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運輸
 
【考案の名称】クローラ運搬車の車椅子装置
【実用新案権者】
【識別番号】512321811
【氏名又は名称】吉田 輝昭
【住所又は居所】埼玉県川越市今福439−1
【考案者】
【氏名】吉田 輝昭
【住所又は居所】埼玉県川越市今福439−1
【要約】   (修正有)
【課題】クローラ運搬車に好適な搭乗者の乗心地向上と不整地走行範囲の拡大化を図る車椅子機能装置を備えた完成ユニットを提供する。
【解決手段】スイングアームの後端下部を枢軸18b等を介してメーンフレームに搖動自在に枢着すると共に、このスイングアームの前端部にステップ10を連結し、上面に左右一対のアームレスト15a・15bを配置した座席シートの13を配設し、上記座席シートを13の下部前後方向に沿って、前端部をメーンフレームに軸架連結した一本の緩衝器を横置配置し、後端部はリンク機構を介してスイングアームの後部に枢着すると共に、以上の車椅子の機能装置を一体構成の独立した完成ユニット50として具備し、この完成ユニット50をクローラ運搬車に搭載する。
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
クローラを備えた走行装置上に座席シートを設けた車椅子車輛において、スイングアームの後端下部を枢軸を介してメーンフレームに搖動自在に枢着すると共に前記スイングアームの前端部にステップを連結し、上面に左右一対のアームレストを備えた座席シートを配設し、該座席シートの下部前後方向に沿って、前端部をメーンフレームに軸架連結した一本の緩衝器を横置配置し、後端部はリンク機構を介してスイングアームの後部に枢着してなる完成ユニットを具備したことを特徴とするクローラ運搬車の車椅子装置。
【考案の詳細な説明】
【技術分野】
本考案は、障害者、高齢者の屋外不整地における移動を介助するクローラ車椅子に関し、特に車椅子機能装置と緩衝装置を一体構成の完成ユニットとして組立て、クローラ運搬車に容易に搭載することができるクローラ運搬車の車椅子装置に関するものである。
【背景技術】
従来の車椅子は、座席シートの前後に車輪を配置し、主に平坦な路面を走行する目的で構成されているが、一方、屋外の山間地等における傾斜地、登坂路、段差地、更には、農地の如く柔らかい接地面、砂地、降雪上等々の不整地においては、車輪が空転、又は埋没して走行不能の状態に至る等の問題があり、これらの不具合を解消し、不整地における走破性能向上を図るため、車輪に換えて、クローラ、キャタピラ(商標名)等の無限軌道方式の車椅子も提案されている。
クローラを備えた車椅子は、車輪方式に比較し、接地面が広く、従って、安定した駆動力に優れる事から不整地走行に最適である反面、走行時の路面抵抗が増加し、又、クローラ関連装置自体の重量も増大し、人の力で押して、移動、旋回操作を行うことは困難である事から、電動モータ駆動方式等も提案されているが、この電動モータと電源バッテリー等の重量増から、更にバッテリーの消耗が激しく、その結果、走行距離(走行時間)が著しく短縮される事から不整地には最適では無く、且つ、少量生産時において、製造コストが嵩み、高価になる等の種々の不都合も生じる。
然しながら、クローラを装備した車輛等は上述の如く、不整地の走破性能に優れて居り、各種の建設車輛、土木工事車輛、農業用車輛、運搬車輛、等々に装備されている事から明白であるが、一方、車椅子に装着、使用すると、不整地の走行時におけるクローラ接地面の複雑な変化に伴う突上荷重(上向荷重)、更には、段差等のショック荷重も過大で、この作用伝播により、搭乗者の姿勢対応が不安定となり、走行安定性の観点から、以上の如き、不整地路面の外部衝撃を吸収緩和し、乗り心地向上を図る事が介助車たるクローラ車椅子には必要、不可欠であり、この事が解決すべき最大の課題と言っても過言ではない。
