。複数枚の回転刃を積み重ねて収納等する場合、下側の回転刃の第1の刃部の突端部を、上側の回転刃の穴の中に入れることができる。これによって、積み重ねた回転刃どうしの間に大きな隙間ができることを防止でき、積み重ねた回転刃をコンパクトに収納しておくことが可能になる。
【0022】
あるいは、突起部の稜線部分に、以下に述べるような切り込みを形成して、この切り込みを利用して第1の刃部を形成することも可能である。
すなわち、回転刃を表側面と平行に横から見たときに、手前側の突起部の稜線部分に、回転方向前側から回転方向後側へ斜め下方に向かう切り込みを形成し、この切り込みの上側部分の縁に刃をつけることによって、第1の刃部を形成することが可能である。さらに、この切り込みの上側部分を、上方又は斜め上方に立ち上がるように曲げてやっても良い。このようにして第1の刃部の刃を形成したときにも、突起部に穴ができる。この穴を利用して、積み重ねた回転刃をコンパクトに収納しておくことが可能になる。
【0023】
請求項3の考案に係る刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造は、請求項2に記載の刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造であって、前記稜線の上に、1個の前記第1の刃部が形成されており、前記第1の刃部の上端部から、前記第1の刃部の下端部まで、前記稜線がなだらかに連続して連なっていることを特徴とする。
【0024】
突起部の稜線の上に形成される第1の刃部が1個であり、第1の刃部の上端部から、第1の刃部の下端部まで、突起部の稜線が、突起部に沿ってほぼ一周し、なだらかに連続して連なっている。突起部の稜線が、かかる形状を有していることによって、突起部の稜線の上にのったつる植物等は、稜線によって第1の刃部の刃までスムーズに案内され、切断されてしまう。すなわち、第1の刃部の刃は、突起部の稜線の上にのったつる植物等を、スムーズに、かつ確実に捉まえて切断することができる。
【0025】
請求項4の考案に係る刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造は、請求項2に記載の刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造であって、前記稜線の上に、複数個の前記第1の刃部が形成されており、前記回転刃の周方向に隣接する前記第1の刃部どうし間において、前記回転刃の回転方向前側に位置する一方の前記第1の刃部の上端部から、前記回転刃の回転方向後側に位置する他方の前記第1の刃部の下端部まで、前記稜線がなだらかに連続して連なっていることを特徴とする。
【0026】
回転刃の周方向に隣接する第1の刃部どうし間において、回転方向前側に位置する第1の刃部の上端部から、回転方向後側に位置する他方の第1の刃部の下端部まで、突起部の稜線がなだらかに連続して連なっている。突起部の稜線が、かかる形状を有していることによって、突起部の稜線の上にのったつる植物等は、稜線によってスムーズに、かつ確実に第1の刃部の刃に案内され、切断されてしまう。
【0027】
請求項5の考案に係る刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造は、請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造であって、前記回転刃が接続されている前記操作棹の先端部分に、第2の刃部が形成されており、前記第2の刃部の刃が、前記操作棹の軸方向に沿って連続して形成されており、前記第2の刃部は、前記操作棹を把持して刈り払い作業を行う作業者の側を向く位置に存在することを特徴とする。
【0028】
つる植物等が、主刃部や第1の刃部によって切断されず、操作棹の先端部分に巻き付いてしまった場合、巻き付いたつる植物等と操作棹の先端部分との間には、第2の刃部が存在する。そして、つる植物等は、第2の刃部の刃によって切断されてしまう。
つる植物等が操作棹の先端部分に巻き付く力が強くなればなるほど、つる植物等に第2の刃部の刃がしっかり食い込む。このため、操作棹の先端部分に巻き付いたつる植物等は、回転刃の回転が止まってしまう前に切断されてしまう。
【0029】
