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機械器具
 
【発明の名称】往復動ポンプ
【出願人】
【識別番号】000160485
【氏名又は名称】丘野 聖
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市七里ガ浜1丁目1番10号
【発明者】
【氏名】丘野 聖
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市七里ガ浜1丁目1番10号
【要約】
【課題】公知の往復揺動式ポンプではコンロッドとピストンが一体であるため、ピストンは往復直線運動ができず、揺動しながら往復運動をしていた。また揺動運動をしながら摺動するため、シールのシール性と耐久性に問題があった。
また、ピストンが往復直線運動をする方式ではピストンにピンを要し、ピストンピン・軸受を要する等部品点数が増え、構成が複雑になる等の問題があった。
【解決手段】本発明ではコンロッドとピストンを弾性的に連結することにより、コンロッド偏芯ピン側は偏芯回転運動しながらピストン側は往復直線運動をさせることによってシール性を高めつつ、従来の往復直線運動式のピストンからはピン・軸受等の部品を無くす等部品点数を減らしながら長寿命のポンプの実現を可能にした。
【選択図】図5
選択図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面が円筒状をなすシリンダと、
前記シリンダ一端部側に設けられた流体流入口及び流体流出口と、外周面が円筒状をなし、一端部側に摺動部材を設け、気密を保持するためのシール部材を設けたピストンと、回転駆動する駆動軸と、駆動軸と平行で所定量偏芯した偏芯ピンと、前記偏芯ピンと連結したコンロッド基部、前記基部と連結した弾性中間部材、弾性中間部材と連結したピストンで構成し、前記弾性中間部材はピストンの往復動方向に対しては剛性を有し、往復動方向と交差する方向に対しては可撓性を有し、前記ピストンを弾性的に連結して駆動軸の回転を前記ピストンの往復直線運動に変換することにより流体を吸入圧縮して吐出することを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項2】
前記弾性中間部材は、コンロッドからピストンの方に向かって伸びる第1の中間部材と、ピストンからコンロッドの方に向かって伸びる第2の中間部材と、それら第1の中間部材と第2の中間部材とを連結する直線状の部材とを備える、請求項1の往復動ポンプ。
【請求項3】
前記直線状の部材は、ピストンの圧縮作動時に、引っ張り力によってピストンを圧縮する、請求項2の往復動ポンプ。
【請求項4】
シール部材及び摺動部材については、次の構成のいずれか一つの配置とすることができる、請求項1の往復動ポンプ。
a)ピストンに装着摺動とシールを兼用するL形シールを複数にしたもの。
b)ピストンに装着するシール部材及び摺動部材において摺動部材を吸排気に近い側及び遠い側に配置し、シール部材を両摺動部材の間に配置したもの。
c)ピストンに装着するシール部材及び摺動部材において摺動部材を吸排気に近い側に配置し、シール部材を吸排気とは遠い側に配置したもの。
d)ピストンに装着するシール部材及び摺動部材においてシール部材を吸排気に近い側に配置し、摺動部材を吸排気とは遠い側に配置したもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小型往復動式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
図1〜4で無給油の往復動ポンプが提案されている。図3、図4ではピストンを往復運動させる構造としてピストンにピストンピン穴を設けてピストンピンを連結し偏芯ピンの回転運動を往復直線運動に変換している。この場合はピストンとコンロッドは別部品となり、更にコンロッド小端部にグリス封入された軸受とピストンピンを設けなければならず、部品点数が増えて構造が複雑になり、同時にコストアップにもなる。この問題を解決するため図1、図2のようなコンロッドとピストンを一体としたコンロッド一体型ピストンが発明され、公知となっている。
