閉じる | ||
【発明の名称】培地用土壌の形成方法 【出願人】 【識別番号】593139422 【氏名又は名称】池田 吉康 【住所又は居所】千葉県富津市上1352−1 【代理人】 【弁理士】 【識別番号】100107250 【氏名又は名称】林 信之 【代理人】 【弁理士】 【識別番号】100120868 【氏名又は名称】安彦 元 【発明者】 【氏名】池田 吉康 【住所又は居所】千葉県富津市上1352−1 【要約】 【課題】 無農薬有機栽培を実行する際において、害虫、有害菌、ウィルス、雑草の種等を土から効果的に除去することが可能な培地用土壌の形成方法を提供する。 【解決手段】 植物を栽培するための培地用の土を予め焼き加熱処理し、堆肥に対して鶏糞、油粕、魚介類の何れか1以上を混合攪拌し、これを焼き加熱処理された土と混合して培地とすることを特徴とする。このとき、上記堆肥として牛糞堆肥を用いるようにしてもよいし、培地用の土を650℃以上まで予め焼き加熱処理するようにしてもよい。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 植物を栽培するための培地用の土を予め焼き加熱処理し、 堆肥に対して鶏糞、油粕、魚介類、米ぬかの何れか1以上を混合攪拌し、これを上記焼き加熱処理された土と混合して上記培地とすること を特徴とする培地用土壌の形成方法。 【請求項2】 牛糞堆肥としての上記堆肥に対して鶏糞、油粕、魚介類、米ぬか、骨粉の何れか1以上を混合攪拌すること を特徴とする請求項1記載の培地用土壌の形成方法。 【請求項3】 上記培地用の土を100℃以上まで予め焼き加熱処理すること を特徴とする請求項1又は2記載の培地用土壌の形成方法。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 本発明は、植物を栽培するための培地用土壌の形成方法に関し、特に無農薬有機栽培においてウィルスや有害菌等を効果的に除去する際に好適な培地用土壌の形成方法に関する。 【背景技術】 植物の生長を促すとともに農作物の増収を図るため、従来より化学農薬や化学肥料が多用されてきた。しかし、近年においては、それら化学物質の多用による環境汚染が深刻化するとともに、土壌の劣化による農作物の収量の減少が問題となってきている。また、農作物の安全性に対する関心も高まり、いわゆる無農薬有機栽培に回帰する傾向が見られている(例えば、特許文献1参照。)。 しかしながら、従来の無農薬有機栽培では、害虫、有害菌、ウィルス、雑草の種等により栽培すべき植物が病害を受け、却って収穫が減ってしまう場合が多く、また土自体の成分も偏って栽培に適さないものとなる場合もある。特にこれらによる植物の病害が深刻化する場合には、殺菌剤や除草剤を使用せざるを得なくなり、無農薬有機栽培としての実効性を失うことにもなる。また、害虫やウィルスにより、土自体の成分も偏ってしまうという問題もある。 さらにJAS規格(日本農林規格:Japanese Agricultural Standard)において、無農薬有機栽培は、1)種まき又は植付け前2年以上、禁止された農薬や化学肥料を使用していない田畑で栽培を行うこと、2)栽培期間中も禁止された農薬や化学肥料は使用しないこと、3)遺伝子組み換え技術を使用しない、等の規定に従うことが前提とされている。このため、無農薬有機栽培の下で植物の栽培を行う際に、その場所の条件がJAS規格により限定されてしまうという問題点もあった。 【特許文献1】 特願2003−162143号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、無農薬有機栽培を実行する際において、害虫、有害菌、ウィルス、雑草の種等を土から効果的に除去することが可能な培地用土壌の形成方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 本発明に係る培地用土壌の形成方法は、上述した課題を解決するために、植物を栽培するための培地用の土を予め焼き加熱処理し、堆肥に対して鶏糞、油粕、魚介類、米ぬかの何れか1以上を混合攪拌し、これを上記焼き加熱処理された土と混合して上記培地とすることを特徴とする。 【発明の効果】 本発明では、植物を栽培するための培地用の土を予め焼き加熱処理し、堆肥に対して鶏糞、油粕、魚介類、米ぬかの何れか1以上を混合攪拌し、これを上記焼き加熱処理された土と混合して上記培地とする。 ちなみに、混合した鶏糞、油粕、魚介類は、様々な天然物質を分解し、自然界に存在する細菌(例えば、バクテリア等)を増加させる作用を発揮するものである。