すなわち、第1の刃部とともに第2の刃部が存在することによって、つる植物等が回転刃の回転を止めてしまうことを確実に防止することが可能となり、刈払機の駆動源に過剰な負荷がかかることも確実に防止され、刈払機の駆動源が焼き付くことも確実に防止される。
【0030】
第2の刃部は、操作棹を把持して刈り払い作業を行う作業者の側を向いている。このため、刈り払い作業を行う作業者が、刈払機の回転刃を雑草等が密生している場所に押し込んでも、第2の刃部が地面から生えている雑草等に直接当たりにくい。したがって、作業者が刈払機の回転刃を密生している雑草等の間に押し込む際に、第2の刃部が邪魔になることが無い。
【0031】
なお、第2の刃部の刃は、内側に湾曲する弧を描く形状を有していることが好ましい。さらに、第2の刃部の刃の形状は、内側に湾曲する複数個の弧が操作棹の軸方向に沿って連続して連なっていても良い。第2の刃部の刃がかかる形状を有することによって、刃が描く弧の内側に入ったつる植物等は、刃から逃げにくくなり、刃によって直ちに切断されてしまう。
【考案の効果】
【0032】
上記のような刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造であるので、つる植物や紐等が操作棹の先端部分に巻き付くことを防止可能であり、雑草等の刈り払い作業を効率良く安全に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】刈払機の斜視図である。
【図2】刈払機の先端部分の構成図である。
【図3】回転刃の表側面側の構成図である。
【図4】回転刃の断面構成図である。
【図5】変形例1に係る回転刃の表側面側の構成図である。
【図6】変形例1に係る回転刃の断面構成図である。
【図7】変形例2に係る回転刃の表側面側の構成図である。
【図8】変形例3に係る回転刃の横側面側の構成図である。
【考案を実施するための形態】
【0034】
本考案の実施の形態を図1から図4を参照しつつ説明する。
図1に示すように、刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造を有する刈払機1は、操作棹10、エンジン11、ハンドル13、ギヤケース15、回転刃23及び保護カバー14を有している。
【0035】
操作棹10は、パイプ状をなし、操作棹10の末端部分には、エンジン11が駆動源としての装備されている。操作棹10の中央部分近傍には、ハンドル13が装備されている。操作棹10の先端部分には、ギヤケース15が装備されている。操作棹10の先端部分には、ギヤケース15を介して回転刃23が接続されている。操作棹10の先端部分よりもややハンドル13側の位置には、保護カバー14が装備されている。
【0036】
操作棹10の内部には、エンジン11とギヤケース15とをつなぐ駆動軸12が入っている。
図2に示すように、ギヤケース15は、ギヤ(図示せず)が内蔵されており、このギヤにつながる出力軸16が、ギヤケース15の先端部分から下方に露出している。
【0037】
第2の刃部20が、ギヤケース15の外側に操作棹10の軸方向に沿って連続して形成されている。第2の刃部20は、操作棹10の軸方向に沿って連続して形成された刃21を有している。第2の刃部20と刃21は、作業者がハンドル13(すなわち、操作棹10)を把持して刈り払い作業を行う際に、作業者の側を向く位置に形成されている。
【0038】
また、第2の刃部20の刃21形状は、内側に湾曲する複数個の弧が操作棹10の軸方向に沿って連続して連なっている。なお、刃21の下端部と回転刃23の表側面24との間には、極めて僅かな隙間が形成されている。
さらに、第2の刃部20は、2本の金属製バンド57によってギヤケース15に固定されており、必要に応じて第2の刃部20を交換可能に構成されている。
【0039】
回転刃23は、鋼性であり、円盤状をなしている。回転刃23の中心は、回転刃23の裏側面25側から、出力軸16の先端にナット55によって締結されて接続されており、回転刃23が、刈払機1の先端に位置している。回転刃23は、駆動軸12と前記ギヤと出力軸16とを介して、エンジン11によって回転可能に構成されている。
【0040】
図3に示すように、回転刃23を表側面24側から見ると、回転刃23の回転方向は、反時計回り方向となっている。回転刃23の周縁部には、周方向に連続する金属製の刃が主刃部26として形成されている。