そして、図1、図2に示す無給油の往復動ポンプが提案されている。しかし前記したように部品点数を減らすため、コンロッドとピストンを一体とした構造としている。しかしコンロッドとピストンが一体であるためにピストンは直線往復運動ができず、揺動しながら往復運動をしていた。このような動きに対応するため、従来技術ではシールが変形することで対応しており、またシールは摺動部材を兼ねている。また揺動運動をするため、図18に示すようなシール部を複数設けることができない。そして一般に性能はピストンリング式に比較して低い。また揺動運動及び直線運動という複合的な運動で、シール部材が摺動部材を兼用しているため耐久上の問題もあり、現行以上の効果的なシール構造とすることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2018−76806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、公知のものではコンロッドとピストンが一体であるためにピストンは往復直線運動ができず、揺動しながら往復運動をしていた。揺動しながら往復運動をするため、シール部材の性能及び耐久性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この問題を解決するため、本発明ではシリンダの一端部側に設けられた流体流入口及び流体流出口と前記シリンダに対して往復直線運動するピストンと回転駆動する駆動軸と、駆動軸と平行で所定量偏芯した前記偏芯ピンとをコンロッドにより連結する。そしてコンロッドとピストンを弾性的に連結することによりコンロッドの偏芯ピン側は偏芯回転運動をするがピストンは往復直線運動をさせることができる。このためコンロッドは要部を弾性的に連結し、一体とすることでピストンを往復直線運動させることを可能とする。また、このコンロッドは圧縮に対しては剛性を持ちながら偏芯ピンの公転に対しては可撓性を持たせる。このことにより、ピストンは往復直線運動をしながら圧縮による力に対応させることが可能となる。そしてこの考えに基づき既に特開2018−076806で提案をしているが、この提案ではコンロッドの要部として板バネ、コイルバネ等の要素を圧縮の要素として構成している。この構成では低速あるいは短期間及び軽負荷では運転は可能であるが高速、長期間の運転では要素に無理が掛かり、問題が発生することが予想される。何故ならば、ピストンの圧縮時にコンロッドとピストンを弾性的に連結する部分が常に圧縮力を受け、繰り返し変形することになる。それが耐久性に問題を生じる恐れがある。
【0006】
本発明ではコンロッドとピストンを弾性的に連結することを基本にしつつ力の伝達関係を変えるようにする。即ち、本発明では、ピストンの圧縮時にコンロッドとピストンを弾性的に連結する部分が、圧縮力ではなく引っ張り力を受ける構成とする。このように引っ張り力を利用してピストンを往復直線運動させることによってピストンシールのシール性を高め且つ耐久性を持ったシールとすることが可能となる。
【0007】
引っ張り力を得る構成として、弾性中間部材を次のようにするのが好ましい。即ち、前記弾性中間部材は、コンロッドからピストンの方に向かって伸びる第1の中間部材と、ピストンからコンロッドの方に向かって伸びる第2の中間部材と、それら第1の中間部材と第2の中間部材とを連結する直線状の部材とを備えるようにする。
【0008】
本発明は、基本的に、前記直線状の部材について、ピストンの圧縮作動時に、引っ張り力によってピストンを圧縮することである。その点、直線状の部材としてワイヤー、ひも状部材などを適用し、それに対し、引っ張り力が生じるようにすれば良い。
【0009】
尚、ピストンの吸入行程においては、ピストンを戻すために必要な力は僅かである。そこで、前記直線状の部材のみによって、それに対応することができる。それに加え、付加的にバネ材を加えることにより、安定した構成を得ることもできる。
【0010】
前記弾性体は、圧力による力を受ける方向には剛性を持ち、回転方向には可撓性を持つ性質であるものが最適である。
【0011】
その性質を持つものは、実施形態1として例えば図5に示すコンロッドがある。図9、図
10、図11、図12に基づき本発明によるポンプの構成と動作について説明をする。偏芯ピンは図に向かって右回転をするものとする。
・下死点位置(図9)ではコンロッド及びワイヤーは変形せず真直状態を保持する。また、ポンプとしては吸入状態でありシリンダ内の圧力は吸入側と同じであるので、吸入圧力が大気圧であるとすればコンロッド及びワイヤーは圧縮室内の圧力による力を受けない。
