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| 【発明の名称】パズル 【出願人】 【識別番号】524144556 【氏名又は名称】田辺 信央 【住所又は居所】千葉県市原市五井東1-12-5 広部ハイツ2A 【代理人】 【識別番号】100121658 【弁理士】 【氏名又は名称】高橋 昌義 【発明者】 【氏名】田辺 信央 【住所又は居所】千葉県市原市五井東1-12-5 広部ハイツ2A 【要約】 【課題】 複数の小片を2次元的に隣接させて並べることで、あらかじめ課題として提示された集合全体形状を過不足なく構成するパズルにおいて、既存のジグソーパズルとは異なる困難性を有するパズルを提供する。 【解決手段】 各小片が略多角形であって1対1嵌合用凹凸を持たない。小片のどの任意2個の組も合同ではないが、任意2個の組の少なくとも一部では内角や辺長の一部が共通値となっている。正解配置においてどの隣接する2個の小片に着目しても、1辺同士が過不足なく一致共有されている所が無い。これらの特性を兼ね備えることにより、ある未定空地に配置できる小片の候補が複数存在し得るようになり、盤面全体を見れば小片配置の候補組合わせ数が指数関数的に増大する。小片同士の直接的な1対1マッチングが無い所で多数の配置組合わせ候補の中から正解を探すという、既存のジグソーパズルとは異なる困難性を有するパズルを提供できる。 【選択図】図1 ![]() 「ジグソーパズルのようだがまったく違うモノ」です。 具体的な実施例として、手作り工作にて、ピースがすべて(不等辺)四角形、24ピース(大判絵柄ありで脳トレ版の位置づけ)のものと、49ピース(両面無地)のものを制作済です。ピース形状が裏返しも含めすべて異なっていて、外枠内をきれいに埋められる配置は既知分は1通りだけです。他にも、難易度が違う「四角形ジグソーパズル」数種類(最大475ピース)を、ピース配置原図までは作成済みです。ピースおよび外枠の各頂点の座標値を提供できます。関連商標1件登録済。 まとまった数量での製造に関しては、トムソン加工やカッティングマシンのようにナイフエッジで切る方が楽ではないかと思います。レーザーカットや鋸などのような加工法の場合は、仕上がりが所定の寸法形状になるようにピースと外枠をすべて独立に作る必要があります。両面無地のものはピース表裏の区別ができない仕上げが前提と考えています。 板紙ジグソーパズル仕様以外では、たとえば、出願明細書の図24のようなものを30cm程度のクッションブロックで作って、商業施設のキッズコーナーなどに置くのはどうでしょうか? ![]() ![]() 【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記(1)乃至(4)すべての要件を満たし、2次元的に隣接させて並べることで予め定められた集合全体形状を過不足なく構成させることができる複数の小片を有するパズル。 (1)前記小片はいずれも複数の直線辺により囲まれる略多角形である (2)前記小片は、いずれも他の小片と合同であることはない (3)前記集合全体形状を過不足なく構成した場合において、前記小片の直線辺(外郭に接する直線辺は除く)は、いずれも、他の前記小片のいずれかの前記直線辺と合わされているが、当該直線辺同士が過不足なく一致共有されていない (4)少なくともいずれかの前記小片の前記直線辺の長さ及び各角の角度の少なくともいずれかは、いずれかの他の小片の前記直線辺の長さ及び前記各角の角度の少なくともいずれかと一致する 【請求項2】 前記集合全体形状は、外枠により定められる請求項1記載のパズル。 【請求項3】 前記外枠及び前記複数の小片を支持するベースを有する請求項2記載のパズル。 【請求項4】 前記略多角形は、略四角形を含む請求項1記載のパズル。 【請求項5】 前記略多角形は、略四角形のみからなる請求項1記載のパズル。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明はパズルに関する。より具体的には、複数の小片を2次元的に隣接させて並べることで、予め定められた集合全体形状を過不足なく構成することのできるパズルに属する。 【背景技術】 【0002】 一般に、パズルと称されるものは、操作や制約条件などのルールが明快であり、正解の状態に達したかどうかの判定が簡便であり、しかし正解の状態に達するためには何らかの工夫や手間を要する困難性を備えている。 