回転刃23の表側面24の上には、環状の突起部28が、回転刃23の周方向に連続して形成されている。突起部28は、回転刃23をプレス加工することによって形成されている。
【0041】
突起部28が形成する環の中心は、回転刃23の中心と一致している。図4に示すように、回転刃23の径方向の縦断面において、突起部28は、略三角形をなしており、突起部28の稜線29を境にして、回転刃23の径方向外側に、突起部28の傾斜面30が位置しており、回転刃23の径方向中心側に、突起部28の傾斜面31が位置している。
【0042】
図2から図4に示すように、回転刃23の表側面24の上において、突起部28の径方向中心側に、第1の窪み部分32が形成されている。ギヤケース15の先端部分(すなわち、操作棹10の先端部分)は、第1の窪み部分32の内側に納まっている。回転刃23を表側面24と平行に横から見ると、ギヤケース15の先端部分は、突起部28の陰に隠れて見えない。
【0043】
回転刃23の裏側面25には、回転刃23の周方向に連続する環状の第2の窪み部分33が、突起部28に対応して形成されている。そして、裏側面25において、出力軸16の先端にナット55によって締結されている回転刃23の中心の周囲には、環状のガード部56が装着されており、出力軸16の先端とナット55を取り囲んでいる。
【0044】
突起部28の稜線29の上には、複数個の第1の刃部45が、回転刃23の周方向に等間隔で形成されている。
回転刃23を表側面24と平行に横から見ると、手前側に見える突起部28において、稜線29から回転方向後側の斜め下方に向かって、切り込み35が形成されている。この切り込み35の上側部分36が、第1の刃部45として、斜め上方に向かって立ち上がるように曲げられている。この折り曲げられた上側部分36の縁部分に、第1の刃部45の刃46が形成されている。刃46は、回転刃23の回転方向前側を向いている。また、回転刃23を表側面24と平行に横から見ると、刃46は、内側に湾曲した弧を描く形状を有している。
【0045】
いま、あるひとつの第1の刃部45Aと、稜線29の上において、第1の刃部45Aの回転方向前側に隣接して位置する別の第1の刃部45Bと、を考える。第1の刃部45Bの上端部47から、第1の刃部45Aの回転方向前側の下端部48まで、稜線29がなだらかに連続して連なっている。第1の刃部45Aと第1の刃部45Bとの間のこのような関係が、稜線29の上において互いに隣接する第1の刃部45どうしの間で常に成立している。
【0046】
突起部28の稜線29の上において、第1の刃部45の下端部48の回転方向前側の部分には、穴50が形成されている。この穴50は、切り込み35の上側部分36を第1の刃部45として回転方向前側の斜め上方に向かって立ち上がるように曲げたことによって形成されたものである。
【0047】
以上が、刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造を有する刈払機1の構成である。次に、その作用効果について説明する。
作業員は、刈払機1のハンドル13を把持して、刈払機1を自分の正面に構える。そして、エンジン11のスイッチを入れる。エンジン11が駆動し、エンジン11の回転が、駆動軸12とギヤケース15のギヤを介して回転刃23に伝わり、回転刃23が回転する。作業員は、回転する回転刃23の主刃部26によって、地面に生えている雑草を刈り払う。
【0048】
作業員が地面に生えている雑草を刈り払う際、回転刃23の裏側面25において、出力軸16の先端とナット55はガード部56によって保護されており、出力軸16の先端やナット55が地面に当たって傷ついたりすることはない。
雑草が密生している場所において、作業員は、先ず、刈払機1を自分の身体の正面前方に押し出すようにして、刈払機1の先端の回転刃23を、雑草の間に押し込む。そして、作業員は、刈払機1の先端を左右に振るように動かし、回転刃23の主刃部26によって雑草を刈り払う。刈り払われた雑草は、そのまま回転刃23から遠くへ弾き飛ばされる。
【0049】
第2の刃部20は作業者の側を向いている。このため、作業員が、回転刃23を密生している雑草の間に押し込む際に、第2の刃部20が、密生している雑草に引っかかったりして邪魔になることが無い。