・圧縮行程(図10)では圧縮室内の圧力は圧縮により上昇を始め、ピストンは圧縮圧力による力を受け始め、尚且つ偏芯ピンの公転によって駆動軸の回転中心から移動を始めるため、コンロッドの偏芯ピン側は偏芯ピンの公転に対応しつつピストンは直線運動をする。この動きに対応するためコンロッドとワイヤーの連結部は複雑な運動をする。即ち、コンロッドのワイヤー連結部は偏心ピンを中心に揺動運動をすると共にワイヤーのピストン側の連結部は直線運動をする。従って、コンロッドとワイヤーの連結部はコンロッドの偏芯ピン側を中心とする揺動運動をするとともに、ワイヤーのピストン側の直線運動を同時に行う。このときワイヤーは圧縮圧力による力により引っ張りを受けると同時に直線運動方向と直線運動方向に交差する方向に移動し、コンロッドは圧縮圧力による力による圧縮を受ける。そして連結部はその双方のバランスする位置に移動する。ワイヤーは圧縮圧力の力により引張力を受けるため僅かに右側に湾曲するが、湾曲するよりも直線になろうとする力が勝り、且つコンロッドの偏芯ピン側は回転自在のためほぼ直線の状態で移動をする。そして偏芯ピンが上死点に達した時、ピストン、ワイヤー、コンロッドはシリンダ中心線上に戻る。そしてピストンのワイヤー連結部には圧縮圧力の力による圧縮応力が発生する。従って、ワイヤーには圧縮圧力による力ではなく引っ張りとわずかな曲げが発生するのみのため、長期の運転にも耐久性は十分に維持することが可能である。
・吸入行程(図12)ではシリンダ内の圧力は大気圧の状態を保った状態でピストンは下死点まで移動するが、コンロッドと吸入行程用ワイヤー(17)は圧縮行程とは逆に右に凸になりながら移動をし、圧縮行程と同様に変形の最大値を超えると真直に戻る方向になり、偏芯ピンが下死点に達した時ピストン、ワイヤー、コンロッドはシリンダ中心線上に戻る。ただし、吸入行程では圧縮行程とは違って圧縮室内の圧力は大気圧となるので圧力による力は受けない。そしてワイヤーも圧力による力は受けない。本発明では吸入行程用ワイヤー(17)を設けているが摺動材の摩擦抵抗のためその力は小さい。圧縮圧力による力はコンロッド及びピストンは受けるが、ワイヤーは引っ張りとわずかな曲げを受けることになり、構造上の問題はない。またワイヤーを使用することで摺動材が受ける側圧は極めて小さくできるため、本発明のものでは側圧による摺動材の摩耗をほとんど無視できるため、摺動材の寿命を長期化することが可能となる。
実施形態2(図13、図14)としてワイヤーの代わりに板バネ(18)を使用することができる。
動作及び役割は前記のワイヤーと同じで、板バネは引っ張りと曲げを受ける。
実施形態3(図7、図8)としてワイヤーの代わりに鋼線または炭素繊維等を使用することができる。
動作及び役割はほぼ前記のワイヤーと同じで、鋼線または炭素繊維は引っ張りと曲げを受ける。
【発明の効果】
【0012】
ピストンを往復直線運動させることでピストンシールを変形させずに、シールを可能とすることができるため、図18のように2重シールあるいは図17、図19のように直動シールとすることができ、シール効果が高く長寿命のシールとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】公知技術のコンロッド一体型ピストンの正面断面図を示す。
【図2】公知技術のコンロッド一体型ピストンの側面断面図を示す。
【図3】公知技術のコンロッド分離型ピストンの正面断面図を示す。
【図4】公知技術のコンロッド分離型ピストンの側面断面図を示す。
【図5】本発明の弾性中間部材としてワイヤーを使用した正面断面図を示 す。
【図6】本発明の弾性中間部材としてワイヤーを使用した側面断面図を示す。
【図7】本発明の弾性中間部材として鋼線を使用した正面断面図を示す。
【図8】本発明の弾性中間部材として鋼線を使用した側面断面図を示す。
【図9】本発明の下死点位置図を示す。
【図10】本発明の圧縮行程図を示す。
【図11】本発明の上死点位置図を示す。
【図12】本発明の吸入行程図を示す。
【図13】本発明の弾性中間部材として板バネを使用した正面断面図を示す。
【図14】本発明の弾性中間部材として板バネを使用した側面断面図を示す。
【図15】本発明のピストンに加わる圧力の図を示す。
【図16】公知のピストンに加わる圧力による力とシリンダに加わる側圧 の図を示す。
【図17】本発明の摺動材とシールの図を示す。
【図18】本発明の2重シールの図を示す。
【図19】本発明の2つの摺動材とシールの配置図を示す。
【図20】公知技術のピストンシールとシリンダ間の圧力の図を示す。
【図21】本発明のピストンシールとシリンダ間の圧力の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1〜10、図13〜17に基づいて説明する。
