スポーツ・娯楽
【発明の名称】管楽器の音響改善装置
【早期審査対象出願】
【特許権者】
【識別番号】591235463
【氏名又は名称】末長 康男
【住所又は居所】大阪府大阪市生野区鶴橋2-15-30こひゃん209
【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
【発明者】
【氏名】末長 康男
【住所又は居所】大阪府大阪市生野区鶴橋2-15-30こひゃん209
【要約】
【課題】リードの振動効率を向上させ、楽器本体に好ましい影響を与える音作りができ、その吹奏する音質を演奏者の好みに合わせて調節できる音響改善装置を提供する。
【解決手段】マウスピース、リード及びリガチャーを有する管楽器におけるマウスピースに脱着自在に取り付ける装置であって、装置は板状の錘であり、マウスピースにリードを装着した状態で、板状の錘の一端が、リードの取付面と反対側の外面、又はリードの取付面のマウスピースを挟んだ対向面に、リガチャー又は留め具を介してマウスピースに取り付けられ、マウスピースの振動を板状の他端への伝達により減衰させる。吹奏時にリード振動がマウスピースに伝わって共鳴振動するが、リード振動とマウスピースの共鳴振動が干渉、重畳して振幅波形が歪む為、マウスピースの共鳴振動を減衰抑圧し、双方の振動が干渉、重畳しないようにする。これによりリード振動効率が向上し、結果的に音量も上がる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピース、リード及びリガチャーを有する管楽器における前記マウスピースに脱着自在に取り付ける装置であって、
前記装置は、板状の錘であり、
前記マウスピースに前記リードを装着した状態で、
前記板状の錘の一端が、前記リードの取付面と反対側の外面、または、前記リードの取付面の前記マウスピースを挟んだ対向面に、
前記リガチャーまたは留め具を介して前記マウスピースに取り付けられ、
前記マウスピースの振動を板状の他端への伝達により減衰させることを特徴とする音響改善装置。
【請求項2】
前記装置において、前記マウスピースに取り付けられる前記板状の一端は、端部に向かって板厚が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の音響改善装置。
【請求項3】
前記装置において、前記板状の他端がU字状に分かれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の音響改善装置。
【請求項4】
前記装置において、前記U字状の中央切欠き部をスライド状に可動して固定できる調節用錘が設けられたことを特徴とする請求項3に記載の音響改善装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管楽器の音響改善を図る装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木管楽器や金管楽器のサウンドの源は、マウスピースに装着されたリードの「振動」である。吹奏者の呼気の力で発生したリードの振動が、マウスピース、ネック、管楽器本体へと伝わり、最終的に管楽器本体が響いて強く振動すると、反応が良く、よく鳴り響くことができる。このことは従来から吹奏者の認識であり、マウスピースの振動エネルギーをロス無く楽器本体へ伝えて、より響かせようとする技術によって音響向上を図っていた。
【0003】
ほとんどの管楽器は、2つ以上の接合部分で構成されている。図12又は図13に示すように、サックスやクラリネットのマウスピース1と楽器本体の接合部分ではコルク6が使用されている。このコルク6がマウスピース1から楽器本体への振動伝達を一番阻害している部分である。従来から行われていた音響改善の仕方としては、図12や図13に示すように、サックスやクラリネットのマウスピース1と楽器本体の接合部分で使用されているコルク6に接することなく、マウスピース1と、サックスのネック7やクラリネットの樽10とをブリッジするように、サウンドブリッジ金具8(例えば、非特許文献1を参照)をゴム紐9等で取り付け、コルク6を迂回して、サウンドブリッジ金具8を介して直接、マウスピース1の振動を楽器本体に伝えるやり方がある。このやり方によれば、楽器本体がよく響くようになって音量が上がるといった効果がある。