また、回転刃23が接続されているギヤケース15の先端は、第1の窪み部分32の内側に納まっており、回転刃23を表側面24と平行に横から見ても、ギヤケース15の先端は、突起部28の陰に隠れて見えない。このため、地面に生えている雑草は、ギヤケース15の先端に直接接触しにくい。
【0050】
次に、長く伸びたつる植物が、刈払機1で刈り払う雑草の中に混じっている場合を考える。
先ず、つる植物が、雑草の間で地面を這うようにして水平に伸びている場合について述べる。
【0051】
この場合、つる植物は、他の雑草と一緒に回転刃23の主刃部26によって刈り払われる。刈り払われたつる植物や他の雑草は、そのまま回転刃23から遠くへ弾き飛ばされてしまう。
次に、つる植物が、他の雑草に絡まるように上方に伸びており、つる植物が地面よりもやや高い位置にある場合について述べる。
【0052】
この場合、つる植物が絡まっている雑草が、回転刃23の主刃部26によって刈り払われると、一部のつる植物は、雑草とともに主刃部26によって刈り払われるが、一部のつる植物は、主刃部26によって刈り払われずに残る。
主刃部26によって刈り払われなかったつる植物は、回転している突起部28の稜線29の上にかぶさるように倒れてくる。突起部28の上に倒れてきたつる植物は、稜線29によって第1の刃部45の刃46のもとへ案内され、刃46によって切断されてしまう。刃46によって切断されたつる植物は、そのまま回転刃23から遠くへ弾き飛ばされてしまう。
【0053】
ここで、第1の刃部45の刃46は、内側に湾曲した弧を描く形状を有しているので、刃46に案内されたつる植物は、刃46に容易につかまってしまい、刃46から逃げることができない。
また、つる植物が、回転している突起部28の傾斜面30に横方から当たった場合、つる植物は、回転している突起部28によって、回転刃23から遠くへ弾き飛ばされてしまい、回転刃23の第1の窪み部分32に近づくことができない。
【0054】
次に、つる植物が、高く育った雑草の上部に絡まるように伸びており、つる植物が、作業者が操作する刈払機1の回転刃23よりも上方の位置にある場合について述べる。
この場合、つる植物が絡まっている雑草の茎が刈り払われると、つる植物の一部は、回転する回転刃23の第1の窪み部分32の中へ上から落ちてくる。第1の窪み部分32の中へ落ちたつる植物の中には、操作棹10の先端部分のギヤケース15の周りに巻き付こうとするものもある。
【0055】
つる植物が、ギヤケース15の周りに巻き付くと、巻き付いたつる植物に第2の刃部20の刃21が当たる。そして、回転刃23の回転によって、つる植物が強い力でギヤケース15に巻き付こうとすると、刃21がつる植物にしっかりと食い込む。この結果、ギヤケース15に巻き付いたつる植物は、直ちに切断されてしまう。刃21によって切断されたつる植物は、そのまま回転刃23から遠くへ弾き飛ばされる。
【0056】
したがって、長く伸びたつる植物が、刈払機1で刈り払う雑草の中に混じっていたとしても、このつる植物によって回転刃23の回転が妨げられてしまうことを排除可能である。
紐が、刈払機1で刈り払う雑草の中に混じって落ちているケースであっても、これまで述べたつる植物の場合と同様である。
【0057】
すなわち、紐が、雑草の間の地面に落ちている場合、この紐は、雑草と一緒に回転刃23の主刃部26によって切断され、回転刃23から遠くへ弾き飛ばされてしまう。また、紐が、雑草に絡まっており、地面よりもやや高い位置にある場合、紐は、主刃部26によって切断されたり、第1の刃部45の刃46によって切断されたりして、回転刃23から遠くへ弾き飛ばされてしまう。
【0058】
また、紐が、回転している突起部28の傾斜面30に横から当たった場合、紐は、回転している突起部28によって、回転刃23から遠くへ弾き飛ばされてしまう。あるいは、傾斜面30に横から当たった紐は、回転する傾斜面30によって稜線29まで案内され、さらに、稜線29によって第1の刃部45まで案内されて切断され、そのまま回転刃23から遠くへ弾き飛ばされてしまう。
【0059】
紐が、高く育った雑草の上部に絡まっており、回転刃23よりも上方にある場合には、紐が絡まった雑草を刈り払うことによって、紐が、回転する回転刃23の第1の窪み部分32の中へ上から落ちてくることがある。第1の窪み部分32の中へ落ちてきた紐が、操作棹10の先端部分のギヤケース15の周りに巻き付いたとしても、巻き付いた紐は、第2の刃部20の刃21によって切断され、そのまま回転刃23から遠くへ弾き飛ばされる。