図1に於いて、従来のピストン一体型コンロッド(30)ではピストンは直線運動ができず、揺動運動をしながら直線運動をする。従って、ピストンシール(29)はシリンダとピストンの金属同士の接触を防ぐための摺動材としての役割とシリンダとの密閉を保つためのシールとしての役割を持ち、常に変形をしながら運動をすることになり厳しい条件に晒された状態で稼働することになる。従って摺動条件が厳しく摩耗が早くシール及び摺動材としての寿命が短い。これに対して本発明のポンプでは図5、図7、図13に示すようにコンロッドとピストンを例えばワイヤー、板バネあるいは鋼線で弾性的に連結することによってコンロッドとしては回転に対しては柔軟性を持ち、直動方向に対しては剛性を持つことによりコンロッド一体型ピストンとは異なり、ピストンを往復直線運動させることが可能になったことで図18に示すようにシールを2連とすることができ、図20、図21に示すようにシール部材1個当たりの面圧を減少させられるので、シール効果が高く摺動材の面圧を下げ、寿命を長期化させることができるようにしたものである。
【0015】
本発明のポンプではコンロッドとピストンを弾性的に連結することによってピストンを往復直線運動させることで、図17、図18、図19に示すシールの構造が可能となり、シール性に優れ、且つ超長期の寿命を持ったシールとすることが可能となる。
【0016】
図19に示すようにピストン両端に摺動部材を配置し、両摺動部材の間にシール部材を配置することによりピストンは一層安定した直線運動をすることになってシール効果を高めることができる。
【0017】
本発明のポンプではコンロッドとピストンを弾性的に連結することによってピストンを往復直線運動させ、摺動材の面圧を低くすることで摺動部材の摩耗を減らし、摺動部材の摩耗によるピストンとシリンダ内壁との接触を防止することができ、摺動部材の摩耗を減らすことでポンプの長期の寿命を可能にできる。
【0018】
図16に示すように本発明の弾性的連結型ピストンでは弾性体が側圧S2を和らげる効果があるので、側圧は公知のものに比べて小さくできるため、側圧による摺動部材の摩耗を小さくできることによりポンプの寿命を長期化することが可能となる。
【0019】
図1に公知の構造を示す。公知のものではシール部材はピストンの動き、即ち揺動運動をするためシール部材も揺動運動をすることとなる。それに対して本発明では、ピストンの動きを往復直線運動とすれば図18のようにシール部材を2連あるいは3連とすることができ、一つのシール部材が受け持つ圧力を減少させることができ、尚且つ一つの部材が受け持つ側圧S2を減少させることができるため、シール部材及び摺動部材としての寿命を延ばすことが可能となる。それによりシール性を高めて尚且つ一つの部材が受け持つ圧力及び側圧を減少させることができるため長寿命とすることができる。
また、ピストンの動きを往復直線運動にすることにより図19に示すような非接触シールとすることで全く摩耗しないシール部材とすることも可能となるため、超長期寿命のポンプの提供ができる。
また、図3、図4に示すように公知のコンロッド分離型のピストンでは部品点数が多くなって複雑になるとともに、コストの増大につながる。
本発明によれば、構造が簡単なままピストンの動きを揺動複合運動から往復直線運動にすることにより揺動複合運動ではできなかったシール部材のシール性と耐久性を大幅に高め、同時に長寿命のポンプを提供することが可能となるため、医療機器等停止することが許されず連続運転が必要な用途を初め産業上の利用性が向上する。
【0020】
本発明はピストンピンがないポンプに対して適用することが好ましいが、ピストンピンがあるポンプに対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ケース
2 バルブカバー
3 吸入口
4 吐出口
5 バルブプレート
6 吸入流路
7 吐出流路
8 吸入バルブ
9 吐出バルブ
10 シリンダ
11 圧縮室
12 ピストン
13 摺動部材
14 シール部材
15 コンロッド
16 圧縮行程ワイヤー
17 吸入行程ワイヤー
18 板バネ
19 鋼線
20 ピストンピン式コンロッド
21 ベアリング
22 ピストンピン
23 ピストンシール
24 軸受
25 偏芯ピン
26 駆動軸受
27 軸受押え
28 駆動軸
29 L形シール
30 コンロッド一体型ピストン
31 第一シール
32 第二シール
33 第一摺動部材
34 第二摺動部材
35 シール押え
36 カバープレート
 
 
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10
【図11】
図11
【図12】
図12
【図13】
図13
【図14】
図14
【図15】
図15
【図16】
図16
【図17】
図17
【図18】
図18
【図19】
図19
【図20】
図20
【図21】
図21
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