また、特許文献1や非特許文献2に開示されたワイヤーリガチャーは、図14に示すように、ワイヤーリガチャー18が、マウスピース1とサックスのネック7とをブリッジし、コルク6を迂回して、マウスピース1の振動を楽器本体に伝え、サックスの楽器本体がよく響くようにして音量を上げる効果を有するものである。
【0004】
図12乃至14に示されるマウスピース1における振動は、直接、サックスのネック7やクラリネットの樽10へ伝達されることにより、楽器の音量、響きが向上する。そのため、呼気がしっかり楽器に入らない初心者の場合であっても、その演奏の補助的効果として期待され、楽器本体とは別に購入され、使用されている。
【0005】
また、図16に示すように、従来の楽器、例えば、サックスでは、サックス本体11とネック7との間のジョイントは、ジョイントネジ12で接続されており、このジョイントネジ12は、真鍮製ネジまたは真鍮にラッカー塗装もしくは鍍金処理を施したネジが一般的で、これをチタン製のジョイントネジに換えることによって、マウスピース1からネック7へ伝わった振動がサックス本体11へ伝わりやすくなり、楽器の響き、音色が向上することが知られている。
【0006】
また、NC加工によって極低温処理された無垢材から一つ一つ丹念に削り出された直径約9mmのスウィングチップと呼ばれるボタン型チップが知られている。このボタン形状は、スウィングチップ自体の響きと楽器との調和を実現するため、複数のプロ・ミュージシャンによる実地テストの結果、求められた最適の形状であり、その表面には、スウィングチップ自体の共振周波数に特定のピークを作らず、楽器が発生する振動周波数により敏感に反応するよう、コンピューター・プログラミングで切削される特殊なウェーブ加工がなされている。スウィングチップは、さらに1種類の特殊音響処理が施され、素材自体の性能を上げ、ストレートでパワフルかつ安定した演奏を実現できる。この小さなスウィングチップを楽器の指定箇所に貼附するだけで、楽器の無駄な振動を除去して振動エネルギーを音に変換する効率を上げ、楽器自体の演奏性能を向上させ、音にパワーと方向性を与えることができる。
【0007】
また従来、リードの振動に関して、吹奏者はリードを固定するリガチャーの材質や形状を考慮して、音質、吹奏感、楽器との相性で吹奏しやすいアイテムを選んでいた。特にリガチャーの材料になる金属を数千回、ハンマーで叩き鍛錬した金属の音を聞くと、鍛錬する前より、よりカン高い音になり、それを元にして作成したリガチャーは、楽器の倍音を多く引き出して楽器の表現力が豊かになり、プロの奏者に絶大な支持を受けている。
【0008】
これらの他、図15で示すような、サックスのU字管接合部19の二ヶ所をハンダ付けして、管体を伝達する振動のロスを少なくする工夫などがある。大多数の楽器でこの部分は接着剤で固定してあり、このU字管接合部19付近は低音吹奏時の振動伝達が弱いとされている場所である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特許第6183937号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】サウンドブリッジ金具商品の販売サイト,URLアドレス(https://www.lefreque.com/our-products)
【非特許文献2】ワイヤーリガチャー(Wired Ligature)の販売サイト,URLアドレス(https://www.bopwind.com/products/wired-ligature/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
吹奏中のリード振動で発生するサウンド源の振幅波形は、以下のように2つに分けて考えることができる。一つ目の振幅波形は、リードが振動して発生する振幅波形の大部分であり、マウスピースから吹き込む息の流れと共に楽器内を通過して出る振幅波形である。そして二つ目の振幅波形は、リードで発生する振動と、これがマウスピースに伝わり共鳴振動した際、この2つの振動が干渉、重畳されて生ずる歪んだ振幅波形である。
【0012】