【0060】
したがって、紐が雑草の中に混じって落ちていたとしても、この紐によって回転刃23の回転が妨げられてしまうことを排除可能である。
複数枚の回転刃23を保管しておくときは、向きを揃えて積み重ねておけばよい。下側に位置する回転刃23の突起部28を、上側に位置する回転刃23の第2の窪み部分33の中に納め、さらに、下側に位置する回転刃23の第1の刃部45の突端部を、上側の回転刃23の突起部28の穴50の中に入れる。このようにして回転刃23を積み重ねることで、積み重なった回転刃23どうし間の隙間を小さくすることができ、積み重ねた回転刃23をコンパクトに保管できる。
【0061】
本実施の形態において、複数個の第1の刃部45が稜線29の上に形成されているとした。これに代えて、1個の第1の刃部45を稜線29の上に形成しても良い。この場合、第1の刃部45の上端部47から、第1の刃部45の下端部48まで、突起部28の稜線29がなだらかに連続して連なっている。
【0062】
また、本実施の形態において、第1の刃部45が稜線29の上に形成されているとした。これに代えて、図5及び図6の変形例1に示す第1の刃部60が、稜線29の上に形成されていても良い。
すなわち、稜線29から傾斜面31にかけての部分に、「レ」の字状の切り込み37が形成されている。切り込み37において、「レ」の字の折れ曲がった頂点部分38が、径方向中心側を向いており、この頂点部分38が傾斜面31の上に位置している。また、切り込み37において、「レ」の字の書き始めの端部39と、「レ」の字の書き終わりの端部40と、が、稜線29の上に位置している。
【0063】
「レ」の字形をなす切り込み37の内側部分は、回転刃23の表側面24側に立ち上がるように折り曲げられて、第1の刃部60を形成している。さらに、第1の刃部60の回転方向前側の縁に、第1の刃部60の刃61が形成されている。そして、刃61は、内側に湾曲した弧を描く形状を有している。また、切り込み37の内側部分を折り曲げて第1の刃部60を形成することによって、傾斜面31に穴50が形成されている。
【0064】
切り込み37の内側部分を回転刃23の表側面24側に立ち上がるように折り曲げて、第1の刃部60を形成するに際して、第1の刃部60は、径方向中心側に向かってやや傾斜していることが好ましい。第1の刃部60がこのように傾斜していれば、回転刃23を積み重ねて保管するに際して、下側に位置する回転刃23の第1の刃部60の突端部が、上側の回転刃23の突起部28の穴50の中に入りやすくなる。
【0065】
さらに、変形例1においては、第1の刃部60が、稜線29の上に形成されているとした。これに代えて、図7の変形例2に示すように、第1の刃部63が、突起部28の傾斜面30の上に形成されていても良い。
すなわち、「レ」の字状の切り込み67が傾斜面30の上に形成されている。そして、切り込み67において、「レ」の字の折れ曲がった頂点部分68が、稜線29側(すなわち、径方向中心側)を向いているとともに、頂点部分68が傾斜面30の上に位置している。
【0066】
そして、「レ」の字形をなす切り込み67の内側部分は、回転刃23の表側面24側に立ち上がるように折り曲げられて、第1の刃部63を形成している。第1の刃部63の回転方向前側の縁に、第1の刃部63の刃64が形成されている。また、刃64は、内側に湾曲した弧を描く形状を有している
【0067】
第1の刃部63は、径方向中心側に向かってやや傾斜するように折り曲げられていることが好ましい。そして、切り込み67の内側部分を折り曲げて第1の刃部63を形成することによって、傾斜面30には穴50が形成されている。
なお、主刃部26は、樹脂製の紐状体からなるコードカッターによって形成されている。
【0068】
第1の刃部63が径方向中心側に向かってやや傾斜するように折り曲げられていることによって、回転刃23を積み重ねて保管するに際して、下側に位置する回転刃23の第1の刃部63の突端部を、上側の回転刃23の突起部28の穴50の中に入れやすくなる。
変形例2において、回転刃23を表側面24と平行に横から見たときに、主刃部26から第1の刃部63の突端までの高さは、主刃部26から稜線29までの高さよりも高いことが好ましい。このようにすることで、つる植物等が、回転している突起部28の稜線29の上にかぶさるように倒れてきても、この倒れてきたつる植物等は、第1の刃部45の刃46によって切断されてしまう。
