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事務用品
 
【考案の名称】仰臥用書見装置
【実用新案権者】
【識別番号】506314704
【氏名又は名称】阿部 隆三
【住所又は居所】千葉県松戸市栄町6丁目445番地 イーストコート503
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100110294
【氏名又は名称】仲山 甲
【考案者】
【氏名】阿部 隆三
【住所又は居所】千葉県松戸市栄町6丁目445番地 イーストコート503
【要約】
【課題】
仰臥用書見装置を安価に提供する。
【解決手段】
寝具Fの側端部近傍又は前端部近傍に安定するように設置した所定高さの物入れ箱71上に取り付けてある梁部材支持具73に、一端部を支持してある梁部材75の他端部近傍に書物保持具1を吊支することにより仰臥状態で読書可能としてある。梁部材75は、梁部材支持具73に所定角度範囲で揺動可能となっているので、移動容易である。書物保持具1は保持すべき本Bの縦方向と平行するように設けられた背板に、上記した梁部材75へ所望の角度で吊支可能とする吊支手段33を有する。背板の上下両端部には下保持部37及び上保持部39を備えている。これらの両保持部によって本の見開き面を下向きにした状態で保持可能とするものである。既存の家具等に取付け容易なので、安価に提供可能となる。
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
寝具の側端部又は前端部に安定するように立設した支持台に支持された梁部材の所望位置に取り付け可能かつ仰臥状態で読書可能に書物を保持する書物保持具を備えた仰臥用書見装置において、
上記書物保持具は所定の幅と上記書物の縦長寸法に対応する長さを有する背板の上下両端部に、上記背板の前方へ立ち上げてなる立ち上げ部と、該立ち上げ部の各先端に上記背板と平行するように設けてある所定幅の当接部からなる下保持部及び上保持部を備えているとともに、上記背板の要所に上記書物保持具を上記梁部材へ所望の高さ及び傾角で吊支可能とする吊支手段を備えている
ことを特徴とする仰臥用書見装置。
【請求項2】
請求項1において、上記支持台は所定高さの本箱等の物入れ箱であり、上記物入れ箱の上部に取り付けてある梁部材支持具を介して上記梁部材の一端部を支持してあることを特徴とする仰臥用書見装置。
【請求項3】
請求項2において、上記梁部材支持具は、上記梁部材の一端を所定角度範囲で揺動可能に支持可能であり、扇形に形成された本体上板部の一辺に上記物入れ箱の縁部に係合可能な係止片が設けてあるとともに、上記一辺と所定角度をなす他辺には、当該梁部材支持具の後退を防ぐストッパ部材が設けてあることを特徴とする仰臥用書見装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、上記背板は上記下保持部と一体の第1の背板と、上記上保持部と一体の第2の背板とが相互に重なり合った状態で摺動することにより、保持すべき書物のサイズの変化に対応して調節可能としてあり、上記1対の背板には、上記下保持部と上記上保持部とを所望の間隔に保持する位置決め手段が設けてあることを特徴とする仰臥用書見装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、上記当接部は上記下保持部の当接部の幅を上記上保持部の当接部の幅よりも小さくしてあることを特徴とする仰臥用書見装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、上記各保持部は少なくとも上記当接部を透明体としてあることを特徴とする仰臥用書見装置。
【考案の詳細な説明】
【技術分野】
本考案は、仰臥状態で読書を容易にする仰臥用書見装置に関するものである。
【背景技術】
周知のとおり、寝る前に寝具に入った状態又は入院患者等は仰臥した状態での読書願望がある。仰臥した状態で読書をするためには両手で本を開いて視力と一致する位置に保持する必要があるが、この状態を持続させることは困難である。そこで、仰臥した状態で読書可能に本を見開き状態で保持することを可能にしたいわゆる仰臥用書見装置に関するいくつかの特許文献がある。