この二つ目の振幅波形の振動がマウスピースに伝わり共鳴振動する。そのリード振動と共鳴振動が干渉、重畳され、さらに振幅波形を歪ませる。これがサウンド源の振幅波形とマウスピース内で混ざって楽器内を通過する。それが今日まで「その楽器のサウンド」として演奏者や聴衆の耳に馴染んでいた。しかしこの状態ではリードが発したサウンドの振幅波形は歪んだ振幅波形を含んでいるため100%正常な波形ではない。
【0013】
かかる状況に鑑みて、本発明は、従来よりもリードの振動効率を向上させ、楽器本体に好ましい影響を与える音作りができ、その吹奏する音質を演奏者の好みに合わせて調節できる音響改善装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、リード振動とマウスピース共鳴振動双方の振動を分け、上述した課題を解決するものである。先ず吹奏中、リードにより発生する振動が、マウスピースに伝わり共鳴振動する。この時、リードとマウスピース二つの振動が干渉、重畳して、リード振動で発生する振幅波形のサウンドがその影響を受けて歪む。これは、スピーカーを紐で吊るした状態で振動紙の振動源から音楽などを再生した際に、同じタイミングでその振動がスピーカーのフレームに伝わって激しく共鳴振動するのと同様である。この時、振動紙から出た振動とスピーカーフレームの共鳴振動がスピーカー内で干渉、重畳する。その結果、振動紙から発生した振幅波形が歪んで本来のスピーカー再生能力が低下する。この再生能力が低下するありさまは、上記の楽器の音源であるリードの振幅波形が歪んだ状態と似ている

【0015】
そこで、上記の問題を解決するため、本発明の音響改善装置は、マウスピース、リード及びリガチャーを有する管楽器におけるマウスピースに脱着自在に取り付ける装置であって、装置は、板状の錘であり、マウスピースにリードを装着した状態で、板状の錘の一端が、リードの取付面と反対側の外面、または、リードの取付面のマウスピースを挟んだ対向面に、リガチャーまたは留め具を介してマウスピースに取り付けられ、マウスピースの振動を板状の他端への伝達により減衰させる。ここで、留め具とはゴム紐、ゴムバンドまたはワイヤーなどである。
【0016】
かかる構成によれば、演奏者の吹奏に応答してリードが振動して音が出る管楽器において、マウスピースに、脱着可能で実質的に板状の錘を設けて吹奏した際に、軽いマウスピースの振動が、重い板状の錘へ伝わる際に、マウスピースの共鳴振動の力が減衰抑圧され弱くなる。マウスピースの共鳴振動の力を、上記のごとく減衰抑圧することで、リード振動の振幅波形のサウンドが干渉、重畳による影響を受けなくなり、リード振動効率が向上し、結果的にリードから発生した振幅波形が正常なものになり、音の輪廓をはっきり綺麗に出した状態で表現力豊かなサウンド音になる。
【0017】
本発明の音響改善装置において、マウスピースに取り付けられる板状の一端は、端部に向かって板厚が小さくなることが好ましい。リガチャーまたは留め具を介したマウスピースへの取付けの利便性を高めることができる。
【0018】
また、本発明の音響改善装置において、板状の他端がU字状に分かれていることが好ましい。板状の他端から中央付近まで切欠きがあり、音叉のように板状の他端がU字状に分かれていることにより、減衰抑圧効果を高めることができる。
【0019】
また、上記の音響改善装置において、U字状の中央切欠き部をスライド状に可動して固定できる調節用錘が設けられたことが好ましい。調節用錘の位置を板状の中央付近から端部へ変えることにより、減衰抑圧効果を調整することができる。なお、調節用錘は、板状の錘の他端に螺子などで固定する。
【0020】
本発明の音響改善装置の本体材質は、鉄、金、銀、銅、鉛、チタン、プラチナ、アルミ、ステンレス、真鍮もしくは洋白から選択される金属、又は、これらの合金であることが好ましい。その他の制振合金や、緻密で密度が高い木材、合成樹脂を用いることも可能であり、意匠上の観点から木材や合成樹脂と金属を貼り合わせたものを用いることも可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の音響改善装置によれば、楽器特有の音を作り出すリード振動と、マウスピースの共鳴振動がマウスピース内で重畳、干渉する乱れが少なくなりその結果、リードの振動効率向上による振幅波形数の増大を実現させ、楽器から出たサウンドの表現力や音量が向上するといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態の音響改善装置の外観斜視図
