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運輸
 
【発明の名称】船用アンカー
【特許権者】
【識別番号】509218397
【氏名又は名称】住福 善成
【住所又は居所】佐賀県唐津市呼子町殿ノ浦913−7
【代理人】
【識別番号】100085327
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 克彦
【発明者】
【氏名】住福 善成
【住所又は居所】佐賀県唐津市呼子町殿ノ浦913−7
【参考文献】
【文献】特開2001−278182(JP,A)
【文献】特開2000−264282(JP,A)
【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/22 − 21/48
【要約】   (修正有)
【課題】二つの異なるアンカー型として使用でき、海底の底質等に合わせて一台で使い分けができる船用アンカーを提供する。
【解決手段】船用アンカーは、基体1と、基端部が基体1に揺動自在に取り付けられているシャンク2と、基体1に設けられている第1、第2のフリューク取付手段と、第1、第2のフリューク取付手段に取り付けられる一対のフリューク3,3aと、基体1に設けられているストック取付手段13と、ストック取付手段13に着脱自在に装着されるストック4とを備える。第1のフリューク取付手段はシャンク2の揺動方向と直交するように基体1の両側に対向して設けられ、第2のフリューク取付手段はシャンク2の揺動方向と平行となるよう基体1の両側に対向して設けられ、ストック取付手段13はストック4がシャンク2の揺動方向と直交するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンカー型と第2のアンカー型という、二つの異なるアンカー型として使用できる船用アンカーであって、
基体(1)と、
基端部が前記基体(1)に揺動自在に取り付けられているシャンク(2)と、
前記基体(1)に設けられている第1のフリューク取付手段及び第2のフリューク取付手段と、
前記第1のフリューク取付手段又は第2のフリューク取付手段に取り付けられる一対のフリューク(3,3a)と、
前記基体(1)に設けられているストック取付手段(13)と、
該ストック取付手段(13)に着脱自在に装着されるストック(4)と、
を備え、
前記第1のフリューク取付手段は、前記シャンク(2)の揺動方向と直交するように基体(1)の両側に対向して設けられており、
前記第2のフリューク取付手段は、前記シャンク(2)の揺動方向と平行となるよう基体(1)の両側に対向して設けられており、
前記ストック取付手段(13)は、装着された前記ストック(4)が前記シャンク(2)の揺動方向と直交するように構成されており、
第1のアンカー型として使用するときは、前記第1のフリューク取付手段に前記フリューク(3,3a)を取り付け、
第2のアンカー型として使用するときは、前記第2のフリューク取付手段に前記フリューク(3,3a)を取り付け、更に前記ストック取付手段(13)に前記ストック(4)を装着するようにした、
船用アンカー。
【請求項2】
基体(1)に、船用アンカーが根掛かりしたときに使用する回収用ロープを接続するロープ接続手段(190)を備えている、
請求項1記載の船用アンカー。
【請求項3】
シャンク(2)に、ストック(4)を収容するストック収容部を備えている、
請求項1又は2記載の船用アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、船用アンカーに関するものである。更に詳しくは、第1のアンカー型(以下「ダンフォース型アンカー」という。)と第2のアンカー型(以下、「唐人型アンカー」という。)の両様に組むことができ、一台で何れかの型の船用アンカーとして海底の底質等に合わせて使い分けができるものに関する。
【背景技術】
船用アンカーには様々な種類があり、その中でもヨットやプレジャーボート等の小型船舶用のアンカーとしては、取り扱いが比較的容易なダンフォース型アンカーや唐人型アンカーが多く使用されている。
ダンフォース型アンカーは、岩礁帯や複雑な岩場の海底には不向きであるが、砂地や泥質の海底にはきわめて良好な把駐力が得られ、仮に根掛かりした場合でも、あらかじめアンカーのクラウン部分の穴を利用して回収用ロープなどを繋いでおけば、容易に引き抜くことができる。
また、唐人型アンカーは、底質を選ばず、例えば砂地、磯地、岩場、泥地、荒瀬、珊瑚礁等、どのような海底でも良好な把駐力が得られる利点があるが、構造的に大きく嵩張るアンカーである。したがって、小型船舶の中でも比較的大きなプレジャーボートや漁船等に搭載するのが一般的であり、ごく小さなボートには不向きである。