【0003】 パズルの内、小片を2次元的に隣接させて並べるパズルとしては、ジグソーパズル、シルエットパズル、配置パズルなどが知られている。なおこれらの呼称については、先行の特許文献等において用語法が統一されているとは言い難いが、本願明細書では先行技術文献を例示しつつ便宜的に使用する。 【0004】 例えば、下記特許文献1及び2には、ジグソーパズルの例が開示されている。小片が多数あること、および小片の形状が相互に類似していることが困難性の主要因となる。幼児向けなどで難易度を低くするためには、小片の数を少なく、小片同士の形状の類似度を低く、小片同士を嵌合させるための凹凸形状を容易に識別可能な形状とする、などの手段がある。小片の形状としては、特定の組み合わせでのみ嵌合できる凹凸を有していることがあり、この凹凸も小片の正解配置を探す手掛かりとなり得る。 【0005】 また、既存市販のジグソーパズルには、有名絵画や風景写真などの大判図柄を多数の小片に切り分けた形式のものがある。図柄等が小片を配置する際の手がかりとなる場合があるが、表裏両面に図柄を記載したり、砂浜や星空のような細密かつ単調な大判図柄を使用したりすれば、難易度を上げることができる。 【0006】 一方、例えば下記特許文献3などでは、無地のジグソーパズルが提案されている。当該文献では購入者が自由に絵などを描けるようにとの説明であり、難易度にはほとんど言及が無い。しかし、切り分けパターンが同じであれば、絵柄がある場合に比べて絵柄が無い場合の方が一般に難易度が高く、実際、購入者が自由に絵などを描ける仕様となっていない無地のジグソーパズルが「無地であるため高難度」として市販されている。 【0007】 ところで近年、高難度と謳われる市販のジグソーパズルでは、小片があまりに小さいために小片同士の目視識別や嵌合適否判断の困難性が生じている場合がある。ジグソーパズルの難易度を調整するための新たな手法、すなわち新たな種類の困難性の提供が望まれる状況となっている。 【0008】 また、下記特許文献4には、シルエットパズルの例が開示されている。小片の形状自体には向きや隣接制約が無く自由度が高いこと、およびシルエットを部分的に満たす組み合わせが複数考えうることが困難性の要因となっている。解くべきシルエットの形状、すなわちパズル問題を作成しようとする際には、動物など具象物、文字、数字など、何らかの意味を持った形状とすることが通例であるが、そのためあるひとつの小片群で形成可能なパズル問題の種類数には自ずと上限がある。また、単色であることに由来する単調さも難点となり得るが、多色にすると逆に色彩を活かした形状絵柄とする必要が生じてしまう。一方、各種のシルエットが作れるようにと小片数を増やすと、シルエットを実現するための小片の配置に多数の解が生じることにつながり、パズルとしての面白みが損なわれかねない。小片の形状や数等を工夫したシルエットパズルが続々と提案される状況が生まれている。 【0009】 また下記特許文献5には配置パズルの例が開示されている。小片の形状は容易に相互に識別可能なものであり、小片をまだ配置していない空き地に対して適合する小片がどれなのか、比較的早い時点で目視判断できる場合がある。また、小片の形状を工夫したことで多種多様なシルエットが形成可能になったとする特許文献も存在する。 【0010】 また、下記特許文献6及び7についても配置パズルの一種と言える。小片の形状が明快な規則に従っており、図形として単純なものであることから、小片をまだ配置していない空き地に対して適合する小片が多数存在し得るが、小片に色やマークをつけることで、ジグソーパズルにおける嵌合用凹凸と似た配置制約を実現している。小片に色やマークをつけるため、大判絵柄を小片に切り分けてパズルとすることが困難である。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0011】 【特許文献1】 特開平09−299610号公報 【特許文献2】 特開平08−323038号公報 【特許文献3】実全昭51−080284号公報 【特許文献4】 特開2016−179175号公報 【特許文献5】 特開2015−000178号公報 【特許文献6】 特開2016−019599号公報 【特許文献7】 実用新案登録第3059285号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 本発明は、上記先行技術文献およびその課題に鑑み、ジグソーパズルに類する外観でありながら、従来のジグソーパズルとは異なる困難性を有するパズルを提供する。