【図2】第1の実施形態の音響改善装置の説明図
【図3】第1の実施形態の音響改善装置の錘付き斜視図
【図4】第1の実施形態の音響改善装置の側面図
【図5】第2の実施形態の音響改善装置の説明図
【図6】第3の実施形態の音響改善装置の説明図
【図7】第4の実施形態の音響改善装置の錘付き斜視図
【図8】ノーマル状態における音声スコープ測定図
【図9】第1の実施形態の音響改善装置を取り付けた場合の音声スコープ測定図
【図10】ノーマル状態と音響改善装置の装着状態における音声スペクトルの比較測定図
【図11】ノーマル状態と音響改善装置の装着状態における振動波形イメージ図
【図12】クラリネットのマウスピースと樽部分のブリッジ金具(従来技術)の説明図
【図13】サックスのマウスピースとネック部分のブリッジ金具(従来技術)の説明図
【図14】ワイヤーリガチャー(従来技術)の説明図
【図15】サックスのU字管接合部分(従来技術)の説明図
【図16】音響改善装置を装着しないノーマル状態の楽器の説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0024】
本発明の音響改善装置の一実施形態について、図1〜4を参照しながら説明する。
本発明の音響改善装置の外観斜視図を図1に示す。図1に示すように、音響改善装置の板状の錘4Aは、部位4aの板厚が薄くなっており、部位4bに向けて厚くなる。板状の錘4Aの部位4bはU字状の2股の形状であり、調節用錘(図示せず)は、中央の切欠き部(端部4c乃至部位4d)をスライド状に可動し、ネジとナットで固定される。調節用錘(図示せず)をスライドして固定することで、好みの吹奏感や音響、音質が演奏者の手で調整可能になる。そして、図3、4で示す取付面4eを、リードの固定部分やマウスピースの湾曲したカーブに合わせて成形することで、板状の錘4Aとリード固定部分、或いは、図5に示すようにマウスピース1との密着度を上げ、振動の伝達度を高める。
【0025】
本発明の音響改善装置は、図2に示すように、マウスピース1にリード2を付けた状態で、リード2の厚い部分とリガチャー3の間に挟みこむように板状の錘4Aの部位4aが差し込まれ、リガチャー3aのネジでマウスピース1に固定される。
調節用錘5は板状の錘4Aの端部4cの方向から止めネジを付けたままスライドして装着することが可能である。そして、図2で示すように、この板状の錘4Aの部位4aと部位4bの境目付近で少し角度をつけて曲げる。これは板状の錘4Aをマウスピース1に装着して調節用錘5をスライドする際に、楽器に調節用錘5が接触するのを避けるためである。
【0026】
この部位4aが薄くなっているのは、従来から使用しているマウスピース1に合うリガチャー3をそのまま使用するためであり、部位4aが厚いと従来から使用していたリガチャー3では、リード2と板状の錘4A共に固定できなくなるからである。
【0027】
図1に示す板状の錘4Aを、図2に示すように、マウスピース1にリード2を付けた状態で、リード2の取付部分で湾曲した側とリガチャー3の間に挟みこむように差し込む際、部位4aを全面的に、或いは、部分的に挟みこむことによっても音響効果の変化がある。
【0028】
この第1の実施形態を示す構造では、図2に示すように、リード2の上に板状の錘4Aの部位4aが覆い被さっているのでリード2の位置が見辛い。そのため、リード2をセッティングして固定するのに少し慣れが必要である。
【0029】
図3に示す板状の錘4Aの材質は、鉄、金、銀、洋白、制振合金、銅、真鍮、鉛、チタ
ン、プラチナ、アルミ、ステンレス、木、プラスチック樹脂などから任意に選択することができるが、その材質の種類により音響効果の変化がある。例えば、板状の錘4Aの材質をアルミにすれば、優しく柔らかな音色で吹奏でき、イエローブラス(Cu−Zn30%)、ゴールドブラス(Cu−Zn15%)、レッドブラス(Cu−Zn10%)、ニッケルシルバー(Cu−Ni−Zn合金)などの銅合金のように元素比率を変えることで、金属内部での音の伝達する減衰率が変化し、目的用途に合わせた音色を出すことができるため、吹奏者の好みに合わせた音作りができる。