特許文献1には、台座に支柱を立て、この支柱の先端に水平方向に回動自在な回転軸を支持し、この回転軸の先端部にアームを設け、このアームと一体に本を載せる架台枠を所望の傾斜角になるように設け、この架台枠に滑り止め付きの透明板を嵌め込んでなる仰臥読書スタンドが記載されている。架台枠上に本の見開き面を下向きに載せ、仰臥した状態で下から透明板を透かして読み取り可能としてある。特許文献2には、昇降可能な1対の支持柱を設け、それらの上端部に上下法王に揺動可能なアーム部材を設け、これらのアーム部材の内側に設けたスライド溝間に透明載置板の両縁部を摺動可能に架け渡したものからなる仰臥用読書スタンドが記載されている。これも透明板上に本の見開き面を下向きにして載置し、下から透明板を透かして読み取り可能とするものである。特許文献3には、台上に立設された支柱に、上下方向へ揺動可能に自在アームを設け、さらにこの自在アームの先端に同じく上下方向へ揺動可能な支持アームを設け、この支持アーム上にこれを跨ぐように支持翼を設け、この素地翼の先端にV字形の受け板を回動自在に支持したものからなる仰臥用書見装置が記載されている。1対のV字形の受け板で本の見開き面を下向きに下状態で指示可能であり、片手で受け板を動かしてページめくりを可能としたところに特徴がある。
【特許文献1】
実開平6−66374号公報
【特許文献2】
特開平9−75139号公報
【特許文献3】
特開2000−139580号公報
【考案の開示】
【考案が解決しようとする課題】
上記の各特許文献記載の書見装置等は、それぞれ利用目的に対応してそれぞれの機能を果たし得るものと思料する。しかしながら、特許文献1記載の考案は、構成が簡単である分強度的に問題があり、いわゆる文庫本のような軽量物以外は利用困難であることが危惧される。また、透明板上に載せるものであることから、ページめくりが面倒なことが考えられる。特許文献2記載の発明は、構造が堅固であるため強度的な問題はない反面、重量が大きくなることからふとんなどの寝具の下に座板を出し入れする操作が面倒であるほか、価格が高くなり、さらにページめくりが面倒であるという問題が生じる。特許文献3記載の発明は、人口透析患者等のごとく片手しか使いないような状態になっているような人々には朗報であるが、両手を使うことができる人々にとっては、受け板で見開き面の多くの割合を覆ってしまうことから頻繁に受け板をずらしながら読まなければならないため、煩わしいものとなる懸念がある。本考案は、見開き面をなるべく多く開放し、直接的に目視可能とするとともに、ページめくりが容易な構造の仰臥用書見装置を安価に提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本考案の仰臥用書見装置は、以下の手段を採用することにより以下の作用効果を生じるようにしたものである。請求項1に記載の考案の仰臥用書見装置は、寝具の側端部又は前端部に安定するように立設された支持台に支持された梁部材の所望位置に取り付け可能かつ仰臥状態で読書可能に書物(以下「本」と呼ぶことがある)を保持する書物保持具を備えたものからなる。上記の書物保持具は、所定の幅と書物の縦長寸法に対応する長さを有する背板の上下両端部に、この背板の前方へ立ち上げてなる立ち上げ部と、この立ち上げ部の各先端に背板と平行するように設けてある所定幅の当接部からなる下保持部及び上保持部を備えているとともに、背板の要所にこの書物保持具を上記した梁部材へ所望の高さ及び傾角で吊支可能とする吊支手段を備えているところに特徴がある。ここで立ち上げ部とは、背板と直角に形成し、保持すべき本の厚さに対して充分な高さを有する板部材を指す。また、当接部とは上記の各立ち上げ部の先端部にこれと直角かつ保持すべき本の上下方向と直交するように設けたもので、本の見開き面の上下端部近傍を支持するための部材を指す。