然しながら、他の車輛、例えば、オフロード用自動二輪車の如き走破性に優れた緩衝装置、所謂、サスペンション機構を備えた例は介在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開平2001−87322号公報
【特許文献2】特開平2011−142938号公報
【考案の概要】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、上述した如く、クローラを備えた従来の車椅子の種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、従来のクローラ運搬車を改装、改造する事なく、荷台部位に容易に、且つ、簡単に装着可能とし、当該、クローラ運搬車の走行機能を有効活用する事で、不整地走行性の向上と低コスト化を図る事が可能なクローラ運搬車に好適な緩衝機構を備えた車椅子機能装置を具体的に実現し提供するものである。
【課題を解決するための手段】
本考案は、上記の目的を達成するために、クローラ運搬車とは別構成にした独立した車椅子とする必要不可欠な車椅子の機能部材として、ステップ、アームレスト、座席シート等を一本の緩衝器と枢着するリンク式の緩衝装置を備えたスイングアーム上に、搖動自在に一体の完成ユニットとして形成して用意し、この完成ユニットをクローラ運搬車の荷台部位に搭載装着する事で、搭乗者に不整地走行の衝撃を緩和して、乗車質感の向上と走行範囲の拡大化に伴う安全性の向上を図るようにしたものである。
【考案の効果】
上述の様に、本考案の車椅子装置によれば、特に不整地の段差による突上荷重、振動等の衝撃吸収性に優れたリンク式の一本の緩衝器をスイングアームと座席シートの下部位に配設した事で、低重心化に伴い、走行安全性が図れ、且つ複数の有効な車椅子機能と共に、これ等を一体構成のコンパクトな完成ユニット化としたことで、既存の工事用、農耕用のクローラ運搬車を何等、改装、改造すること無く、容易に搭載できるので、クローラ運搬車の多目的な有効活用に伴う用途の拡大も可能となり、従って、専用の動力伝達機構、制御装置は不要と成り、大幅なコストダウンも図れる等々の複合的効果も得る事ができる。
以上により、最大の効果は、搭乗者の乗心地が飛躍的に向上する事で、走行行動範囲を拡大して雄大な大自然の四季における多くの未経験の不整地分野を走破エンジョイすることが可能となる事にある。
勿論、山間地、降雪地等の不整地における福祉、介護、救急用、救難用の搬送車両として好適、且つ最適である。
【考案を実施するための最良形態】
以下に本考案の実施形態の一例を添付の図面を参照して具体的に説明する。
図1は本考案の車椅子装置の完成ユニット50を搭載したクローラ運搬車60の前方からの外観斜視図である。
図2は、現在、市販され市場に多数流通使用されている一般的なクローラ運搬車60の全体側面図を示し、左右一対のクローラ1a・1b(図1参照)
を備えた車体フレーム6の上部に荷台3を搭載し、後方のエンジンと動力伝達機構からなる、パワーユニット2で駆動され、ハンドルバー4に取り付けたクラッチレバー5を操作し、走行方向を制御される事を主たる構成要素としており、周知の如く、クローラ1a・1bは接地面が広い事で、スリップ現象が少なく、従って山間地の急斜面、砂浜、農地、積雪上、等に優れた走破性能を備える。
図1と図4は、上述クローラ運搬車60の荷台3を取り除き、この荷台3の部位に車椅子としての機能を備えた車椅子装置の完成ユニット50を搭載したものである。
次に図3、図5に明示する車椅子装置の完成ユニット50について説明する。
上部に位置し、本考案の要部を形成する中空角形の左右一対のスイングアーム7a・7bは前方(図3の左側)を高く、後方に低く傾斜して配設し、夫々、前端部と後端部において前フレーム8、後フレーム9を架橋して一体に接合構成され、前フレーム8の下部には搭乗者の足部を乗せて支えるステップ10がステップ支柱11と共に支軸11aを介して枢着され、更に後フレーム9の後端中央部にブラケット12が一体接合される。