【0030】
また、調節用錘5の材質も、板状の錘4Aの材質と同様に選択することができ、同様に音響効果が得られるため、板状の錘4Aと調節用錘5の材質との組み合わせや、調節用錘5のスライド位置によって、様々な音響効果を、吹奏者が自由に選択することが可能である。これら板状の錘4A、調節用錘5の形態を大きく、重くするほど、減衰抑圧効果が上がり、吹奏した時に音の反応がよく安定する傾向に調節できる。また、板状の錘4Aが、鉄の場合には、調節用錘5に薄い磁石を使用して板状の錘4Aの上下へ引っ付くように設置してもよい。調節用錘5の数の増減で錘の総重量の調節や、設置位置を変えるなどして音響効果の調整をすることも可能である。
【0031】
さて、上述したとおり、演奏者の吹奏に応答してリードが振動して音が出る管楽器において、マウスピースに、脱着可能で実質的に板状の錘を設けて吹奏した際、軽いマウスピースの共鳴振動が、重い板状の錘へ伝わる際に、マウスピースの共鳴振動の力が減衰抑圧され弱くなる。
このリード振動とマウスピース振動の2つの振動を、更に別の視点で考察する。リード振動とマウスピース振動を最小単位まで細かくして双方を見ると、リード振動とマウスピース振動が同タイミング、同周波数で揺れている。これを例えるならば、細長い薄い板にトンカチで釘を打つ時、板の半分を土台に置いて手で押さえ、残りの半分は台から出て浮いた状態で板の先に釘を打つとすると、力点であるトンカチの力が釘に加わり板に刺さる瞬間、作用点の板が振動を受けて下へ反ることになり、この時、トンカチの力が全て釘に伝わらない。これは、力点のトンカチ振動の方向と、作用点である板の振動の方向が同じであってトンカチの力が吸収されている状態である。力点のトンカチ振動の力を100%発揮させるためには、作用点の釘を打つ位置を土台の上に移して、板が振動を受けても下へ反らないようにする事で解決する。これと同じでリード振動の力を100%発揮させるために、マウスピース振動を止めるようにするのである。
【0032】
市販のスペクトルアナライザー計測器を用いて、何も装着しないノーマル状態における楽器と、本発明の音響改善装置を装着した楽器を吹奏時の2つの振幅波形を計測した。以下は計測条件である。楽器はケルントナーカーブドソプラノサックス、リードはレジェール樹脂製(硬度1.5)、マウスピースはメイヤー6M、リガチャーはアルトサックス用、音響改善装置の材質は鉄、音響改善装置(第1の実施形態)の寸法・重さは、幅15mm、長さ60mm、厚さ5mm、重さ37g(調節用錘5は使用せず)である。ソプラノサックスの音階は1オクターブ上のド♯、すなわちピアノではシの音を吹奏し、その横15cmの所で楽器から出る音の振幅波形周期を5回計測して平均を出した。なお、音響改善装置の厚さが5mmあるので、マウスピースへの取付リガチャーはソプラノサックス用ではなく、アルトサックス用を使用した。
【0033】
その結果、図8に示すように、何も取り付けないノーマル状態における楽器から出た音が示す振幅波形周期は、1/50秒間での振幅波形周期が60回で、1秒間では3000回の振幅波形周期であった。同様に図9に示すように、本発明の音響改善装置を付けた楽器から出た音は、同じく1/50秒間の振幅波形周期が90回で、1秒間では4500回の振幅波形周期で振動していた。但し、このデータは、リード、マウスピース、リガチャーなどのセッティング違いや、楽器などの固体差でも多少変動する。
【0034】
何も取り付けないノーマル状態におけるソプラノサックスで1オクターブ上のド♯では1秒間に3000回の波形周期を発する音を出していた。本発明の音響改善装置を付けた楽器では、ノーマル状態の楽器と比較して1秒間に1500回以上も多く楽器から振幅波形周期の音が出ていることが、上記の計測結果から判明した。図8と図9の振幅波形周期を比較すると、本発明の音響改善装置を付けた楽器では、その音を聞くと、リード振動効率が向上したことでノーマル楽器では表現できない音の輪郭が綺麗であり、表情力が向上したサウンドを吹奏者に提示できることが確認された。