このように、前記各アンカーには、それぞれ適正があり、船の大きさや海底の底質等に合わせて使い分けられている。
ダンフォース型アンカーの一例としては、特許文献1に開示された「ダンフォース型アンカー」がある。このアンカーは、基礎部分と、基礎部分に設けられたフレーク、シャンク及び姿勢規制ロッドとを有し、基礎部分がフレークの伸びる基準面に垂直で後方に向かうに従って外方に傾斜して伸びる上縁、下縁を有する平板状の支持基板と、支持基板の後端部分の傾斜する上縁、下縁に固定された一対の潜行案内板とを有し、潜行案内板は後端部分が基準面に接近する方向に曲げられ、内方に傾斜する屈曲後端部を有しており、速やかにかつ確実にアンカー効果を得ることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2000−264282公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示されたダンフォース型アンカー及び従来の唐人型アンカーには、次のような課題があった。
すなわち、両アンカーは、それぞれのタイプとしての使用しかできないので、例えば海底の底質等に合わせてアンカーを好適に使い分けようとすれば、両アンカーをそれぞれ用意しておかなければならない。
さらに、錨泊ポイントへ行ってみなければ底質が分からないような場合は、両アンカーを同じ船に搭載しておく必要がある。これでは、両アンカーが嵩張って船内で邪魔になりやすく、また合理的でない。なお、底質を選ばず汎用性の高い唐人型アンカーを用意しておけば、把駐に関しては大きな問題はない。しかし、唐人型アンカーは前記したように大きく嵩張るために、小さいボートでは搭載時に邪魔になりやすく使いにくい。
(本発明の目的)
本発明は、ダンフォース型アンカーと唐人型アンカーの両様に組むことができ、一台で何れかの型の船用アンカーとして海底の底質等に合わせて使い分けができる船用アンカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
ダンフォース型アンカーと唐人型アンカーという、二つの異なるアンカー型として使用できる船用アンカーであって、
基体と、
基端部が前記基体に揺動自在に取り付けられているシャンクと、
前記基体に設けられている第1のフリューク取付手段及び第2のフリューク取付手段と、
前記第1のフリューク取付手段又は第2のフリューク取付手段に取り付けられる一対のフリュークと、
前記基体に設けられているストック取付手段と、
該ストック取付手段に着脱自在に装着されるストックと、
を備え、
前記第1のフリューク取付手段は、前記シャンクの揺動方向と直交するように基体の両側に対向して設けられており、
前記第2のフリューク取付手段は、前記シャンクの揺動方向と平行となるよう基体の両側に対向して設けられており、
前記ストック取付手段は、装着された前記ストックが前記シャンクの揺動方向と直交するように構成されており、
ダンフォース型アンカーとして使用するときは、前記第1のフリューク取付手段に前記フリュークを取り付け、
唐人型アンカーとして使用するときは、前記第2のフリューク取付手段に前記フリュークを取り付け、更に前記ストック取付手段に前記ストックを装着するようにした、
船用アンカーである。
(2)本発明は、
基体に、船用アンカーが根掛かりしたときに使用する回収用ロープを接続するロープ接続手段を備えている、
前記(1)の船用アンカーである。
(3)本発明は、
シャンクに、ストックを収容するストック収容部を備えている、
前記(1)又は(2)の船用アンカーである。
(作用)
本発明に係る船用アンカーの作用を説明する。
先に唐人型アンカーとして使用する場合を説明する。
船用アンカーを唐人型アンカーとして組むときは、まず、一対のフリュークを基体の第2のフリューク取付手段に取り付ける。
そして、ストックをストック取付手段に装着する。ストックを装着したときのストックの軸線方向は、フリュークのブレードの面と直交する。また、シャンクは、フリューク側へ一定の範囲で揺動する。船用アンカーは、この構成により、唐人型アンカーとしての使用ができる。
次に、船用アンカーをダンフォース型アンカーとして組むときは、一対のフリュークを基体の第1のフリューク取付手段に取り付ける。
シャンクは、フリュークに対し、そのブレードの表裏面側へ一定の範囲で揺動する。船用アンカーは、この構成により、ダンフォース型アンカーとしての使用ができる。 なお、ストックは、使用しない場合はシャンク内部のストック収容部に収容しておく。
【発明の効果】
本発明は、ダンフォース型アンカーと唐人型アンカーという二つの異なるアンカー型として使用できる。したがって、例えば底質が磯地、岩場、荒瀬、珊瑚礁等である場合は唐人型アンカーに組んで使用し、砂地や泥質であればダンフォース型アンカーに組んで使用する等、一台の船用アンカーで、水底(主に海底)の底質等に合わせてより好適な型の船用アンカーとして使い分けることができる。