なお、従来のジグソーパズルにおける困難性とは、小片が多数であるために小片同士の1対1マッチングを見つけ出すのが困難であること、小片が小さすぎるため手指での取り扱いが困難であること、小片自体の大きさや小片の辺の凹凸および長さの差異が小さすぎるために1対1マッチングの適否判断が困難であること、絵柄の連続性がヒントの一部であるにもかかわらずその絵柄が細密かつ単調であるなどによりヒントとして利用するのが困難であること、を指し、高難度であることを謳うジグソーパズルではこれらの困難性を複数併せ持っていることがある。 【課題を解決するための手段】 【0013】 上記課題を解決する本発明の一観点に係るパズルは、下記(1)乃至(4)すべての要件を満たし、2次元的に隣接させて並べることで予め定められた集合全体形状を過不足なく構成させることができる複数の小片を有するものである。 (1)小片はいずれも複数の直線辺により囲まれる略多角形である (2)小片は、いずれも他の小片と合同であることはない (3)集合全体形状を過不足なく構成した場合において、小片の直線辺(外郭に接する直線辺は除く)は、いずれも、他の小片のいずれかの直線辺と合わされているが、当該直線辺同士が過不足なく一致共有されていない (4)少なくともいずれかの小片の直線辺の長さ及び各角の角度の少なくともいずれかは、いずれかの他の小片の直線辺の長さ及び各角の角度の少なくともいずれかと一致する 【0014】 本観点において、限定されるわけではないが、集合全体形状は、外枠により定められることが好ましい。 【0015】 本観点において、限定されるわけではないが、外枠及び複数の小片を支持するベースを有することが好ましい。 【0016】 本観点において、限定されるわけではないが、略多角形は、略四角形を含むことが好ましい。 【0017】 本観点において、限定されるわけではないが、略多角形は、略四角形のみからなることが好ましい。 【発明の効果】 【0018】 以上、本発明によって、ジグソーパズルに類する外観でありながら、従来のジグソーパズルとは異なる困難性を有するパズルを提供することができる。すなわち本パズルでは、組み合わせ候補の中から正解を見つけ出すという問題設定となっており、まずはこれが従来のジグソーパズルとは異なる困難性である。次に、隣接する小片同士に直接的な1対1マッチングが存在しないことも、従来のジグソーパズルとは異なる困難性である。さらに、具体的なパズル問題を設計する際に、小片形状の類似度が高いか低いか、また組み合わせ候補がどの程度多数生じ得るかを調整することができる。小片形状の類似度が高ければ組み合わせ候補を見つけ出すこと自体の困難性が増し、組み合わせ候補数が多ければその中から正解を探すことの困難性が増す。 【図面の簡単な説明】 【0019】 【図1】実施形態に係るパズルの例の概略を示す図である。 【図2】実施形態に係るパズルの小片に該当するものの例について説明する図である。 【図3】実施形態に係るパズルの小片に該当しないものの例について説明する図である。 【図4】実施形態に係るパズルの小片の要件について説明する図である。 【図5】実施形態に係るパズルの小片の要件について説明する図である。 【図6】実施形態に係るパズルの小片の要件について説明する図である。 【図7】実施形態に係るパズルの小片の当て嵌めについて説明する図である。 【図8】実施形態に係るパズルの他の例の概略を示す図である。 【図9】実施形態に係るパズルの他の例の概略を示す図である。 【図10】実施形態に係るパズルの小片の設計手法について説明する図である。 【図11】実施形態に係るパズルの小片の設計手法について説明する図である。 【図12】実施形態に係るパズルの小片の設計手法について説明する図である。 【図13】実施形態に係るパズルの小片が隣接配置された場合を説明する図である 【図14】実施形態に係るパズルの予め定められた外郭を示す図である。 【図15】実施形態に係るパズルの難易度調整に関する工夫を説明する図である。 