対比として、サウンドブリッジ金具8を使用して、コルク6を迂回してマウスピース1の振動を直接的に、ネック7へ伝えるように改善したソプラノサックスで上記の音声スコープで計測した結果も、ノーマル状態と同じく、1秒間に3000回の波形周期を発する音を出していた。
【0035】
この1オクターブ上のド♯で1秒間に振幅波形周期が1.5倍ということは、どの音程においても振幅波形周期が増えていることになる。特に、低音を吹奏した場合は、振幅波形の周期がゆっくりになるため、これが増えることで安定して低音が出せるようになり、高音でも音程(ピッチ)が合わせやすくなる。これは楽器の性能(安定性)が全体的に上がる効果に繋がる。また、板状の錘4Aの部位4bに調節用錘5を設けて、これを重くするほど振幅波形周期が上昇し、本発明の音響改善装置の板状の錘を単体で使用する以上に楽器の性能(安定性)が向上する。
【0036】
図10に示すように、前述のスペクトルアナライザー計測器における音声スペクトル機能を用いて、ノーマル状態における楽器と、本発明の音響改善装置を装着した楽器との2つの振幅波形を前述と同条件で計測した。ノーマル状態における楽器での音声スペクトルのピーク周波数は、980Hzで81.17dbに対し、本発明の音響改善装置を装着した状態における楽器では89.64dbであり、周波数特性でも、本発明の音響改善装置を装着した楽器の方が、ピークの突起が多く現れており、音量の向上や音響改善に優れていると判断される。
【0037】
図11は、ノーマル状態と音響改善装置の装着状態における振動波形イメージを示している。図11(1)は、ノーマル状態の楽器、すなわち、楽器にマウスピース1とリード2を取り付けた状態におけるマウスピース内と楽器内を伝搬する振動波形イメージを示したものであり、図11(2)は、本発明の音響改善装置を装着した楽器、すなわち、楽器にマウスピース1とリード2と音響改善装置4A(調節用錘5を含む)を取り付けた状態におけるマウスピース内と楽器内を伝搬する振動波形イメージを示したものである。図11(1)に示すノーマル状態の楽器の場合、マウスピースの振動14によりマウスピース1内を伝搬する振動波形イメージ16および楽器内15を伝搬する振動波形イメージ17は、歪んだ波形となり、歪んだ振幅波形のサウンドを生成しているのに対して、図11(2)に示す本発明の音響改善装置を装着した状態の楽器の場合、マウスピース1が音響改善装置4Aの装着により振動が抑制され、マウスピース1内を伝搬する振動波形イメージ16および楽器内15を伝搬する振動波形イメージ17は、図11(1)のように歪んだ波形とならず、歪みのない正常な振幅波形のサウンドを生成できるのである。
【0038】
従来の音響改善のやり方は、吹奏時にリード振動がマウスピースに伝わって共鳴振動したものをそのまま楽器本体へ伝達して音量を上げるものである。しかし、本発明の音響改善装置では、マウスピースの共鳴振動を減衰抑圧することによりリード振動効率を向上させ、結果的に音量も上がり音質も奏者の好みに合わせて調整可能である。
なお、本発明の音響改善装置を用いて、マウスピース1の共鳴振動を減衰抑圧しても少しは振動が残る。しかし、この振動による波形干渉への悪影響は無視できるレベルである。
【0039】
本発明の音響改善装置を装着した楽器の吹奏時、呼気の量を絞って音量をグッと下げても音が崩れず、従来では不可能だった糸のようなピアニシモ音もはっきり聞こえるようになったことから、演奏者の表現力を上げる効果を有すると言える。また吹奏時、リード振動がスムーズになり、どの音程でも最初の音の出しやすさや、各音程での安定感が実感できるようになる。
【0040】
また、図3に示したように、本発明の音響改善装置の板状の錘4Aの片方の部位4bにおいて、スライド状に可動してネジで固定できる脱着可能な調節用錘5を外部から設け、重さ、材質、スライド位置等を変えることで、マウスピース1から伝わる振動の減衰抑圧比率が変化し、好みの吹奏感や音響、音質が演奏者の手で調整可能になる。例を挙げると板状の錘4Aと調節用錘5の両方がアルミ製だと優しく円やかな音、これが鉄製だとシャープな音になる。これらの材質を色々組み合わせて、吹奏者の好みに合わせたセッティングで音質、音響のバリエーション効果がある。
【0041】