上記構成において、この書物保持具を吊支手段により梁部材に吊支する前の行程として本の上端部側を上保持部の内側に差し込んでから少し持ち上げ、次いでこの本の下端部側を下保持部の内側に差し込み、当接部の内側に落とし込む。このように本を保持して装着した後、この書物保持具は吊支手段を介して持ち上げると、本は重力により開いた状態かつ下保持部及び上保持部をなす当接部の背面側と読もうとする本の見開き面を対向した状態に保持される。こうして吊支手段を介して梁部材の所望位置に吊支すると、予め設定した角度の傾き角で見開き面が下(斜め)向き状態に保持可能なので、仰臥状態でその見開き面を読むことが可能となる。見開き面のほぼ全面が直接仰臥者の視野に入るので読みやすく、ページめくりも容易となっている。この考案に係る書物保持具は構成がきわめて簡単のものであるため、安価に提供可能となる。
請求項2に記載した考案は、本考案の他の手段を採用したものである。すなわち、上記の支持台として所定高さの本箱等の物入れ箱を採用し、上記の梁部材は物入れ箱の上部に取り付けてある梁部材支持具(以下「支持具」と略称することがある。)を介して一端部を支持してあるところに特徴がある。ここで梁部材支持具とは、書物保持具を支持した梁部材を物入れ箱上に取り付けるための手段としての物品を指すものとする。この支持具は、物入れ箱上に挿着可能なものであり、支持する梁部材に曲げモーメントが作用しても箱上から離反しない構成を採用してある。物入れ箱は、本箱など既存の小物家具を利用可能であるため、支持台の費用を安くすることが可能となる。書物保持具、梁部材支持具及び梁部材の3点をセットとして商品化すれば、全体の費用が安くつく利点があるため、仰臥用書見装置の普及促進に貢献する。
請求項3に記載した考案は、請求項2に記載した梁部材支持具について具体化したものである。すなわち、この支持具は、上記した梁部材の一端を所定角度範囲で揺動可能に支持可能であり、扇形に形成された本体上板部の一辺には、上記の物入れ箱の縁部に係合することにより、この一辺が縁部から離反することを阻止する係止片が設けてあるとともに、上記の一辺と所定角度をなす他辺には、この梁部材支持具の後退を防ぐストッパ部材が設けてあるところに特徴がある。ここで本体上板部とは、梁部材支持具の中核となる部材を指し、この本体上板部に各要素が附属する関係にある部材をいう。
この考案は、梁部材を揺動自在としてあるため、寝起きする際には梁部材に書物保持具を吊支した状態でこれを使用者の仰臥位置からずらしておき、仰臥した後にこれを読書に適する位置まで揺動により移動させるようにすることが容易となる。また、梁部材支持具の自重だけでは梁部材を支持することはできないので、本体上板部の一辺を立ち下げ、さらに本箱等の天井板の背後に張り出している部分である縁部に係合可能な係止片を形成して上記の縁部に係合させることにより、梁部材による曲げモーメントに耐え得るようにしてある。さらに、この係合部が本箱等の縁部から外れると、支持具は梁部材の曲げモーメントに抗し得ないので、この支持具がずれることを防ぐためのストッパ部材を設けることにより書物保持具の吊支を保障するようにしてある。木ねじなどを用いずに取付け可能な構成となっているため、本箱等を傷付けることなく利用可能となる特徴がある。
請求項4に記載した考案は、上記の書物保持具として他の手段を採用したものである。すなわち、上記の書物保持具を構成する背板は、上記の下保持部と一体の第1の背板と、上記の上保持部と一体の第2の背板との1対が相互に重なりあった状態で摺動することにより、保持すべき本のサイズ変化に対応して間隔を調節可能としてあり、これら1対の背板には、下保持部と上保持部とを所望の間隔に保持する位置決め手段が設けてあるところに特徴がある。これは1対の背板同士を上下方向に摺動可能とすることにより、下保持部と上保持部との間隔を調整可能となることから、複数種類の大きさの本に対応可能となる。本のサイズに合わせて上記の間隔を設定し、位置決め手段で間隔を固定すれば、請求項1に記載した書物保持具と同様の機能を有するものとなる。したがって複数種類のサイズの保持具を別に用意する必要がなくなる。
請求項5に記載した考案は、上記の各考案において、上記した各保持部をなす当接部は下保持部の当接部の幅を、上保持部の当接部の幅よりも小さくしてあるところに特徴がある。読もうとする本の保持は、上下の当接部により担われるが、下保持部の当接部は、背板から前方へ立ち上げてなる立ち上げ部に、本の下端部が当接した状態となる。これに対し、上保持部としての当接部は、下保持部の立ち上げ部が本を支持した状態の下で、本の上端部との間に余裕を持たせるようにしたものである。すなわち、本の上方に本を上下動するための余裕を設けたことにより、着脱操作を容易にしたものである。したがって、本の上端部近傍を保持するのは上保持部の当接部の先端部から特定の範囲までとなる。