スイングアーム7a・7bの上面には、搭乗者の座席シート13がシートレール14a・14bを介して前後方向に自動車の運転席シートの如く適正な位置に摺動自在に配置されると共に、座席シート13の左右外側に沿って支持板16a・16bの底部が接合され、上部に支軸16c・16dによりアームレスト15a・15bが連結される。
更に、スイングアーム7a・7bの後部下側に左右一対の側面視にて逆三角形状のスイングプレート17a・17bの上部が溶接接合にて一体結合されると共に、下端部にて枢軸18a・18bを介して上記スイングアーム7a・7bが後記のメーンクレーム30側に上下揺動自在に枢着連結され、車椅子としての上部基本機能の部材が配置構成される。
尚、図示例ではステップ10はクローラ1a・1bと干渉する事無く、クローラ1a・1bの前方部位に突出して配置構成される。(図4参照)
図6は、完成ユニット50の下方を形成するメーンフレーム30の前上方よりの斜視図を示し、クローラ運搬車60に支障なく円滑に装着できる形状を成して構成され、車椅子装置の下部基本骨格を形成する左右一対の中空角型のボトムフレーム32a・32bが前後方向に沿って、後方部にて夫々内側に向かい幅を狭く屈曲成形して並設配置され、前後両端部にクローラ運搬車60に装着する取付孔39a・39b・39c・39dを開設した前ブラケット31a・31bと後ブラケット33a・33bを下向傾斜して接合すると共に、前方部の内側を後方に向いたブラケット34を接合した前クロスフレーム35と中央上面にブラケット36を接合した後クロスフレーム37の夫々の両端部を架橋、一体接合し、更に後クロスフレーム37の前方位置のボトムフレーム32a・32bの両側面にスイングプレート17a・17bと枢軸18a・18bを同軸支持する軸受け孔38a・38bが開設され、以上の接合部位は溶接により堅牢強固に一体結合される。
次に図3、図5に明示する緩衝装置(サスペンション機構)の実施例についても説明すると緩衝器40はコイルスプリングと油圧ダンパーから成る伸縮自在の一例として自動二輪車の後輪懸架装置に装着する一本型式のもので、これを、座席シート13の下部のボトムフレーム32a・32bの中央部の前後方向に沿って、前方に向かって傾斜して横置に配置し、前端部を枢軸41を介して、メーンフレーム30のブラケット34に軸架連結され、後端部は連結軸43にて、リンクレバー44の上端部と同軸連結される。このリンクレバー44は、図3に示す如く、側面視にて、略々三角形状に形成され、後方斜め上方に延出して先端部位に上端をスイングアーム7a・7bの後端部のブラケット12に枢軸45を介して連結されたテンションアーム46の下端部と連結軸47により連結し、下端部は枢軸48を介してメーンフレーム30の後ブラケット36に相対回動自在に連結することにより、緩衝器40の張力がスイングアーム7a・7bの枢軸18a・18bを中心として揺動押上げ作用が働く様に、テンションアーム46とリンクレバー44から成るリンク機構を介して支持構成され、図示例の如く、以上の構成要素部材は、スイングアーム7a・7bの後方且つ座席シートの下方の低重心位置に配記され、操安性向上においても効果的である。
以上の如く構成された図3、及び図5に示すリンク機構の緩衝装置を備えた車椅子機能装置は、クローラ運搬車60とは別体の独立した一体構成の完成ユニット50として形成し、この完成ユニット50は下部のメーンフレーム30の前、後端の前ブラケット31a・31b、後ブラケット33a・33bを継手として、この部位を介して、クローラ運搬車60の荷台3を取り外した後に、荷台3を取り付けた位置に、取付ボルト20(4カ所図示では1カ所)により、締結固着する事で安定して搭載される。(図1、図4参照)