板状の錘4Aの部位4bに設ける調節用錘5の重さを、より重く、アルミより鉄材への変更、スライド位置を部位4dの位置に変えることでマウスピース1から伝わる振動減衰抑圧比率をより高めることになり、アルト、テナー、バリトンサックスなどの大きなマウスピースの共鳴振動をより多く減衰抑圧する効果を発揮する。
【0042】
そこで楽器を演奏できない人へわかりやすく例えると、硬いテーブルの上に紙を2〜3枚重ねて、ボールペンで文字を書く時、指にかかる筆圧や感触、字の太さと、1枚だけの紙に書く時の筆圧や字の太さ、感触、ペン先から出る音などから、経験上誰でもその書き味の違いがわかる。それと同じくらい、本発明の音響改善装置を装着した楽器は、使用する前後で、演奏者と聴衆にハッキリとその音響や表現力の相違点が明確になる効果がある。
【0043】
なお、マウスピース1の材質は、エボナイト、レジン系樹脂、アクリル系樹脂、メタル、竹製、木製などがあり、これらの材質は大きく分けるとエボナイトとメタルになる。先ずエボナイトは天然ゴムと硫黄を混合して練り上げ加熱して結合させたもので、非常に硬いゴム素材である。そしてメタルはステンレススチール、スターリングシルバー、ベルメタルなどの素材があり、前者をそっと叩くと「コツコツ」という柔らかい音がでる。そして後者をそっと叩くと「チーン」という金属的な音がでる。これは双方の素材、比重特性の違いによるもので、リード振動によって発生するこのマウスピースの共鳴振動もエボナイトとメタルの振動特性の違いがあるが、本発明の音響改善装置でマウスピースの共鳴振動を減衰抑圧して、リード振動を本来望ましい振幅波形だけにすることが期待出来る。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の音響改善装置の第2の実施形態を示す構造について説明する。
図5は、本発明の音響改善装置の第2の実施形態を示す説明図である。第2の実施形態では、マウスピース1にリード2とリガチャー3を仮付けした状態で、リードと反対側のリガチャー3上部とマウスピース1の隙間に、脱着可能な板状の錘4Aの部位4aを差し込んで、リガチャー3aのネジで固定する。
【0045】
第2の実施形態での板状の錘4Aは、第1の実施形態と同様にリガチャー3の間に挟みこむように差し込む際、部位4aを全面的に、或いは、部分的に挟みこむ程度によっても音響効果の変化がある。
【0046】
この第2の実施形態を示す構造では、図5で示すように板状の錘4Aは、マウスピース1にリード2をリガチャー3で仮止めした反対側のマウスピース上部にリガチャー3で固
定されるため、板状の錘4Aがリード2の上から覆い被さることなくリードの装着状態が見やすく、セッティングが容易にできる。
【0047】
図5に示すように、上記の板状の錘4Aの端部4cから部位4dの間において、スライド式に移動してネジで固定でき、脱着可能に調節用錘5を設ける。この調節用錘5は、重さや材質を変更したり、スライド位置を端部4cから部位4dの間で移動することで、演奏者に合わせて吹奏のしやすさや、音質を好みに調整できる。
【0048】
板状の錘4A或いは調節用錘5の材質は、鉄、金、銀、洋白、制振合金、銅、真鍮、鉛、チ
タン、プラチナ、アルミ、ステンレス、木、プラスチック樹脂などから任意に選択することができ、その形態を大きく、重くするほど、減衰抑圧効果が上がり、吹奏した時に音が鋭くなる傾向に調節できる。
【実施例3】
【0049】
次に、本発明の音響改善装置の第3の実施形態を示す構造について説明する。
図6は、本発明の音響改善装置の第3の実施形態を示す説明図である。図6に示すように、マウスピース1にリード2とリガチャー3を付けた状態で、リガチャー3の上部に板状の錘4Aをゴム紐9で固定する。図6に示すように、マウスピース1のリガチャー3の上部に板状の錘4Aをゴム紐9で固定するため、リガチャー3と板状の錘4Aの間に隙間が発生して、マウスピース1の振動が板状の錘4Aへ伝わるために、減衰抑圧効果が少し減少する。しかし、これが前述の第1,2実施形態と比較しても大差なく、吹奏者が求めている音響、音質効果が発現することから、この第3の実施形態も有用である。特に、第1,2実施形態で、板状の錘4Aがリガチャー3で固定し辛い場合に、この第3の実施形態を選択すれば良い。
【0050】