【発明を実施するための形態】
〔実施の形態〕
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図6を参照する。
船用アンカーは、後で説明するように、基体1と、シャンク2と、フリューク3、3a及びストック4により構成されている。船用アンカーは、基体1と、シャンク2と、フリューク3、3a及びストック4を使用し所定の要領で組むことで唐人型アンカーA1を形成することができる(図1乃至図3を参照)。また、ストック4を使用せず、基体1と、シャンク2及びフリューク3、3aを使用し所定の要領で組むことでダンフォース型アンカーA2を形成することができる(図4乃至図6を参照)。
【0018】
船用アンカーは金属製であり、基体1を備えている。基体1は、板体で中空のボックス状に形成され、一方向側(図1で上方側)に長方形状の開口部10を有している。基体1の厚み方向の互いに平行な両側板11、12において開口部10と反対側には、側板11、12の面に対し直角に貫通して、ストック取付手段であるストック取付管13が取り付けられている。ストック取付管13の長手方向両側二箇所の周壁には、丸棒状のストック4を締付固定するための固定用ネジ130(図3に図示)が螺着されている。
基体1の側板11、12において長手方向の両端側には、それぞれ上下二箇所にボルト孔14、14及び15、15が対向する位置に形成されている。なお、図1乃至図6では、奥側の側板12のボルト孔14、14及び15、15は見えない。この基体1の側板11、12と、ボルト孔14、14及び15、15は、第2のフリューク取付手段である唐人型用取付部を構成する。
また、側板11、12において長手方向両端には、側板11、12をつなぐ端板19、19が形成されている。端板19、19の内部側には、シャンク2の回動(揺動)角を制限する止め板191、191(図1で左手前側の止め板191は見えない)が設けられている。また、端板19、19の一方向側(図1において下側)の外部には、それぞれロープ通し管190が形成されている。各ロープ通し管190には、把駐する前にあらかじめ回収用ロープ(図示省略)を通してつないでおけば、アンカーが仮に根掛かりした場合でも、回収用ロープを引くことにより根掛かりを解消しやすくなる。
基体1の側板11、12において長手方向の中間には、第1のフリューク取付手段であるダンフォース型用取付部を構成するブラケット16、17が固定されている。ブラケット16、17は、それぞれ所要間隔で互いに平行に設けられた側板161、162を二枚の補強板160で連結した構造を有している。側板161、162には、それぞれ上下二箇所にボルト孔163、163及び164、164が対向する位置に形成されている。なお、図1乃至図6では、奥側のブラケット17の全体は見えないが、ブラケット16と同様の構造を有している。
ブラケット16、17の一方向側(図1で下方側、かつ前記ストック取付管13より上側)には、側板11、12の面に対し直角に貫通して枢軸18が取り付けられている。基体1には、シャンク2が基端側を開口部10から内部に差し込んだ状態で、枢軸18を介し開口部10の方向に沿って回動自在に取り付けられている。シャンク2は、所要長さ(ストック4の長さよりやや長い)の角管で形成されている。
シャンク2の内部空間は、ストック4を収容するためのストック収容部(符号省略)となっている。シャンク2の先端部には、アンカーロープ(図示省略)をつなぐためのU字形のシャックル21がピン22によって回動できるように取り付けられている。なお、ピン22は、シャンク2のストック収容部に収容されたストック4が抜け出ないようにするストッパーとしての機能も有している。
前記唐人型用取付部を構成する側板11、12のボルト孔14、14及び15、15と、ダンフォース型用取付部を構成するブラケット16、17のボルト孔163、163及び164、164には、一対のフリューク3、3aが取り付けられる。フリューク3、3aは互いに同じ構造であるので、ここでは一方のフリューク3の構造を詳しく説明する。なお、図においてフリューク3、3aの同等箇所には同一の符号を付して示す。
フリューク3は、前記両取付部に取り付けるためのブラケット30を有している。ブラケット30は、所要間隔(側板11、12及び側板161、162に外嵌めできる間隔)で互いに平行に設けられた側板31、32と、それらをつなぐ背板33を有している。側板31、32には、それぞれ上下二箇所にボルト孔34、34及び35、35が対向する位置に形成されている。