次に実施例の作用を説明すると、図4に示すように完成ユニット50を搭載したクローラ運搬車60が図中、左方向に前進走行し、クローラ1a・1bの前端部に、接地路面の変化で、上向き突上ショック荷重が作用すると荷重変動によりクローラ1a・1bは、車体フレーム6と共に鎖線位置Gの如く、上方に位置変位が生じ、図3の前クロスフレーム35のブラケット34に枢軸41と連結された緩衝器40は前端部を介して上方に圧縮作用が働き、ステップ10、座席シート13、支持板16a・16bとアームレスト15a・15b等々の車椅子機能装置を配設したスイングアーム7a・7bはメーンフレーム30の枢軸18a・18bを中心として、スイングプレート17a・17bを介して、円弧軌跡を描いて揺動変位する事でブラケット12の枢軸45に連結されたテンションアーム46は上方向の揺動引上作用に伴い、連結軸47に枢支されたリンクレバー44と共に、後クロスフレーム37の後ブラケット36の枢軸48を中心として、進行方向に円弧軌跡を描きつつ揺動変位し、この作用に連動し連結軸43に枢支された緩衝器40の上端は、前方下方に向けて圧縮作用で縮み変形し、突上ショック荷重の衝撃を緩衝ストローク内で吸収し、緩衝支承する事ができる。
上記、作動中において、テンションアーム46とリンクレバー44の連結軸47を中心としたリンク角度は、上向き荷重量が増加するのに従って拡角度になり、この作用でスイングアーム7a・7bとクローラ1a・1bの上向揺動量を超えて、緩衝器40の圧縮ストローク量を加速度的に確保して緩衝力の増大を図る事が可能となり、その結果、山間地における段差、階段等ではハードに衝撃変化に対応する好ましい効果が生じ、又、接地面が砂地、小石等の路面ではソフトに作用して拡範囲な衝撃変化に対応する事で搭乗者の乗心地、安全性に好適な緩衝特性が得られる。
以上の如く、緩衝器40は、両端を連結軸43と枢軸41に揺動自在に軸止され、メーンフレーム30の前クロスフレーム35と後クロスフレーム37のブラケット34と36に枢着されている事で、緩衝器40の反力は溶接接合された強度の高いメーンフレーム30内において圧縮力と引張力が作用し、クローラ運搬車60側には、緩衝作用に伴う負荷的影響は少ない。
更に、座席シート13はシートレール14a・14bを介して、スイングアーム7a・7b上を前後方向に摺動自在の配置構成により、枢軸18a・18bを中心として、例えば前方に移動配置する事で、スイングモーメント値が大となり、緩衝器40の圧縮する縮み量を増加する事ができると共に、又、後方に移動する事で、縮み量を減少して緩衝器40の最適な衝撃吸収効果を得る事が可能となり、クローラ1a・1bの設置面の条件変化に伴う荷重変動、そして、搭乗者の重量変動に伴い広範囲な緩衝条件の設定変更が短時間で調整完了する機能を備える事ができる。
以上において、クローラ運搬車60に搭載した車椅子装置の完成ユニット50は、全外観上の違和感が無く外観デザイン上からも好都合である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の車椅子機能装置を備えた完成ユニットを搭載したクローラ運搬車の一実施例形態を示す前面斜視外観図である。
【図2】従来のクローラ運搬車の側面図である。
【図3】本考案の車椅子機能装置を備えた完成ユニット図5、A−A線の側面図である。
【図4】本考案の車椅子機能装置を備えた完成ユニットを搭載したクローラ運搬車の一実施例を示す側面図である。
【図5】本考案の車椅子機能装置を備えた完成ユニットの後方から見た背面図である。
【図6】本考案の車椅子機能装置のメーンフレームの側面斜視外観図である。
【符号の説明】
1a・1b クローラ
3 荷台
7a・7b スイングアーム
10 ステップ
13 座席シート
15a・15b アームレスト
17a・17b スイングプレート
18a・18b 枢軸
30 メーンフレーム
34 ブラケット
40 緩衝器
46 テンションアーム
50 完成ユニット
60 クローラ運搬車
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5 
【図6】
図6 
試作写真 
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