【図16】実施形態に係るパズルの難易度調整に関する工夫を説明する図である。 【図17】実施形態に係るパズルの難易度調整に関する工夫を説明する図である。 【図18】実施形態に係るパズルの難易度調整に関する工夫を説明する図である。 【図19】実施形態に係るパズルの難易度調整に関する工夫を説明する図である。 【図20】実施形態に係るパズルの難易度調整に関する工夫を説明する図である。 【図21】実施形態に係るパズルの製品構成の例の概略を示す図である。 【図22】実施形態に係るパズルの製品構成の例の概略を示す図である。 【図23】実施形態に係るパズルの製品構成の例の概略を示す図である。 【図24】実施形態に係るパズルの他の例を示す図である。 【図25】実施形態に係るパズルの他の例を示す図である。 【図26】実施形態に係るパズルの他の例を示す図である。 【発明を実施するための形態】 【0020】 以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載の具体的な例示に限定されるものではない。また、本発明は、競合しない他の各種の公知技術、たとえば、上記特許文献1等と組み合わせて実施することが可能である。 【0021】 (パズル) 図1は、本実施形態に係るパズル(以下単に「本パズル」という。)Zの概略を示す図である。本図で示すように、本パズルZは、下記(1)乃至(4)すべての要件を満たし、2次元的に隣接させて並べることで予め定められた集合全体形状Wを過不足なく構成させることができる複数の小片Pを有するものである。なお要件(1)乃至(4)の詳細については改めて説明していく。 (1)小片Pはいずれも複数の直線辺により囲まれる略多角形である (2)小片Pは、いずれも他の小片Pと合同であることはない (3)集合全体形状Wを過不足なく構成した場合において、小片Pの直線辺(外郭Sに接する直線辺は除く)は、いずれも、他の小片Pのいずれかの直線辺と合わされているが、当該直線辺同士が過不足なく一致共有されていない (4)少なくともいずれかの小片Pの直線辺の長さ及び各角の角度の少なくともいずれかは、いずれかの他の小片Pの直線辺の長さ及び各角の角度の少なくともいずれかと一致する 【0022】 本パズルZは、集合全体形状Wが外枠Fによって予め定められるジグソーパズルであることを典型的な例として想定しているが、台座面上に集合全体形状Wが印刷や線刻等によって表現されているものであってもよい。なお、外枠Fを有するジグソーパズルである場合、この外枠F及び複数の小片Pを支持するベースを有するものであることが好ましい。ベースを設けることで、安定して外枠F及び小片Pを持ち運び保管することが可能となるためである。 【0023】 まず、小片Pは、いずれも複数の直線辺により囲まれる略多角形である(要件(1))。ここで「多角形」とは、限定されるわけではないが、複数の直線が所定の領域を囲むように配置された形状であって、例えば三角形、四角形、五角形、六角形等をいい、「略多角形」とは、製造上の誤差や角を丸くした角丸多角形を含む概念であって、例えば図2で示すとおり、角丸多角形(角丸四角形、角丸三角形)の小片Pは多角形(四角形、三角形)に近似可能である。一方で、図3のように、辺が曲線である場合や、辺に他の小片Pと組み合わせるための凹凸を持つ場合は、本願においては多角形に近似できないとみなし、本願要件を満たさないものとする。辺を平坦なものとすることで、小片の組み合わせの制約を緩め、辺同士を突き合わせる際の位置制約をも緩めることができる。 【0024】 また、本パズルZにおいて、複数の小片Pは、いずれも他の小片Pと合同であることはない(要件(2))。これは、複数の小片Pのいずれか同士が合同である場合、それらを相互に入れ替えたものもすべて解となり難易度の低下につながるため、その事態を防ぐために重要な要件である。ここで「合同」とは、完全に一致する場合を含むものではあるが、製造上の誤差によって同一とみなすことができる程度の合同も含まれる。製造上の誤差以上の違いを小片P同士に設けることで製造上の誤差で偶然にも一致してしまうような事態を避け、意図しない難易度低下を防ぐことが可能となる。図4において、小片P1〜P3の中に合同な組は無い。 【0025】 また、本パズルZでは、集合全体形状Wを過不足なく構成した場合において、各小片の直線辺(集合全体形状Wを構成する外側の直線辺は除く)は、隣接する他の小片の直線辺と合わされているが、当該直線辺同士が過不足なく一致共有されていない(要件(3))。