このため、牛糞堆肥を、これら鶏糞、油粕、魚介類等から放出されるバクテリアにより分解することができ、これに伴って自然有機栽培に必要となる有益な微生物を多種類に亘り生成させることができ、ミネラルを上記土に与えることが可能となる。また、牛糞堆肥から放出されるバクテリアからも、鶏糞、油粕、魚介類などを分解させることができ、これに伴って自然有機栽培に必要となる有益な微生物を多種類に亘り生成させることができる。 このため、植物の成長を促進させることが可能となる。特に本発明においては、土を全て焼き加熱処理することにより、植物がウィルスにかからない、或いは病気になりにくくなるため、殺菌剤を使用する必要もなくなる。また、本発明では、雑草の種が予め除去されているため、除草剤を使用する必要性もなくなる。さらに本発明では、害虫、害虫の卵、さらには幼虫も焼き加熱処理により除去することが可能となることから、少なくとも防虫ネットにより外部から進入してくる虫を防げば足りることになり、従来の如く殺虫剤を使用する必要性もなくなるという利点がある。 【発明を実施するための最良の形態】 以下、本発明を実施するための最良の形態として、植物を栽培するための培地用土壌の形成方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。 本発明は、例えば図1に示すフローチャートに沿って進行していくことになる。先ずステップS11において、植物を栽培するための培地用の土を予め焼き加熱処理する。実際にこの土を焼き加熱処理する場合には、培地用の土を容器に入れた上で加熱処理装置内に搬入するようにしてもよいし、培地用の土を加熱処理用釜の上部から振り撒くようにしてもよい。 このステップS11において、加熱処理装置内に搬入した土を先ず650℃以上まで加熱する。この650℃以上で加熱する時間は、後述する殺菌の効果を十分に得るために少なくとも3分以上行うことが望ましい。その後、この加熱処理装置内の温度を約100℃近くまで低下させた後、土を外部へ搬出する。 ちなみに、このステップS11において使用する土は、一度本プロセスにおいて使用した後の土を焼き直したものを利用するようにしてもよい。使用済みの土において、枯れ草や根等が多く含まれている場合には、焼き直し温度、焼き直し時間をともに増加させることにより、これらを除去することが望ましい。 このステップS11における焼き加熱工程を経ることにより、土の内部に含まれている害虫、雑菌、ウィルス、雑草の種等を除去することが可能となる。 なお、このステップS11においては、最高加熱温度が200℃以上であれば、上記の作用効果を奏することができ、更には最低100℃以上であればよい。 次にステップS12へと移行する。このステップS12では、牛糞堆肥を製造する。この牛糞堆肥の製造方法は、従来のいかなる製法を利用するようにしてもよい。この牛糞堆肥内には、窒素0.8%、リン酸1.8%、カリウム1.6%が含まれている。ちなみに、植物は土壌中において窒素、リン酸、カリウムの少なくとも3要素があれば成長する。なお、この堆肥は、牛糞堆肥を使用する場合に限定されるものではなく、例えば、馬糞、豚糞等を使用するようにしてもよい。さらにはこれらの代替として、キノコを除去した菌床クズを使用するようにしてもよい。 次に、ステップS13へ移行し、ステップS12において製造した牛糞堆肥に対して、さらに鶏糞、油粕、魚介類、米ぬか、骨粉の何れか1以上を混合し攪拌する。ここで混入すべき魚介類としては、例えばエビ、カニのキトサン、魚粉、貝殻の粉、海藻等である。また、骨粉としては、例えば家畜等の動物の骨を粉末状に粉砕したものを利用する。 鶏糞に含まれる主要成分は、窒素2.6%、リン酸6.5%、カリウム3.3%である。また油粕に含まれる主要成分は、窒素5.0%、リン酸2.0%、カリウム1.0%である。また、魚粉に含まれる主要成分は、窒素7.0%、リン酸6.0%である。 なお、ステップS11における処理と、ステップS12〜S13における処理は何れを先行して行うようにしてもよい。また、このステップS12と、ステップS13における処理を分離することなく、1のステップ内において実行するようにしてもよい。あえて、このステップS12、S13を分離して実行する利点としては、牛糞堆肥の成分に応じて、ステップS13において鶏糞、油粕、魚介類、米ぬか、骨粉の何れか1以上をいかなる割合で混合するか検討し、決定することができるためであり、肥料設計の面において有用となるためである。 