請求項6に記載した考案は、少なくとも上下各保持部の当接部を透明体としたものである。上記したように、見開き面のほぼ全面が直接仰臥者の視野に入るが、場合によっては印刷範囲が上部又は下部又はそのいずれも、あるいはヘッダーやフッターが当接部に覆われてしまうことがある。このような場合に当接部を透明体としてあれば、そのまま読むことができるので、仰臥状態での読書を容易化する。
【考案の効果】
本考案は、吊支手段を用いて支持台の任意の位置に書物保持具を装着可能とすることにより仰臥状態で読書が容易となる。書物保持具の構成が極めて簡単なものであるほか、支持台も簡単な構成とし、又は日曜大工などにより製作することも可能であり、書物保持具だけを販売することが可能となるので安価に提供可能となる。吊支手段を取り付けるための梁部材を、梁部材支持具を介して物入れ箱等に取り付けるようにすれば、既存の、又は安価な小物家具等を転用して書物保持具を使用可能となるので、安価に仰臥用書見装置を採用可能となる。また、書物保持具を、第1の背板及び第2の背板にそれぞれ保持部を設け、背板同士が重なりあった状態で摺動可能な構成とすることにより、保持部同士の間隔を調整可能とすれば、1個の書物保持具で複数種類の寸法の本を読書可能となる。また、本の見開き面を下向きにして保持するように書物保持具に装着する場合に、本を直接支持する当接部について下保持部の当接部の幅よりも上保持部の当接部の幅を大きくしてあれば、本の出し入れが容易となる。さらにまた、上下の当接部を透明体としてあれば、本の上下に位置する文字等が当接部と重なってしまったような場合にも判読容易となる。
【考案を実施するための最良の形態】
本考案に係る仰臥用書見装置は、寝具の側端部又は前端部に安定するように立設された支持台に支持された梁部材の所望位置に、取り付け可能かつ仰臥状態で読書可能に書物を保持する書物保持具を備えたものからなる。この説明においては、実施例1として一般的な既製の支持台に書物保持具を吊支したものを取り上げ、実施例2では、単体型の書物保持具をについて説明し、実施例3では、複合型の書物保持具について説明し、さらに実施例4では、実施例1とは異なる構成の支持台について詳しく説明することとする。
【実施例1】
図1は、既製の支持台Dに、書物保持具1を吊支してなる仰臥用書見装置を使用して仰臥者Pが読書をしている状態を示している。支持台Dは、寝具F等の下に位置させてある台座51に立設した支柱55に吊支手段3を介して書物保持具1を取り付け可能としたものからなる。図1に示した支持台Dは、寝具Fの下面に挟み込まれた台座51の端部に受け部51aが設けてあり、これに支柱受け53が立設可能となっている。後述するように、この支柱受け53には曲げモーメントが作用するので、補強部材53aで補強可能としてある。支柱受け53は厚肉管からなり、この管内には丸管からなる支柱55のポール部55aが挿着してある。ポール部55aの上端部には、これと一体に梁部材55bが設けてある。梁部材55bの先端部から所定距離の範囲には、書物保持具1を吊り下げるためのフック55c,…が等間隔に配設してある。書物保持具1は、吊支手段である吊り紐3,3をこれらのフック55c,…に、任意の長さに調節して引っ掛けることにより仰臥状態で読書可能となる。
支柱55は、支柱受け53に設けてある固定手段(クランプ)54によって所定の状態に固定可能であるが、この固定手段を緩めた状態の下では昇降及び回動自在である。ポール部55aと梁部材55bとは、第2の補強部材55eを設けてあることが望ましい。この支持台Dは、分解・組立が容易な構成を採用してあるので、運搬や保管に便利である。この支持台は、ポール部55aと梁部材55bとは別部材とし、両者を着脱自在とすることによりさらに分解・組立を容易なものとしてもよい。
【実施例2】