図5は本要件を満たさない場合の例を、図6は本要件を満たしている場合の例を示す。図5の例では、小片P1と小片P2の接続位置において、それぞれの一辺が一致共有されてしまっている。より具体的には、小片P1と小片P2において、辺DCが一致共有されてしまっている。小片P2とP3では、頂点Eのみで共通しており、この条件を満たしていない。図6では、いずれの辺も一致共有されていない。具体的には、小片P1の辺CDと小片P2の辺EFは一部共有されているが一致しておらず、また、小片P2の辺GHと小片P3の辺IGは一部共有されているが一致していない。辺が一致共有されていると、パズルを解く際に隣接相手の候補をごく少数に限定でき、これは難易度低下につながる。 【0026】 また、本パズルZでは、少なくともいずれかの小片Pの直線辺の長さ及び各角の角度の少なくともいずれかが、いずれかの他の小片Pの直線辺の長さ及び各角の角度の少なくともいずれかと一致する(要件(4))。この場合のイメージは上記図4で示すとおりであり、辺長a〜fは相互に異なる値、また辺長b’は辺長bと異なる値、辺長c’は辺長cと異なる値である。小片P1と小片P2では、例えば辺長a、b、dや四角形の内角の一つが90度である点で一致しており、また、小片P2と小片P3では、辺長a、d、内角のうち二つが90度、100度である点で一致している。このように、いずれかの小片P同士において一致する部分を備えさせることで、小片Pをはめ合わせていく際、候補が複数存在しやすくなっており、パズルとしての難易度を高く維持できるといった利点がある。この例として例えば図7を示す。本図は、パズルを解く過程で生じた3カ所の空白地B1、B2、B3のそれぞれに対して、配置可能な複数の小片P候補(B1に対して候補P1−1、P1−2、B2に対してP2−1、P2−2、P2−3、B3に対してP3−1、P3−2、P3−3、P3−4、P3−5)が存在する状況の例である。図中に●で示した部分の辺長や内角が、空白地形状に適合している。本図で示すように、本パズルZにおいて、小片Pをはめ込むことができる空白地B1、B2、B3が存在している場合、そのそれぞれの空白地には、辺と角度が空白地と一致する小片Pをはめ合わせることができるが、直線辺の長さ及び各角の角度が一致するものが複数存在すれば、この辺と角度が空白地と一致する小片Pは複数存在することになる。図7のB1〜B3に関しては、2×3×5=30通りの小片の配置組み合わせ候補がある。このような状況は、小片の1対1マッチングが前提であるようなジグソーパズルには無い困難性である。 【0027】 また要件(1)〜(4)を満たすパズルの例として、概ね同じ大きさの四角形が並んでいるものであれば、図1のような形態が挙げられる。また、多角形の大きさについては概ね一種類に限定されている必要はなく、また、三角形、四角形、五角形、六角形など複数種類の多角形が混在していてもよい。その具体的例としては、図8のように概ね大小二種の四角形が混在する形態や、図9のように三角形と六角形が混在する形態があげられる。 【0028】 以上、本パズルZは、ジグソーパズルに類する外観でありながら、上記(1)〜(4)の要件を満たすことで、従来のジグソーパズルとは異なる困難性を有するパズルを提供することができる。なお、従来のジグソーパズルにおける困難性とは、小片が多数であるために小片同士の1対1マッチングを見つけ出すのが困難であること、小片が小さすぎるため手指での取り扱いが困難であること、小片自体の大きさや小片の辺の凹凸および長さの差異が小さすぎるために1対1マッチングの適否判断が困難であること、絵柄の連続性がヒントの一部であるにもかかわらずその絵柄が細密かつ単調であるなどによりヒントとして利用するのが困難であること、を指し、高難度であることを謳うジグソーパズルではこれらの困難性を複数併せ持っていることがある。本パズルZでは、組み合わせ候補の中から正解を見つけ出すという問題設定となっており、まずはこれが従来のジグソーパズルとは異なる困難性である。次に、隣接する小片同士に直接的な1対1マッチングが存在しないことも、従来のジグソーパズルとは異なる困難性である。さらに、具体的なパズル問題を設計する際に、小片形状の類似度が高いか低いか、また組み合わせ候補がどの程度多数生じ得るかを調整することができる。