図6で示す板状の錘4Aと、脱着可能でスライド状に可動してネジで固定できる調節用錘5の材質は、鉄、金、銀、洋白、制振合金、銅、真鍮、鉛、チタン、プラチナ、アルミ、ステンレス、木、プラスチック樹脂などから任意に選択することができ、その形態を大きく、重くするほど、減衰抑圧効果が上がり、吹奏した時に音が鋭くなる傾向に調節できる。
【実施例4】
【0051】
次に、本発明の音響改善装置の第4の実施形態を示す構造について説明する。
図7は、本発明の音響改善装置の第4の実施形態を示す説明図である。第4の実施形態では、前述の実施形態における板状の錘4Aとは異なり、図7に示すように、板状の錘4Bは厚みがある。板状の錘4Bは、厚さがある分、減衰抑圧効果が高い。板状の錘4Bを実施形態1,2で使用する際、リガチャー3を一回り大きいサイズを使用しなければならない。例えば、ソプラノサックスだとアルトサックス用を、アルトサックスだとテナーサックス用を、テナーサックスだとバリトンサックス用のリガチャー3を使用すると板状の錘4Bとリード2をマウスピース1に固定できる。但し、この場合に難点なのは、薄いリード先端を保護するこれまでのマウスピースキャップが合わなくなるので、新たに作成しなければならないことである。
板状の錘4Bの材質は、板状の錘4Aの材質と同様、鉄、金、銀、洋白、制振合金、銅、真鍮、鉛、チタン、プラチナ、アルミ、ステンレス、木、プラスチック樹脂などから任意に選択することができる。
【0052】
第4の実施形態では、板状の錘4Bは厚さがある分、板状の錘4A以上に減衰抑圧効果が高く、脱着可能な調節用錘5をさらに大きく重くした場合、アルト、テナー、バリトンサックスなどでの低音部分の吹奏で、これまでの楽器以上に図太い音が出るようになるた
め、これを演奏者の新しい表現方法として活用できる。さらに図7に示すように、上記の板状の錘4Bの端部4cから部位4dの間において、スライド式に移動してネジで固定でき、脱着可能な調節用錘5を設ける。調節用錘5は、重さ、材質を変更したり、スライド位置を端部4cから部位4dの間で移動することで、演奏者に合わせて吹奏のしやすさや、音質を好みに調整できる。
【0053】
(その他の実施例)
(1)上記の実施形態第1〜4において、各楽器に使用する板状の錘4Aもしくは4Bは、全長が長く厚いほど減衰抑圧効果が高く、特に低い音域が出るテナーサックス、バリトンサックスなどの楽器には板状の錘の全長を長くして、調節用錘5を重くすると想像以上に音量が上がり、図太い音が出るようになる。
【0054】
最後に、木管楽器が発明されて以来今日まで、リードから発した振幅波形のサウンドが歪んだ要因を含んでいたことなど誰も気が付いていなく、吹奏者の吹き込む息のエネルギーと共に楽器内を通過する際にそれはどこかに吹き飛ばされてしまっていた。何故ならば吹奏者が長年つき合ったマウスピース、リード、リガチャーで演奏している楽器の音は、いつも通りの音が出ていて、もし出した音に問題があるとしたらこの3点の内どれかが悪いと考えられる。だが、楽器自体の状態を除いて大体がリードに問題があると考えられる。しかし、本明細書で詳述したように、リードから出た振動と、マウスピースの共鳴振動が干渉してリードの振幅波形が歪んで劣化を起こしていた事など、誰の認識や概念にも無かったことである。しかし、本発明の音響改善装置を使用することで、容易に上記の問題が解決できるようになり、楽器の音響、音質の改善に繋がるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、木管楽器の部品として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 マウスピース
2 リード
3 リガチャー
3a リガチャー締め付けネジ
4A,4B 音響改善装置(板状の錘)
4a,4b,4d 部位
4c 端部
4e 取付面
5 調節用錘
6 コルク
7 ネック
8 サウンドブリッジ金具
9 ゴム紐(留め具)
10 クラリネットの樽
11 サックス本体
12 ジョイントネジ
14 マウスピースの振動
15 楽器内
16 マウスピース内を伝搬する振動波形イメージ
17 楽器内を伝搬する振動波形イメージ
18 ワイヤーリガチャー
19 U字管接合部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】