図2は、単体型の書物保持具1の基本形状を示したものであり、(a)は表面側、(b)は背面側を示している。これには吊支手段としての吊り紐3,3が背板5に穿ってある取付け孔5a,…を介して取り付けてある。書物保持具1の構成は、上記の背板5の下部に設けてある下保持部7と、背板5の上部に設けてある上保持部9とからなる。下保持部7は、背板から前方へ直角に立ち上げてなる立ち上げ部7aと、この立ち上げ部7aの先端部に固着してある当接部7bとからなる。また、上保持部9は同様に立ち上げ部9aと、当接部9bとからなる。下保持部7の当接部の幅(h1)すなわち上方に向けて張り出している幅は、上当接部9の当接部の幅(h2)よりも小さくなっている。これは図3に示すように、セットされた本Bは下端部が重力により下保持部7の立ち上げ部7aと当接状態となるのに対し、上保持部9の立ち上げ部9aは本をセットする際に必要な余裕を見込んで上方にずらして設けることを可能とするためのものである。なお、上記の説明では、背板と立ち上げ部とを一体にしてあるが、これは製造上の都合により別体とし、又は立ち上げ部と当接部とを一体とし、あるいはこれらの3部材を一体に構成してもよい。
上下の当接部7b,9bは、背板5と一体に形成してもよいが、別製部材とし、これらを立ち上げ部の先端部に固着してもよい。当接部7b,9bとしてアクリルなどの透明板を採用すれば、セットした本の見開き面の上部及び/又は下部が当接部に覆われるようなことがあっても前方(下方)から読み取り可能となる。
この書物保持具1の背板に設けてある取付け孔5a,5a(図2参照)に吊支手段である吊り紐3を通して離れないように結び、さらにこれらの紐を図1に示すように、梁部材55bの下側に配設してあるフック55cに取り付ければよい。取付け孔5aの選択により書物保持具1の傾き角が変化するので、本の傾き角の調整は、取付け孔5a,5aの選択により行えばよい。図3は、書物保持具1に本Bを保持してある状態を示したものである。また、本Bの設置位置の調整は、吊り紐3の長さ又は支柱55を昇降させることにより行う。必要に応じて台座51の位置を調整し、又は支柱を回動させることにより位置の調整を行う(図1参照)。
【実施例3】
図4は、複合型の書物保持具を直立させた状態で示したものである。この書物保持具31は、2部材を組み合わせることにより下保持部と上保持部との間隔を調整可能な構成を採用したものである。具体的には、下保持部37を第1の背板35と一体にした母構造体Mと、上保持部39を第2の背板35と一体にした子構造体Cとを組み合わせたものからなる。子構造体Cは、母構造体Mに抱かれた状態でセットすべき本の縦方向に並行して摺動可能となっている。
母構造体Mは、図5に示すように、第1の背板35の下端部前面に、下保持部37の立ち上げ部37aが設けてある。下保持部37は立ち上げ部37aの先端部に当接部37bを一体に設けたものからなる。第1の背板35は、セットしようとする本を充分に収容可能な幅を有するとともに、これらの本の縦長に対応可能な長さを有するものとしてある。第1の背板35の下端部近傍の表面から本の最小縦長となる範囲には、両側部に子構造体Cを抱持するための1対のガイド35a,35aが設けてある。ガイド35aは本を保持するのに必要な強度を有している必要がある。第1の背板35には、横幅の中央部に位置決め用の小孔35b,…が配設してある。第1の背板35の背面側には、第2実施例における取付け孔5a,5aと同様の機能を果たす吊支用フック部35d,…(1対だけ図示)が配設してある。位置決めの際に選択した各フック部35dに吊り紐33,33を結び付けることにより書物保持具31を吊支可能とする。
子構造体Cは、図6に示すように、第2の背板36の上端部前面に上保持部39を設けたものからなる。第2の背板36の幅は、母構造体Mのガイド35a,35aに対応可能なものとしてあり(図4参照)、その長さはセットしようとする本の最長縦長に対応可能なものとしてある。上保持部39は、下保持部と同様に立ち上げ部39aとその先端部に固着してある当接部39bとからなる。上保持部39の当接部39bの幅は下保持部37の当接部37bの幅よりも大きくしてあることは実施例1と同様である。