小片形状の類似度が高ければ組み合わせ候補を見つけ出すこと自体の困難性が増し、組み合わせ候補数が多ければその中から正解を探すことの困難性が増す。他の先行例との比較として、前記配置パズルでは、小片形状の類似度が低くなりがちであり、小片の配置に図1、8、9のような規則性を持たせることが困難であり、また、パズルの難易度を上げようとすると一気に極端に高難度となってしまうが、本パズルではこれらの問題は無い。前記シルエットパズルでは、小片の数を増やしたりパズル問題の規模を大きくしたりする設計自由度が本質的に低いが、本パズルでは集合全体形状に意味を持たせることを放棄するかわりに大きな設計自由度を獲得している。本願請求項1の4要件のうち1つが欠けるといずれかのメリットが失われる。 【0029】 (設計方法) ここで、本パズルZの設計手法について説明する。略多角形が略四角形のみからなり、大きさが概ね一種類に限定されている形態では、設計手法の例示説明が非常に簡便であるため好ましい。ここで、図1のような形態で本パズルZを設計する手法の一例を説明するが、これ以外の手法によって図1のような形態のパズルが設計され得る可能性が排除されるものではない。また、図8、9など、図1とは異なる形態のパズルを設計する際には、おのずと設計手法も異なる。 【0030】 まず、図10のように、基準正方形(正四角形)ABCDを設定し、この各頂点を通る直線の選択肢を用意する。ここで各選択肢は傾き指標で表現することができる。具体的に、本例では、基準正方形の辺からの傾きが5°ずつ異なる5つの選択肢に対して、傾き指標”1”〜”5”を対応させる。次に図11のように、頂点A〜Dのそれぞれに関して傾き指標を1つ選ぶことで、頂点A〜Dを通る直線を各1つ特定することができ、4本の直線の交点A’〜D’を頂点とする新たな四角形A’B’C’D’を得ることができる。これが小片Pの近似多角形となる。四角形A’B’C’D’の形状は、傾き指標4つを順に連結した文字列で表現することができる。図11の例では”2531”と表現できる。この手法においては、2次元座標平面内で点A’〜D’の座標値を具体的に計算することができ、この結果四角形の各辺長も求めることができる。また傾き指標の設定から、4箇所の内角の値を求めることもできる。さらに、上記のように傾きの選択枠を設定すれば、形状表現が異なる2つの四角形は裏向きも含め合同ではない、という状況を実現できている。また、傾き指標の選択により生成される5の4乗=625通りのどの四角形も線対称ではなく、従って、自分自身の裏向き形状と合同になることはない。なお、たとえば”1111”と”2222”など、4つの内角の値が同じだが辺長が異なる相似形となっている組は多数ある。また、たとえば”1111”と”1112”では1つの辺長と2つの内角が共通、”1111”と”1122”では1つの内角が共通であり、このように一部の辺長や内角が共通となる組は多数ある。 【0031】 次に、集合全体形状Wおよび近似多角形への切り分けパターンの生成手法例を示す。図12では、例として縦3点×横4点の格子点、具体的には基準正方形ABCDを形成する格子点を複数隣接させて並べた状態の格子点を示す。本図のように各格子点にA〜Dのラベリングを行い、前記の四角形A’B’C’D’を生成する手法を利用すれば、たとえば図13のように合同でない複数の四角形A’B’C’D’が並んだ状態を作ることができる。ただしこのとき、すべての四辺形の形状表現をリスト化し、重複が無いように留意する必要がある。そして、この外縁線だけを抽出した図14が集合全体形状Wおよび外郭Sの形状となる。 【0032】 これらの手順により、上記要件(1)〜(4)をすべて満たすパズルの一つの実施形態として、図1のような外観のパズルを実現できる。なお、図14は、このパズルの集合全体形状Wの外側の直線からなる線図であり、正解配置図の構成要素として利用することができる。また、1枚の板状材料からプレス裁断等で小片P群および外枠Fをまとめて一度に形成する際には、図13の線図を切断線図として利用できる。近似多角形の頂点の2次元座標が得られることから、各小片Pを個別に切削加工等で作成することも可能である。また、小片Pを製造する際の加工精度の都合で、ほぼ合同となってしまうような形状表現の組や、ほぼ線対称となり裏表が同じ形になる形状表現があれば、それらをパズル盤面に使用しないよう留意することができる。