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【発明の名称】浮屋根式タンクのスロッシング防止装置 【出願人】 【識別番号】504126905 【氏名又は名称】波戸 健一 【住所又は居所】北海道千歳市文京1丁目2番3 ウィング13−222 【発明者】 【氏名】波戸 健一 【住所又は居所】北海道千歳市文京1丁目2番3 ウィング13−222 【要約】 【課題】 浮屋根式タンクにおいて、地震時の長周期の揺れによる激しいスロッシングが発生するような状況に対して、浮屋根の揺動が大きくなる前にこれを押さえることにより、浮屋根の破損及び沈没、並びにタンク内液体の浮屋根上部への流出又はタンク外への溢流を防止する。 【解決手段】 浮屋根式タンクにおいて、タンク本体の内側の全周にタンクの中心から角度を均等にして複数の支柱を設け、支柱をタンク本体側壁の上部及びタンクの底部に固定するとともに、浮屋根に支柱貫通用の穴を設けて、支柱をこの穴に貫通させることにより、スロッシングで浮屋根が揺動したとき、浮屋根が支柱により押さえられよう構成しているため、浮屋根は水平位置から限定された距離でしか動くことができず、タンクの液体は大きな波動(運動エネルギー)となることができない。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 浮屋根式タンクにおいて、タンク本体の内側の全周にタンクの中心から角度を均等にして複数の支柱を設け、これらの支柱をタンク本体側壁の上部及びタンクの底部に固定するとともに、浮屋根に支柱貫通用の穴を設けて、支柱をこの浮屋根の支柱貫通用穴に貫通させることにより、スロッシング発生時に浮屋根が揺動したとき、浮屋根の揺動が支柱により押さえられように構成したことを特徴とする浮屋根式タンクのスロッシング防止装置。 【請求項2】 タンク本体からの支柱が貫通する浮屋根の支柱貫通用穴の上部及び下部の周囲に、円錐を台形状にした構造物である応力装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の浮屋根式タンクのスロッシング防止装置。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、浮屋根式タンクにおけるスロッシングの防止に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来の浮屋根式タンクのスロッシング沈静化のための発明には、浮屋根に抵抗板のついた線条体を吊り下げたものがある。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 地震時の長周期の揺れにより、浮屋根式タンク内の液体が激しいスロッシングを起こし、浮屋根の破損又は沈没等に起因するタンク火災の発生等、大災害を引き起こす可能性がある。 これまでの浮屋根式タンクにおけるスロッシング対策は、消防法に基づく液面の揺動計算により、液体の注入上限である運転上限液位を設定して必要空間距離を確保することで液体のタンク外への溢流対策はとられているものの、あらゆる液位での地震時の長周期の揺れによる激しいスロッシングに対応するものではない。 このため、地震時の長周期の揺れにより激しいスロッシングが発生するような状況に対しても、浮屋根の破損又は沈没、あるいは液体の浮屋根上部への流出又はタンク外への溢流を防止することが可能な対策が必要である。 激しいスロッシングが発生するような状況であっても、スロッシングの初期段階ではタンク内の液体の波動(運動エネルギー)は小さいが、時間とともにタンク内の液体の揺れが増幅し、波動(運動エネルギー)が極めて大きなものになる。 このため、激しいスロッシングの発生を効果的に防止するためには、タンク内の液体の波動(運動エネルギー)が比較的まだ小さい、スロッシング発生の初期段階でこれを防止する対策が必要である。 スロッシング対策の発明として、前記の「背景技術」のものがあるが、これはスロッシングの揺れの増幅段階においてこれを沈静化させようとするものであるとともに、「解決しようとする課題」もシール装置及びウェザーシールドの破損防止が主たるものとなっている。 本発明は、特に地震時の長周期の揺れで発生する激しいスロッシングを、タンク内液体の波動(運動エネルギー)がまだ小さい、初期の段階でこれを防止することができる浮屋根式タンクのスロッシング防止装置を提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】 浮屋根式タンクにおいて、タンク本体の内側の全周にタンクの中心から角度を均等にして複数の支柱を設け、これらの支柱をタンク本体側壁の上部及びタンクの底部に固定するとともに、浮屋根に支柱貫通用の穴を設けて、支柱をこの浮屋根の支柱貫通用穴に貫通させることにより、スロッシング時に浮屋根が揺動したとき、浮屋根の揺動が支柱により押さえられように構成したことを特徴とする。 この様にすることにより、スロッシング時の浮屋根の一方が上昇し反対側が下降するような揺動においては、浮屋根は全周の支柱で押さえられるため、水平位置から限定された距離でしか動くことができず、タンクの液体は大きな波動(運動エネルギー)となることができない。つまり、スロッシングの初期の段階でこれを防止することができる。 タンク本体からの支柱が貫通する浮屋根の支柱貫通用穴の上部及び下部の周囲に、円錐を台形状にした構造物である応力装置を設けることにより、浮屋根の揺動を更に小さく押さえるとともに、浮屋根の支柱への作用力(荷重)を分散する。 