第2の背板36には、横幅の中央部に1〜5個の位置決め手段用小孔36c,…が設けてある。これらの小孔36cの位置は、下保持部37と上保持部39との位置関係を、本をセットするのに適した間隔とすることが望ましい。位置決めは、両背板のいずれかの小孔同士を一致させ、そこに位置決め手段としてのピン41(図7参照)を背板の背後から差し込むだけでよい。この位置決め手段の小孔の組合せは、上記に拘束されることなく、デザイン、強度その他の要素を考慮して決めることが望ましい。なお、位置決め操作を容易にするために、第2の背板35の正面に目盛りを付け、あるいは第1の背板35を透明板又は半透明板で構成することにより、第2の背板に設けてある位置決め孔の位置が容易に判るようにするとよい。
位置決めピン41は、図7に示すように、ロッド状の装着部41aとその先端部に設けてあるつまみ部41bとからなる。つまみ部41bには透孔41cが設けてあり、ストラップ等を取付け可能としてある。この他、位置決めピンの構成は、脱落防止手段を備えることにより使用中の抜け落ちをなくしたものとしてもよい。なお、位置決め手段は上記の構成に拘らず、第1の背板の背面側や前面側のガイド35a等にばね力を利用したクランプなどを採用してもよい。
この書物保持具31を使用する場合には、書物保持具31を図1に示す支持台Dに取り付ける前に、予め読もうとする本のサイズに合わせて下保持部37と、上保持部39との間隔を決め、位置決め手段で位置決めしてから書物保持具に本をセットする。さらに吊支手段(吊り紐)33を用いて書物保持具31を支持台Dの梁部材55bに取り付ける。この時、本の傾き角や眼からの距離などを予め設定しやすくしておくとよい。見開き面が暗くて読みにくいような場合には、見開き面を明るくするために投光手段を採用してもよい。投光手段は支持台Dに取り付けるものや、独立の照明など使用状況に応じたものを採用すればよい。
【実施例4】
実施例4は、図8〜10に示すように、支持台として本箱等の物入れ箱71を採用し、梁部材を支持する手段として、梁部材支持具(以下「支持具」という)を本箱等の上に装着するようにしたものである。物入れ箱71には、本その他の重量物を収納して梁部材75による曲げモーメントが作用しても倒れないようにする必要がある。梁部材75は、長さを約800mmとし、これに作用する曲げモーメントに十分に耐え得る強度を有する木材を用いてある。梁部材75の基端部近傍には支軸用孔が設けてあり、先端部近傍の下面には吊支手段である鎖33,33を掛けるためのフック75b,75bが取り付けてある(図8参照)。
支持具73の構成は、図9,10に示すように、扇形に形成した本体上板部73aの一辺(図9後方側)に、本箱73の縁部71aへの係合片73bが設けてある。係合片73bは、直線状になっている一辺を直角に折り曲げ、さらに本箱の縁部71aに見合う寸法だけ内側に折り曲げて接片となし、これを縁部71aに係合可能としてある。これにより支持具73によって片持ち支持された梁部材75が、回転することを阻止可能とするものである。なお、支持具の素材としては、強度の高い合成樹脂成型品やアルミニウムダイカスト品などとすることが望ましい。
扇形に形成してなる本体上板部73aの他辺(図9左側)には、ストッパ部材77を進退させるガイド部79が設けてある。ガイド部79は上板部73aと一体に形成してあり、ストッパ部材77を挿通可能な深い穴となっており、挿着してあるストッパ部材77を進退可能としてある。ストッパ部材77の先端部には、下方に折り曲げてなる係止部77aが設けてある。ガイド部79の天板部には、ねじを利用したクランプ83がねじ込んである。ストッパ部材77は、本体上板部73aの係合片73bが本箱の縁部71aに係止した状態に維持するためのものである。すなわち、本体上板部73aの係合片73bが本箱の縁部71aに係止し、この状態で係止部77aを本箱71の前端部に当接し、クランプ83を締め付けると、支持具73が本箱上で前後方向への移動が規制されるため、支持具73の後退が阻止される。この結果、梁部材75に曲げモーメントが作用しても、係合片73bが本箱の縁部71aとの係合関係を維持するため、梁部材75に書物保持具1を吊支してもこれが回転することはない。