【0069】
本実施の形態及び変形例1において、金属製の刃が主刃部26として形成されているとしたが、樹脂製の紐状体からなるコードカッターが主刃部26として形成されていても良いことは勿論のことである。また、変形例2において、樹脂製の紐状体からなるコードカッターが主刃部26として形成されているとしたが、金属製の刃が主刃部26として形成されていても良いことも勿論のことである。
【0070】
本実施の形態において、回転刃23を表側面24と平行に横から見ると、手前側に見える突起部28において、稜線29から回転方向後側の斜め下方に向かって、切り込み35が形成されており、この切り込み35の上側部分36が、第1の刃部45として、斜め上方に向かって立ち上がるように曲げられているとした。これに代えて、図8の変形例3に示すように、第1の刃部70を形成しても良い。
【0071】
すなわち、回転刃23を表側面24と平行に横から見ると、手前側に見える突起部28において、稜線29から回転方向後側の斜め下方に向かって、「レ」の字状に見える切り込み71が形成されており、「レ」の字の書き始めの端部72と、「レ」の字の書き終わりの端部73と、が、稜線29の上に位置し、「レ」の字の折れ曲がった頂点部分74が、傾斜面30の上に位置している。
【0072】
そして、切り込み71の上側部分75の回転方向前側の縁部分に、第1の刃部70の刃76が形成されており、刃76は、回転刃23の回転方向前側を向いている。回転刃23を表側面24と平行に横から見ると、手前側に見える突起部28において、刃76の上端部が、端部72に一致し、刃76の下端部が、頂点部分74に一致している。なお、上側部分36と異なり、上側部分75は、斜め上方に向かって立ち上がるように曲げられてはいない。したがって、稜線29よりも上方に、第1の刃部70の上端部分は、突出していない。
【0073】
さらに、あるひとつの第1の刃部70Aと、稜線29の上において、第1の刃部70Aの回転方向前側に隣接して位置する別の第1の刃部70Bと、を考える。回転刃23を表側面24と平行に横から見ると、第1の刃部70Bの刃76の上端部から、第1の刃部70Aの刃76の下端部まで、突起部28の稜線29がなだらかに連続して連なっている。
【0074】
回転刃23を積み重ねて保管するに際しては、下側に位置する回転刃23の突起部28を、上側に位置する回転刃23の第2の窪み部分33の中に納めさえすれば、積み重なった回転刃23どうし間の隙間を小さくすることができ、積み重ねた回転刃23をコンパクトに保管できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
上記のような刈払機用回転刃の回転阻害要因排除構造であるので、様々な雑草が生い茂る土地の刈り払い作業において有用であり、刈り払い作業を安全かつ効率的に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 刈払機
10 操作棹
11 エンジン
12 駆動軸
13 ハンドル
14 保護カバー
15 ギヤケース
16 ギヤの出力軸
20 第2の刃部
21 第2の刃部の刃
23 回転刃
24 回転刃の表側面
25 回転刃の裏側面
26 主刃部
28 突起部
29 突起部の稜線
30、31 突起部の傾斜面
32 第1の窪み部分
33 第2の窪み部分
35 切り込み
36、75 切り込みの上側部分
37、67、71 「レ」の字状の切り込み
38、68、74 「レ」の字状の切り込みにおける「レ」の字の折れ曲がった頂点部分
39、72 「レ」の字状の切り込みにおける「レ」の字の書き始めの端部
40、73 「レ」の字状の切り込みにおける「レ」の字の書き終わりの端部
45、45A、45B、60、63、70、70A、70B 第1の刃部
46、61、64、76 第1の刃部の刃
47 第1の刃部の上端部
48 第1の刃部の回転方向前側の下端部
50 穴
55 ナット
56 ガード部
57 金属製バンド
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5 
【図6】
図6 
【図7】
図7 
【図8】
図8 
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