【発明の効果】 本発明の浮屋根式タンクのスロッシング防止装置によれば、スロッシング時の浮屋根の一方が上昇し反対側が下降するような揺動がどの方位で発生しても、浮屋根は全周の支柱で押さえられるため、浮屋根の水平位置から限定された距離でしか動くことができず、タンクの液体は大きな波動(運動エネルギー)となることができない。つまり、スロッシングの初期の段階でこれを防止することができる。 これにより、浮屋根の破損又は沈没、並びにタンク内液体の浮屋根上部への流出又はタンク外への溢流を防止することができ、ひいては、これらに起因する地震時の深刻なタンク火災の発生を防止することができる。 タンク本体からの支柱が貫通する浮屋根の支柱貫通用穴の上部及び下部の周囲に、円錐を台形状にした構造物である応力装置を設けることにより、浮屋根の揺動を更に小さく押さえることが可能になるとともに、浮屋根の支柱への作用力(荷重)を分散することができる。 本発明は、スロッシング発生時に浮屋根が揺動したときのみに機能し、通常の場合である浮屋根が水平になっているときは、浮屋根は支柱に沿って円滑に移動が可能である。 【発明を実施するための最良の形態】 図1及び図2に示すように、タンク本体1の内側の全周にタンクの中心から角度を均等にして複数の支柱3を設け、支柱3の上部は支柱支持板4によりタンク本体の側板2に、下部はタンク本体の底部に固定する。 支柱3の位置は、スロッシングの波動(運動エネルギー)を押さえるという力学的観点からは、極力、側板2に近い位置が最も効果的である。しかし、実際の浮屋根には外周にポンツーン(浮屋根を浮かべるための空気室)等があるため、浮屋根の強度等を考慮して位置を決定する。 支柱3の必要数及び大きさ(直径等)、支柱支持板4の強度、並びにこれらの固定要領は、スロッシングによるそれぞれの構造物への作用力(荷重)の大きさにより決定する。また、側板2及びタンク底部に強度上の問題がある場合には、側板2及びタンク底部の一部を補強する。 浮屋根5には、図3及び図4に示すような支柱貫通用穴9を設けるとともに、支柱貫通用穴9の上部及び下部の周囲には、図1及び図3に示すような、円錐を台形状にした構造物である応力装置6を設ける。 この応力装置6の形状において、高さについては理論的には高ければ高いほど浮屋根5の揺動を小さく抑えることができるが、浮屋根式タンクの運転(液体の注入の上限及び使用の下限)等を考慮して可能な限り高くする。また、円錐を台形状とした底辺と上辺の寸法は応力装置6への作用力(荷重)の大きさにより決定する。更に、浮屋根5自体に強度上の問題がある場合は、浮屋根の一部を補強する。 図3に示すように、円錐を台形状にした構造物である応力装置6にパッキンを設ける。支柱3及び応力装置6の間に作用力(荷重)が加わった場合の緩衝にするとともに、金属同士の摩擦による火花の発生を防止する。 浮屋根の応力装置6及び支柱3の隙間の距離は、理論的には短いほど浮屋根5の揺動を小さく抑えることができるが、図3に示す応力装置用パッキン10を設ける必要があるため、このパッキンの強度及び弾性に基づく厚さとの関係を考慮しつつ、可能な限り隙間の距離を短くする。 応力装置6の応力装置用パッキン10が設けられる部分は、スロッシング時の揺動による浮屋根5からの作用力(荷重)を分散するため、テーパーを設ける。このテーパーの角度は、理論的にはスロッシング時の揺動による浮屋根の最大傾斜角と同じにすることにより、揺動による作用力(荷重)を最も効果的に分散することができる。 また、応力装置6にテーパーを設けることにともない、応力装置用パッキン10の形状は、図3に示すように応力装置6とは逆のテーパーを設けるとともに、浮屋根が水平時には支柱3との接面部分を支柱と平行にすることにより、作用力(荷重)を効果的に受け止めることができる。 図3に示すように、浮屋根の支柱貫通用穴9の周辺にも応力装置用パッキン10と同様の浮屋根応力用パッキン11を設ける。応力装置6の破損等、予想外の状況が発生した場合に浮屋根5により揺動を押さえるとともに、金属同士の摩擦による火花の発生を防止する。 図3に示す応力装置用パッキン10及び浮屋根応力用パッキン11は、揺動をより小さく抑えるために弾性が小さく、かつ、大きな作用力(荷重)に耐え、摩擦に対して火花を発生しない材質、例えば硬質ゴム等にする。 図3に示す液体用パッキン12は、現在、浮屋根の外周に使用されているシール的なものを設ける。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の形態の一例を示す断面図である。 【図2】図1の平面図である。 【図3】図2のAB方向の矢視図である。 【図4】図3のCD方向の矢視図である。 【符号の説明】 1 タンク本体 2 側板 3 支柱 4 支柱支持板 5 浮屋根 6 応力装置 7 シール 8 液体 9 支柱貫通用穴 10 応力装置用パッキン 11 浮屋根応力用パッキン 12 液体用パッキン |
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【図1】 |
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【図2】 |
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【図3】 |
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【図4】 |
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