ブラケット30の背板33には、図に示すような形状のブレード36が一体に形成されている。ブレード36は、尖鋭部37と、ブレード36基部を中心として尖鋭部37とほぼ直角方向へ形成された張出部38を有している。尖鋭部37と張出部38の外縁部には、尖鋭部37の先部内側の一部を除いて、尖鋭部37と張出部38の表裏面から張り出すように直角に補強板39が形成されている。
なお、前記張出部38は、船用アンカーをダンフォース型アンカーとして組んだときにストックの代替としての姿勢制御機能を発揮できるので、ダンフォース型アンカーをストックレスとすることができる。
(作用)
図1乃至図3を参照して、船用アンカーを唐人型アンカーA1として形成するときの組み方及び構造を説明する。
まず、フリューク3、3aのブラケット30の側板31、32を側板11、12に外嵌めし、ボルト孔34、34及び35、35をボルト孔14、14及び15、15に合わせて、ボルト・ナット100によって締付固定する。そして、ストック4をストック取付管13に通し、固定用ネジ130で締め付けて、抜け外れないように固定する。ストック4を取り付けたときの角度は、フリューク3、3aの各ブレード36の角度と直角になっている。
また、船用アンカーを唐人型アンカーA1とした場合のフリューク3、3aの各尖鋭部37、37の開き角は、後述するダンフォース型アンカーA2の場合と比較して、やや大きくなるように設定されている。さらに、シャンク2が各フリューク3、3a側へ一定の範囲(フリューク3、3aに接触できる範囲)で回動することができる。唐人型アンカーA1は、この構成により、唐人型アンカーとしての使用ができる。
なお、前記のようにフリューク3、3aの各尖鋭部37、37の開き角が大きくなるように設定されているのは、唐人型アンカーとして使用するときに、片側のフリューク3(又は3a)の海底面に対する角度を大きくして、先端が海底面に刺さりやすいようにして把駐を容易にするためである。
図4乃至図6を参照して、船用アンカーをストックレスのダンフォース型アンカーA2として形成するときの組み方及び構造を説明する。
フリューク3、3aのブラケット30の側板31、32をブラケット16、17の側板161、162に外嵌めし、ボルト孔34、34及び35、35をボルト孔163、163及び164、164に合わせて、ボルト・ナット100によって締付固定する。
また、シャンク2が各フリューク3、3aに対し、その表裏面側へ一定の範囲(例えば30°程度)で回動することができる。ダンフォース型アンカーA2は、この構成により、ストックレスのダンフォース型アンカーとしての使用ができる。なお、使用しないストック4は、シャンク2内部のストック収容部に収容しておくが、ストック4を唐人型アンカーA1と同様にストック取付管13に取り付けてもよい。
このように、船用アンカーは、唐人型アンカーA1とダンフォース型アンカーA2の両様に変形させて組むことができる。したがって、例えば底質が磯地、岩場、荒瀬、珊瑚礁等である場合は唐人型アンカーA1に組んで使用し、砂地や泥質であればダンフォース型アンカーA2に組んで使用する等、一台の船用アンカーで、海底の底質等に合わせてより好適な型の船用アンカーとして使い分けることができる。
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴及びその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る船用アンカーを唐人型アンカーに組むときの分解斜視説明図。
【図2】船用アンカーを唐人型アンカーに組んだ状態を示す斜視図。
【図3】シャンクの角度を一方向側へ最大まで回動させた状態の斜視図。
【図4】本発明に係る船用アンカーをダンフォース型アンカーに組むときの分解斜視説明図。
【図5】船用アンカーをダンフォース型アンカーに組んだ状態を示す斜視図。
【図6】フリュークとシャンクの角度を一方向側へ最大にした状態の斜視図。
【符号の説明】
A1 唐人型アンカー
A2 ダンフォース型アンカー
1 基体
10 開口部
11 側板
12 側板
13 ストック取付管
130 固定用ネジ
14、15 ボルト孔
16、17 ブラケット
160 補強板
161、162 側板
163、164 ボルト孔
18 枢軸
19 端板
190 ロープ通し管
191 止め板
100 ボルト・ナット
2 シャンク
21 シャックル
22 ピン
3、3a フリューク
30 ブラケット
31、32 側板
33 背板
34、35 ボルト孔
36 ブレード
37 尖鋭部
38 張出部
39 補強板
4 ストック
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
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