最初に用意する格子点の規模を変えることで、異なる規模、たとえば10行12列などのパズル盤面を生成することができる。各格子点での傾き指標の選択を変えれば、同じ盤面規模でも小片Pの形状や構成や配置が異なる盤面を作成することができる。ここで例示した手法では、集合全体形状Wを満足する近似多角形の配置が1通りしかないことは必ずしも保証されないが、正解図を作成した後、パズル製品を製造する前に、正解図以外の別解があるかどうか調べることができる。また、パズル解答者にとっては、あらかじめ用意された解以外の別解を探すことも楽しみとなり得る。 【0033】 また本パズルZでは、小片Pに絵柄模様を含む識別情報が記載されていなくても形状だけで正解配置に達することができ、小片P同士を明確に区別できる識別情報がまったく記されていない無地単色の状態が最も難易度が高い。小片Pの表裏の仕上げ状態が同等であれば、表面と裏面の区別もできないのでさらに高難度となる。小片Pは似たような形の多角形ばかりとなるため、無地単色だとパズルを一度解いても小片Pの配置が記憶に残りにくく、二度目以降の挑戦でも難易度低下が少ないことが期待される。すなわち本パズルZは何度でも繰り返し楽しめるという特徴を有しており、脳や手指の機能の維持向上を図る手段としての有用性や経済効率性をも備えている。 【0034】 逆に、小片P同士を明確に区別できる識別情報が記載されていると著しく難易度が下がり興が削がれる場合があるが、識別情報の構成を工夫することで、難易度低下を抑制したり、一度解いた後で記憶に残りにくいようにしたりできる。また、パズル製品の構成要素として、すべての小片Pの配置状況を克明に記載した正解図や、一部の情報のみを提示したヒント図を添付する場合において、正解図やヒント図を利用して一度解いても、正解やヒントが記憶に残りにくいような態様としておくことで、正解図やヒント図を見ずに改めて最初から解く楽しみが多く残るように企図することができる。識別情報に関する工夫としては、識別符号を直交格子配列の行番列番に対応する行列コードの形式とする場合でも、たとえば図15〜図19のような各種の手法があり得る。識別符号を各小片Pに記載する際には、図20のように、正解配置における各小片Pの向きが分かりにくいようにすることができる。外見上同じルールに基づくような識別符号等を各小片Pの表裏それぞれに記載すれば、小片Pの表面と裏面の区別を困難にすることができる。 【0035】 図15は、本パズルZの複数の小片Pに対して、正解配置場所を示す識別符号を対応付ける場合において、その識別符号を数字1字から成る行コードと、アルファベット1字から成る列コードの組み合わせで生成する例である。数字およびアルファベットの並び順を「1、2、3、・・・」、「A、B、C、・・・」のような規則正しいものではないようにしたことで、識別符号を見ただけでその小片Pがどの場所に配置されるのかが分かるという大幅な難易度低下を軽減する工夫を施している。 【0036】 また、図16は、上記図と同じく識別符号を対応付けた場合の別の例である。行コードおよび列コードに特定の漢字1字を使用することで、どの漢字が行コードもしくは列コードなのか一見しただけでは分からないように工夫している。 【0037】 また、図17も、上記と同じく識別符号を対応付けた場合の別の例である。識別符号の一部で、行コードもしくは列コードを欠損させ、また、識別符号における行コードと列コードの表示順を不統一にすることで、識別符号の法則性が分かりにくいように工夫している。 【0038】 また、図18も上記図と同じく識別符号を対応付けた場合の別の例である。アルファベット大文字、アルファベット小文字、数字を混用した行コードおよび列コードとし、さらに、それぞれの行および列に対してコード文字2つの内のいずれかを使用する。また、識別符号における行コードと列コードの表示順を不統一にすることで、識別符号の法則性が分かりにくいように工夫している。 【0039】 また、図19も、上記図と同じく識別符号を対応付けた場合の別の例である。本図は数字4桁の識別符号としている。識別符号を上下逆向きに誤読することを避けるべく、最大桁は必ず0とし、他の桁に0を使用しないようにしている。行コードは識別符号の1の桁に使用する。