次にステップS14へ移行し、ステップS11において焼き加熱処理した土と、ステップS13において混合した堆肥とを混ぜ合わせ、攪拌する。 特にステップS13において混合されている鶏糞、油粕、魚介類は、様々な天然物質を分解し、自然界に存在する細菌(例えば、バクテリア等)を増加させる作用を発揮するものである。このため、牛糞堆肥の成分を、これら鶏糞、油粕、魚介類等から放出されるバクテリアにより分解することができ、自然有機栽培に必要となる有益な多種類に亘る微生物やミネラルを上記土に与えることが可能となる。また、牛糞堆肥から流出したバクテリアにより、鶏糞、油粕、魚介類等の成分を分解することができる。 換言すれば、土中に存在する各物質を、天然の微生物で分解することができ、様々な微量元素と土中に存在させることが可能となり、生きた活力のある土とすることができる。 特に本発明においては、ステップS11において、土を予め焼き加熱処理することにより、土の内部に含まれている害虫、雑菌、ウィルス、雑草の種等が予め除去されている状態となっている。仮にこのような害虫やウィルスが除去されないまま土中に存在していることになれば、植物を食い荒らし、また菌により植物に病気をもたらすことになる。 このため、本発明においては、上記ステップS11を導入することにより、土の内部に含まれている害虫、雑菌、ウィルス、雑草の種等を防止することができる。 次にステップS15へ移行し、ステップS14において混合攪拌された土を培地として植物を栽培する。このステップS15においては、例えばコンクリートやブロック作り等の栽培床や、図2に示すようなプラスチックコンテナ等の栽培容器11内に、ステップS14において混合攪拌された土10を入れることになる。苗作りを行う場合には、これら作製した栽培床や栽培容器11に播種し苗2を作っていくことになる。 また、このステップS15において、プランター内で植物栽培するのではなく、例えば図3に示すように一般的な畑14において栽培を行う場合には、必要な土の量をステップS11において焼き加熱処理し、ステップS14において混合攪拌された土10を培地とし、畝3を作り作物を栽培していくことになる。かかる場合において、本発明に係る培地用土壌の形成方法に沿って作製した土と、他の外部の土とが混合しないように工夫する必要が出てくる。かかる場合には、外部の土を遮断するための遮断機構が境界において設けられていてもよい。 このような本発明に係る方法に沿って形成された培地用土壌では、上述したメカニズムにより、自然有機栽培に必要となる有益な微生物やミネラルを上記土に与えることが可能となるため、植物の成長を促進させることが可能となる。特に本発明においては、土を全て焼き加熱処理することにより、植物がウィルスにかからない、或いは病気になりにくくなるため、殺菌剤を使用する必要もなくなる。また、本発明では、予め土を焼き加熱処理することにより、害虫、有害菌、ウィルス、雑草の種等を除去することができることから、土の成分自体が偏ることもなくなる。 また、土を焼き加熱処理する本発明では、雑草の種が予め除去されているため、除草剤を使用する必要性もなくなる。さらに本発明では、害虫、害虫の卵、さらには幼虫も焼き加熱処理により除去することが可能となることから、少なくとも防虫ネットにより外部から進入してくる虫を防げば足りることになり、従来の如く殺虫剤を使用する必要性もなくなるという利点がある。 さらに本発明では、土自体を無農薬でしかも化学肥料を使用しないで形成することができ、これを畑等の培地として適用し得ることから、無農薬有機栽培の下で植物の栽培を行う際に、その場所の条件がJAS規格により限定されてしまうこともなくなる。 なお本発明においては、ステップS11において、EM(Effective Microoranisms)菌を混合するようにしてもよい。EM菌は、好気性と嫌気性の微生物(主な微生物は、乳酸菌群、酵母菌群、光合成細菌群、発酵系の糸状菌群、グラム陽性の放線菌群)を複合培養したものであり、これら種々の微生物の働きが土壌中で連動し合い相乗効果を発揮する。即ち、このEM菌を混合することにより、自然有機栽培に必要となる有益な微生物やミネラルをより多種類に亘り土に与えることが可能となり、ひいては、植物の成長をより促進させることが可能となる。 ちなみに焼畑農業では、地表にある植物や害虫、菌類を除去することができるが、森林そのものを焼き尽くしCO2等の発生による環境破壊、環境汚染の問題も引き起こし、手法そのものが非常に大掛かりなものであるため、地中にある宿根、球根、種子、害虫の卵及び幼虫、有害菌等が残存してしまうことが多々ある。