本体上板部73aの円弧部のやや内側下方には、この円弧部に沿って帯状に形成してなるレール部73cが設けてある。上板部73aの下面と、レール部73cの上面との間隔は、梁部材75の厚さとほぼ同じとしてあり、梁部材75はこの間で摺動することにより、支軸81を中心として揺動可能となっている。この書見装置の使用者は、仰臥前にはこの梁部材75を、本箱71の前後の縁部にほぼ平行に近い状態に位置させておけば、寝起き又は仰臥に支障を生じない。仰臥した後に梁部材75を直角方向に引き寄せ、図8に示すような状態とすることにより仰臥状態で読書可能となる。この支持具は、本箱等に孔を開けずに取り付けるものであるので、孔開けの手間がかからない上に本箱等に傷を付けない利点がある。
このほか、本箱等の上部への梁部材支持具として、ボルト、ナット、座金及び梁受け部材の組み合わせからなる簡易セットとすることにより、本考案に係る書物保持具を吊支する梁部材を取付け可能とすることも可能である。これは、本箱等の天板の所定位置に支軸用孔を開け、この孔を用いてボルト、ナット及び座金を用いて梁部材75の支軸用孔にこのボルトを挿通し、梁部材を上記の天板に取り付けるものである。梁受け部材は、天板上の支軸の同心円上に表面を平滑にした硬質の合成樹脂板等を貼付し、梁部材の揺動運動を円滑化するとよい。上記の支持具は、構成は簡単であるが、天板に孔を開けることが面倒である上に天板を傷つけてしまう問題があるが、ボルトなどの部品の入手が容易であるため、本考案に係る書物保持具の採用を安価に実現可能とする利点がある。
さらにこのほか、梁部材75は、簡単な構成の支持具を採用するのであれば、揺動不能なものもとしてもよい。また、支持具として梁部材が進退可能とする構成を採用し、吊支した書物保持具を本箱等の前後に移動可能としてもよい。
以上の説明において、吊支手段として2本の吊り紐又は鎖を用いたものとしてあるが、これを4本の吊り紐等を用い、本の傾斜角を任意に調節することも可能である。また、支持台の構成は、図示したものの他、書物保持具を所望位置に取付け可能なものであればどのようなものであってもよく、例えば料理運搬用のワゴンに梁部材を固定するなど既存の物品を転用したものであってもよい。さらにまた、図1及び図8では、支持台Dの梁部材を寝具の横から頭上に延びるようになっているが、梁部材が頭部の先方から伸びるように設置するものであってもよい。この場合の吊支手段はこれに対応した構成とする必要があることは言うまでもない。このほか、梁部材75は、簡単な構成を採用するものでは、揺動不能なものもとしてもよく、また、天板上に装着してある支持具に対して進退可能に取り付けて、吊支した書物保持具を移動可能としてもよい。
【産業上の利用可能性】
本考案は、書物を保持するための物品に関するものであり、本考案の実施により産業の発展に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の使用状態を示す説明図である。
【図2】実施例1の書物保持具を示しており、(a)は前面側、(b)は背面側である。
【図3】実施例1における書物保持具が書物を保持している状態を示した側面図である。
【図4】実施例2の書物保持具の全体構成を示す斜視図である。
【図5】母構造体の正面図である。
【図6】子構造体の正面図である。
【図7】位置決めピンの例を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】実施例4における使用状態を示す斜視図である。
【図9】梁部支持具で梁部材を支持している状態を示す斜視図である。
【図10】梁部支持具が物入れ箱に装着されている状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1,31 書物保持具
3、33 吊支手段
5 背板
7、37 下保持部
9、39 上保持部
7a,9a 立ち上げ部
7b,9b 当接部
35 第1の背板
36 第2の背板
37a,39a 立ち上げ部
37b、39b 当接部
41 位置決め手段(位置決めピン)
55 支柱
55a ポール部
55b,75 梁部材
71 物入れ箱(本箱)
71a 縁部
73 梁部材支持具
73a 本体上板部
73b 係止片
77 ストッパ部材
D 支持台
B 書物(本)
F 寝具
h1,h2 張り出し量
試作品説明写真 
【図1】
図1
【図2】
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10
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