列コードに関しては、10の位の数の偶奇で正解配置の列番の偶奇だけを示すようにしている。識別符号の中に無意味な情報(この場合は100の位の数)を混在させることで、識別符号の法則性が分かりにくいように工夫している。 【0040】 また、識別符号を小片Pや正解図などに記載する場合に、乱雑な向きにすることで、小片Pをどのような向きに置くのが正解か、小片Pを見ただけで分かるという難易度低下を回避することができる。図20は、3行4列の小片Pの正解配置を表している例を示す。 【0041】 また、前記の集合全体形状Wおよび近似多角形への切り分けパターンの設計手法例では、近似多角形は表面と裏面が重複の無い別の形状となっているため、集合全体形状Wを裏返しにしたWrevは、すべての近似多角形P’を裏返したP’revを使って形成することができる。パズルを解く際には、小片Pの表面もしくは裏面のいずれかのみを使用することになる。これを利用して、表面と裏面のどちらを使用するか、および、正解図もしくはヒント図を参照するかどうかによって、計4通りの遊び方が可能なパズル製品を実現することができる。 【0042】 具体的なパズル製品形態の例として、図21(上面図および断面図)、図22(斜視図)のような構成とすれば、集合全体形状Wを提示する外枠Fの役割を担う中枠を、表裏どちらの面でも装着可能にできる。また、図23のように、ベースと中枠の間に中間シートを挟むこともできる。パズル解答者は、ベースと中枠の間に中間シートを挟むのではなく、必要なときだけ参照するという遊び方もできる。中間シートは、すべての小片Pの配置状況を克明に記載した正解図でもよいし、一部の情報のみを提示するヒント図でもよいし、解答者自身が途中経過などをメモできるようなメモ用紙の機能を持ったものでもよい。中間シートとしてそれらを併せて提供し、解答者がどれを使用するか(もしくは一切使用しないか)を選べるようにしてもよい。パズル製品を提供する側としては、小片Pの表面や裏面に記載する絵柄模様や識別符号を調整することで、表面と裏面のパズル難易度に差をつけることができる。 【0043】 また、小片Pおよび集合全体形状Wである外郭Sを規定する外枠Fを、厚みの大きい態様とすることもできる。図24は、近似多角形の生成手法例で使用した基準正方形の辺長に近い厚みとした場合のイメージである。厚みが増したことによって小片の表裏面と側面の識別が困難になっており、パズルの難度が上がっている。図25および図26はさらに厚みを大きく、むしろ角棒と言える態様とした例であり、特に図26は、横倒しにした角棒を縦に積み重ねて直立面内で集合全体形状を完成させるパズルという態様の例である。これらの態様においても、近似多角形を2次元的に配置して集合全体形状Wを過不足なく構成するパズルという要素は維持されており、上記の要件(1)〜(4)を満たすことによって、既存のジグソーパズルとは異なる困難性を有するパズルとなる。 【産業上の利用可能性】 【0044】 本発明は、パズルとして産業上の利用可能性がある。遊興娯楽品としてだけでなく、脳や手指の機能の維持向上を図る手段として、また、論理思考力、忍耐力、集中力などを評価したり向上したりする手段としても利用可能である。 【符号の説明】 【0045】 Z…パズル W…集合全体形状 P…小片 S…外郭 F…外枠 |
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【図2】![]() |
【図3】![]() |
【図4】![]() |
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【図6】![]() |
【図7】![]() |
【図8】![]() |
【図9】![]() |
【図10】![]() |
【図11】![]() |
【図12】![]() |
【図13】![]() |
【図14】![]() |
【図15】![]() |
【図16】![]() |
【図17】![]() |
【図18】![]() |
【図19】![]() |
【図20】![]() |
【図21】![]() |
【図22】![]() |
【図23】![]() |
【図24】![]() |
【図25】![]() |
【図26】 |
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