これに対して、本発明では、自然有機栽培に使用する土を全て焼き加熱処理するため、土中にある宿根、球根、種子、害虫の卵及び幼虫、有害菌等を全て除去することも可能となり、さらに栽培に必要な必要最小限の土のみを加熱処理するため、CO2等の発生による環境破壊、環境汚染の問題も生じることがなくなる。 なお、挿し木で苗を作る場合には、これら作製した栽培床や栽培容器に挿し木をすることにより苗作りを行う。このとき、ステップS11終了時の土であって、牛糞堆肥を混入する前の状態の培地に挿し木を行い、苗作りをしてもよい。 また、本発明は、図1に示すフローチャートに沿って実行される場合に限定されるものではなく、図4に示すフローチャートに沿って実行するようにしてもよい。 先ずステップS21において、植物を栽培するための培地用の土を予め焼き加熱処理を行う。このステップS21における焼き加熱処理の条件は、上記ステップS11と同様であってもよい。 次にステップS22へ移行し、ステップS21において焼き加熱処理した土と堆肥とを混合する。堆肥は、牛糞堆肥を使用する。 次に、ステップS23へ移行し、この牛糞堆肥が混合された土に対して、さらに鶏糞、油粕、魚介類の何れか1以上を混合し攪拌する。ここで混入すべき魚介類としては、例えばエビ、カニのキトサン、魚粉、貝殻の粉、海藻等である。 次にステップS24へ移行し、この混合攪拌された土を培地として植物を栽培する。 この図4に示すフローチャートにより培地を形成しても上述と同様の効果を得ることができることは勿論である。 【実施例1】 本発明を適用した培地用土壌の形成方法により、キュウリを栽培する例について説明をする。先ず上述したステップS11において土を焼き加熱処理する。次にステップS13において、発酵済み牛糞堆肥15lにワカメ0.5g、海苔3g、小エビ2.5g、貝殻5g、煮干し(魚)5g、鶏糞35g、油粕35gに水を加えて攪拌し、これを堆肥として1週間程放置した。 次に、ステップS14へ移行し、ステップS11において焼いた焼き土15lに対して、上記ステップS13において混合した堆肥250ccを混合し、攪拌した上でこれを培地としてプランターに入れた。そして、この形成した培地にキュウリの種を播いた。その結果、キュウリは、この培地から発芽し、成長していくことを観察することができた。 ちなみに、キュウリの苗を挿し木により培地へ定植させる場合には、焼き土15lに対して上記堆肥を2l入れ、よく混合した上でこれを培地としてプランターに入れた。次に、この培地に対して本葉4枚程度のキュウリ苗を定植した。このキュウリ苗は、約170cm程度まで成長した親づるから摘心したものであるが、本葉を3〜4枚程度付いた茎を摘心し、これを上記挿し木として利用した。この摘心したつるをステップS11において焼き加熱処理した状態の土に挿し木をして苗作りを行った。挿し木後1週間程で発根した。次は焼き土15lに対して上記堆肥2lを入れ、よく混ぜ合わせてからプランターに入れ、上記発根した苗の定植を行った。 その結果、約1ヶ月でキュウリを収穫できることが分かった。通常、キュウリの種播きから開始すると、収穫までに2ヶ月程度かかるが、焼き土農法により挿し木による苗作りから開始すると、約1ヶ月程度で収穫することができ、約1/2の期間で作物を収穫することが可能となることが分かった。 ちなみに、本発明を適用した培地用土壌の形成方法では、繰り返し挿し木栽培ができるので、種の使用量を少なくすることが可能となる。また、上述したキュウリの栽培に限定されるものではなく、例えば、その他の野菜、果物の栽培に対しても適用可能である。なお、本発明においては、実際に短期間に収穫したい作物の植付け位置のみに、上述したプロセスを経て作られた土を用いるようにしてもよい。また、実際に短期間に収穫したい作物を育成するプランターのみに、上述したプロセスを経て作られた土を用いるようにしてもよいことは勿論である。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明を適用した培地用土壌の形成方法のフローチャートである。 【図2】プラスチックコンテナ等の栽培容器内に、混合攪拌された土を入れる例を示す図である。 【図3】本発明を適用した培地用土壌の形成方法による土を利用して一般的な畑において栽培を行う例を示す図である。 【図4】本発明を適用した培地用土壌の形成方法の他のフローチャートである。 【符号の説明】 2 苗 3 畝 10 土 11 栽培容器 14 畑 |
||
【図1】 |
||
【図2】 |
||
【図3】 |
||
【図4】 |
||
ページtop へ |